E-520のコントラストAF(ハイスピードイメージャAF)にはちょっとした裏技がある。ライブビューの拡大表示状態でAFを作動させると、拡大している部分でのコントラストAFになるというもの。つまり、11点の測距点以外の場所でもピント合わせができてしまう。ようは、“どこでもAF”が可能なのである。
 
  取扱説明書の45ページにライブビューで画面の一部を拡大表示する操作について書かれているが、その中に「拡大表示中は、シャッターボタンを全押ししてもAFは作動しません」とある。全押しでAFが作動しないのはわかるが、じゃあ、半押ししたときはどうなるんでしょ? 
 
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ライブビューでのAFの選択画面。コントラストAF(ハイスピードイメージャAF)にしておいても、非対応レンズでは強制的にハイブリッドAFに切り替わることになっている
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 実は、AFが作動するのである。E-3だとシャッターボタン半押しではAFは作動しないし、全押しするとそのままシャッターが切れる。それに対して、E-520の場合はシャッターボタン半押しでコントラストAFによるレンズ駆動が行なわれ(その間は手ブレ補正も作動する)、ピントが合うと液晶モニター上に合焦マークが点灯する。で、全押しするとAF作動はなしでシャッターが切れる。
 
  面白いのは、拡大する部分が画面のどこでもOKなこと。つまり、測距点のない場所でもAFでのピント合わせが可能なところである。通常のコントラストAFでピント合わせができるのは、11点の測距点だけだが、拡大表示でのコントラストAFでは測距点以外の場所でもピント合わせができる。つまり、“どこでもAF”なわけだ。
 
  測距点が11点しかないと、カメラを三脚に固定しての撮影の場合に、測距点のフレームがピントを合わせたい部分にぴったり重ならないケースも出てくるが(オリンパスのコントラストAFは、ひとつひとつの測距点がかなり広いのでたいていは問題にならないけど)、“どこでもAF”ならねらいどおりの場所にきちっとピントを合わせられる。しかも、7倍なり10倍なりに拡大しながらなので、ピントのチェックも同時にできてしまうのだ。 
 
 
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コントラストAFに対応したレンズを装着すると、11点測距のコントラストAFが使用可能になる
 
 
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十字キーを使って拡大したい部分に緑色のフレームを移動させ、十字キー中央のOKボタンを押すとフレーム内が7倍または10倍に拡大できる
 
 
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で、拡大した状態でシャッターボタンを半押しすると、コントラストAFが作動して(同時に手ブレ補正も作動する)、ピントが合うと右上に合焦マークが点灯する。もちろん、拡大表示している部分にピントが合う
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11点測距の一番左端の測距点でピントを合わせて撮った写真の再生画面。緑色の枠が選択した測距点の位置を示している。MFや+MFモードではこの測距点マークは表示されない
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拡大表示+コントラストAFの“どこでもAF”で撮るとこんなふう。もちろん、測距点のない場所でもOK。11点の測距点に縛られないAF撮影が可能なので、三脚撮影時に便利だ
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こちらはハイブリッドAFを選択したときの表示。最終的には位相差AFでピントを合わせるため、位相差AF用測距点の位置でのコントラストAFとなる
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ハイブリッドAFで撮った写真の再生画面。位相差AFでピントを合わせた場合は測距点表示が赤色になる
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 それともうひとつ。コントラストAFに対応していないレンズでも、拡大表示中はコントラストAFが使えてしまう。
 
  もちろん、全画面表示状態でもコントラストAFは作動する。が、これはあくまで予備的動作であって、本命はシャッターが切れる直前の位相差AFである。シャッターボタンを全押しするとミラーが下がって位相差AFが作動し、合焦後再度ミラーが上がってシャッターが切れる。コントラストAFも作動はするものの、ピント合わせは位相差AFなのである。つまり、位相差AFなしでは撮れないということだ。
 
  一方、拡大表示中は、全押ししても位相差AFは作動しない。取扱説明書の記述どおりである。つまり、コントラストAFのみでピント合わせができるというわけだ。
 
  これはちょっと面白い。コントラストAFが使えないはずのレンズでも、コントラストAFが使えてしまう。しかも、画面のどこででもピント合わせができる“どこでもAF”で、である。
 
  さて、一度情報を整理しておこう。まず、コントラストAFに対応したレンズを装着している場合、ライブビューの全画面表示の状態でシャッターボタンを半押しするとコントラストAFが作動し(同時に手ブレ補正も作動する)、全押しするとシャッターが切れる。このとき、AEL/AFLボタン(またはFnボタン)を押してもコントラストAF作動となる。合焦後指を離さずにシャッターボタンを押すとフォーカスロックのままシャッターが切れる。
 
  で、拡大表示の状態ではシャッターボタンの半押しまたはAEL/AFLボタン(またはFnボタン)押しでコントラストAFと手ブレ補正が作動、全押しでシャッターが切れる。このとき、ピントが合うのは拡大表示している部分であり、これは再生時の測距点表示を見れば確認できる。
 
  次に、コントラストAFに対応していないレンズの場合である。ライブビューの全画面表示の状態でシャッターボタンを半押しすると、コントラストAFと手ブレ補正が作動して合焦マークも点灯する。が、シャッターボタンを全押ししたときに位相差AFが作動し、合焦してからシャッターが切れる。つまり、コントラストAFは作動するだけで、ピントが合っていようがいまいがおかまいなしに位相差AFで合わせなおすわけだ。
 
  このとき、AEL/AFLボタン(またはFnボタン)を押すと、なぜか位相差AFが作動する。ミラーが下がって位相差AFでピント合わせを行なって、合焦後ミラーが上がってライブビューに復帰する。ボタンから指を離さずにシャッターボタンを全押しすれば、フォーカスロックのまま(つまり、全押し後の位相差AF作動を行なわずに)シャッターが切れる。
 
  これはこれで面白い。カスタムメニューのAEL/AFLモードを「mode 3」や「mode 4」に設定(シャッターボタン半押しでAF作動を行なわない“親指AF”である)していると、コントラストAFは使えなくなってしまうのだ。
 
  で、今度は、拡大表示の状態でシャッターボタンを半押しすると、コントラストAFと手ブレ補正が作動して、合焦マークが点灯する。シャッターボタン全押しでシャッターが切れる。位相差AFは作動しない。この動作はAEL/AFLボタン(またはFnボタン)を押しても同じ。つまり、コントラストAFに対応していないにもかかわらず、コントラストAFによる“どこでもAF”が可能なわけである。
 
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手持ちのレンズでピント精度のチェック中。コントラストAF対応レンズでは合焦マークが緑丸だが、コントラストAFに対応していないレンズだと合焦マークが中抜けの緑丸に変わる
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 ただし、実用性があるかどうかはけっこう微妙だと思う。というのは、コントラストAFに対応していないレンズでコントラストAFをやるとAF駆動スピードが遅いせいで“待たされ感”の分ストレスも大きい。ようは、イライラするんである。MFでピント合わせをやったほうがよほど手っ取り早いのではないかと思えるくらいに、である。
 
  それともうひとつは、取扱説明書に書かれていないということ。もしかすると、十分なピント精度が得られないレンズとか条件とかがあって、だから機能としては装備しているものの、公式にはアナウンスしていないという可能性も否定はできない。AFは動きはするが、期待どおりの結果が得られるかどうかはわからない。つまり、使ってもいいけど、ピントがきちんと合うかどうかの保証はしませんよ、という意味である。当然、筆者も責任は負いかねるのであしからず。
 
  と書くだけだと無責任な気もするので、手持ちのレンズで試してみた。コントラストAF対応レンズはZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6と同ED 40-150mm F4-5.6の2本。非対応レンズは同ED 12-60mm F2.8-4 SWDと同ED 50mm F2 Macro、それからシグマのAF APOマクロ150mm F2.8 EX DG HSMと10-20mm F4-5.6 EX DC HSMの計6本である。 
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
 - 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  
 
 
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“どこでもAF”を使い、ED 50mm F2 Macroで撮ったカット。繰り出し量の大きなレンズなので、コントラストAFはとっても時間がかかる。でも、ピントは正確
 ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
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シグマのAPO Macro 150mm F2.8だけはボケボケなのに合焦マークが点灯した。引きがない条件で撮っているので、望遠レンズはかなりアップに
 シグマAPO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 150mm
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 結果は、シグマのAPO 150mm F2.8 Macroだけは明らかにピンボケにしか見えないのに合焦マークが点灯した。これは何回繰り返しても同じだった。また、ED 40-150mmもピントが合わないことがあった(シャッターボタンを半押ししなおすと合焦することも多かったけど)。それと、ED 50mm F2 Macroのような繰り出し量の大きなものはレンズの駆動量が長い分時間がかかるので、MFの方がかえってイライラしない可能性が高いと思う。
 
  まあ、位相差AFだとピントがちょっとあやしい気がするだけに、この“どこでもAF”は役立ってくれるかもしれない。とかなんとか言いながら、本音は取扱説明書に載っていない機能を見つけて(偉そうに書いてるけど、ホントは自分で発見したわけじゃない。ある人に教えてもらっただけなのだ)うれしくて吹聴してるだけだったりするのだ。
 
 
 
 
 
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これは位相差AFで撮ったカット。ED 12-60mmとかに比べるとちょっとシャープさは落ちるからわかりづらいけど、やや前ピン気味な感じがする
 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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こちらは手持ちのライブビューで撮影。低いアングルから路地の車止めをねらってみた。コントラストAFは合焦までに時間がかかるのが難点だけれど、画面を見ながらピント合わせができるのはメリットだ
 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
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地面にカメラバッグを置いて、その上にカメラを持ったヒジを載せてライブビュー撮影。位相差、コントラストAFともになんとなくピントがあやしい気がしたから拡大表示+MFで、プルプルする画面を見ながらピント合わせ。でも、ちょっとアマい気がする
 ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 150mm
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フィアットは自動車のメーカーです。カフェも始めるそうです
 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm
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こちらはホンダのお店……じゃありません。看板と言っていいのかどうか微妙だけれど、目を惹くのは間違いない
 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm
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国立新美術館。撮影距離でフォルムが違って見えるのが面白い。でも、繰り返しパターンの苦手なオリンパスのAFにはちょっとツライ被写体だったりする。手前の屋根にピントを合わせたから大丈夫だったけど
 ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F8 / +1EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm
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東京ミッドタウン。街灯の形が面白い。べた曇りで地味地味ですけど
 シグマ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 10mm
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屋根を支える鉄骨はごついんだけどスマート。
 シグマ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F10 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 10mm
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こういうのは前もってピントやフレーミングを決めておいて、人どおりが切れる瞬間を待って撮る。10分待って1枚撮って、アングル変えてと思ったときにはもう人が来て撮れなくなっちゃったりする
 シグマ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 10mm
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帯に短したすきに長しの純正広角の隙間にぴったりおさまるのがこのシグマ10-20mm。最近のお気に入りレンズである。
 シグマ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 10mm
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原宿からぶらぶらしはじめて最後は六本木。天気がいいときれいなんですけど。ライブビューを多用したせいもあって、バッテリーが早めにダウンである
 シグマ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / 3,648×2,736 / 1/80秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 10mm
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ビルの屋上のでっかいパラボラアンテナ。ピントが心配だったけれど合ってくれていた。
 ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 / 3,648×2,736 / 1/100秒 / F7.1 / +1EV / ISO100 / WB:オート / 150mm
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■ URL 
  オリンパス 
  http://www.olympus.co.jp/
 
  製品情報 
  http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e520/
 
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(E-520) 
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#e520
 
  オリンパスE-520関連記事リンク集 
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/05/20/8468.html
 
 
 
			
 
北村智史 (きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。
ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/ |  
 
 
2008/06/25 00:04
  
 
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