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ペンタックスK20D【最終回】
便利な諸機能と新DA★レンズを紹介

Reported by 中村 文夫


 4月にスタートしたK20Dの長期リアルタイムレポートも、ついに最終回。今回は新製品のDA★(スター)レンズ2本の実写レポートと、これまで紹介できなかった基本機能や小技を紹介することにしよう。


DA★ 300mm F4 ED [IF] SDM(左)とDA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM DA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM

2つの単焦点DA★レンズ

 6回目のレポートで紹介した通り、★(スター)の名を冠したDAレンズは諸収差を徹底的に排除、絶対性能を追求した高品位レンズだ。

 今回、撮影に使用したDA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM とDA★ 300mm F4 ED [IF] SDMは、ED(特殊低分散ガラス)を使用。望遠レンズで問題になる色収差の低減を図っている。IFはインナーフォーカスの意味で、レンズ内部の光学系を移動させてフォーカシングを行なう方式のこと。移動する光学系の質量が小さいのでAFの高速化が図れる上、レンズの全長が変わらないので、手持ち撮影時にバランスが崩れない。さらに超音波モーター(SDM)の採用で、オートフォーカスの静音化も実現している。

 このうちDA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDMは、35mm判の307mmに相当する望遠レンズ。フィルム時代に好評を博したFA★ 200mm F2.8 ED (IF)を、デジタル向けに設計し直した製品である。旧レンズの描写をデジタルで再現したという意味では、ほかのDA★レンズと一線を画す製品である。

 描写は旧タイプに比べるとカリッとしているが、ボケ味が軟らかく見かけ上の被写界深度が浅く感じられる。そんな意味では、昔のサンニッパ(300mm F2.8)に近いのかも知れない。また最短撮影距離も1.2mと短く、花の接写などにも威力を発揮する。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/ダイナミックレンジ拡大/カスタムイメージを表します。


最短1.2mまで寄れるので、望遠マクロとしても利用価値が高い
DA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/1,600秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 200mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)
絞りを1段絞っているが、全体に柔らかさが残っている。ボケ味も非常に美しい
DA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 200mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)

とても透明感があり爽やかな描写だ(ファインシャープネス:オン)。
DA★ 200mm F2.8 ED [IF] SDM / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/2,000秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 200mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)

 一方ペンタックスの300mmとしては、フィルム用のFA★レンズで開放F値を4.5に抑えたコンパクトな製品に定評があった。デジタル用のDA★ 300mm F4 ED [IF] SDMは、開放F値がF4と少しだけ明るい。そのためFA★に比べるとやや大きくなったが、他社の同スペックの製品に比べるとコンパクトに仕上がっている。設計上、色収差を抑えることに重点が置かれており、そのためにEDレンズを2枚使用している。最短撮影距離は1.4mで、近接性能はトップクラスだ。


DA★ 300mm F4 ED [IF] SDM

着脱式の三脚座はアリミゾで固定する方式。レンズ鏡筒側には2つの凹みがあるだけなので、三脚座を外してもデザインが崩れない


 このレンズは着脱式の三脚座を備えているが、デザイン上、非常に凝った作りになっている。これまでのペンタックス製レンズの場合、三脚座を外すと、どこか情けないスタイルになる製品が多かった。これは取り付け用ネジが露出してしまうことが主な原因である。

 そこで、このレンズでは取り付け部にアミリゾ式を採用。三脚座を外しても、わずかな凹みが見えるだけで、とてもスッキリしたデザインになった。特にペンタックスKシリーズの場合、ボディ内手ブレ補正機構を装備しているので、当然、手持ちで撮影する機会が増える。この意味でも良く考えられたデザインと言えるだろう。


ハナショウブの紫と緑のコントラストが美しい。ある程度絞るとボケが落ち着くようだ(ファインシャープネス:オン)
DA★ 300mm F4 ED [IF] SDM / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 300mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)
日陰で撮影すると柔らかなトーンになる(ファインシャープネス:オン)
DA★ 300mm F4 ED [IF] SDM / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 300mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)

充実した再生機能

 K20D本体のスライドショーは画像がオーバーラップして切り替わる方式だ。カタログなどで触れられていないので最初のうちは気付かなかったが、高級機にふさわしい小技の利いた仕様である。特に大型のテレビモニターなどで画像を鑑賞するときに便利な機能と言えるだろう。

 ひとつ残念なのは、出力が通常のビデオ型式のみであること。ソニーα700のようにハイビジョン出力ができると、さらに魅力的なものになったと思う。

 このほか再生機能関連では、2枚の画像を並べて表示する画像比較機能が追加されている。画像再生中にFnボタンを押し、次にOKボタンを押すと画面が2分割表示に変化。前ダイヤルで比較する画像を選び、OKボタンを押すと、両方のの画面がグリーン枠で囲まれる。この状態で後ダイヤルを操作すると画面が拡大。十字キーを操作すれば、拡大した部分の移動も自由自在だ。さらに不要な画像を消去することも可能。相前後して撮影した類似カットを比較し、その場でベストカットを選ぶことができる。


2分割表示を選ぶと、画像の中央がトリミングされた形で同じ画像を表示。前ダイヤルの操作で緑の枠で囲まれた画像の選択ができる。後ダイヤルを操作すると画像の拡大が可能 OKボタンを押すと2画面が緑の枠で囲まれ、両画面をシンクロできる


シンクロさせた状態で後ダイヤルを操作すると表示倍率が変化。十字キーで拡大部分の移動ができる

もういちどOKボタンを押すと片方だけが緑の枠で囲まれ、選択した画面の操作ができる


サードパーティ製レンズにも利用できるAF微調整機能

 AF微調整機能はレンズごとに微妙に異なるピント位置を調整する機能だ。レンズ個別に調整できるほか、すべてのレンズのピント位置を一律に調整することができる。個別に調整できるレンズの本数は20本まで。これを越えると登録の旧い順にデータが消されてゆく。通常の使い方では、まったく問題ならない本数だが、長い間にデータが蓄積されるような使い方は避けるべきだ。また同じ種類のレンズが複数ある場合は、すべて同じレンズとして認識される。

 個別に調整できるレンズは、ボディ側でレンズIDが認識できる製品に限られる。要するにレンズ内にROMを内蔵したAFレンズならOKということだ。試しに手持ちのサードパーティー製レンズで実験してみたところ、ちゃんと調整することができた。

 私のこれまでの経験だと、超広角レンズで微調整が必要になることが多い。これは焦点距離が短いと、わずかにレンズを繰り出しただけでピントが大きくずれるからだ。*ist Dを使い始めたとき、広角ズームとしてシグマ12~24mm F4.5-5.6 EXを手に入れたが、AFだと見事なまでに前ピンになり、完全にお手上げだった。結局、相性が悪いということで、それ以来、お蔵入りになっていたが、K20DのAF微調整機能のお陰で、ようやく現役に復帰させることができた。

 なお調整するときは、カメラを三脚に固定。ピント位置調整と試写を繰り返し、慎重に作業を進める必要がある。ちょっと面倒な作業だが、手ブレしていないにも関わらずシャープな像が得られないときは、この微調整機能を試してみるとよいだろう。


AF微調整機能はカスタムファンクションのメニューから設定する

すべてのレンズを一律に調整できるほか、レンズごとに設定することが可能


ゴミの有無が即座に確認できるダストアラート

 ダストアラートは撮像素子に付いたゴミをモニターに写し出す機能だ。K20Dはセンサーを振動させてゴミをふるい落とすダストリムーバル機構を内蔵しているが、100%ゴミの付着を防ぐことは不可能。特に私はレンズ交換を頻繁に行ないながら撮影するタイプなので、絶えずゴミの危険に曝されている。しかしダストアラートを使えば、撮影の合間にゴミのチェックが可能。大抵のゴミは手動でダストリムーバルを作動させれば落とすことができるし、それでもだめな場合はブロアーで吹き飛ばせばよい。とにかくゴミが見えるということは精神的なも安心感にもつながり、心地良く撮影が楽しめる。

 ダストアラートが利用できるレンズはレンズ内にROMを内蔵したAFレンズのみ。これはゴミを検出しやすいよう最小絞りで露光を行なうからだ。またこの機能を利用する際は、無地の被写体にレンズを向けるてシャッターを切るのが鉄則。形のあるものが画面に写り込むとゴミと区別できなくなるからだ。

 さらにモニターに写し出されるゴミは、輪郭が強調され見やすくなっているうえ、天地が逆に表示されるため、CCDのどこにゴミが付いているのが分かりやすい。またゴミが写った画像は、SDメモリーカード内のDUST.JPGというファイルに記録されるので、PCの画面で見ることも可能。手動ダストリムーバルやブロワーで落ちないゴミをイメージセンサークリーニングキットを使って取り除くときに役に立つ。


ダストアラートは詳細設定のメニューから選択。レンズを無地の被写体に向けてシャッターを切るとゴミの状況を示す画面がモニターに表示される マウントのイラストの中に画面が表示されるので、どこにゴミがあるのかがすぐに分かる


画素欠損を補間するピクセルマッピング機能

ピクセルマッピングは詳細設定のメニューから選択する
 ピクセルマッピング機能は、CMOSセンサーの画素に欠損が生じた場合に、補間処理をする機能。今のところ利用する機会はないが、いずれお世話になるときがやって来るだろう。

 ただK20Dは画素数が多いので、よほど大きなサイズに画像を拡大しない限り画素の欠損になかなか気付かない。保険の意味で定期的にピクセルマッピングを行なっておけば、トラブルを未然に防ぐことができる。


高感度とノイズリダクションの検証

 K20Dはペンタックスのデジタル一眼レフカメラで初めて、ISO6400までの高感度を実現するとともに、高感度時のノイズリダクションの調整が可能になった。これまでこの点に触れる機会がなかったので、最後に実例をお見せしてこのレポートを締めくくることにしたい。


ISO3200までが通常の使用範囲。ここから6400までは拡張機能扱いだ

高感度NRは、なし、微弱、弱、強から選ぶことができる


●感度による変化

 ISO800からノイズが現れ始め、ISO1600を越えるとかなり目立つようになる。最高の6400では、非常にざらついた感じになる。

共通データ:DA 16-45mm F4 ED AL / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 4~8秒 / +1EV / WB:オート / 28mm / カスタムイメージ:ナチュラル

※すべて高感度NRオフ


ISO100 F4 ISO200 F5.6


ISO400 F8 ISO800 F11

ISO1600 F16 ISO3200 F22

ISO6400 F22

●高感度ノイズリダクションによる変化

 ノイズリダクション強弱は実サイズ表示でなんとか確認できる程度と非常に微妙。ノイズリダクションを強く設定するにしたがい、水面のディテールが失われてゆく傾向がある。

共通データ:FA★ 80-200mm F2.8 ED [IF] / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/2秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO800 / WB:オート / 200mm / カスタムイメージ:ナチュラル


高感度NR:なし 高感度NR:微弱

高感度NR:弱 高感度NR:強


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d
  ペンタックスK20D関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/06/16 14:16
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