K20Dに使われているCMOSセンサーは、回路部分を微細化することでフォトダイオードの間隔を狭め、画素数が増えたにも関わらず大きな受光部を確保。さらに回路の高さも低く抑えられている。そのためマイクロレンズの間隔も狭くなり、斜めから入射する光も無駄なく捉えられるようになった。
この結果、フィルム時代の旧いレンズを使用しても良好な結果が得られるという。今回は、これを検証してみることにしよう。
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/ダイナミックレンジ拡大/カスタムイメージを表します。
- 強調のため、一部の撮影データを1行目に抜粋した箇所があります。
■ SMC Pentax 15mm F3.5
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SMC Pentax 15mm F3.5
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最初に選んだのは、SMC Pentax 15mm F3.5。フィルムカメラの時代に発売されたレンズの中でいちばん焦点距離が短い製品だ。初代の製品は1975年にねじ込み式のSMCタクマーレンズとして登場。マウントをバヨネット式に変更した後も、SMC Pentax、SMC Pentax-Aレンズに引き継がれ、つい最近まで現役だった。
今回撮影に使用したのは、非球面レンズを使用した初期のタイプだ。フィルムで使用した場合、周辺光量不足は目立つが、絞り開放からシャープな像が得ることができる。だが、今回、K20Dに使用してみたところ、絞り開放ではシャープさに欠け、全体に甘い像になってしまった。F5.6以上に絞るとシャープさが増すが、K20Dとの相性はあまり良くないようだ。
遠景を撮影した場合、絞り開放だとシャープさのない画になるが、近景だとそれほど差は出ない。遠景の作例では、空から射し込む光によりフレアが発生し、画質の低下を招いているのではないだろうか。
●遠距離
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F3.5(絞り開放)
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/1,000秒 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:風景
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F5.6
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/640秒 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:風景
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F8
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/400秒 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:風景
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●近距離
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F3.5(絞り開放)
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/400秒 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オフ / カスタムイメージ:ナチュラル
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F5.6
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/80秒 / 0EV / ISO200 / WB: / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オフ / カスタムイメージ:ナチュラル
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F8
15mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/160秒 / -0.3EV / ISO200 / WB: / 15mm / ダイナミックレンジ拡大:オフ / カスタムイメージ:ナチュラル
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■ SMC Pentax Shift 28mm F3.5
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SMC Pentax Shift 28mm F3.5
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このレンズはアオリ機構を内蔵、シフトとライズができる。アオリを使用すると、斜めの方向からCMOSセンサーに光が当たり、デジタルカメラにとって、かなり厳しい条件になる。
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ライズ(レンズを上方に移動)して撮影。この場合、画面上方には、かなり急な角度で光が射し込んでいるはずだが、画面の上下で画質の差はほとんどない。このことからK20DのCMOSは斜めからの光に強いことが分かる
Shift 28mm F3.5 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/8秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 28mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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ライズあり
Shift 28mm F3.5 / 3,104×4,672 / マニュアル露出 / 1/6秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 28mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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ライズなし
Shift 28mm F3.5 / 3,104×4,672 / マニュアル露出 / 1/6秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 28mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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■ SMC Pentax M 20mm F4
コンパクトさを優先して設計された超広角レンズ。DA 21mm F3.2 AL Limitedと比較しても、まったく遜色ない画質が得られた。フルサイズだとディストーションが目立つレンズだが、APSCサイズなら、ディストーションもほとんど目立たなくなる。
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M 20mm F4 / 4,672×3,104 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F8 / +0.7EV / ISO400 / WB:オート / 20mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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DA 21mm F3.2 AL Limited / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 21mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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■ SMC Pentax-A Macro 50mm F2.8
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SMC Pentax-A Macro 50mm F2.8
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このレンズは私のお気に入りで、すでに本レポートにも何回か登場している。最大撮影倍率は1/2倍で、倍率を低く抑えてあるのでコンパクトで持ち運びに便利。さらにフローティング機構の採用により近距離から無限遠まで高い性能を示す。
もともとマクロ撮影時はMFで撮影することが多いので、AFが使えなくても全然不便は感じない。デジタルカメラの露出計との相性が良く、露出補正なしで撮影できる点も気に入っている。作例を見れば分かるように、K20Dに組み合わせると非常によい結果が得られる。
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開放付近で撮影すると柔らかめの描写になる。K20Dの場合、これまでのボディに比べ、その傾向が顕著になるようだ
A Macro 50mm F2.8 / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 50mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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F5.6まで絞るととてもシャープになる
A Macro 50mm F2.8 / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO400 / WB:オート / 50mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:鮮やか
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■ SMC Pentax-A★ 85mm F1.4
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SMC Pentax-A★ 85mm F1.4
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大口径中望遠レンズとして、今でも絶大な人気を誇っている。フィルムの場合、開放からシャープな像が撮影できるが、K20Dだと軟調な描写になる。
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コントラストが低めで、木漏れ日の部分にパープルフリンジが発生している。K20Dと組み合わせると、意外にクセ玉であることが分かる
A★ 85mm F1.4 / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F1.4 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / 85mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)
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2段絞っても柔らかさが残っている
A★ 85mm F1.4 / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 85mm / ダイナミックレンジ拡大:オン / カスタムイメージ:雅(MIYABI)
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■ まとめ
*ist Dに始まり、これまでペンタックス製デジタル一眼レフカメラのほぼ全機種を使ってきたが、旧レンズを組み合わせて、ここまでレンズの特徴がはっきり現れる機種は初めて。旧いレンズはどれも個性的だが、K20Dに組み合わせると、長所、短所を含めて、その個性が増幅されるようだ。
さらに同じレンズでも、日陰と晴天下など、光線の条件が変わると画像の雰囲気も大きく変化する。また旧いレンズはデジタルカメラを考慮した設計になっていないが、特に前玉が大きなレンズの場合、レンズ内で発生したフレアが画質に大きな影響を与える傾向が強い。
いわばK20DのCMOSセンサーは、わずかにステアリングを切っただけで機敏に反応するレーシングカーのようなもの。斜めから入った光を最大限に利用するだけでなく、レンズが作った画像を忠実に再現する特徴も併せ持っている。レンズの個性を楽しむという意味で、これほど撮り甲斐のあるボディはほかにないだろう。
■ URL
ペンタックス
http://www.pentax.co.jp/
製品情報
http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
新開発CMOSセンサーについて
http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/feature.html
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d
ペンタックスK20D関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html
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中村 文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2008/06/09 13:51
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