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キヤノンEOS Kiss X2【最終回】
エントリー機として申し分のない完成度

Reported by 野下義光

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


 さて、ついに最終回です。このカメラを連載途中で自腹で購入してしまった最大の理由、それはライブビューのコントラストAFです。

 キヤノンのデジタル一眼レフカメラとしてEOS Kiss X2が初搭載となるこの機能は、ライブビューの画像、すなわち撮像素子の像そのものを利用してコントラスト検出でAFを行なうものです。


ライブビューとコントラストAFは物撮りを非常に楽にしてくれます。ボディの「canon」のロゴにAFエリアを移動してピントを合わせました(EOS Kiss X2で撮影。以下同)
EF-S 55-250mm F4-5.6 IS / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 8秒 / F16 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 84mm
レンズキットの標準ズームを最大に伸ばした状態です。ストロボが発光していますが、これは被写体と撮影側両方のカメラをセルフタイマーにして、撮影側を一瞬早めにシャッターを押すと撮れます。オークションに出品する場合、こんなカットも載せるとより高値がつくかもしれません
EF-S 55-250mm F4-5.6 IS / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 8秒 / F16 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 70mm

 間近にあるPCのモニターで大画面で写真を鑑賞するのが当たり前になった昨今、ピント精度への要求は非常に高まりました。通常のTTLの位相差AFでも十分な精度はあるものの、すべての場面でパーフェクトではありません。例えばカメラとレンズの個体同士のマッチングの問題(一部の機種にはレンズとボディをアジャストメントする機能が設けられている)、光源の色温度の問題(色温度が低い光源、例えばタングステン光などでは位相差AFあるいは光学ファインダーで完璧に合わせたとしても実際に写る画像はピントがずれてしまう。EOS Kiss X2には光源の色温度による誤差を自動補正する機能が設けられてはいるがパーフェクトとは言い切れない)などなど、位相差AFではどうしても誤差が生じてしまう場面もあります。

 しかし、ライブビューによるコントラストAFは、レンズとのマッチングも光源の色温度による誤差も原理上発生しません。さらにEOS Kiss X2はどんなに多点測距のデジタル一眼レフよりも、測距エリアが画面の大部分をカバーでき、より細かいエリアに絞ることもできます。

 なので、位相差AFではピントに誤差が出てしまったり、測距点の都合でフレーミングが制限されたり、ピントを合わせた後フレーミングを変えたりなどの弱点が、ライブビューのコントラストAFで補えるのではないだろうか思った次第です。

 この機能は今後新たに登場するキヤノンのデジタル一眼レフにも搭載されるとは思いますが、まずはEOS Kiss X2で実戦投入し、現在試しているところです。

 筆者が専門とするポートレートでのメイン機はEOS-1D Mark IIIであり、通常EOS Kiss X2の出番はありません。しかし、EOS Kiss X2のコントラストAFが有効だと思われる場面では、積極的に使用しています。

 EOS-1D Mark IIIにもライブビューがあり、AFでピントに誤差が生じる場合や、ピントを合わせたい位置に測距点がない場合などで利用しています。しかしEOS-1D Mark IIIのライブビューはMFだけで、レンズによってピントリングの感触が著しく異なるため、これがけっこう大変なのです。

 EOS Kiss X2のコントラストAFなら、どのレンズを装着しても使用感は変化しません。ただピントが合うまでの時間が位相差AFより時間がかかってしまうので、使用するのはモデルが寝そべったポーズなど、ほとんど動きのないシチュエーションに限られてしまいます。それを考慮しても、ピント精度も現場の効率も、なかなか上々です。


カスタムファンクションで「ライブビュー撮影中のAF」を「ライブモード」に設定すると、コントラストAFが使用できます。ちなみに「クイックモード」とは、ライブビューを一旦中断してミラーを戻し、AFセンサーによるTTL位相差AFでピント合わせを行なう機能です 背面のAEロック/FEロックボタン(*のボタン)を押し続けると、コントラストAFでピント合わせの動作をします。合うまで押し続けなければならないので、多用すると指が痛くなりました。ボタンを押したら指を離しても勝手にピントが合うまで動作してくれる方が使いやすいと思います

測距エリアは小刻みに動かすことができます。ピントが合うとAFエリアの白枠が緑に変わり、「ピピッ」という音が出ます。またIS付きレンズの場合はAF中にISが働き、より高精度にピントを合わせようと努めているようでした


実際に撮影した写真
EF 100mm F2.8 Macro USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/5秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 100mm
実際に撮影した写真
EF 100mm F2.8 Macro USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/5秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 100mm

 もちろん、現状のコントラストAFは万能ではありません。まず、ピントが合うまでの時間が長い。EF 100mm F2.8 Macro USMでの実測時間は、あらかじめピントリングを無限遠にした状態で、ほぼ最短撮影距離の位置にピントを合わせるのに15秒。極端に時間がかかる場合をわざわざ作ったケースですが、一旦ピントを合わせてから、再度ピントを合わせると1.5秒になりました。位相差AFでは一旦ピントを合わせた後、再度ピントを合わせるとそのまま合焦サインが出て、全くレンズが動かない場合もありますが、コントラストAFでは常に相対的に最大のコントラストが現れる位置を探っている様子で、すでにピントが合っていても、AFを作動させるたびにピントを合わせ直す動作をします。

 また、極端に暗い場所やコントラストが低い被写体には、ピントを合わせることができません。ただ位相差AFや光学ファインダーでのMFでも合わせられないような場面なので、コントラストAF特有の弱点とは言えないでしょう。なお、EOS Kiss X2のコントラストAFでは、レンズの最短撮影距離を越えて近づいた場合など、何らかの理由で合焦できなかったとき、AFエリア枠が赤色になって知らせてくれます。

 まだまだ使い勝手の悪いところもありますが、位相差AFと使い分けることで、より一層高精度なピント合わせができる期待があります。

※第2回以降、人物と動体以外は全てコントラストAFでピントを合わせています。バックナンバーもご参照ください。


AFエリア内(緑の枠内)のコントラストが最大になるような制御を行なっている様子です。エリア内の被写体に奥行きがある場合、必ずしも意図した場所に合うとは限りません 眼に合わせたかったのですが、鼻に合ってしまいました
EF 100mm F2.8 Macro USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/2.5秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 100mm

ライブビュー表示を拡大させるとAFエリアも狭まり、ピンポイントで意図した場所にピントを合わせられます


10倍拡大でAFエリアを眼に合わせ、意図した眼にピントが合わせられました
EF 100mm F2.8 Macro USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/2.5秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 100mm

総評

 約2カ月間使用した感想ですが、EOS Kiss X2は大変楽しいカメラです。初心者にも使いやすく、ベテランの要求にも応えられる性能を持ち、小型軽量で価格も手頃。エントリークラスとしては申し分なく、非常に完成度の高いカメラだと思います。特殊な分野を除けば、ほぼ万人に自信を持ってお勧めできます。

 デジタル機器の宿命ゆえ、またさらに新型が出てしまうと陳腐に見えるようになるかもしれませんが、写真は目の前の今、この瞬間しか撮ることができません。当面はこのEOS Kiss X2でファミリーフォトを楽しみ、またコントラストAFの実験機として業務にも実戦投入していくつもりです。


約2ヶ月試した結果の「EOS Kiss X2設定集」(一部)


筆者が登録したマイメニュー

RAWでも適用される「高感度撮影時のノイズ低減」は、基本的に「する」。ただ連続撮影枚数が2枚になってしまうので、連写したい場合のみ「しない」に設定


「高輝度側・階調優先」。メリハリのない眠い画像になりがちなので、通常は「しない」。ただ非常にコントラストが高い被写体では「する」に設定

日常のファミリーフォトは記録画質「Lファイン」。誕生日などの行事や業務では「RAW」。「カードなしレリーズ」は「しない」


業務では16GBなどの大容量メディアが中心となったので、使わなくなった2GBのSDメモリーカードをEOS Kiss X2用にしました。データはHDDにも移しますが、複数のHDDに多重にバックアップするのではなく、SDメモリーカードそのものをそのまま保存(バックアップ代わり)にするつもりです



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissx2/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS Kiss X2)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#eos_kiss_x2
  キヤノンEOS Kiss X2関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7809.html



野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2008/06/05 19:08
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