ペンタックスのレンズラインナップの特徴として、Limited(リミテッド)レンズの存在が上げられる。Limitedシリーズに共通したコンセプトは、レンズの味を徹底的に追及したこと。数値的な高性能ではなく、撮ってよい結果が得られれば多少の収差があっても構わない、という独自の思想に基づいて設計されている。そのため実写を繰り返しながら、最高の描写性能を求めるという設計手法を採用。さらに鏡胴には金属部品を使用するなど、操作フィーリングや所有する喜びにも重点が置かれている。一方でペンタックスにはスターレンズというラインアップもあるが、こちらは絶対性能を追求したもの。Limitedシリーズとは対極に位置する高級レンズだ。
現在ペンタックスがデジタルカメラ用としてラインアップしているDA Limitedシリーズは全部で4本。今回は、これらのレンズで撮影した写真をお見せすることにしたい。
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/カスタムイメージ/ファインシャープネス(オン/オフ)を表します。
■ DA 21mm F3.2 AL Limited
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DA 21mm F3.2 AL Limited。左は専用フード
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DA 40mm F2.8 Limited次いで発売されたLimitedレンズの第2弾。35mm判に換算すると32mmに相当する広角レンズ。厚さはわずか25mmで、ボディに常時付けていても邪魔にならない。
専用フードはいわゆるフジツボ型の発展型で、効果を高めるため、内側に長方形のマスクが切ってある。ハイブリッド非球面レンズに加え、フローティング機構の採用により、近距離から無限遠までシャープな像が得られる。
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4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F13 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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■ DA 35mm F2.8 Macro Limited
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フードを伸ばした状態
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35mm判に換算すると53.5mmに相当する標準マクロレンズ。Limitedレンズ初のマクロレンズであるばかりか、APS-Cサイズ用標準レンズとしても初めての製品である。
ただし、このレンズは厳密な意味でマクロレンズではない。レンズ単体で等倍の接写ができる点に着目すれば立派なマクロレンズだが、設計段階でできるだけ最短撮影距離を短くしようと努力した結果に過ぎないのだ。これを如実に現しているのが、商品名の中のマクロの位置。マクロレンズとして設計されたDFAレンズの場合、DFAの後ろにマクロの文字が入っているが、このレンズの場合、F値の後ろにマクロと表記されている。あくまでもLimited内での位置付けは最短撮影距離の短い標準レンズなのだ。したがって文献の複写など、マクロレンズ本来の用途に使うと、それほどよい結果は得られないが、立体物を撮影すると最高の性能を発揮する。
AFレンズにしては珍しく、FREE(後群分離型フォーカシング)システムを採用。これは、ピント合わせの際に後群を固定したまま、前群だけを移動させてピントを合わせる方式で、近距離での像の劣化を防ぐメリットがある。MF時代の名玉として有名なA★ 85mm F1.4やA★ 135mm F1.8もこの方式だが、質量の大きな前群を移動させるこの方式はAFに不利なので、最近はあまり使われていなかった。だが、DA 35mm F2.8 Macro Limitedの場合、レンズ前群が小さいので、AFにもそれほど負荷が掛からずに済むというわけ。いわばA★レンズの流れを継承する正統派のLimitedと言えるだろう。
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絞り開放で撮影。背景のボケが自然で美しい
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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手前に写っている花をクローズアップ。レンズ交換することなく接写ができるので、機動性の高い撮影ができる
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/1,250秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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街角に設置された陶製の案内板を接写。前後のボケがなめらかめで、陶板の質感もよく再現されている
4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/3,200秒 / F3.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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背景が大きくボケているが、いわゆる「形の分かるボケ」なので、うるささを感じない
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/4,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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どちらかというと柔らかめの描写だが、ボケが自然なので、立体感を強く感じる
4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/640秒 / F3.5 / -1EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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ディストーションが良好に補正されているので建物を撮影しても直線が歪まず、気持ちのよい描写になる
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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■ DA 40mm F2.8 Limited
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DA 40mm F2.8 Limited
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DA Limitedシリーズとして初めて発売されたレンズ。もともとLimitedレンズはフィルムカメラ用レンズとして誕生したが、このときの最初の製品はFA 43mm F1.9 Limitedだった。この流れをDAレンズとして初めて継承したのが、この40mmだ。35mm判に換算すると61mm。標準レンズと中望遠レンズの中間に位置するユニークな焦点距離だ。鏡筒の厚みはわずか15mm。まさにパンケーキレンズの代表と言えるだろう。
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シャープなピントと自然なボケが特徴。WBオートで撮影しているが、日陰になっている家の壁面がやや青っぽくなり、デイライトタイプのカラーフィルムに近い発色になった
4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/1,600秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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開放からシャープな描写をするレンズだが、絞るとさらにシャープ感が増す
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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萌葱色の暖簾の色が鮮やかに再現された。まさに画像仕上げ「雅」の得意とする色だ。シャードー部の落ち込みも思ったより少なく、トーンがしっかり残っている
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■ DA 70mm F2.4 Limited
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DA 70mm F2.4 Limited
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35mm判で107mmに相当する中望遠レンズ。昔タクマーレンズの時代に105mm F2.8というレンズがあったが、これのデジタル版とでも形容すべき焦点距離だ。さらに開放F値もF2.4と明るく、被写界深度の浅い望遠レンズならではの描写も可能である。
特筆すべきは、望遠レンズでありながら、わずか26mmという薄さを実現したこと。付属の専用フードも非常に凝った作りで、収納時にかさばらないようスライド伸縮式になっている。
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非常に透明感のある画が撮れる。コントラストが高く、提灯が背景から浮かび上がって見える。ボケ味もクセがなく自然
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/640秒 / F2.4 / +0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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円筒形のボストのディテールが見事に再現され、立体感のある描写になった
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F2.4 / +0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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手前に柳の葉を入れて撮影。手前と奧では輝度差があるが、どちらも程よいトーンになり、雰囲気のある画になった
4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/1,250秒 / F2.4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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山車の形をした金属板に日光が反射しているので、この面がトビぎみになり、色収差が発生している。デジタルカメラにとっては厳しい条件だが、全体の雰囲気は悪くない
3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/4,000秒 / F2.4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / カスタムイメージ:雅(MIYABI) /ファインシャープネス:オン
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■ まとめ
初代の*ist Dからペンタックスのデジタル一眼レフカメラを使ってきたが、今回4本のLimitedレンズを使ってみて、つくづく感じたのは、「とてもフィルムに近い描写になった」ということだ。K20DとLimitedを組み合わせると、カラーリバーサルフィルムで撮影したときのイメージにかなり近くなる。特にシャドー部のねばりがとても強く、想像以上に持ちこたえてくれる。撮影中にカメラ本体のモニターで確認すると、ツブレているように見えても、PCのモニターで確認すれば、ちゃんとトーンが残っている上、プリントしても、ほとんど黒ツブレしない。また、これまでズームレンズを中心に撮影を行なってきたが、これに比べて単焦点レンズは、ヌケが良く透明感がある。
今回は4本の単焦点レンズだけを使って撮影したが、久しぶりに自分の足を使って被写体との距離を調節しながら撮影する感覚を思い出した。Limitedシリーズは、どれもコンパクトなので、全部揃えても小さなショルダーバッグに収まってしまう。ズームレンズに慣れてしまうとレンズ交換が億劫になるが、単焦点距離レンズだけで撮るのもたまにはよいものだ。
■ URL
ペンタックス
http://www.pentax.co.jp/
製品情報
http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d
ペンタックスK20D関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html
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中村 文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2008/06/02 13:10
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