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ニコンD300【最終回】
過去最高の満足度

Reported by 大浦タケシ


 購入から約半年となるD300だが、シャッターを切るたびに毎回感じさせられるのが、つくりのよさやカメラとしての質感の高さだ。普段使い慣れているキヤノンEOS 40Dも決して悪く感じられるところはなく、個人的には十分満足しているが、それよりさらに一段上回るように思われる。

 特に、事あるごとに述べているファインダーの見え具合やシャッターフィーリングなどは、ニコンのいう“DXフォーマットのフラッグシップ”に相応しいものである。ピントの山の把握しやすいファインダーは、MFニッコールで撮影を楽しむときにも実に使いやすい。倍率がさらにもう少し高いと完璧といえるものになることと思う。シャッター音にしても、使い始めは少しこもったような感じに聞こえたが、慣れると非常に心地よく感じられる。
 
 また、グリップの凹凸や左手のひらにあたる部分のボディ形状なども絶妙で、決して軽いカメラではないものの、実にしっくりとしたホールド感が得られる。これらは描写に直接関係ないところではあるものの、カメラとしてのつくりのよさを直感的にユーザーに強く知らしめるものといえる。操作性も然りで、ボタン、レバー類は多く、一見散漫に設置されているようにさえ思われるが、実際に使うとその存在やレイアウトは十分納得できる。


EOS 40D(右)と
 メニューの設定項目の多さにも、普段キヤノンを使う身には驚かされるものがある。このレポートでも紹介した「AF微調整」をはじめ、カスタムメニューのなかにあるダイヤルの回転方向やインジケーターの+/-の方の設定など、痒いところに手が届くような機能を数多く備える。キヤノンユーザーから見れば「あったらいいなぁ」と思える機能が盛りだくさんなのである。

 また、ニコンのよき伝統として、スクリーンを交換することなく、液晶により格子線をファインダーに表示できる機能なども備え、非常に使いやすい。けっしてニコンをひいき目に見ているわけではないが、ユーザーサイドに立った物づくりがなされた結果ともいえるだろう。発売後1~2年ほどで後継機がリリースされ古いカメラとなってしまうのは、カメラとしての完成度が高いゆえに、ある意味納得できないことといってよい。

 だが、D300の全てが手放しによいと感じているわけではない。特に気になっているのが、JPEGでの絵づくり。色乗りがちょっとよすぎるのである。光の状態や被写体によってはベッたっとした感じになりやすく、あまり好ましい感じに仕上がらない。好みもあるとは思うが、キヤノンの絵づくりに慣れた目には、より一層色乗りがキツく感じられ、不自然な描写に思われてしまうのである。

 いつも使う「スタンダード」のみならず素材性を重視した「ニュートラル」でさえもこの傾向があり、ピクチャーコントロール内の微調整機能で「色の濃さ(彩度)」を調整してみたりもしたが、ほとんど変わることがない。ポートレートや風景など色にコクを必要としたい場合などでは、これはこれで重宝しないわけでもないが、全てがこの絵づくりとなると少々不満を感じてしまうのである。

 ちなみに、ニコンのデジタル一眼レフ全てがこの絵づくりなのかと思っていたが、D3では同じ「スタンダード」でも素材性を意識しているためなのか、ここまで色乗りが強いように思われない。個人的な好みもあるところではあるが、絵づくりがもう少しあっさりしていて、Capture NXがもう少し使いやすかったら、仕事で使うメインカメラをD300に変更することを、真剣に検討していたと思う。
 
 とはいえミドルレンジクラスのデジタル一眼レフとして、D300は最高のパフォーマンスと仕上りでトップに君臨していることは間違いのない事実だ。発売から今日まで、多くのカメラ愛好家の興味を引きつけ、未だその人気が衰える気配はない。私自身も、これほどまでに満足度の高いカメラに出会ったことは未だかつてなかったといっても過言ではなく、購入してよかったと素直に思えてしまうほどである。名称に奇数の数字の付くニコンのカメラは、名機としての誉れが高いという逸話が実しやかに伝わるが、このカメラもどうやら例外ではなさそうだ。

※作例下の撮影データは、露出時間/絞り値/露出補正値/実焦点距離を表します。
※すべて4,288×2,848ピクセル、プログラムAE、ISO200、オートホワイトバランス、AF-S DX 17-55mm F2.8 G EDで撮影しています。
※サムネールをクリックすると、等倍の画像を開きます。


1/200秒 / F14 / -0.3EV / 55mm
1/200秒 / F14 / +0.3EV / 17mm

1/200秒 / F14 / +0.7EV / 17mm
1/400秒 / F10 / -0.3EV / 55mm

1/320秒 / F9 / 0EV / 55mm
1/500秒 / F9 / -0.3EV / 17mm

1/500秒 / F9 / -0.3EV / 35mm
1/500秒 / F9 / +0.7EV / 17mm

1/200秒 / F5.6 / +0.3EV / 55mm
1/500秒 / F9 / 0EV / 17mm


URL
  ニコンD300関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/08/24/6897.html



大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2008/05/28 00:27
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