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ペンタックスK20D【第5回】
可能性を感じるライブビューと高速連写

Reported by 中村 文夫


実は前回から、グリップラバーを交換したボディを使っている。このグリップはソリッドタイプのゴムでできていて、右手の薬指と小指の当たる部分に力を入れると、微妙に変形して手に馴染む。それからリモコン受光部の凹みに中指の先が触れると、ここが引っかかりとなり、カメラが存在感を主張する。最初はちょっと大きすぎて手に余る感じだったが、だんだん違和感がなくなってきた
 つい最近まで一眼レフのライブビューは構造上の理由から実現不可能とされてきた。だがライブビュー対応センサーの登場により、この問題が一気に解決。ライブビュー機能を搭載した機種が増え、もはやデジタル一眼レフの標準装備になりそうな勢いである。

 K20Dはペンタックスの一眼レフとして初めてライブビューを採用。一眼レフの場合、あくまでも光学ファインダーがメインだが、ライブビューファインダーを実際に使ってみると、ローアングル撮影をはじめ、さまざまなシチュエーションで役に立つ。一眼レフの必須機能とまでは言えないが、あると便利な機能であることに違いはない。

 またK20Dでは、このライブビュー機能を利用し、秒間21枚という超高速連写を実現。アイデア次第で楽しい使い方ができるペンタックスならではの機能と言えるだろう。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


K20Dのライブビュー

 K20Dでライブビューを利用するには、まずカスタムファンクションのプレビュー機能メニューでライブビューを選択。プレビューレバーを操作するとミラーがアップしてモニターに画像が写し出される。ライブビューの最大表示時間は3分で、これを過ぎるとミラーが自動的にダウン。カメラ内部の温度が上昇しすぎるとモニターに温度警告が出るほか、3分経過前でもミラーがダウンすることがある。

 AFは位相差方式のみ利用が可能。AF.Sモードを選び、AFボタンを押すとミラーがダウンしピントを合わせる。このとき注意すべき点は、AFが終わってモニターに画像が表示されるまでAFボタンから指を離さないこと。途中で指を離すと合焦前にミラーがアップしてAF動作が中断してしまう。当然のことながら、AF作動中はモニターがブラックアウトする。また後ろダイヤルを操作すると画像を4倍あるいは8倍に拡大表示できるので、MF時はこの機能を利用するとよいだろう。

 ライブビュー使用時は、通常よりタイムラグが長くなる。これはシャッターボタンを押すと、一旦ミラーをダウンさせるとともにシャッター幕を閉じ、そこから露光シークエンスが始まるからだ。したがってシャッターチャンスを優先するような撮影は不得意で、どちらかというとフレーミングを固定した撮影、たとえば風景や接写向きだ。


夕陽など非常に明るい被写体を撮影するとき、光学ファインダーを使うと眩しすぎて覗けないときがある。こんなときライブビューを使うと目を痛めずに済む。ただし日昼の太陽など極端に明るい被写体だとCMOSにダメージを与える可能性があるので避けた方がよいだろう 液晶モニターを4倍に拡大した状態。また後ろダイヤルを操作するとが画像を4倍あるいは8倍に拡大表示できる。なお、最大表示時間の3分の間、ボディ内手ブレ補正の動きもライブビューで確認できる

ライブビューで撮影
Relfex Zoom 400-600mm F8-12 / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/500秒 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光

三脚使用時に最大の威力を発揮

 いずれにしてもK20Dのライブビューは、光学ファインダーの補助的な位置付けだが、カメラを三脚に固定して接写に利用すると大きな威力を発揮する。

 特にライブビュー時は、液晶モニターにAFフレームとグリッドを表示させることが可能。光学ファインダーを使用したときに比べ、AFフレームの選択がすみやかにできる上、グリッドを利用すれば画面の水平出しが楽にできる。さらに画面の拡大機能を使えばピントの確認も容易。ローアングル撮影時でも、これまでのように屈み込んだ姿勢でファインダーをのぞかなくて済むのでとても便利だ。ローアングルに対応するだけなら、ファインダーアイピースにレフコンバーターを取り付けるという手もあるが、想像以上にファインダー倍率が下がる上、ひとみ径も小さくなるので、ファインダーがかなり見づらくなる。

 またK20Dの液晶モニターは固定式だが、視野角が広いので斜めから見ても意外なほど視認性が落ちない。これらの点を考慮に入れると、K20Dのライブビューは非常に実用的と言えるだろう。


ライブビューのキャプチャー画面(画面表示なし) ライブビュー時の画面表示は再生メニューで選ぶことができる


グリッドだけを表示させた状態

AFフレーム(SEL時)だけを表示させた状態。測距切り替えダイヤルでSELを選ぶと、十字キーで測距点を選ぶことができる


グリッドとAFフレームを同時に表示させた状態

後ろダイヤルを右へワンクリックすると画像が4倍に拡大される


ツークリックすると拡大倍率は8倍になる 十字キーの操作で拡大した部分が移動できる

ライブビューを使って撮影した写真。カスタムイメージ「鮮やか」、ダイナミックレンジ拡大オン
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,104×4,672 / 絞り優先AE / 1/25秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 38mm

秒間約21枚の高速連写機能

 ライブビューとともに搭載された機能に高速連写があげられる。これはシャッターを開いたまま秒間21枚の連写をするモードで、通常の連写性能をはるかに越えたスピードで撮影できる。このときの保存形式は1.6MのJPEGに固定。保存できるカット数はバッファメモリが一杯になるまでで、画質が★★★のとき最大約115枚の撮影ができる。

 撮影時間は6秒弱。意外と短い時間であり、バッファメモリの画像をSDメモリーカードに書き込むまで40秒ほど待たされるので使い道は限られる。だが静止画像から動画を作るソフトを使うと、短いながらもHDに迫る高画質でムービーを作成できる。特に一眼レフの場合、レンズを交換することで、家庭用ビデオムービーではできない特殊な表現ができるほか、縦位置画面の動画を作ることも可能。さらにフレーム数を減らせばスローモーションもOKとアイデア次第で楽しい使い方ができる。

  • 画像をクリックすると動画をダウンロードします。
  • 再生環境などの問い合わせには対応いたしません。ご了承ください。

    Relfex Zoom 400-600mm F8-12で撮影した画像を元に動画を作成。極端な圧縮効果を得ることができた。縦位置の動画も新鮮味がある
    115.7MB / 480×720ピクセル / AVI
    フィッシュアイレンズでも動画が作れる。使用したのはDA Fisheye Zoom 10-17mm F3.5
    115.7MB / 720×480ピクセル / AVI

    A Macro 50mm F2.8を使い、フレーム数を1/2に落としてスロー動画を作成
    115.7MB / 480×720ピクセル / AVI
    フレーム数を1/4に落として作成したスロー動画。コマ数が少ないのでギクシャクした感じだが、これはこれで面白い
    115.7MB / 720×480ピクセル / AVI


    ローリングシャッターで動感あふれる描写が可能

     K20Dに搭載された高速連写モードには、もうひとつの使い方がある。それはローリングシャッターの性質を利用し被写体の形を歪ませることだ。CMOSセンサーは、CCDのように全画面を同時に露光しているのではなく、ラインごとに順次露光してゆく方式を採用している。いわばフォーカルプレンシャッターの先幕と後幕の作用を電子的に置き換えているわけだが、この方式には高速で移動する物体を撮影すると形が歪むという欠点がある。実際には機械式シャッターを組み合わせることで、これを防いでいるが、シャッター全開の状態で露光をする高速連写モード時は、ローリングシャッターの特性が、そのまま現れてしまう。

     作例を見れば分かる通り、本来箱形であるはずの電車が大きく歪み菱形に写っている。これは画面の下から上へ向かってラインが移動しながら露光しているためで、電車の台車が写ってから屋根の部分が写るまでの間に、電車が前方へ進んだ結果だ。これはフォーカルプレンシャッターの幕速の遅かった時代に、よく問題になったことで、たとえば高速で疾走する自動車を横走りフォーカルプレンシャッターで真横から写した場合、自動車が走ってくる方向によって、自動車の全長が長く写ったり、短く写ったりすることと原理はまったく同じだ。

     この原理は古くから知られていて、なかでもフランスのカメラマン、J・H・ラルティーグが1912年に撮影した作品が有名である。この作品はカーレースを流し撮りしたもので、レーシングカーが平行四辺形に歪んでいるだけでなく、露光中にカメラを水平に移動させたことで観客の姿がレーシングカーと反対の方向に傾きスピード感溢れる描写になっている。幕速が極端に遅い当時のカメラで撮影したからこそ表現し得た作品だが、これに似た表現が最新のデジタルカメラでできるとは、まさに目からウロコが落ちる思いだ。

     なおこのケースでよりデフォルメ効果を強調するには、焦点距離の短いレンズを使い、できるだけ速いシャッターを切るとよい。また被写体までの距離が近い方がより高い効果が得られる。


    左から右へ向かって走る電車を撮影。画面の上下で露光に時間差が生じるため、電車の行き先表示板がオデコのように飛び出し、まるで劇画に出て来るような形になった。
    DA 16-45mm F4 ED AL / 1,536×1,024 / 絞り優先AE / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 19mm
    カメラを上下逆さまにして撮影。画面の上から下へ向かって露光しているので、こんどは電車の下側が飛び出す形になった
    DA 16-45mm F4 ED AL / 1,536×1,024 /マニュアル露出 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 16mm

    カメラ正方向
    DA 16-45mm F4 ED AL / 1,536×1,024 / マニュアル露出 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 16mm
    カメラ逆方向。垂直線の傾く方向が変わる
    DA 16-45mm F4 ED AL / 1,536×1,024 / マニュアル露出 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 16mm

     K20Dを最初に手にしたとき、正直言ってライブビューには、それほど魅力を感じなかった。それはモニターがバリアングル式になっていなかったからだ。だが実際に使ってみて、極端にカメラを低い位置に構えない限り、とても実用的であることが、徐々にわかってきた。

     高速連写についても最初は懐疑的だった。確かにゴルフや野球のスイングを撮影するには、役に立つかも知れないが、それ以外に使い道が思い浮かばないのだ。どちらかというとオマケの機能だが、「遊べる機能」として考えると、意外と使い道は見つかるものだ。特にローリングシャッター機能は、これに相応しい被写体さえ見つければ、かなり面白い写真が撮れる。今回は分かりやすさを優先した結果、ありきたりの作例になってしまったが、もっと時間をかければ、さらに斬新な表現ができるのではないかと考えている。そんな意味でK20Dは、非常に高い可能性を秘めたカメラと言えるだろう。



    URL
      ペンタックス
      http://www.pentax.co.jp/
      製品情報
      http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
      気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
      http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d
      ペンタックスK20D関連記事リンク集
      http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html



    中村 文夫
    (なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

    2008/05/26 13:49
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