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キヤノンEOS Kiss X2【第6回】
顔検出と連動する「オートライティングオプティマイザ」

Reported by 野下義光


装着レンズはEF 16-35mm F2.8 L II USM。ちなみにこの写真もEOS Kiss X2で撮影しました。軽量なので2台持ち歩いても苦になりません
 今回はオートライティングオプティマイザを試してみました。

 直訳すると「自動照明最適化機能」とでもなるのでしょうか。カタログでは、「逆光で暗くなった顔を明るくする」、「全体的に暗くなりやすいシーンを明るくする」、「ストロボの光量不足で露出アンダーになった場合、顔を検知して明るくする」、「低コントラストなシーンで、コントラストを調整する」などと説明されています。

 要するに撮影後にカメラ内部で画像を適切に処理する機能で、各メーカーでも似たような(似て非なる?)流行の機能のようです。

 EOS Kiss X2に初搭載された機能かと思いきや、実はEOS 40Dに密かに搭載されていたとのことです。ただEOS 40Dでは顔検知機能は持たず、また「かんたん撮影ゾーン」のみで自動設定されるだけで、「応用撮影ゾーン」では設定できません。EOS Kiss X2では顔検知機能も設け、応用撮影ゾーンでも設定可能となり、「オートライティングオプティマイザ」という名称が与えられたので、事実上の初搭載だと思われます。

 かんたん撮影ゾーンでは自動設定されますが、応用撮影ゾーンでは使用者自らカスタムファンクションで「使う」に設定すると働きます。ただし、マニュアルモードと、記録画質がRAW、RAW+JPEGでは働かない仕様です。

 その内容を平たくいうと、画像を後処理してしまう機能です。どのような処理を行なっているのかは公開されていませんが、画像を見た限りそれほど複雑な処理を行なっているようには感じません。単純にトーンカーブを弄っているだけのようにも見えましたが、仕上がりが自然に見えるところをみると、仮にトーンカーブを弄ってるにせよ、職人技クラスの技術が盛り込まれている様子です。


かんたん撮影ゾーンでは自動的にオートライティングオプティマイザがセットされます

応用撮影ゾーンでは、カスタムファンクションで設定します。頻繁に「使う」、「使わない」を切り替える場合はマイメニューに登録しておくと便利でしょう


オートライティングオプティマイザが働くのはJPEG撮影時のみ。RAW、RAW+JPEGでは機能しません

露出がマニュアルモード時も機能しません


露出補正時でも機能してしまいます。意識してアンダーあるいはローキーな仕上がりを狙う場合は注意が必要です


 同じ条件でオートライティングオプティマイザを「使う」と「使わない」に設定して撮り比べてみました。

 顔検知が有効に働いているらしく、子どものスナップではその違いが顕著に現れます。しかし、風景など人物がいない被写体では全く機能していない(あえて機能させてないと思われる)場合も多く、逆にこれが機能する作例を撮るのに苦労してしまいました。

 ファミリーフォトなどでは常に「使う」に設定しておいた方が、より好ましい結果が得られると思います。ストロボの光量不足で露出アンダーになるようなシーンでは、シャドー部をちょっと強引に明るくするのでさすがにノイズが目立ってしまいますが、露出アンダーのまま顔が暗く写ってしまうよりははるかによいと思います。

 風景などでは「使う」と「使わない」の両方を撮っておき、後から自分の好みに合う方をセレクトすればいいと思います。ただちょっと困るのは、画像情報としてこの機能を設定したのかしなかったのかを確認する方法がないことです。メーカーに問い合わせたところ、どのように設定したのかは情報としては記録はされているとのこと。しかしその記録を見ることは現状ではできません。

 キヤノンのデジタル一眼レフに添付される純正RAW現像ソフト「Digital Photo Professional」には、RAWでもJPEGでも撮影時の情報を見る機能があります。でもなぜか新機能については記録があっても見せたがらないのか、EOS-1D Mark IIIで初搭載された高輝度側階調優先の設定についても、今回EOS Kiss X2に添付されたバージョンでようやく見られるようになりました。オートライティングオプティマイザも出し惜しみせず、見られるようにしてほしいものです。

 今回の作例の撮影でも、後からどの画像を設定したのかしなかったのか見分けがつかなくなるので、RAW+JPEGでは機能しないことを利用してオートライティングオプティマイザ「使わない」の作例はRAW+JPEGで撮影しました。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


オートライティングオプティマイザ「使わない」。内蔵ストロボは意外と光量があり、なかなかアンダーに写らないのでティッシュペーパーでディフューズして無理やりアンダーに撮りました
EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 4,272×2,848 / プログラムオート / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 190mm
オートライティングオプティマイザ「使う」。ストロボはおそらくフル発光していると思われます。通常なら単にアンダーに写ってしまうところを、オートライティングオプティマイザが働いて明るく仕上げてくれました
EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 4,272×2,848 / プログラムオート / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 190mm

オートライティングオプティマイザ「使う」。顔を検知できないシーンでは、効果は穏やかになる様子です
EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 4,272×2,848 / プログラムオート / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 190mm

 ところで、そのDigital Photo Professionalには、「トーンカーブアシスト」というオートライティングオプティマイザに似た機能が設けられています。

 RAWはもちろんJPEGでも使える機能で、トーンカーブを変化させて画像を最適と思われる状態に処理する機能です。効果の程度は強・弱の2つを選択できます。


Digital Photo Professionalの「トーンカーブアシスト」。画像を最適化するトーンカーブが自動的に作り出されます。画像によってはかなり複雑なトーンカーブになることもあります
 オートライティングオプティマイザはある意味、Digital Photo Professionalの「トーンカーブアシスト」をカメラに内蔵した感じがします。でもこの2つは似て非なる効果が現れますし、どちらがよいかは好みの問題でしょう。

 欲をいえば、Digital Photo Professionalにもトーンカーブアシストとは別にオートライティングオプティマイザを設け、RAWで撮影しても現像時に好みに応じてどちらも選択できると最高なのですが。

 参考までにオートライティングオプティマイザの効果が顕著に現れた作例にはDigital Photo Professionalの「トーンカーブアシスト」で処理したパターンも掲載しておきます。

 ただし、JPEGを処理すると画質的に厳しくなるので、RAWを処理しました。RAWの現像設定は撮影時のままです。現像時のJPEGの圧縮率は10段階の10、最低圧縮(最高画質)にしました。




  • 作例のリンク先のファイルは、RAWまたはJPEGで撮影した画像です。RAWはDigital Photo Professionalでストレート現像しています。
  • 撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


共通データ:EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / 2,848×4,272 / プログラムオート / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 43mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」


トーンカーブアシスト「弱」

トーンカーブアシスト「強」





共通データ:EF-S 55-250mm F4-5.6 IS / 2,848×4,272 / プログラムオート / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 70mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」 オートライティングオプティマイザ「使う」


トーンカーブアシスト「弱」

トーンカーブアシスト「強」





共通データ:EF 16-35mm F2.8 L II USM / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/6秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 23mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」





共通データ:EF 16-35mm F2.8 L II USM / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F11 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 17mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」





共通データ:EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 4,272×2,848 / シャッター優先AE / 1/250秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 95mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」





共通データ:EF 16-35mm F2.8 L II USM / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/15秒 / F11 / -2EV / ISO200 / WB:太陽光 / 21mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」




共通データ:EF 16-35mm F2.8 L II USM / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/3秒 / F4 / -2EV / ISO200 / WB:オート / 27mm


オートライティングオプティマイザ「使わない」

オートライティングオプティマイザ「使う」


トーンカーブアシスト「弱」

トーンカーブアシスト「強」



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissx2/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS Kiss X2)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#eos_kiss_x2
  キヤノンEOS Kiss X2関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7809.html



野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2008/05/22 16:35
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