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ニコンD300【第7回】
D300にもある「倍率色収差軽減」

Reported by 大浦タケシ


 D300にもD3と同じく「倍率色収差軽減」機能が搭載されている。実はこのことを知ったのは購入してからすぐのことだ。カタログでは目立たないし、取扱い説明書にも明記されていない。ましてやON/OFFスイッチや設定メニューは一切搭載されてない。たぶんユーザーの中には、この機能が搭載されていることすら気づかずに使っている人もいることだろう。

 今回の長期リアルタイムレポートでは、倍率色収差軽減機能の開発者に同機能についてのお話を伺った。ニコン映像カンパニー開発本部の寶珠山秀雄氏に、デジタルによる収差補正の現況と未来を訊いた。

──D300に搭載される倍率色収差軽減機能はD3のものと同じなのですか?

 まったく同じです。色のズレ量、色の濁り量を自動的に検出し、それを補正するのがこの機能のまず1つ目のポイントです。

 2つ目のポイントとしまして、倍率色収差軽減ですので、画像の倍率を変えます。具体的には色ごとに異なる絵の大きさを、同じに揃えます。その場合、はみ出した色を抜くのではなく、ちゃんと合わせるようにしています。

──画角が変わるようなことはありませんか?

 像高換算で変化はコンマ1mmも変わりません。撮像素子の絵になる部分の周囲に、予備の部分があるからです。記録画素と絵になる画素の違いです。周辺の予備の部分で補正は吸収できるので、画角が変わらなくて済むというわけです。

──どのニッコールレンズでも効果があるようですが。

 D300およびD3に搭載された倍率色収差軽減機能は、レンズに依存しない補正です。それは、現行のニッコールレンズ以前の古いニッコールレンズ全てに対応できるということなのです。実はこの倍率色収差軽減機能を開発するにあたり、AFレンズだけに対応するものにはしないと決めていました。そこで、倍率色収差の検出技術を新たに開発しました。

 また検証のために、集められるだけのニッコールレンズも集めています。1,200-1,700mmというズームレンズやメディカルニッコールなども集めました。43-86mmなどは、全ての世代のレンズを集めたほどです。正直にいいますと古いレンズは、やはり倍率色収差が大きなレンズもありました。しかしこの機能によって、銀塩で撮るより数段描写力が上回っております。


ニコン映像カンパニー開発本部の寶珠山秀雄氏
──倍率色収差補正は必ずかかるようになっていて、補正のON/OFFができませんね。

 ON/OFFできるようにしようという考えも一部ありました。しかし、倍率色収差を好む人がいるとは思えなかったので、敢えてON/OFFできるようにはしませんでした。

──COOLPIX P5100に搭載されていたような、ディストーションの補正は入らなかったのですか?

 まずは倍率色収差からかなと。古いニッコールレンズをサポートすることは、我々ニコンのポリシーでもあり思いでもありますから、まず可能な技術を盛り込みました。もちろんディストーションや周辺光量落ちなどにも今後対応していくつもりです。

──補正処理にはどのくらいの時間がかかるのでしょう。

 処理にかかる時間は2種類あります。1つは色のズレ量を計算する時間、もう1つはズレ量に基づいて補正を行なう時間です。補正する時間はほとんどかかりませんが、ズレ量を計算する時間は若干かかります。しかし、カメラのパフォーマンスには影響しない時間です。

 先ほど、ON/OFFのことを訊かれましたが、もし仮にON/OFFできるようにしたとしても、連写速度が上がるようなことはありません。現像ソフトにも倍率色収差軽減機能が搭載されていますが、その場合には時間がかかります。

 ちなみにRAWで撮った場合は、OFFにすることができます。古い味にどうしてもこだわりがあるというのであれば、RAWで撮るとよいと思います。

──D300のカタログで、この機能のことを大きくうたっていないのはなぜですか?

 たしかにD3のカタログではそれなりに大きく扱っていますが、D300では軽く触れる程度にしています。というのも、DXフォーマットなので目で見えるほどの効果が少ないということがあります。機能として優先順位を付けたとき、ほかにも言いたいことがあるということでもあります。


──ユーザーとして注意しなければならないことはありますか?

 極端な過補正や弊害はないので、そのようなことでは自信を持っていますが、まだ全てのレンズ、全ての条件でキレイサッパリと倍率色収差がなくなるわけではないことには注意が必要かもしれません。とはいっても、倍率収差の量を小さくしてくれますので、そのような意味ではオススメです。

──ボディ内で倍率色収差をはじめとする諸収差が取れるのであれば、レンズを小さく軽くできるのではありませんか?

 それについては、一応検討はしています。しかし、やはり素材であるレンズ自体の性能がよくないと補正や加工も満足できる結果は得られませんから、レンズの画質はなるべくいいものにしたいと考えています。

 また、被写体を主に平面として話をしておりますが、立体物の撮影では、ソフトであまり光学特性を変えてしまうと、ピントの合っているところの前後の描写が必ずしも良くなるとは限りませんので、全ての収差の補正をカメラ側でやりたいとは思っていません。ニッコールレンズのよい特性をさらによくするといった考えで成り立っていることもあります。

 ただし、これからはカメラに任せてもよいところは、そのように対処するつもりでいます。最終的にはレンズの性能とのバランスですね。それを見極めることも必要です。デジタルによる補正は始まったばかりです。もうちょっと熟成期間が必要だと思います。


倍率色収差ON/OFFの比較

 D300の倍率色収差補正の効果を見るため、同じレンズをD300と、倍率色収差補正のないEOS 40Dで撮影してみた。EOS 40Dにはマウントアダプターを介して装着している。使用したレンズはAi Nikkor 50mm F1.8とAi Nikkor 35mm F2.8Sだ。

●Ai Nikkor 50mm F1.8
D300EOS 40D

●Ai Nikkor 35mm F2.8 S
D300EOS 40D



URL
  ニコンD300関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/08/24/6897.html



大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2008/05/21 12:41
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