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ソニーα350【第2回】
猫写真と高倍率ズームレンズ

Reported by 安孫子卓郎


 猫にカメラを向けたとき、すぐに逃げられてしまったことはありませんか。もちろん一番の理由は猫の個体差によるもので、すぐに逃げてしまう猫と無関心な猫と、警戒心の差が最大の理由です。

 また、一眼レフカメラの大きなレンズは、猫にとって目のように思えるのかもしれません。田んぼに目玉マークをつるして雀よけにしたり、チョウチョが羽に目玉模様をつけて、天敵の鳥に狙われないようにしたりするように、目玉というのは警戒心を呼び起こすものです。顔とカメラが離れていれば、レンズを目玉とは思わないかもしれません。でも、顔をカメラに近づけてファインダーをのぞこうとすると、顔の正面に丸いガラス玉がきますからまさに目玉のよう。カメラを構えるとさっと逃げられてしまったこと、過去に幾度となくありました。

 猫を撮影するときのライブビューのメリットは、アングルだけではありません。猫が警戒して逃げようというそぶりを見せたとき、ライブビューに切り替えて顔を下に向けます。顔が下に向くことで、猫も少し安心するのか、逃げるまでの距離に、もう少しゆとりができて、もうちょっとだけ接近することができたりするものです。じっと見つめて近づいてはいけない。これは動物に近づく時の基本ですが、α350のライブビューと可動式液晶を利用することで、目線をそらして近づくテクニックとしても利用できるわけです。


可動式の2.7型液晶モニターを搭載。見つめると逃げがちな猫を容易に撮影できる

 今回使ったDT 16-105mm F3.5-5.6は、デジタル専用設計のレンズで、6.5倍もの高倍率なズームです。現在は18~200mmや18~250mmなどのレンズも登場して、6.5倍程度では高倍率と思わなくなってきていますが、広角側が16mmのレンズとしては相当な倍率です。広角側が広いと遠近感の差も大きく感じられますので、体感的には実際の倍率以上に感じられるでしょう。

 ここで高倍率ズームレンズの使い方について述べてみたいと思います。筆者のお薦めは、最初に画角(使う焦点距離)を決め、そこに固定し、その後、自分が移動して写す大きさや構図を決めるというやり方です。高倍率ズームが当たり前のように使われる今日、ずいぶんとつまらない写真が増えてきたと感じています。その理由は、位置を移動しないでズームで済ませてしまうからでしょう。初級者は、カメラを構えると立ち位置を変えずにズームして、できるだけアップにして撮ってしまいます。アップにすると構図を考える必要もなくなってきますが、猫が写っているだけの写真になってしまいます。

 中級者になりますと、少しズームを控えめにして、構図を考えながら撮るようになります。で、そのうえは、まずは画角を考えて、広角で撮る、望遠で撮る、あるいは中間で撮ると決め、その後は単焦点レンズのように位置を変え、構図を考えて撮影することだと思います。元々ズームレンズは、「単焦点レンズ5本分」とか「7本分」など、1本で複数の単焦点レンズの代わりになると言われてきました。上記のような方法で、先に画角を決めてしまうと、まさに原点である「単焦点レンズ○本分」と同じ使い方になるわけです。

 画角が決まると、もっと近づきたいというニーズが出てきますから、最初に述べたような、「ライブビューを使ってもう一歩近寄る」ということも、大きな意味を持ってきます。「近寄らずにズームすればよい」と考えていますと、どんどん高倍率なズームがほしくなり、撮れた写真はシンプルなアップのみになることでしょう。

 もっとも野良猫で、今回のように望遠でも105mm程度(35mm判換算で約157.5mm相当)ですと、めいっぱい望遠にしてもまだ遠いことも多いとは思いますが、18~200mm、18~250mm、70~300mmなどの高倍率レンズを使う場合には、心がけておかれると、一クラス上の犬猫写真が撮れるかと思います。


今週のαレンズ

 ●DT 16-105mm F3.5-5.6



 APS-Cフォーマットのデジタル一眼レフ専用として、2007年11月に登場したレンズです。価格は7万3,500円。望遠側が105mmでF5.6と考えると、想像よりも重たい気がしてしまいますが、広角側が16mmということを考えると、納得の行く大きさといえるでしょう。

 デザインは、コンタックス時代のツァイスレンズを思わせる筒状のクラシックなもの。完全に好みの問題ですが、京セラ時代のツァイスレンズを使い続けている方なら、同じイメージにより好感を持って受け止められているのではないでしょうか。画質はDT 18-70mm F3.5-5.6よりもしっかりして、設計の良さを感じさせます。ボケ味も良好で、きれいな描写を見せてくれ、好ましいものです。

 ただ、高倍率とはいえ標準ズームですから、望遠端の開放F5.6は暗いなぁというのが、使ってみても代わらぬ印象です。αはボディ内手ブレ補正機構を搭載しており、F5.6のレンズでも使用範囲は広いのですが、犬や猫など動きのある被写体で、日影や森の中など比較的暗い場所で、しかも顔からカメラを離してライブビューを使おうと考えると、ISO感度を上げるか、ストロボを使うか、何らかの対策が求められます。ノーストロボで使うなら明るい単焦点レンズを用意し、あるいは思い切ってストロボを使ってしまうのが、このようなレンズを使う場合のコツなのかなと思いました。




  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


DT 18-70mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:太陽光 / 70mm DT 18-70mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO160 / WB:太陽光 / 70mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 105mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 75mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:曇天 / 16mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 105mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/160秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 105mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 60mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/30秒 / F3.5 / 0EV / ISO250 / WB:曇天 / 16mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/50秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 45mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 60mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / WB:曇天 / 16mm

DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 105mm DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,592×3,056 / プログラムオート / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:曇天 / 100mm


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A350/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(α350)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#a350
  ソニーα350関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7906.html



安孫子卓郎
(あびこたくお) きわめて頻繁に「我孫子」と誤変換されるので、「我孫子ではなく安孫子です」がキャッチフレーズ(^^;。大学を卒業後、医薬品会社に就職。医薬品営業からパソコンシステムの営業を経て脱サラ。デジタルカメラオンリーのカメラマンを目指す。写真展「デジタルカメラの世界」など開催。現在パソコン誌、写真誌等で執筆中。

2008/05/20 00:10
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