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ペンタックス「K20D」【第4回】
カスタムイメージを撮り比べ

Reported by 中村 文夫


 K20Dは全部で6種類のカスタムイメージを搭載している。ナチュラルと鮮やかの2種類だけだったK10Dに比べると格段の進歩だ。

 この機能自体はペンタックスが初めてというわけではないが、「雅(MIYABI)」と名付けられたモードはペンタックス独自のもので、名前が示すとおり和風のイメージ、たとえば十二単衣とか日本画風の色合いに仕上げることができる。今回は、「雅(MIYABI)」を含めたカスタムイメージをテーマに、作例を中心としたレポートをお届けしたい。

  • 作例をクリックすると、4,672×3,104ピクセルの画像を開きます。
  • 作例はすべてJPEGで撮影。無補正、非編集のままです。
  • 作例下、または共通データで示した撮影データは、記録解像度(ピクセル)/使用レンズ露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/ダイナミックレンジ拡大/ファインシャープネスを表します。


     以下の作例は、同一の被写体を各カスタムイメージで撮影したものだ。

    • 共通データ:4,672×3,104ピクセル / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/160秒 / F13 / ±0EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン/ファインシャープネス:オフ


    カスタムイメージ「鮮やか」

     設定画面のレーダーチャートを見ると、B、R、Y 、Mの順で色味を強調していることが分かる。コントラストとシャープネスは+1がデフォルト。ナチュラルに比べると、全体にヌケが良く透明感が高い。



    カスタムイメージ「ナチュラル」

     名前が示す通り、特定の色を強調していない。また輪郭強調による不自然さを抑えるためかシャープネスが-1になっている。鮮やかに比べると青空のトーンが残っているほか、シャドー部もやや明るめだ。



    カスタムイメージ「人物」

     「鮮やか」よりMを強調すると同時にコントラストとシャープネスをニュートラルに設定。暖かみのある色合いと自然なトーンが得られる設定だ。本来、人物の肌を自然に再現することが目的だが、この被写体では、Mの強調により地面がやや赤っぽくなっている。



    カスタムイメージ「風景」

     色味の強調傾向は「鮮やか」に似ているが、Y、R、Bがさらに強くなっている。またコントラストを+2、シャープネスを+1にすることで画面全体にメリハリを付けている。新緑も鮮やかに再現され、PLフィルターを弱く利かせたような画になった。



    カスタムイメージ「雅(MIYABI)」

     MとGが強調され、レーダーチャートの六角形がひしゃげた形になっている。コントラストとシャープネスはニュートラル。「風景」ほどメリハリが強調されず自然な感じだ。Gの強調により、新緑がより新緑らしく見える。



    カスタムイメージ「モノトーン」(フィルター効果あり)

    ・グリーン

     モノクロ撮影に使われるグリーンフィルターは、緑を明るくすると同時に赤と青を抑える効果がある。特に赤が濃く再現されることから、女性ボートレートで唇の色を強調するために利用される。フィルター効果なしと比較すると、赤いツツジの花が黒っぽくなっている。



    カスタムイメージ「モノトーン」(フィルター効果なし)

     K10Dでモノクロ画像を得るには、一度カラーで撮影してからモノクロに変換しなければならなかったが、K20では撮影時にモノクロが選べるようになった。さらにモノトーンを選ぶとフィルター効果と調色の設定ができるようになる。



    ・イエロー

     イエロー、オレンジ、レッドのフィルターは、コントラストを高める効果がある。3枚の画像を比較すると、フィルターの色が濃くなるにつれ、コントラストが徐々に高まってゆくことが分かる。



    ・オレンジ



    ・レッド



    ・マゼンタ

     私の知る限り、モノクロ用のマゼンタ、ブルー、シアンフィルターは商品として存在しなかったはず。いずれにしてもモノクロ写真では、フィルターと同系色の色は明るく、反対色は暗く再現される性質がある。したがってマゼンタでは緑、ブルーでは黄色、シアンでは赤が暗くなる。ただ、この3色のフィルター効果については、これといった使い道がすぐに思い浮かばない。



    ・ブルー



    ・シアン



    ・赤外調

     赤外線は大気の影響を受けにくいため、モノクロ赤外フィルムを使うと遠景がシャープに写る。さらに赤外線を反射しやすい植物の葉や雲などは白く、反対に吸収しやすい青空や水面などは黒く写る性質がある。そのため極端にコントラストを強調した表現が可能で、古くから山岳写真等で用いられてきた。以前はコニカとコダックが赤外フィルムを販売していたが、数年前に製造を中止。現在はローライだけが扱っている。

     また赤外フィルムは可視光にも感光するので、赤外効果を得るためには、赤色(R1)フィルターを使用しなければならない。さらに赤外線は可視光と波長が異なるためピント位置がずれてしまう。そのためいったんピントを合わせてから、レンズの距離目盛りに刻まれたR指標を利用してピント位置を補正する必要がある。そのうえ通常の露出計では測光が不可能。早い話が、誰もが気軽に利用できるフィルムではない。

     だがデジタルカメラなら赤外調のフィルター効果を選ぶだけで、赤外フィルムで撮影したような効果を得ることができる。フィルムカメラの時代から、R1フィルターとPLフィルターを組み合わせて、疑似赤外効果を得る方法が行なわれてきたが、まさにK20Dの赤外調効果は、これをデジタルで再現したものと言えるだろう。

     作例では白い花や緑の葉などが白く再現され、赤外フィルムで撮影したイメージにかなり近くなっている。レッドに比べると空のコントラストも上がり白い雲もはっきりしているが、本物の赤外フィルムほど、青い空が暗く落ちていない。今回はテストできなかったが、これにPLフィルターを組み合わせれば、さらに赤外線フィルムに近づけることができるではないだろうか。



    カスタムイメージ「モノトーン」(調色効果)

     本来、調色とは現像済みの印画紙に化学的な処理を加えて全体の色調を変えることだ。K20Dの場合、調色効果をマイナスにするとブルー、プラスにするとセピア調になる。

    • 共通データ:4,672×3,104ピクセル / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/125秒 / F8 / ±0EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ


    ・調色なし



    ・調色-4



    ・調色+4



    主要モードでの作例

    ・カスタムイメージ「雅(MIYABI)」


    洋風の花も雅(MIYABI)で撮影すると、どこか和風のテイストになる
    4,672×3,104 / A★ 85mm F1.4 / 1/4,000秒 / F2.2 / 0EV / ISO200 / WB:曇天 / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オン
    4,672×3,104 / A★ 85mm F1.4 / 1/80秒 / F14 / 0EV / ISO200 / WB:曇天 / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オン

    色鮮やかな花を晴天下で撮影すると落ち着いた発色になる
    4,672×3,104 / DA 14mm F2.8 ED [IF] / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ
    まだ新しい葉の緑色が鮮やかに再現された
    4,672×3,104 / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/400秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    夕方近く、日の傾いた時間に撮影。光量不足ぎみの条件下、雅(MIYABI)で撮影すると、しっとりとした雰囲気になる
    4,672×3,104 / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/10秒 / F20 / ISO400 / 0EV / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ
    逆光のため思い切って+2EV補正。ハイライト部は飛んでいるが、緑の質感描写はなかなのものだ
    4,672×3,104 / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/100秒 / F4 / +2EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    ・カスタムイメージ「鮮やか」


    「雅(MIYABI)」で撮影したチューリップに比べると色が鮮烈でインパクトがある
    4,672×3,104 / FA★ 80-200mm F2.8 ED [IF] / 1/1,600秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ
    手前の花の部分は日陰だが発色は鮮やかだ
    4,672×3,104 / DA Fisheye 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] / 1/50秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    手前の花に木漏れ日が落ちているので、背景の中に浮かび上がって見える
    4,672×3,104 / DA Fisheye 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] / 1/160秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ
    プラス側に露出補正してハイキー調を狙ってみた。新緑が非常に鮮やかで爽やかな印象になった。
    4,672×3,104 / DA Fisheye 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] / 1/13秒 / F13 / +1.3EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    ・カスタムイメージ「ナチュラル」


    「鮮やか」に比べると発色はかなり穏やか。薄曇りのためか、やや色が濁って見える
    4,672×3,104 / DA 16-45mm F4 ED AL / 1/125秒 / F16 / 0EV / ISO400 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    ・カスタムイメージ「風景」


    色が鮮やかなだけでなく、コントラストとシャープネスを強調した結果、メリハリのある描写になった
    4,672×3,104 / DA 21mm F3.2 AL Limited / 1/60秒 / F6.3 / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ
    ピントの合った部分とぼけている部分の落差が激しく、立体感が強く感じられる
    4,672×3,104 / FA★ 80-200mm F2.8 ED [IF] / 1/500秒 / F2.8 / +1EV / ISO100 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ

    被写体の色によって変化する赤外調の描写

     最初に紹介した作例では完全な赤外調にならなかったが、以前に撮影したカットの中に、非常に赤外線フィルムに近いものを発見した。紫色の濃さがほんの少し違うだけなのに、このカットでは濃い部分が真っ黒に写っている。K20Dの赤外調の効果は、被写体の色に大きく影響を受けるようだ。

    • 共通データ:4,672×3,104ピクセル / FA★ 80-200mm F2.8 ED [IF] / 1/500秒 / F13 / +1EV / ISO100 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オフ / ファインシャープネス:オフ


    モノトーン(フィルター効果なし) モノトーン(赤外調)

     この羊歯のように明るい緑色は、ほとんど白に再現される。

    • 共通データ:4,672×3,104ピクセル / DA Fisheye 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] / 1/40秒 / F13 / 0EV / ISO200 / WB:オート / ダイナミックレンジ拡大:オン / ファインシャープネス:オフ


    風景 モノトーン(赤外調)

    まとめ

     4月にこのレポートを始め1カ月半が経過したが、これまでのところ、「雅(MIYABI)」で撮影することが圧倒的に多い。鮮やかでは派手すぎ、かと言ってナチュラルでは物足りないというときに雅はぴったりなのだ。また季節が春ということもあり、花や新緑が主な被写体であることも大いに関係している。ただ今年の春は天候が不順で、澄み切った青空の下でほとんど撮影していない。梅雨が来る前に、今までとは違った条件で実力を試してみたいものだ。



    URL
      ペンタックス
      http://www.pentax.co.jp/
      製品情報
      http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
      気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(K20D)
      http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#k20d
      ペンタックスK20D関連記事リンク集
      http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html



    中村 文夫
    (なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

    2008/05/19 14:51
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