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キヤノンEOS Kiss X2【第2回】
EOS 40Dと画質を比較

Reported by 野下義光


装着レンズはEF 50mm F1.2 L USM

 前回のレポートからさらに使い込むにつれて、欲しいモードから買う気モードに移行しました。2台のEOS-1D Mark IIIのローンがまだ丸1年以上残っているわが身には、EOS Kiss X2をポンと買うほどの余裕はありません。でもネットで安値を調べたりして、3年くらい前に買った8GBのCFよりも安い!なんて無意味な比較で自分を納得させようとしている次第です。

 前置きはさておき、今回は画質についてです。Kissの名を冠するデジタル一眼レフカメラは、初代から連写性能など機能面では上位機種に譲るものの、画質に関しては同じサイズの撮像素子を持つ上位機種に対しても妥協しない伝統があります。妥協しないどころか発売時期の関係上、上位機種よりも高画質となる下克上も見受けられるようになっていました。

 EOS Kiss X2はスペック上も14bit A/D変換をはじめ、長秒時露光のノイズ低減、高感度撮影時のノイズ低減、高輝度側・階調優先機能といった、画質に直接関わる機能を惜しみなく搭載しています。有効画素数は約1,220万画素となり、同じサイズの撮像素子を持つ現行上位機種「EOS 40D」の約1,010万画素だけではなく、かつての旗艦「EOS-1Ds」の約1,110万画素すら凌駕してしまいました。

 かつての旗艦との対決も興味がありますが、まずは現行であるEOS 40Dと対決させてみました。

 今回の撮影はマニュアル露出で行ないました。その際チョットだけ気になったのは、絞り値の変更方法です。EOS Kiss X2は背面のAvボタンを押したままメインダイヤルを回すと絞り値が変更できます。気になったのはこの「押したまま」というところです。

 ボタンを「押したまま」という操作方法は、筆者が今のところ見つけた範囲ではこの絞り値変更のみで、ほかの例えばISO感度変更やAFエリア変更は、ボタンを押してからいったんボタンから指を離してダイヤルを回すなどして設定できます。つまりは指1本だけでも操作できるのです。

 ところが絞り値の変更は、離れた2箇所のボタンとダイヤルを同時に操作しなければならず、指を怪我していたりあるいは不自由な場合、非常に扱いづらいことが予想されます。絞り値の変更もほかの設定方法と同様にボタンを「押してから」行なえるようにすれば、より多くの人々に使いやすいカメラになると思いました。


AEBをセットしたマニュアル露出の液晶モニター表示。メインダイヤルを回すと色が着いて表示されているシャッタースピードが変更される。AEBはマニュアル露出だとシャッター速度側が変化。絞り側でのAEBはマニュアル露出では設定できない 背面のAvボタンを押して保持した状態。押したままメインダイヤルを回すと絞り値が変更できる。Avボタンを押すとシャッター速度か絞り値かのどちらかが選択され、選択状態を色着きで表示、さらに変更可能な側がAEBで変化するならもっと使いやすいだろう。このクラスのカメラでもわざわざマニュアル露出を使う人は、それなりに凝った使い方をしたい人が多いと思う

 さて、本題の画質ですが、よりカメラの性能を引き出すために単焦点のLレンズ、三脚使用、ライブビュー拡大表示でピント確認、風でゆれる草木をブラさないよう必要以上に絞り込まない、と気を使いました。それからISO感度は100。高感度は次回以降で試してみます。

 対EOS 40Dですが、結論を先に書くとEOS Kiss X2がわずかに勝っていると感じました。一般論としては撮像素子のサイズをそのままに画素数を多くすると、解像感は向上するかもしれないがダイナミックレンジが狭まるなど、総合的な画質は必ずしも向上するとは限らないといわれています。

 しかし、EOS Kiss X2とEOS 40Dとを比較した限りでは、ダイナミックレンジやシャドーのノイズ感は同等、画素数が多い分、EOS Kiss X2の方が解像感が勝り質感も滑らかという印象です。でもこの差はわずかであって、400%の拡大率など通常の観賞方法から逸脱した条件で差を見出せる程度です。EOS 40Dが明らかに劣るなどということは決してありませんが、連写はいらないからほんの少しでもより高画質を望みたい人にはEOS Kiss X2が有利かもしれません。


 比較にあたり、長秒時露光のノイズ低減、高感度撮影時のノイズ低減、高輝度側・階調優先機能は全て「しない」に設定しました。そのほかの設定は、記録モード=RAW+JPEG(ラージ、低圧縮)、ピクチャースタイル=ニュートラル、シャープネス=0(なし)、コントラスト=0(中立)、色の濃さ=0(中立)、色合い:0(中立)です。


EOS Kiss X2の記録画質設定。RAW+JPEGはラージ・低圧縮率の組み合わせのみ

こちらはEOS 40D。RAW+JPEGはRAW、sRAWとすべてJPEGで組み合わせ可能


 また、撮影に使用したピクチャースタイル「ニュートラル」は、後処理を前提とした素材感重視の設定のため、PCの画面上では眠い画像に見えます。なので、いくつかの作例ではRAWを純正現像ソフト「Digital Photo Professional」にてJPEGの最低圧縮率で現像。解像感の比較がしやすいように、さらにEOS 40DはEOS Kiss X2と同じピクセル数に拡大して現像しました。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像、またはRAWを現像したJPEGファイルです。
  • 作例下の撮影データは、使用ボディ/使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


JPEGオリジナル


EOS Kiss X2 / EF 135mm F2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 135mm EOS 40D / EF 135mm F2 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 135mm

EOS Kiss X2 / EF 24mm F1.4 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 24mm EOS 40D / EF 24mm F1.4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 24mm

EOS Kiss X2 / EF 50mm F1.2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/640秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm EOS Kiss X2 / EF 50mm F1.2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/640秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

EOS Kiss X2 / EF 24mm F1.4 L USM / 2,848×4,272 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 24mm EOS 40D / EF 24mm F1.4 L USM / 2,592×3,888 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 24mm

RAW現像(Digital Photo Professional)


EOS Kiss X2 / EF 135mm F2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:― / 135mm EOS 40D / EF 135mm F2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:― / 135mm
※現像設定(左右で共通):ピクチャースタイル=忠実、WB=太陽光、シャープネス:5、コントラスト:0(中立)、色の濃さ:0(中立)、色合い:0(中立)


EOS Kiss X2 / EF 24mm F1.4 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/15秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:― / 24mm EOS 40D / EF 24mm F1.4 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:― / 24mm
※現像設定(左右で共通):ピクチャースタイル=忠実、WB:太陽光、シャープネス=5、コントラスト=0(中立)、色の濃さ=0(中立)、色合い=0(中立)


EOS Kiss X2 / EF 50mm F1.2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/640秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:― / 50mm EOS 40D / EF 50mm F1.2 L USM / 4,272×2,848 / マニュアル露出 / 1/640秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:― / 50mm
※現像設定(左右で共通):ピクチャースタイル=スナップショットポートレート、WB=太陽光、シャープネス=5、コントラスト=0(中立)、色の濃さ=3(中立)、色合い:0(中立)


EOS Kiss X2 / EF 24mm F1.4 L USM / 2,848×4,272 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:― / 24mm EOS 40D / EF 24mm F1.4 L USM / 2,848×4,272 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:― / 24mm
※現像設定(左右で共通):ピクチャースタイル=風景、WB=太陽光、シャープネス=7、コントラスト=0(中立)、色の濃さ=0(中立)、色合い:0(中立)



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissx2/
  キヤノンEOS Kiss X2関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7809.html



野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2008/04/24 14:14
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