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ペンタックスK20D【第1回】
絵作りの基本をK10Dと比較

Reported by 中村 文夫


K20D。装着レンズは今回の撮影に使用したDA 16-45mm F4 ED AL
 ペンタックスK20Dには、さまざまな新機能が盛り込まれているが、やはり最大のセールスポイントは1,460万画素という高画素数だろう。これから8回に渡って長期レポートをお届けするわけだが、第1回目は、これをテーマに選ぶことにしたい。

 なおK20Dには、ダイナミックレンジ拡大機能やファインシャープネスなどの新機能も搭載されているが、これらの機能を同時に説明しようとすると、各機能の組み合わせが膨大な数になってしまう。あまり欲張ると収集がつかなくなる可能性が高いので、今回は、あえてこれらの機能は避けることにした。これらの新機能については、2回目以降で、じっくり掘り下げてみるつもりだ。

 私はこれまでペンタックスK10Dをメインの一眼レフとして使ってきた。K10の画素数は1,020万。それ以前に使っていた*ist Dの600万に比べ画素数が格段に増え、画質的には、もうこれで十分だと感じていた。だが、K20では、さらに画素数が1,460万にアップ。K10Dに比べ、どの程度、画質が向上したのだろう? またK20Dはペンタックスのデジタル一眼レフとして初めてSamsung製CMOSセンサーを採用。撮像素子の製造元と型式が変わったことの影響も大いに気に掛かる。そこで、K10DとK20Dで撮り比べをしてみることにした。

 最初の3カットはカスタムイメージ(K10Dでは画像仕上げ)を「ナチュラル」にセットして撮影。できるだけ条件が同じになるよう努めたが、カメラの個体差のためか、露出とピント位置が完全に一致しておらず、この当たりの微妙な違いは差し引いて比べて見て欲しい。


画質は「隠し味」で変化?

K20Dのカスタムイメージでナチュラルを選ぶと、シャープネスが-1に設定される
 まずPCのモニター画面いっぱいに拡大して見る限り、その差はほとんど感じられない。K20Dの方がシャッタースピードが1/3段遅いので若干明るく見えるが、同じカメラで撮った画だと言われれば、何の疑いも抱かないレベルだ。試しにA4サイズにプリントアウトして比べてみたが、このサイズでは全然見分けが付かない。その意味では撮像素子が変わったことによる影響は、ほとんどないようだ。

 ただ部分的に拡大してみるとK20Dのほうが背景のボケが軟らかく感じられる。念のためにK20Dで画像解像度を10Mに落として撮影してみたところ、14.6Mのときと結果は同じだった。Exif情報を見て気付いたが、K10では0だったシャープネスがK20Dは-1になっている。単純に比較できないが、このあたりの微妙なセッティングの違いが画質に影響を与えているようだ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


K20D(ナチュラル・10M)
K20D / DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 31mm
K20D(ナチュラル・14.6M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 31mm

K10D(ナチュラル・10M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 31mm

カスタムイメージでナチュラルを選ぶと、コントラストとシャープネスがそれぞれプラス1に設定される
 次にお見せするのは、カスタムイメージ「鮮やか」で撮影したカット。K10Dの方が、ややマゼンタがかっていてコントラストが強め。立体感も強く見える。これに対しK20Dはどちらかというと画質がソフトで優しい印象。色味も落ち着いている。

 またK20Dで10Mで撮影したカットは、14.6Mに比べるとほんの少し平面的だ。ちなみにExifでは、K20Dのシャープネスとコントラストがそれぞれ+1になっていた。


K20D(鮮やか・10M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 36mm
K20D(鮮やか・14.6M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 36mm

K10D(鮮やか・10M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 36mm

 黄色と赤の花が続いたので、ついでに白い花の作例も撮ってみた。K10Dの画像で、白い花の部分がにごって見えるのは、他の2点に比べて露出が不足しているためだが、赤い花のときほど発色の差はないようだ。なおK10Dの画像がシャープさに欠けるのは、ピントの位置が微妙にずれているせいだ。


K20D(鮮やか・10M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm
K20D(鮮やか・14.6M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm

K10D(鮮やか・10MB)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/160秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm

 コントラストとシャープネスの設定がデフォルトからずれていることに気付かず撮影してしまったので厳密な比較はできないが、この作例ではK20Dの方が全体に派手な発色になった。コントラストをプラス4に設定したことが主な原因と考えられるが、ここまで顕著な差が出るとは思わなかった。

 以上のことを総合すると、K10DとK20Dの基本的な画作りは同じだが、K20Dはカスタムイメージの中にコントラストとシャープネスという隠し味を加えることで、従来との差別化を図っているようだ。今回はテストしなかったが、K10Dの場合も、撮影メニューでコントラストとシャープネスを調整してやれば、K20Dに近い描写が得られるのではないだろうか。


K20D(鮮やか・シャープネス0・コントラスト+4・14.6MB)
K20D / DA 16-45mm F4 ED AL / 4,672×3,104 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F11 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 26mm
K10D(鮮やか・10M)
DA 16-45mm F4 ED AL / 3,872×2,592 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28mm

細かい使い勝手の差もチェック

 K10DとK20Dのの操作系は基本的に同じだが、2台のカメラを比べてみると、カタログスペックに現れない細かな部分に改良が加えられていることが分かる。たとえばK20Dの電池室やカードスロットの開閉キーは大型化され、とても操作がしやすくなった。


K20Dのカードスロット開閉キー

K10Dのカードスロット開閉キー 


K20Dの電池室開閉キー

K10Dの電池室開閉キー


 このほかK20Dでは、旧レンズを組み合わせたときに役立つ機能が、数多く追加されている。まず私がいちばん便利に感じたのが、キャッチインフォーカスをオフにする機能だ。キャッチインフォーカス自体は、それほど出番の多い機能ではないが、これがオンになっていると、MFレンズを取り付けた際、AFモードがAFSのままだとピントが完全に合わないとシャッターが切れないという弊害が生じてしまう。だがカスタムファンクションでこれをオフにしておけば、シャッターがいつでも切れる。

 さらに旧レンズで手ブレ補正を利用するめためには、手動でレンズの焦点距離をインプットする必要があるが、K20Dでは後ダイヤルでも焦点距離の変更ができるようになった。ダイヤルの1クリックで焦点距離が1ステップずつ切り替わるので、従来の十字キー操作のように行き過ぎたりすることがない。


MFレンズを利用するときはキャッチインフォーカスをオフにしておくと、AFモードレバーの位置に関係なく、いつでもシャッターか切れる

K20Dのレンズ焦点距離入力画面。焦点距離の数字の下に後ダイヤルの表示がある
K10Dのレンズ焦点距離入力画面

 あまり知られていないが、絞りリングにA位置のないレンズを使用する場合、光学プレビューでプレビュー操作をするとファインダー内にバーグラフが表示され、露出の過不足を知ることができる。K10Dにも搭載されている機能だが、K10Dは前ダイヤルでしかシャッタースピードの変更ができない。そのため人差し指でプレビューレバーを倒したまま中指で前ダイヤルを操作するという、アクロバチックな指の動きを強いられる。

 この点、K20Dは、カスタムファンクションのTAv、M電子ダイヤルメニューで、前後ダイヤルの機能を入れ替えておけば、後ダイヤルでシャッタースピードの変更が可能。パーグラフを見ながら微妙な露出調整ができる。


カスタムファンクションでTAv、M電子ダイヤルの前後の機能を入れ替えておくと、プレビューレバーを右手人差し指で操作しながら、親指でシャッタースピードの変更ができる


 さらにK20DはMモード時の露出補正が可能になった。マニュアルで露出を決めるのに、なぜ露出補正が必要かと疑問を抱かれるかも知れないが、ハイパーマニュアル時にこの機能が使えると、適正露出の基準を意図的にずらすことができる。また旧レンズの中には、カメラ側のTTL露出計と相性が悪く、露出計の出た目では適正露出が得られない製品も多い。こんなときは予め補正データを取り、露出補正を使って基準点を移動させておけば、その都度、露出を補正する手間が省ける。

 とにかく、ペンタックスKデジタルシリーズは、新機種が出る度に旧レンズが使いやすくなってゆく。今どき、こんなに旧レンズユーザーのことを考えたメーカーは、ほかにないのではないだろうか。



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/slr/k20d/
  ペンタックスK20D関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/02/05/7800.html



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/04/21 14:48
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