デジカメ Watch
最新ニュース

ソニーα700【第7回】
「300mm F2.8 G」とテレコンバーター

Reported by 中村 文夫


300mm F2.8 Gをα700に装着した状態。フード先端からファインダーアイピースまでの長さは約43cm。鏡筒はオフホワイトで、非常に存在感のあるデザインだ
 今回のテーマは大口径望遠レンズ。現在、ソニーがα用として発売している望遠レンズでいちばん焦点距離が長いのは500mm F8 Reflexだが、屈折式光学系では、300mm F2.8 Gが最長である。

 このレンズは、いわゆるサンニッパと呼ばれるタイプ。フィルムカメラの全盛時代、主にアイドルを被写体とするカメラ小僧たちが、憧れたレンズだ。今回取り上げたこの製品は、2003年、ミノルタがコニカと合併する直前にミノルタAFアポ300mm F2.8 G (D) SSMとして発売された製品で、サンニッパとしては新世代に分類できる。

 最大の特徴は、ミノルタ初のSSM(超音波モーター)を内蔵していること。ミノルタαのAFは、ボディ内モーターを基本としているが、ボディ内の小さなモーターで大型レンズの光学系を駆動させるには無理がある。そこで、このような大型レンズでは、レンズ内モーターを採用したというわけだ。このときミノルタはAFアポ 70~200mm F2.8 G (D) SSMという大口径望遠ズームも同時に発表。このレンズはソニーブランドにも継承された。さらにソニーは、カール・ツァイスレンズのVario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSMを2月に発売したほか、70-300mm F4.5-5.6 G SSMの発売も予定している。

 このレンズの最大径は122mmで全長は242.5mm。重さは2,310g(三脚座別)もある。受注生産で値段は79万8,000円。大きさ価格ともに超弩級だ。もともとフィルムカメラ用として誕生したが、ソニーαシリーズでも使用可能。α700に装着すると、450mm F2.8という大口径超望遠レンズになる。

 5回目のレポートで縦位置グリップとタムロンの高倍率ズームをテーマにしたが、レンズが思ったよりコンパクトだったため縦位置グリップの能力をフルに発揮させることができなかった。だがこの300mmはタムロン製ズームに比べるとかなり大きく、おまけにトップへビー。よい機会なので、縦位置グリップの使い勝手も再度試してみることにした。

 縦位置グリップ付きのα700のボディにレンズを装着したときの総重量は4kg弱。手ブレ補正の効果も確かめたかったので、手持ち撮影で使うことにした。昨日、撮影を行なったばかりだが、たぶん明日になると上腕を筋肉痛が襲うことだろう。


左手を下から支えるようにしてカメラを構えるとバランスが取れる。ピントリングの前側4カ所のフォーカスホールドボタンは、指が自然に届く場所にあり使いやすい
 このレンズは、縦位置グリップ付きのα9クラスのフィルムカメラに組み合わせることを前提にして鏡筒が設計されていると考えられる。そのため、サイズ的に同クラスのα700に組み合わせたときのバランスはなかなかよい。特に左の手のひらの手首側の関節部分に三脚座を乗せ、親指と人差し指をレンズ前側を添えると、空いた中指と薬指でピントリングが操作できる。さらにフォーカスホールドボタンは親指の位置にあり操作がしやすい。とにかくこのレンズは、手持ち撮影のことをよく考えたバランス設定になっている。

 作例を撮影したのは風の強い日だったので、風に煽られっぱなしだった。レンズ自体が大きいので、突風が吹くとカメラが大きく揺れ、全然安定しない。手ブレ以前の問題だが、α700の手ブレ補正機構は風によるブレにも強く、かなりの確率でブレを防いでくれた。レンズの重量バランスがよいことも、大きな要因のひとつだが、このレンズは、図らずもα700の手ブレ補正能力の高さを証明してくれた。

 すでに説明したとおり、このレンズのAFはレンズ側に内蔵した超音波モーターで駆動する方式である。シャッターボタンを押すとほとんど無音でピントリングが動いてピントが合う。またピントが合う瞬間も、ピタッと止まってファインダーを覗いていても気持ちがよい。ただ今回のように強風下で使うと、フォーカスフレームが安定せずピントが合いにくい。中央のフォーカスフレームを選択しているときはそうでもないが、ローカルフレームを選択すると、さらにピントが合いにくくなる。結局DMFを使って手動でピントを合わせる方法に落ち着いたが、ここまで画角が狭いと、手持ち撮影にはそれなりの覚悟が必要だ。

 5回目のレポートで、せっかく縦位置グリップを付けても、いつもの癖で右手が下になるようカメラを構えてしまう、と書いたが、今回は、それほど抵抗なく正規の持ち方をすることができた。この理由は機材の重さに起因するものだろう。右手を下にする構え方で4kg弱のカメラを持つと、右手へ負担が掛かりすぎる。たぶん自分では気付かないうちに、体が楽な姿勢を選択させているのだろう。別の考え方をすれば、このカメラの縦位置グリップは、重量の重い機材を支えるに適した形状をしているということ。つまり、縦位置グリップとして、優れたデザインであるということだ。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/クリエイティブスタイル設定内容/Dレンジオプティマイザー設定内容を表します。


作例(300mm F2.8 G)

 α700に装着すると450mm F2.8という大口径超望遠レンズになる。開放F値がF2.8なのでファインダーが明るく、夕景撮影でもピントが確認しやすい。像はクリアで非常に透明感が高く、グラデーションの再現性にも優れている。


夕陽を反射して光る波の模様が忠実に再現された。さすがに高級レンズだけあって透明感が非常に高い
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F13 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 300mm / ビビッド / DR+
丹沢山系に沈む夕陽を千葉港側から東京湾越しに撮影。遠くに霞む山並みの微妙なトーンが見事に再現された
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/1,250秒 / F11 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / 夕景 / DR+

クリエイティブスタイルで夜景を選択、青みがかって寒々とした色調になった。ほとんど絞り開放だが、点光源がの形が崩れることなく再現されている
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / 夜景 / DR+
シャッター速度はかなり遅いが、手ぶれ補正の効果でブレずに済んだ。遠景にシャープさがないのは空気中の水蒸気のせいだ
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F2.8 / -1EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / 夕景 / DR+

作例(300mm F2.8 G+テレコンバーター)

 今回は1.4倍と2倍のテレコンバーターも借りることができた。1.4倍のテレコンバーターを組み合わせたときの画角は、35mmフルサイズの630mm、2倍のときは900mmに相当するが、とにかく画角が極端に狭いので、手持ち撮影だと思い通りのフレーミングを保つことが非常に難しい。レンズの向きが少しでも変わると、狙っていた被写体が視野外になり、たちまち行方不明になる。手ブレの危険性が低いとは言え、私のスキルでは、1.4倍のテレコンまでが手持ち撮影の限界のようだ。


1.4x Teleconverter。価格は6万7,200円 2x Teleconverter。価格は6万7,200円

●300mm F2.8 G+1.4x Teleconverter

 合成焦点距離は420mmで、630mmの超望遠レンズに相当。開放F値は1段しか暗くならないので実用性が高い。このテレコンバーターの光学性能は非常に優秀で、絞り開放で撮影しても画質の劣化がほとんどない。


絞り開放で撮影。像は非常にシャープで、船腹に書かれた船名まで読み取れる
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 420mm / ビビッド / DR+
輝度差の激しい条件だが、暗部がつぶれることなく、水平線付近の微妙なトーンもきちんと分離している。
2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F11 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 420mm / 夕景 / DR+

前の作例を撮影した直後にカメラをやや下に向け、水平線を画面中央にずらした。暗い部分が多いのでシャッター速度が遅くなり、海面が明るく再現された
2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F11 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 420mm /夕景 / DR+
太陽が沈んだ後、赤く染まった雲間をゆく飛行機を撮影。機影がとてもシャープに写っている。
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F8 / -1EV / ISO400 / WB:オート / 420mm / 夕景 / DR+

●300mm F2.8 G+2x Teleconverter

 合成焦点距離は600mmで、画角は35mmフルサイズの900mmに相当。画角が非常に狭いので、手持ち撮影だと目標の被写体をとらえるのに苦労する。手ブレ補正機構が利用できるとはいえ、このクラスになるとやはり三脚が必要だ。


絞り開放で撮影。1.4倍のテレコンバーターに比べると、ややシャープさに欠ける。またテレコンバーターを付けた状態でAFが作動するが、画面中央以外の測距エリアを選ぶと、合焦スピードが少し遅くなる気がする
4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/500秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO400 / WB: / 600mm / ビビッド / DR+


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報(α700)
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700/
  製品情報(300mm F2.8 G)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24688
  製品情報(1.4x Teleconverter)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24693
  製品情報(2.0x Teleconverter)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24694
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(α700)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm#a700
  ソニーα700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/03/03 13:21
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.