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ソニーα700【第6回】
Carl Zeissレンズを試す

Reported by 中村 文夫


α700と今回試用したレンズ。左からVario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA、Planar T* 85mm F1.4 ZA、ボディに装着しているのがSonnar T* 135mm F1.8 ZA
 α200、α350と相次いで新製品が登場し、ちょっと影が薄くなり気味のα700だが、未だにαデジタルシリーズの最上位機であることに変わりはない。今回のテーマは、Carl Zeiss(カールツァイス)レンズ。やはり、このような高品位レンズの実力をフルに発揮させるには、丁寧に作られたボディが必要である。

 α350はソニー初のライブビュー搭載機として話題になっている。ライブビューを実現するに当たり、ソニーはファインダーにライブビュー専用CCDを内蔵する方式を採用。従来の位相差式AFが利用できることからクイックAFライブビューと名付け盛んにアピールしている。私は1月末に行なわれた内覧会で実際に手にする機会を得たが、確かにライブビューは便利だ。特にα350は液晶モニターが可動式なので実用性が高い。残念ながら縦位置撮影に対応していないが、この春に登場するライバル機のほとんどが固定式モニターを採用していることを考えれば、かなり良心的なライブビューと言えるだろう。

 だが気になるのは光学ファインダーの見えがあまり良くないこと。いくらライブビューがセールスポイントのカメラとは言え、これでは上級者は満足しないだろう。その点、α700のファインダーは像倍率が高く明るく見やすい。記録画素数こそα350に及ばないが、やはり上位機だけあって細部にわたり神経が行き届いている。

 今回、撮影に使用したのは、Planar(プラナー) T* 85mm F1.4 ZA、Sonnar(ゾナー) T* 135mm F1.8 ZA、Vario-Sonnar(バリオゾナー) T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZAの3本。特に単焦点の2本は、35mmフルサイズをカバーし、ミノルタα-9などのフィルムカメラでも撮影が楽しめる。これに対しVario-Sonnarは、APS-Cサイズの撮像素子に特化したデジタルカメラ専用レンズだ。なお、今回のレポートに間に合わなかったが、ソニーは2月15日にVario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSMを発売したばかりで、このレンズは35mmフルサイズをカバー。4本のうち3本までが35mmフルサイズをカバーするわけで、年内投入が確定したフルサイズ機の性能にも期待がかかる。


Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA。価格は10万3,950円 DT 16-105mm F3.5-5.6(右)と比較。Vario-Sonnarの方がズーム域が狭いが、鏡筒サイズはほとんど同じ。コンパクトさより高画質を優先させるというCarl Zeissレンズのコンセプトが現れている

Planar T* 85mm F1.4 ZA。価格は18万9,000円

Sonnar T* 135mm F1.8 ZA。価格は21万円


 話が本題から外れてしまったが、これらのレンズは、さすが高価なだけあって、しっかり作ってある。特に2本の単焦点レンズは、見た目以上に重く作りも重厚で高級感がある。ピントリングの幅も広く動きもなめらか。MF時の操作性に気を遣っていることが良く分かる。

 さらにこの2本は金属製の円筒型フードを採用するなど、他のソニーブランドのレンズとは完全に別ものである。鏡筒は金属製で、表面は半光沢のブラック仕上げ。α700のボディに取り付けると少し違和感がある。これに対しVario-sonnarは、ソニーDT 16-105mm F3.5-5.6によく似たデザインで、フードは花形のプラスチック製。ほかの2本ほど存在感は強くない。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用ボディ/使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/Dレンジオプティマイザー設定内容/クリエイティブスタイル設定内容を表します。
  • 一部のデータを1行目に抜き出した箇所もあります。


Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA

色収差が目立ちやすい条件だが、背景との分離が非常に良く、色収差が良好に補正されている。ズームレンズとは思えないほどボケ味も良い
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/2,500秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm / DR+ / ビビッド
完全に逆光だがT*コートの威力が遺憾なく発揮され、ゴーストやフレアによるコントラストの低下も認められない
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/2,500秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm / DR+ / ビビッド

コマ収差が良好に補正されているので、月の形が忠実に再現された。わずかに周辺光量不足が認められる
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/20秒 / F5 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 80mm / DR+ / ビビッド
前ボケにクセがなく、とても自然
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO400 / WB:マニュアル(3,600K) / 70mm / DR+ / ビビッド

夥しい数のLEDが点として写っている
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 16mm / DR+ / ビビッド
今回の撮影ではDレンジオプティマイザーをすべてDR+で撮影したが、手前と背景との明るさがバランス良く再現された
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/15秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 18mm / DR+ / ビビッド

ハイライト部の白トビを抑えるため-1.3EV補正。夕焼けのグラデーションが美しい
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/25秒 / F4.5 / -1.3EV / ISO400 / WB:オート / 16mm / DR+ / ビビッド

 前ボケをDT 16-105mm F3.5-5.6と比較。Vario-SonnarはLEDのボケにムラがない。DT 16-105mm F3.5-5.6は中心と外周部で明るさが若干違う。このようなレンズは二線ボケになりやすい。


α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 60mm / DR+ / ビビッド α700 / DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm / DR+ / ビビッド

 F値による描写の変化を検証。絞り開放でも、画面周辺部の点光源が正確な形で結像している。


F4
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/2秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 22mm / DR+ / ビビッド
F5.6
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 22mm / DR+ / ビビッド

F8
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 2秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 22mm / DR+ / ビビッド
F11
α700 / Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 5秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 22mm / DR+ / ビビッド

Planar T* 85mm F1.4 ZA

絞り開放で撮影。人形が美しいボケの中に浮かび上がった。すでに日が傾きかけている時間だったが、それでもシャッター速度は最高速。明るい日中に開放で使うにはNDフィルターが必要だ
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/8,000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド
F2.8に絞っているが、これでも被写界深度はかなり浅く、ミニチュアを撮影したような不思議な写真になった
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/8,000秒 / F2.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド

画面左側の白いツリーにMFでピントを合わせた。このレンズは非常に被写界深度が浅く、少しでもピントが外れるとシャープさが失われてしまう。前後のボケによって立体感のある描写になった
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/15秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド

 F値による描写の変化を検証。前から奧にゆくにしたがってボケが小さくなり、遠近感が強く感じられる。


F1.4
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/15秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド
F2
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/10秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド

F2.8
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/4秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド
F4
α700 / Planar T* 85mm F1.4 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/2秒 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 85mm / DR+ / ビビッド

Sonnar T* 135mm F1.8 ZA

このレンズも開放時の被写界深度が極端に浅い。85mmに比べるとボケにややクセがあるようだ
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/5,000秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド
補正なしで、ちょうど良い露出になった
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 4,272×2,848 / 絞り優先AE / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド

 F値による描写の変化を検証。手前のアーチにピントを合わせて撮影。開放時の背景のボケを拡大してみると、わずかだが中央と外周部の明るさが違う。これがボケの美しさをを崩している要因と考えられる。


F1.8
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/20秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド
F2.8
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/8秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド
F4
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/4秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド

F5.6
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/2秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド
F8
α700 / Sonnar T* 135mm F1.8 ZA / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1秒 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 135mm / DR+ / ビビッド

まとめ

 正直な話、Carl Zeissが、こんなに優れた描写をするとは思わなかった。私は決してCarl zeiss信奉者ではないが、これまで撮影に使ってきたソニーや旧ミノルタブランドレンズとは格が全然違う。まず、これに気付いたのは、撮影中にカメラのモニターで画像を確認したとき。小さな画面を見ただけで「あれっ? 何となくこれまでと違う」という印象を受けた。さらに画像を拡大してみると、ピントが合ってシャープに見える部分と、ボケた部分との落差が非常に激しい。α700のモニターのドット数は92.1万と同クラスに比べて細密なことは知っていたが、これまで、それほど有り難みを感じていなかった。だが、Carl Zeissレンズで撮影した画像を再生すると、明らかに鮮やかさが違う。この点も新しい発見だった。

 作例のキャプションにも書いたが、2本の単焦点レンズの開放時の被写界深度は、信じられないほど浅い。AFにピントを任せるのも良いが、できればMFで慎重にピントを合わせた方が、良い結果が得られるようだ。その点、α700のフォーカシングスクリーンは、ピントの山が分かりやすく大口径レンズ向きだ。だが撮影していて気になったのは、明るい条件だと、シャッタースピードを最高速の1/8,000秒にしても露出オーバーになってしまうこと。今回は日差しの弱い冬の季節なので、それほど大きな問題にはならなかったが、日差しの強い春、夏だと、開放での描写を楽しむにはNDフィルターを用意しないとかなり厳しい。ISOを100より下げる機能が付いていれば、さらに使いやすくなるのではないだろうか。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報(α700)
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700/
  製品情報(Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24680
  製品情報(Planar T* 85mm F1.4 ZA)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24689
  製品情報(Sonnar T* 135mm F1.8 ZA)
  http://www.ecat.sony.co.jp/dslr/lens/lens.cfm?PD=24690
  ソニーα700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(現在進行中・2008年終了分)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/02/25 00:03
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