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今回は、縦位置グリップとタムロン28-300mm F3.5-6.3 Aspherical [IF] Macroを使用した
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本レポートも、今回を入れてあと3回を残すのみ。そう言えば、昨年の暮れに届いた機材の中に縦位置グリップがあったのを思い出した。私は縦位置で撮影するとき、グリップを下にしてカメラを構えるので、縦位置グリップとの相性が悪い。せっかくグリップを付けても、気が付くと、いつものスタイルでカメラを構えていたりと苦笑することもしばしばである。
デジタル一眼レフ用縦位置グリップのほとんどは、カメラを縦に構えた際の操作性アップに主眼が置かれている。α700用縦位置グリップ「VG-C70AM」(3万6,750円)も例外ではなく、バッテリーを2個収納し電池交換の手間が省けるが、特に新しい機能が追加されるわけではない。グリップを装着すると連写スピードが上がるなど、何か付加機能があれば使う気にもなるのだが……。
私が縦位置グリップを使わないもうひとつの理由は、機材が重くなること。グリップを付けるくらいならレンズをもう1本持って歩きたいというのが私の本音だ。ただし比較的大きなレンズをカメラに装着した場合は話が別。カメラボディとレンズのバランスを保つため、ボディ側の質量を増やすという意味では存在価値があると思う。
前置きが長くなったが、大型レンズには縦位置グリップがよく似合う。本来ならば70-200mm F2.8 G、あるいは300mm F2.8 G当たりを組み合わせるべきだが、残念ながら今回のレポートに間に合わなかった。そこで思い出したのが、タムロン28-300mm F3.5-6.3 Aspherical [IF] Macroという高倍率ズームだ。フィルムカメラのα-9の時代に入手して、しばらく使っていたが、最近は防湿庫の片隅で眠りっぱなし。最後に使ったのは確かコニカミノルタα-7 DIGITALが発売されたときだったと思う。ただ、α-7 DIGITALの手ブレ補正能力は思ったほど高くなく、それほどよい印象が残っていない。当時に比べて、どれくらい手ブレ補正機構が進化したかを確かめる意味も含め、今回のレポートでは、このレンズ1本で撮影することにした。
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28mm時
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300mm時
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このレンズの発売は1999年。フィルムカメラ時代を代表する高倍率ズームで、カメラグランプリのカメラ記者クラブ特別賞を受賞している。重量は585gで鏡筒長は最短で約94mm、最大径は約80mmもある。太くて短いレンズだが、望遠側にズームすると約180mmまで鏡筒が長く伸びる。そして300mmで使用したときの開放F値はF6.3。決して明るくないので、フィルムカメラに組み合わせていた頃は、ずいぶん手ブレに悩まされた。結局、三脚が必需品で、これがこのレンズを使わなくなった最大の理由である。
だがデジタルカメラなら簡単にISO感度のアップが可能。それにα700なら手ブレ補正機構が利用できるので、あわよくば手持ち撮影用レンズとして復活させようという魂胆である。このレンズの焦点距離をα700に換算すると42~450mm。望遠系を主体とした撮影に便利そうなので、今回のレポートでは、近所の動物園を撮影地に選んだ。
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、使用ボディ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離/Dレンジオプティマイザー設定内容/クリエイティブスタイル設定内容を表します。
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テレ端の300mmで撮影。ISO100では手ブレが心配だったので、ISO感度を400にセット。絞り開放だが、ゴリラの毛の1本1本までシャープに写っている
a700_05_p01l.jpg / α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/640秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / DR+ / ビビッド
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雪を食べるテナガザル。Dレンジオプティマイザーのお陰で、黒い毛並みと手前に積もった雪がバランス良く再現された
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/250秒 / F7.1 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 250mm / DR+ / スタンダード
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夜行性のマーモセットは照明を落とした状態で展示してある。そのためISO6400にセット。それでもシャッター速度は1/15秒しか切れなかったが、手ブレ補正機構の効果で何とか手ブレせずに写った。ただし、かなり活発に動き回るので、じっとした瞬間を狙ったのはいうまでもない
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/15秒 / F6.3 / 0EV / ISO6400 / WB:オート / 210mm / DR+ / ビビッド
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逆光のため、ややフレアっぽくなったが、レタッチソフトでコントラストを調整すれば、十分実用になるレベルだ
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート: / 300mm / DR+ / スタンダード
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温室の中で放し飼いされているソデグロバト。木陰の枝に留まっているので肉眼ではかなり暗く見えるが、Dレンジオプティマイザーの効果で、まるでレフ板で補助光を当てたようになった
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/40秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / DR+ / ビビッド
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逆光でオウムの顔が陰になっているが、Dレンジオプティマイザーの効果で適度な明るさになった
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / DR+ / スタンダード
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ローカルフォーカスエリアで眼の部分にピントを合わせた
α700 / 4272x2848 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 300mm / DR+ / スタンダード
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内蔵ストロボを強制発光させ、陰になっている部分に補助光を当てたところ、あまり自然な感じに仕上がらなかった
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F9 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 280mm / DR+ / スタンダード
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こちらはストロボをオフにして撮影。このカメラの場合、Dレンジオプティマイザーに任せた方が自然て仕上りになるようだ
α700 / 2,848×4,272 / 絞り優先AE / 1/160秒 / F6.3 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 280mm / DR+ / スタンダード
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■ 使ってみて
歩留まりの悪さから、しばらく日の目を見なかった古いレンズだが、α700との相性は想像以上で十分実用になる。大きくて重いのが難点だが、縦位置グリップと組み合わせたときのバランスはよい。このレンズはフルサイズをカバーするので、いずれ登場するであろうフルサイズ機に組み合わせると、頼もしい戦力になることだろう。
α700用縦位置グリップは、十字キーや後ダイヤルのほか、撮影時に使用するほとんどの操作部を背面に装備している。基本的にボディ本体背面にあるものを、縦位置で操作しやすいようレイアウトしなおしたものだが、露出補正ボタンだけは例外である。カメラ本体側の露出補正ボタンは、ボディ上面にあり、横位置撮影時に露出補正ボタンを使う場合、人差し指を手前にずらして操作する。しかしカメラを構えた状態ではボタンが見えないので、かなりカメラを使い込んで指にボタンの位置を憶えさせる必要がある。この点、縦位置グリップ側は、露出補正ボタンがグリップ背面にあるため後ろからよく見え、カメラに慣れていなくても大丈夫。これは意外な発見だった。
それから、このグリップを使ってみて不便に感じたのはプレビューボタンだ。もともとカメラ本体のプレビューボタンも決してベストの位置にあるとは言い難いが、縦位置グリップを付けると右手で握る部分の谷間にボタンが埋もれてしまい、さらに使いにくくなる。カメラ本体のボタンの位置も含めて、この当たりには研究の余地があるようだ。
今回は被写体が檻の向こうに居るという状況のため300mmで使うことが多かったが、このレンズは望遠側にズーミングすると鏡筒が長く伸びトップヘビーになる。その点、縦位置グリップを使うと安定感が増し、快適な撮影が楽しめた。機材全体の重量が増すことは避けられないが、大型レンズを組み合わせれば、それほど気にならない。手ブレを防ぐ意味も含めて、このグリップは大型レンズのベストパートナーと言えるだろう。
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縦位置グリップを取り付けたボディを後ろから見たところ。露出補正ボタンが背面にあるので使いやすい。ただ露出補正表示が縦位置に切り替わらないのが残念
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プレビューボタンの位置は再考の余地がある
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■ URL
ソニー
http://www.sony.co.jp/
製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700
ソニーα700関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(現在進行中・2008年終了分)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm
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中村 文夫 (なかむら ふみお)
1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。 |
2008/02/18 00:02
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