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ソニーα700【第4回】
純正マクロ用光源2種を試す

Reported by 中村 文夫


HVL-RLAMをα700に装着した状態。カメラ取付部が通常のJISタイプなので、αボディに取り付ける場合は付属のアダプタを使用する。電源は単3形電池4本
 ソニーαのアクセサリーカタログを見ていたらリングライトHVL-RLAM(34,650円)という製品に目がとまった。これはレンズの先端に取り付けて使うリング状の照明装置だ。フィルムカメラの時代は光源にキセノン管を使用したストロボタイプが主流だったが、デジタル時代を迎えた現在では、撮影時には色温度のことを気にしなくて済むようになり、光源にバリエーションが増えた。HVL-RLAMの光源は白色LED。ストロボタイプは露光の瞬間しか発光しないが、LEDを使用するタイプは常時点灯しているのでファインダーで照明の効果を見ながら撮影できる。ただしストロボほど光量が大きくないので、被写体までの距離が遠いと光量不足になりやすい。

 ストロボは発光時間が短く、手ブレが防げるというメリットがある。だが、シャッタースピードを遅くてしもストロボ発光露出不足は解消できない。これに対し、常時点灯タイプはシャッタースピードを遅くすれば光量不足が補える。要するにα700のように手ブレ補正機能を内蔵したカメラならシャッタースピードを遅くしても手ブレがしにくいので、このような常時点灯タイプと相性が良い。それにいざとなればデジタルカメラにはISO感度アップという伝家の宝刀がある。というわけで、今回のテーマは、マクロレンズにリングライトHVL-RLAMを組み合わせた花の接写。それからストロボタイプのマクロツインフラッシュキットHVL-MT24AM(72,450円)も一緒に借りることができたので合わせてレポートすることにしたい。

 今回の撮影に選んだレンズは50mm F2.8 Macroと100mm F2.8 Macro。2本ともフィルムカメラ時代の光学系を継承したマクロレンズだ。

 最初は50mm F2.8にHVL-RLAMを装着。アダプタをフィルター取付部にねじ込み、これに発光部を装着する。電源部は別になっていてカメラ側のアクセサリーシューにオン。ここで笑ってしまったのはα専用アダプタを使用しないとカメラに取り付け不可能なこと。電源部のフットは通常のJISタイプだが、αボディのシューはα独自の形状なのでアダプタがないと装着できない。HVL-RLAMとカメラ側の連動機能は一切なく、物理的に固定する機能のみ。当然他社のカメラにも使用可能なので、恐らく汎用性を重視した結果だろう。

 ただせっかくソニーがα用として売るのだから、αタイプのフットにしても良いのではないだろうか。他社のカメラに使うのなら、αタイプのフットをJISに変換するアダプタを用いれば良い。と書いたところで、ソニーのホームページを見たら、このアダプタが見当たらない。どうもコニカミノルタからソニーに変わった時点で整理されたようだ。いずれにしてもHVL-RLAMに同梱されているアダプタがないと、α700には取り付け不可能。αユーザーは、撮影のときにこのアダプタを持って行くのを忘れないようにしなければならない。


HVL-RLAM電源部の背面には、光量の切り替え、発光面の選択用スイッチを装備
 HVL-RLAMは、光量の切り替えのほか、発光部の半分を消して立体的なライティングができるが、とりあえず全部点灯を選び、光量をH(高輝度)にして電源スイッチをオン。ファインダーを覗いてみると劇的に明るくなったいう感じがしない。だが、これは1m以上離れた花を狙っていたから。そこでレンズ面からから10cmくらいまで近づいてみたら確かに明るくなっている。HVL-RLAMの光量はそれほど強くないので、被写体が近くにないと照明の効果が思うように得られないのだ。

 当然のことだがレンズを100mmに交換しても結果は同じで、HVL-RLAMの照明が届く範囲だと撮影倍率がかなり高くなってしまう。要するにHVL-RLAMは、ワーキングディスタンスが短い撮影に便利なアクセサリーなのだ。しだがってαに使うなら50mm Macroがベスト。ただし、この50mmはフィルム時代のマクロレンズの流用である。本来ならば焦点距離35mm程度のデジタルカメラ専用マクロがあると、真価が発揮できるのではないか。

 とにかく作例の撮影は高倍率の接写に絞ることに決定。至近距離でHVL-RLAMのスイッチを切り替えて試してみたら、全点灯のHで約1絞り、Lで1/2絞り分の光量がアップすることが分かった。当然1/2点灯を選べば光量は半分になる。また撮影場所の明るさにもよるが、倍率1/2倍のときの適正露出は、ISO100で、F4、1/15秒くらい。α700の手ブレ補正能力が優れているとはいえ、これだけ倍率が高いと手ブレの危険性はかなり高い。また撮影距離が短いので被写界深度も極端に浅くなり、ある程度の被写界深度を得るため絞りはできるだけ絞りたい。そこでISOを400に設定した。また今回のようにある程度外光が明るい場合、発光面を半分にしても、顕著な違い認められなかった。そこで全面発光を選択。さらに輝度がL(Low)では、ほとんど照明の効果が得られないのでHで使い続けた。


発光面には全部で60個の白色LEDを使用。写真は全点灯させた状態 発光面の1/2を任意に発光させることもできるが、明るい場所だとあまり効果がわからない

HVL-MT24AMをα700にセットした状態。発光部を取り付ける位置を変えられるほか、延長用ステー、ディフューザーなど、さまざまなアクセサリーがセットになっている
 マクロツインフラッシュキットHVL-MT24AMはミノルタ時代からある接写用ストロボ。2つある発光部が着脱式になっていて、これをレンズに取り付けたリングの任意の位置にセットして使用する。さらに2つ発光部の発光量の比率は可変式。メインライトとアクセントライトして使えるので本格的なライティングができる。さらにADI調光を採用しているので、α700と組み合わせて正確な調光が可能である。またHVL-RLAMとの決定的な違いは光量で、ガイドナンバーは最高で24。被写体までの距離が遠くても露出不足になりにくいし、絞り込んでもOKだ。

 ストロボが発光する時間は数千分の1秒と非常に短く、手ブレの影響を受けにくい。ただし、今回のようにネイチャーフォトで使用する場合、メインの被写体は明るく写るが、背景などストロボ光の届かない部分は露出不足になってしまう。これを防ぐにはシャッタースピードを遅くするしかないが、今度は手ブレが問題になる。つまりα700の手ブレ補正機能は低速シンクロ時にも威力を発揮するというわけ。

 このほか、HVL-MT24AMは発光部の面積が狭いので影がシャープになり、メリハリのある描写になる。もちろん付属のディフューザーを使えばソフトにできるが、HVL-RLAMはもともと発光部の面積が広いので光質は軟らか。このあたりは違いは作画意図によって使い分けるしかないが、実際に撮影をするうえで決定的な違いはワーキングディスタンスだろう。ということで、今回の撮影では、HVL-RLAMには50mm Macro、HVL-MT24AMには100mm Macroを組み合わせることにした。


AB2つある発光部は光量比を自由に変えることができる
コントロール部背面にある操作部。多機能の割に操作部はシンプルだ

HVL-RLAM+50mm F2.8 Macro


  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下のデータは絞り/シャッタースピード/露出補正値です。
  • 特記しない限り、4,272×2,848ピクセル/マルチパターン測光/絞り優先AE/ISO400/WB:5,500K/クリエイティブスタイル:Vivid/Dレンジオプティマイザー:アドバンスドオート/HVL-RLAM全点灯(H)で撮影しています。


自然光のみ
F6.3 / 1/8秒 / +0.3EV
F6.3 / 1/1/25秒 / +0.3EV
HVL-RLAMを使用したことで、シャッタースピードが、1.5段速くなった。光が全体に回り、より鮮やかに見える

自然光のみ
F6.3 / 1/320秒 / +0.3EV
F6.3 / 1/1/320秒 / +0.3EV
完全に逆光なので、自然光のカットでは花の中央部が暗くなっている。これに対しHVL-RLAMを使用したカットは中央部が明るくなった。このようにレフ板的な使い方もできる

F2.8 / 1/320秒 / 0EV
高倍率の接写の場合、絞り開放だと被写界深度が浅くなりすぎるので、絞りを絞って使うことが多い。ただし絞りを絞るとシャッタースピードが遅くなり、手ブレの危険度が増す。この点、手ブレ補正機構を内蔵したカメラだと安心だ
F8 / 1/1/40秒 / 0EV
また、手持ち撮影では、カメラが前後することによってピンボケが起こりやすい。これはカメラの手ブレ補正機構では解決できないが、絞りを絞ることで被写界深度が深くなり、かなりの確率で回避できる

F5 / 1/30秒 / -0.7EV
かなり暗い条件でもHVL-RLAMを使えばシャッタースピードがアップするので、手持ち撮影もOKだ
F5.6 / 1/30秒 / 0EV

F4 / 1/30秒 / 0EV / WB:4,700K
HVL-RLAMの光量は温室で花の接写をするのにちょうど良く、背景との適度な露出バランスが得られる
F2.8 / 1/200秒 / 0EV / WB:4,700K
絞り開放だと被写界深度が極端に浅くなるので、慎重にピントを確認しないとボケてしまう。この点α700のフォーカシングスクリーンはピントのヤマが分かりやすく使いやすい

F8 / 1/13秒/ +0.3EV / WB:4,700K
F7.1 / 1/20秒 / +0.3EV
約等倍で撮影。ワーキングディスタンスが短いので、ある程度絞りを絞っても手持ち撮影ができる

HVL-RLAM+100mm F2.8 Macro
F6.3 / 1/50秒 / +1.3EV / WB:4,700K
100mm MacroにHVL-RLAMを組み合わせた場合、被写体までの距離が離れると露出不足になるが、近距離なら大丈夫だ

HVL-MT24AM+100mm F2.8 Macro


  • 特記しない限り、4,272×2,848ピクセル/マルチパターン測光/絞り優先AE/ISO100/WB:6,700K/クリエイティブスタイル:Vivid/Dレンジオプティマイザー:アドバンスドオート/HVL-MT24AM発光部ABフル発光で撮影しています。


発光停止
F5.6 / 1/80秒 / OEV
F5.6 / 1/125秒 0EV F5.6 / 1/60秒 / 0EV
シャッタースピードを1段遅くしたことで、背景を明るくすることができた

F5.6 / 1/165秒 / 0EV F5.6 / 1/125秒 / 0EV / ISO200 F5.6 / 1/20秒 / 0EV / ISO200
滝の前に咲くアンセリウムを高速シャッターと低速シャッターで撮り比べ。かなりボケてはいるが、低速シャッターの方が水の流れがブレているのがわかる

F5.6 / 1/80秒 / 0EV / ISO100
スローシンクロしないときのシャッタースピードは1/200秒だったが、AEロックボタンを押してスローシンクロにしたところシャッタースピードが1/80秒に下がり、全体に明るく清々しい雰囲気になった
F6.3 / 1/20秒 / 0EV / ISO200 / 発光部Aフル、B1/4発光
発光部Aをトップライトとし、Bを下からの補助光に使用。シャッタースピードを遅くしたことで、背景が適度な明るさになった

F5.6 / 1/125秒 / 0EV / ISO200
通常よりシャッタースピードを約1段遅くした結果、背景が明るくなった

 すでに本文で説明した通り、LEDを使ったHVL-RLAMはデジタルカメラと非常に相性が良い。常時点灯タイプなのでモデリングランプとして使用可能。特にマニュアルフォーカスを多用するマクロ撮影ではとても便利だ。ただし光量はそれほど大きくないので、どちらかというと高倍率の接写向きだ。また植物園の温室など、ある程度の明るさがある条件なら、それほど背景が暗くならずに済む。さらに常時点灯させていると電池の消耗が心配だが、実際に使ってみると想像以上に電池が長持ちし、200カット程度の撮影なら難なくこなすことができた。

 HVL-MT24AMは、発光部の位置を変えたり、2灯ある発光部の光量比を変えたりと、かなり本格的なライティングができる。また低速シンクロを使用した場合、α700なら手ブレ補正機構が利用できるので安心して手持ち撮影ができる。ただ今回の撮影では手ブレ補正スイッチがいつのまにかオフになっていて、HVL-MT24AMを使ったカットでは手ブレ補正機構が作動していなかった。いずれにしても私の不注意だが、できればスイッチにロック機構を設けて欲しい。

 HVL-MT24AMもα700との相性は良いが、値段が高いことが最大のネックと言えるだろう。多機能なので高度なテクニックが駆使できる反面、気軽に使うにはちょっと足踏みをしてしまう。それからHVL-RLAMなら他社製のカメラにも用可能。このような汎用性やコストパフォーマンスを考えるとHVL-RLAMがお勧めである。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700
  ソニーα700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(現在進行中・2008年終了分)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/02/04 13:47
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