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ソニーα700【第3回】
Dレンジオプティマイザーで夜景を撮る

Reported by 中村 文夫


今回の撮影には、キットレンズのDT 16-105mm F3.5-5.6のほか、フィルム時代に発売されたミノルタAF 28mm F2を使用した。このレンズの画角は35mm判の42mmに相当。開放F値も明るいので、夜景を手持ち撮影するには、持って来いだ
 前回のレポートでも紹介した通り、Dレンジオプティマイザー(DRO)が気に入って、Dレンジオプティマイザーオート(DR+)をデフォルトの設定にして撮影を続けている。ほとんどの条件で満足のゆく結果が得られるが、ひとつ気になるのは夜景など暗い場所で撮影すると見た目により明るく写ってしまうこと。今回は、この問題を解決する方法を探ってみたいと思う。

 まず最初に、DR+オンとオフで同じ被写体を撮り比べてみた。DR+ではハイライトを押さえたり、暗部のツブレを軽減するなど、各エリアごとに微調整を行っているが、DROのオン/オフに関わらず全体に明るくなることに変わりはない。


α700の測光は、メニュー表示ではなく専用レバーで切り替える方式。今回は使わなかったが、スポット測光とAEロックを組み合わて、最適な露出を求める方法もある
 次に疑ったのは測光モードである。いつもは分割測光を利用しているが、試しに中央重点測光に切り替えてみた。作例を見れば分かる通り、これもほとんど差は出なかった。

 私のこれまでの経験では、分割測光を利用して露出を決めた場合、輝度が暗いと自動的に夜景と判断し、少し暗めに露出を調節するカメラが多い。分割測光の測光値は画面内の輝度の分布や明暗差によって大きく変化するので、今回の撮影結果だけから判断するのは早急かも知れないが、α700のようなデジタルカメラでは暗部のつぶれを防ぐ意味で、露出を明るめに設定しているのかも知れない。

 いずれにしても、夜景を自分のイメージ通りに仕上げるには、露出補正機構を使って露出をアンダーに補正するしかない。ただ、ここで問題になるのが補正量である。デジタルカメラの場合、撮った画像がその場で確認できるので、段階的に露光してベストの補正量を決めることが可能だが、街をぶらぶら歩きながら撮影する場合など、この操作はかなり面倒。それにカメラの液晶モニターではOKに見えても、PCのモニターで見たりプリントアウトすると気に入らなかったりすることもある。

 そこで今回は、夜景撮影時における補正量のデータを作ることにした。とりあえず「こんな条件のときはマイナス○段補正」といった感覚を頭の隅に入れておくと、何かと役に立つ。分割測光が出始めの頃、カメラが勝手に露出補正をするモードであることに加えメーカーや機種が変わるとアルゴリズの違いによってに露出に差が出るので、徹底的に使い込んでカメラのクセを知るとが重要だとよく言われた。デジタルカメラの場合、露出以外にさまざまな要素が絡み合っているのでフィルムカメラのように単純ではないが、やはりそのカメラのクセを把握することが大切だと思う。


α700で夜景を撮影するときは、-0.7~1EV補正が基本になる
露出補正は、ボディ上面の補正ボタンを押した後、前後のダイヤル、マルチセレクターのいずれかを操作して補正量を決める方式。3通りの操作方法が選べるのでとても便利だ。私のお気に入りは後ダイヤルを使う方法




作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため、一部の項目を1行目に抜粋した場合もあります。


DR+・分割測光
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:電球 / 20mm
DR・分割測光
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:電球 / 20mm

DRO OFF・分割測光
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:電球 / 20mm
DROアドバンスオートLv5・分割測光
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:電球 / 20mm

 同じシーンを中央重点平均測光で露出を決めて撮影。分割測光では1/4秒だったシャッタースピードが0.3秒になり、ほんの少し露出が明るくなったが、全体のイメージは変わらない。


DR+・中央重点測光
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:電球 / 20mm




 ある程度輝度差のある条件で1/3段きざみでマイナス補正して撮影。0.7EVマイナス補正したカットが、私のイメージに一番近い。


DR+・露出補正なし
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F4 / ISO400 / WB:電球 / 18mm
DR+・-0.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/5秒 / F4 / ISO400 / WB:電球 / 18mm

DR+・-0.7EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/6秒 / F4 / ISO400 / WB:電球 / 18mm
DR+・-1EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/8秒 / F4 / ISO400 / WB:電球 / 18mm

DR+・-1.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/10秒 / F4 / ISO400 / WB:電球 / 18mm




 輝度差の少ない条件で撮影。補正なしは明るすぎてまるで昼間のようだ。1EVマイナスくらいがちょうど良い。


DR+・露出補正なし
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/8秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm
DR+・-0.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/10秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm

DR+・-0.7EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/10秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm
DR+・-1EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/15秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm

DR+・-0.7EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/10秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm
DR+・-1EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/15秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm

DR+・-1.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/20秒 / F3.5 / ISO400 / WB:電球 / 16mm




 輝度差の激しい条件で撮影。ショーウィンドーがかなり明るいので、1EV以上マイナス補正しないと夜景らしく見えない。-1EVあるいは-1.3EVがベストカット。


DR+・補正なし
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/4秒 / F5.6 / ISO400 / WB:電球 / 20mm
DR+・-0.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/5秒 / F5.6 / ISO400 / WB:電球 / 20mm

DR+・-0.7EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/6秒 / F5.6 / ISO400 / WB:電球 / 20mm
DR+・-1EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/8秒 / F5.6 / ISO400 / WB:電球 / 20mm

DR+・-1.3EV補正
DT 16-105mm F3.5-5.6 / 4,272×2,848 / 1/10秒 / F5.6 / ISO400 / WB:電球 / 20mm




 これも輝度差の激しい条件だ。TEXACOのアンドンと背景のバランスがいちばん良いのはマイナス1EV補正したカットだろう。


DR+・露出補正なし
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/15秒 / F2.8 / ISO400 / WB:電球 / 28mm
DR+・-0.3EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/20秒 / F2.8 / ISO400 / WB:電球 / 28mm

DR+・-0.7EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/20秒 / F2.8 / ISO400 / WB:電球 / 28mm
DR+ -1EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/30秒 / F2.8 / ISO400 / WB:電球 / 28mm

DR+・-1.3EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/40秒 / F2.8 / ISO400 / WB:電球 / 23mm




 シャドー部の多い条件で撮影。補正なしのカットはハイライトが飛んでしまいボンネット曲面が上手く再現できていない。マイナス0.7か1EVマイナス補正すると質感がアップ。ボディの明るさが適度になり、暗い背景とのバランスも良くなる。


DR+・露出補正なし
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/25秒 / F3.2 / ISO400 / WB:電球 / 28mm
DR+・-0.3EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/30秒 / F3.2 / ISO400 / WB:電球 / 28mm
DR+・-0.7EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/40秒 / F3.2 / ISO400 / WB:電球 / 28mm

DR+・-1EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/50秒 / F3.2 / ISO400 / WB:電球 / 28mm
DR+・-1.3EV補正
AF 28mm F2 / 4,272×2,848 / 1/60秒 / F3.2 / ISO400 / WB:電球 / 28mm




まとめ

 できるだけ違う条件で比較をしてみたが、意外なことに、どの作例でも-0.7~1EVマイナス補正したカットが、一番夜景らしく見える。すでに本文でも述べた通り、α700の画像はDROのオン/オフに関係なく、暗い条件だと見た目より明るく写る傾向がある。夜景を夜景らしく表現するには、-0.7EVと-1EVマイナス補正した2カットを撮影しておけば大丈夫だ。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700
  ソニーα700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(現在進行中・2008年終了分)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm



中村 文夫
(なかむら ふみお) 1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2008/01/28 00:00
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