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左からZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macroを装着したE-3、FL-50R×3台
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某月某日、編集部から荷物が届く。担当者からストロボを送ると言われてはいたのだが、みょうに重い。「なんでだろ~(古すぎ)」とかつぶやきつつ開けてみると、同じサイズの銀色の化粧箱が3つ。思わず「なんでやねん」である。
箱の中身はもちろん、エレクトロニックストロボFL-50R。E-3と同時に登場したワイヤレス機能搭載の大光量&多機能ストロボである。
E-3とFL-50RまたはFL-36Rは、新開発のRCデータトランスファー方式を採用していて、A~Cまでの3つのグループを個別にコントロールできる。各グループで使用できるストロボの数は最大3台までは推奨されているので、合計9台まで使えることになる。FL-50RとFL-36Rの混在も可である。もっとも、6万5,625円もするストロボを9台も買う人がいるとも思えないが。
調光方式はプリ発光によるTTLオート、絞り値に合わせてストロボ側の受光部で調光を行なうオート(いわゆる外光オートである)、マニュアルのほか、スーパーFP発光を行なうFP-TTLオート、FP-マニュアルの5モード。オート時は±5段の調光補正、マニュアル時は1/1~1/128の範囲で発光量の調整が可能だ。
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エレクトロニックストロボFL-50R。従来のFL-50にワイヤレス機能などを追加したモデルだ。写真はストロボスタンドFLST-1を装着した状態
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付属のバウンスアダプターFLBA-1を装着した状態。若干だが光を拡散する効果がある
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こちらはリフレクターアダプターFLRA-1を装着した状態。ゴムバンドで固定する仕組み。発光部の側面にも装着できる。キヤノンやニコンは内蔵式だが、あちらは縦位置でのバウンスに対応できない
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E-3の内蔵ストロボはワイヤレスストロボのコマンダーも兼ねている。別売にすると2~3万円はしてしまうコマンダーを買わなくていいのはありがたい
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ワイヤレスストロボを使うには、カメラとストロボをRCモードに切り替えればいい。ストロボ側はA~Cのどのグループに割り当てるかなども設定しないといけないし、混信防止のためのチャンネル設定(4つのチャンネルが選択できる)もしないといけないが、たいした手間ではないし、それさえやってしまえば、あとはカメラ側から全部コントロールできる。
さて、FL-50RにはストロボスタンドFLST-1が付属している。このスタンドを使って適当な場所に置いたり、三脚やライトスタンドに載せたりできる(三脚ネジ穴がちゃんと金属製だったりするのはえらい)。もちろん、手で持っててもいいが、固定できたほうがラクチンだ。
直接当てると光が硬い(きつい影が出る)ので、バウンスなりディフューズなりしたほうがいいが、手っ取り早いのは天井や壁などにバウンスさせる方法。ただし、壁紙が真っ白じゃないと色が乗るので注意が必要だ。複数のストロボを使ってライティングするのであれば、ディフューズボックス(筆者は銀一で売っているPhoto Cube Proを使っている)のたぐいを利用したほうがいいと思う。
で、ブツ撮り用のスタンドやら三脚やらを駆使してセットをでっちあげて、ワイヤレス多灯にチャレンジしてみた。ただ、写真電球などの定常光照明と違って、ストロボ光は瞬間光なために、肉眼では光量の強弱や光の当たり具合などをつかむことはほとんど無理である。なので、撮っては調整、撮っては調整の繰り返しで煮詰めていくことになる。
必然的にシャッター数はものすごく増えることになるので、今回はOLYMPUS Studio 2のカメラコントロール機能を使うことにした。というのは、RAW+JPEGのSF(スーパーファイン)だとデータサイズがかなり大きくなってしまうため、CFでは容量が心配だったのと、画像のチェックをPCの画面で行なえるからだ。
なにせストロボが3台もあるので、ストロボの固定だけでも面倒なのに、それぞれの光量の調整とかも考えなくてはいけない。シャッターを切ってはストロボの位置を動かしたり、光量をいじったりしていると、どんどん時間を食うことになるし、画像の数もどんどん増えていく。結局、電池切れ休憩を挟んで400枚(RAWとJPEGの1組を1枚として)以上撮るハメになってしまった。
が、光量の微調整とかはカメラ側から行なえるので、その点はラクチン。いちいちストロボのそばまで行ってボタンを操作したりする必要がない。各グループごとの調光モードを変えるのも、調光補正や発光量の調整も、すべてスーパーコンパネ上で可能。「OK」ボタンを押して、十字キーとダイヤル操作でオールばっちりなのである。
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メニューの「RCモード」をオンにすると、内蔵ストロボがコマンダーモードに切り替わる
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ストロボ側は「MODE」ボタンを押して「rC」を表示させる。左下に出ているのがチャンネルとグループ。「C1 A」はチャンネルが1で、Aグループという意味
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RCモード時のスーパーコンパネ。操作方法は普通のスーパーコンパネと同じである。右側は上から、通常発光とFP発光の切り替え、通信用発光の発光量の切り替え、チャンネル
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TTLオート、外光オート、マニュアルの3つの調光モードのほか、オフも選べる
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TTLオート、外光オート時は±5段の範囲で調光補正が可能
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マニュアル時の発光量選択画面。発光量は1/1から1/128まで。調整ステップが1/3単位という細かさなのに注目
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A~Cの各グループは別々に違う調光モードにもできる。スーパーコンパネは項目を選択した状態でダイヤルを回しても設定を変えられる。「OK」ボタンを押す手間が減らせるのもあるが、複数の項目をまとめて切り替えたいときに便利だ
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実はUSBケーブルを挿すと、コネクターが邪魔になって液晶モニターの回転角度が制限されてしまう。せっかくの可動式なのにね
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もっとも、こういうシステム自体はニコンD200なんかにもすでに装備されていたりするので、取り立てて騒ぐようなことではないかもしれない。が、いろいろな面で他社に後れを取っていたオリンパス(かつては「ストロボのオリンパス」と呼ばれた時代もあった)が、いろいろなところで遅れを取り戻しているのが見られるのは、筆者としてはうれしいことだったりするのである。
■ 作例
- 作例のリンク先は、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたファイルです。
- 撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します。
●その1
内蔵ストロボだと平板な上に影もきつくなってしまうが、カメラから離れた位置からFL-50Rを発光させると少しは自然な感じになる。それでもやはり影がきついので、反対側からレフ板を使って補ってみた。
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共通データ:ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル
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内蔵ストロボ(+0.7補正)
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右上方向からFL-50R(1台)をダイレクト発光(M 1/4)
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さらに左側にレフ板を使用
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●その2
FL-50R×1台を天井バウンスさせてみた。光が柔らかく回っていいのだが、ぬいぐるみのお腹のあたりがちょっと暗い。レフ板では補いきれなかったので、もう1台を丸レフにバウンスさせてみたら、天井と色味が違う分青っぽくなってしまった。壁紙がクリーム色なので、そちらに色を合わせると、丸レフとは色がそろわないのである。
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共通データ:ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 50mm
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内蔵ストロボ(+0.7補正)
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1台を天井バウンス(M 1/1)
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左右にレフ板を各1枚使用
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もう1台を右から丸レフにバウンスさせて発光(M 1/4)
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●その3
ムスメのおままごと用品である。こちらはPhoto Cube Proを使用し、3台のFL-50Rを上、右、左にセットしている。それぞれのFL-50Rがどこをどんな風に照らしているのかを見るのに、1台だけ発光させて撮ってみたりとかもする。で、影の出具合とかハイライトの入り具合とかを見ながらストロボの位置を調整するわけだ。
3台とも同じ発光量にすると、きれいに光が回る反面、メリハリがなくなってつまらなくなる。なので、適当にバランスを変えてやる。
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共通データ: ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル
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内蔵ストロボ(+1.0補正)
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上、右、左から各1台使用(各M 1/10)
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上のみ発光(M 1/10)
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右のみ発光(M 1/10)
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左のみ発光(M 1/10)
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上(M 1/13)、右(M 1/5)、左(M 1/40)
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●その4
ディフューズボックスを使うと光がよく回るので、トップ1台だけでもそれなりの写真になるが、メリハリに欠けてしまう(と言って、左右のどちらか1台だけだとちょっと不自然だったりする)。
まあ、トップ1台で、あとはレフ板で補うなどの工夫をしてもいいのだが、3台使ってそれぞれに強弱を付けてやると、光のバリエーションがいろいろとつくれる。
ただ、自然光と違って、まったく制約がないわけだから、やり出すとキリがなくなってしまう。セオリーはあっても正解はないと言ってもいいくらいなので、おハマり注意なのである。
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共通データ:ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 50mm
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上、右、左から各1台使用(各TTL +1.0補正)
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上のみ発光(TTL +1.0補正)
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右のみ発光(TTL +1.0補正)
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左のみ発光(TTL +1.0補正)
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上(TTL +3.0補正)、左右(TTL 0EV)
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右(TTL +3.0補正)、上と左(TTL 0EV)
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左(TTL +3.0補正)、上と右(TTL 0EV)
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●その5
いただき物の腕時計である(風防のホコリが気になるけど)。右奥からの1台はバウンスアダプターを使用してちょっぴり影をやわらげた状態。で、文字盤の暗くなっているところを上と左の2台で補ってみた。
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共通データ:シグマAPO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 3,648×2,736 / 1/60秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:マニュアル / 150mm
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右奥側からダイレクト(バウンスアダプターを装着)で1台使用(M 1/80)
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上(M 1/32)を追加
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左(M 1/32)を追加
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LEDを発光させた
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■ URL
オリンパス
http://www.olympus.co.jp/
製品情報(E-3)
http://olympus-imaging.jp/product/dslr/e3/
製品情報(FL-50R)
http://olympus-imaging.jp/product/dslr/accessory/flash/fl50r/
オリンパスE-3関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(現在進行中・2008年終了分)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2008.htm
北村 智史 (きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。最初に買ったデジタルカメラはキヤノンPowerShot S10。
ブログ:http://ketamura08.blog18.fc2.com/ |
2008/01/18 00:26
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