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キヤノンEOS 40D【第4回】
AF性能を電車でチェック

Reported by 奥川浩彦


新幹線を陸橋の上から撮影中
 筆者がEOS 40Dの購入を決めた理由のひとつが、AF性能の向上だった。EOS 40Dが発表されたとき、最初はAFポイントがEOS 20Dの9点と同じと知り、少々ガッカリした。しかし詳しく聞くと、9点全てがクロスセンサーになり大デフォーカス(大ボケ)対策もされたとのことで、これに期待して購入することにした。

 EOS 40DのAFの特徴は9点クロスセンサー、中央1点はF2.8対応とF5.6対応のクロスセンサー、ほかの8点はF5.6対応のクロスセンサーとなっていて、中央とその上下の3点の横検出センサーは千鳥配列センサーを配置し、大デフォーカス(大ボケ)対策がされている。

 と聞いても、クロスセンサーの方が従来のセンサーより良さそうなことや、大ボケ対策がされていることは理解できたが、F2.8対応、F5.6対応などの意味がわからなかった。メーカーやそのほかのサイトで調べた結果はこんな内容となった。

 まずクロスセンサーだが、従来のセンサーは横1本のラインセンサーとなっている。これを縦横2本で行なうのがクロスセンサーで、被写体の状況に応じてより高い精度でフォーカシングすることができる。EOS 20Dの場合、中央はF2.8対応の横ラインセンサーとF5.6対応のクロスセンサー、それ以外の8点はF5.6対応の横ラインセンサーを搭載しいてる。これに対しEOS 40Dは、中央にF2.8対応のクロスセンサー、中央を含む9点にF5.6対応のクロスセンサーとなっている。


EOS 40DのAFシステム(発表会の資料より)
EOS 40DのAFセンサー

 ではF2.8、F5.6対応とはなんであろう。このあたりの解説はメーカーホームページにあるEOS-1D Mark IIIのAFについて書かれているのが参考になった。「原理的に分解能力が高いF2.8光束センサーと、デフォーカス検知に優れたF5.6光束センサー」とあるように、より精度の高いフォーカシングではF2.8対応の方がよいが、大ボケ状態からの復帰など環境対応では、F5.6対応にもメリットがありそうだ。F2.8など明るいレンズは被写界深度が浅い。よって、より精度の高いフォーカシングが要求される。F2.8より明るいレンズを使用しているときは、F2.8対応クロスセンサーの高い分解能力が活かせるということだろう。

 筆者が所有するレンズの場合、EF 50mm F1.8やEF 200mm F2.8を使用するときは、EOS 20Dだと中央のF2.8対応ラインセンサー+F5.6クロスセンサー+8点のF5.6対応ラインセンサーだったのが、EOS 40DではF2.8対応クロスセンサー+9点のF5.6対応クロスセンサーが使えることとなる。EF 17-85mm F4-5.6 ISやEF 300mm F4 ISのときは、EOS20Dでは中央F5.6対応クロスセンサー+8点F5.6対応ラインセンサーだったのが、EOS 40Dの場合は9点F5.6対応クロスセンサーとなる。

 よって多くの場合、EOS 40DのAFはEOS 20Dより優れていることになるが、EF 17-85mm F4-5.6 ISやEF 300mm F4を使用したときにAFポイントを中央1点で撮る場合、どちらもF5.6対応クロスセンサーとなり差がないことになる。

 EOS 40Dを入手したのが8月末、最初の実践投入は翌週末にプライベートで撮りに行った全日本モトクロス近畿大会だった。この日の最初の撮影でジャンプするライダーを背後から縦位置に構え1点AFで撮ってみたところ、EOS 20Dよりは合焦がよくなったのが第一印象だった。午後から雨模様となった上、撮影ポイントからブラインドとなる崖下からライダーが飛び出してくるシチュエーションでは、さすがにピントを外すケースが増えた。だがトータルではEOS 20DよりかなりAF性能は向上した印象だった。前回の航空機の撮影はそれほどAF性能を要求しないこともあり、EOS 20Dとの差をあまり感じなかった。そこで今回は電車をテーマにしてEOS 40DとEOS 20Dの2機種で比較撮影を行ってみた。


センター固定では大ボケが減少

 最初は筆者の地元、名古屋鉄道(通称=名鉄)の駅ホームで通過列車の撮影。レンズはEF 300mm F4 ISで、AFポイントはセンター固定、AIサーボ。三脚を使用している。本来ならEOS 20DとEOS 40Dに差はない条件での撮影だ。この評価では撮れた画像のピントには差がなかったが、大デフォーカス対応センサーの効果なのか、大ボケには大きな差が見られた。

 ボケた元画像を掲載しても意味はなさそうなので、ZoomBrowser EXでAFポイントを表示したスクリーンショットを見ていただきたい。EOS 20Dは列車のライトが中央センサーに近付くとピントを見失うケースが多発した。それに対しEOS 40Dは一度も発生しなかった。この撮影に限らずピントを見失う大ボケはEOS 40Dになって大幅に減少した。完璧とは言えるほどではないが、EOS 20DでEF 300mm F4 ISに×1.4のテレコンバーターを使用した場合に多発した大ボケが、数分の一になった感じだ。

  • 画像のリンク先はZoomBrowser EXでのAF測距点表示をキャプチャしたJPEGファイルです。


●EOS 20D

 EOS 20Dでは、AFポイントにヘッドライトが近付くとピントを見失うことが多かった。







●EOS 40D

 EOS 40Dでは、AFポイントにヘッドライトが近付いても大きくボケることはなかった。







9点すべてを使用すると……

 次はEF 200mm F2.8を使用して9点全てのAFポイントを使っての比較だ。レンズは焦点距離200mm(35mm判換算320mm)を使用。真っ正面から向かってくる車両が撮れる場所が見つからなかったので、斜めから手持ちでの撮影となった。筆者の腕によるフレーミング、手ブレのバラツキが結果に含まれているがご容赦いただきたい。

 名鉄は車両の種類が常時8種類くらい走っていて、車両によりピントが合いやすい場合とそうでない場合がある。また各駅停車は撮影ポイント手前の駅から加速するため、通過速度が遅い。そこで、比較的同じ速度で通過する準急や急行と同じ型の車両で比較してみた。かなり遠くから撮っているが、似たような位置から約1秒間撮影し、EOS 20Dで5枚、EOS 40Dでは7枚(秒6.5コマを四捨五入)の連続したコマを選んでいる。

 ピントの評価は主観が入る部分があるが、ビシッと合っているカット、そこそこ合っているカット、明らかにボケているカットに分けると、ビシっと合っているカットはEOS 20DもEOS 40Dも大差がない印象だ。逆に明らかにボケているカットはEOS 40Dの方が少ない。ここに掲載していない画像も含めての評価だが、結果として我慢すれば使えるカットは増えたことになる。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。


●EOS 20D

※共通データ=EF 200mm F2.8、1/2,000秒、F5.6、ISO200





※共通データ=EF 200mm F2.8、1/2,000秒、F5.6、ISO200





●EOS 40D

※共通データ=EF 200mm F2.8、1/2,000秒、F5.6、ISO200






※共通データ=EF 200mm F2.8、1/2,000秒、F5.6、ISO200






 厳密な計測器具などを使った評価だと違った結果になるかもしれないが、正直言って今回の条件では「劇的」、「完璧」といえるほどの変化は感じられなかった。といっても、モトクロスの撮影では明らかにEOS 40Dの方が良くなったと感じたのも事実。動きものの場合、2台のカメラで同一の比較がしづらい面もある。感想としては、「確実な進歩」と言ったところだろうか。

 筆者の場合、AFポイントを1点にして撮影することが多い。EOS 20DもEOS 40Dも同じ仕様となっている。これをできれば3点ずつぐらいにグループ化して選択できる仕様にして欲しいと思っている。例えば被写体を右側に置きたい場合、右端の1点と右斜め上下の2点、合計3点が選べれば運不運に左右されることが少なくなり、結果としてフォーカス精度が上がると思われる。操作性の問題は残るが効果は期待できると考えている。

 AFの性能とは直接関係ないが、疑問を感じる部分がある。EOS 40Dでは液晶モニターにAFポイントを表示する機能が追加された。撮った画像の上に9点のAFポイントから選択されたポイントが赤く点灯表示することが可能だ。このとき、フォーカスモードをワンショットに設定した場合は問題ないのだが、AIサーボに設定した場合の表示が怪しい。AIサーボでAFポイントを1点にしたときは正しく表示されるのだが、9点にすると全部のAFポイントが点灯してしまう。よってどのポイントが選択されたかを確認することができないのである。ハッキリ言って意味がない。

 これはZoomBrowser EXで表示する場合も同じで、EOS 20Dで撮った画像はどのポイントが選択されたかが表示されるのに、EOS 40Dで撮った画像は全部のAFポイントが赤く点灯表示されてしまう。筆者としてはこれは仕様ではなく、バグだと思っている。動く被写体の撮影ではAIサーボを使うことが多いであろう。動く被写体だからこそどのAFポイントが使われたか確認したいはずだ。ファームウェアのアップデートなど、早期の対応を期待したい。

●ZoomBrowser EXでのAF測距点表示

  • リンク先はZoomBrowser EXでのAF測距点表示をキャプチャしたJPEGファイルです。


AIサーボで撮ってもEOS 20Dでは9点AFでも撮影結果にどのポイントでピントを合わせたかが反映されている EOS 40DはAIサーボで撮ると9点全部が点灯。確認する意味がない

右端のAFポイント1点で撮影。この場合は右端がピントを合わせやすい構図だが右斜め2点も加えられれば確率は向上するだろう この場合も右端1点で撮っているが、センターも加えられればF2.8対応のクロスセンサーが使える

下側(縦位置で右側)1点だが、左右斜め下か中央も加えてフォーカスしたい 新幹線は縦位置で右斜め下のAFポイントを使用して撮影。この場合はほかのポイントを使いたいと言うより、9点では少ないと感じる

作例

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


右端1点のAFポイントで撮影
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
ライトが上部にあり正面に模様があるせいか、この車両が一番ピントが合い易い印象だ
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

右端のAFポイントで撮っているが、ここまで近付くと中央のセンサーも使えそうだ
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
縦位置で右端のAFポイントを使用して撮影
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

普通列車は低速で通過するのでピントは合いやすかった
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm
右端1点で撮影。横位置では周りの景色に影響されそうで9点すべてをONにするのは使いづらい
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm

住宅街を走り抜ける車両。EF 300mm F4 ISで中央1点にするとEOS 20Dと大差なし
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 300mm
この時間は問題ないが、夕方になると窓を通り越して電車内にピントが合うケースもあった
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 300mm

被写体が近くて相対速度が上がっても、ピントは合いやすかった
EF 300mm F4 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 300mm
今回の新幹線のテーマはNEW700系。朝早くと夕方にしか通らないのがイマイチ。新幹線は縦位置で右斜め下の1点を使用
EF 300mm F4 L IS USM(x1.4テレコン使用) / 3,888×2,592 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 420mm

筆者のお気に入りは500系。この原稿も500系の車内で執筆中
EF 300mm F4 L IS USM(x1.4テレコン使用) / 3,888×2,592 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 420mm
一番ピントが合いにくいのが700系
EF 300mm F4 L IS USM(x1.4テレコン使用) / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 420mm

デザインなのか顔の角度なのか、300系はピントが合いやすい
EF 300mm F4 L IS USM(x1.4テレコン使用) / 3,888×2,592 / 1/1,000秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 420mm
200mmで背景も入れて撮影。左上に揺らいで見えるのが名古屋駅のJRタワーズ。MFで撮影
EF 200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/640秒 / F10 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 200mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/40d/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_40d
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#40d



奥川浩彦
(おくがわひろひこ)1961年、名古屋生まれ。パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報担当、2001年イーレッツの設立に参加。2006年、iPR(http://i-pr.jp)を設立し広報代理業とライター業で独立。写真を始めたのは学生時代にモータースポーツを撮りたかったから。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選経験あり。鈴鹿で開催されたF1日本グランプリは87年から20年皆勤賞。http://okugawa.jp/menu/

2007/10/17 00:05
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