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キヤノンEOS 40D【第1回】
20Dから40Dへ――高感度ノイズを比較

Reported by 奥川 浩彦


シグマの24mm F1.8 EX DG Aspherical Macroを装着
 「気になるデジカメ長期リアルタイムレポート」での筆者の連載担当は今回で5度目となるが、デジタル一眼レフカメラは3年前の「EOS 20D」以来2度目となる。前回EOS 20Dの際はデジカメWatchが始まったばかりでルールもあやふやなまま19回、5カ月も続けてしまったが、今回は普通に計8回、2カ月間お付き合い願いたい。

 コンパクトデジタルカメラは特にメーカーに対するこだわりはないが、一眼レフに関しては20数年前にA-1を買って以来、銀塩のEOSシリーズや、デジタルではEOS 20Dと、ずっとキヤノン製品を使い続けている。ほかのメーカーに興味がない訳ではないが、保有するレンズに縛られる部分もあり、しばらくはキヤノンユーザーであろう。

 一般的には旧機種であるEOS 30Dと今回のEOS 40Dを比較する記事が多いと思うが、個人的にはEOS 20DからEOS 40Dへ買い換えるユーザーが多いのではと思っている。EOS 30Dが出たときに編集部から「買わないんですか」と聞かれたが、筆者の印象は「せいぜい20D Nでしょ」と感じていた。液晶モニターが大きくなったことが気になったくらいで、買い換えるほどの魅力を感じなかったからだ。しかし、今回のEOS 40DはEOS 30Dから大きくスペックアップした印象だ。そう感じるEOS 20Dユーザー多いとすれば、約3年の時を経ていることもあり、買い換えるケースは少なくないであろう。

 EOS 40D発表前の予想スペックとして、「1,000万画素」、「ゴミ取り」、「大型液晶モニター」は必ず搭載されると思っていたので、買い換えるなら加えて「AF性能の向上」、「高感度ノイズの低減」、できれば「7枚/秒の連写性能」があれば、と考えていた。

 実際に発売されたEOS 40Dで、興味を引いた主なスペックは次の4点だ。

  • 9点クロスセンサー
  • ゴミ取り
  • 3型液晶モニター
  • 6.5コマ/秒


 逆にそれほど興味を感じなかったのは、これらの2点だろうか。

  • ライブビュー
  • ピクチャースタイル


 多くの一眼レフユーザーが好みの被写体を持っていると思う。スポーツ系や航空機、電車など動く被写体を撮る方もいれば、ネイチャー系や静物系と得意とする方もいるであろう。筆者の場合、最初に銀塩一眼レフを購入した理由がモータースポーツの撮影だったので、基本的には動く被写体を撮るのが好きで、それに適応したシステムを求めてきた。ライブビューに興味を感じない理由もその辺りで、必要な人には便利な機能だと思っている。

 EOS 20Dを3年間使って不満な点はオートフォーカスの性能、撮像素子へのゴミの付着、液晶モニターの視認性あたりだ。細かな点ではセルフタイマーの2秒がないとか、拡張機能の設定画面の操作性が悪いとかもあるが、我慢できる範囲だと思う。液晶モニターのサイズは時代の流れでいたしかたない。ゴミの付着も絞り込めば目立つが、実用的にはF11程度までしか絞っていなかったので、困るほどではなかった。動く被写体を撮ることが多かったこともあり、一番気になっていたのはオートフォーカスの性能だ。

 筆者が以前から使っている主な望遠レンズは、EF 200mm F2.8 LとEF 300mm F4 L、それに×1.4のテレコンバーターだ。EF 300mm F4 Lは銀塩EOS時代からのもので、かなりの年数を使用してきた。今年、手ブレ補正付きのEF 300mm F4 L ISに変更してから、さらにAF性能に疑問を感じ始めた。

 EF 300mm F4 L IS USMの実質的デビュー戦は鈴鹿8耐。手ブレ補正の効果はそれなりにあったのだが、何度もフォーカスを見失うことがあり、一度見失うとなかなか戻ってこないのである。特に×1.4のテレコンを使用してAFのポイントをセンター以外の1点に固定した場合に多発した。撮った画像を見てもやたらピンボケが多く、夕方の薄暗いシーンでは大半がピンボケとなり「買い換えた意味がないじゃん」と落胆してしまった。数週間後のスーパーGT ポッカ1000kmには、EF 300mm F4 LとEF 300mm F4 ISの2本のレンズを持ち込み、正面からの撮影はISなしを使用し、流し撮りではIS付きと使い分けてみた。

 先に発売されたEOS-1D Mark IIIのAF性能と高感度ノイズが大幅に性能アップしたとの記事を読み、そのDNAがEOS 40Dにも受け継がれることを期待していた。EOS 40Dが発表されたとき、AFポイントが9点で変更がないと聞いて少々ガッカリ、詳しく聞くと、9点全てがクロスセンサーになり大デフォーカス(大ボケ)対策もされたとのことで、これに期待して購入することにした。フォーカスの検証は今後色々なシーンで使用して結果を報告したい。

 まずはEOS 40DとEOS 20Dの外観から見ていきたい。正面から見るとペンタ部分などデザイン的には変更されているが、大差ない印象だ。

 背面を見るとこちらは大幅に変更されている。最初に目に付くのが液晶モニターの大きさ、それにともないボタンレイアウトが変更されている。モニターの視認性が上がったことは歓迎するが、慣れの問題かもしれないが液晶モニター周りりのボタンの操作性は悪くなった印象だ。明るい場所では問題ないが暗いところではINFOボタンを押そうと思ってほかのボタンを押してしまうシーンが何度もあった。個人的にはJUMPと消去のボタンの使用頻度が低いので、もう一工夫して欲しかったと思う。


EOS 40D(左)とEOS 20Dを正面から比較。ペンタ部分がやや太めになったが特に気になるところはない

背面は大きく異なる。特に3型液晶モニタ―はインパクトあり。ボタンレイアウトはやや使い難い印象

EOS 40Dの上面。サブディスプレイはやや大きく見やすくなった。ボタンの機能割付が変更されたので慣れが必要 EOS 20Dの上面。サブディスプレイにISO感度の表示がない。3年使ったのでまだこちらのレイアウトに慣れている

 新たに追加されたボタンとしてはイージーダイレクトボタン、ピクチャースタイル選択ボタン、AFスタートボタンがある。上面を見るとサブディスプレーが若干大きくなり、ISO感度の表示が追加された。その上のボタンは配置は同じだが、レイアウトが変更されている。この辺りも慣れの問題だが、手が覚えているだけに操作を間違うことが多い。新旧どちらが操作性がいいとは言えないが、変更する必要があったのかは疑問である。

 実際に撮影してみた。はたして高感度ノイズはより改善されたのであろうか。筆者がいつもノイズチェックなどで撮影しているオアシス21にEOS 40DとEOS 20Dを持ち込み撮影してみた。

 EOS 20Dの高感度ノイズにはそれなりに満足してた。ISO800くらいまでは充分実用範囲で、ISO1600も用途を限定すれば使えないことはない。EOS 40Dは画素数が1,000万画素を超え、高感度ノイズに関しては条件的に厳しくなっている。EOS 40Dには新たに高感度撮影時のノイズ低減機能が加わったので、この設定のあり・なしも含め比較してみた。

 低感度の画像はどれも充分ノイズが抑えられている。残念ながら高感度にした場合、EOS 20Dと比較してEOS 40Dは若干ノイズが増えている印象だ。EOS 20Dよりノイズが増えた点に関しては画素数アップの影響と思われる。

 とはいえ比較すればわかる程度で、別々の被写体だったら気付かない差だと思われる。新たに追加された高感度撮影時のノイズ低減機能はそれなりに有効で、太いパイプの暗部を比較すると、明らかにノイズが少ない結果となった。

 高感度撮影時のノイズ低減機能に関しては効果はあるが制約もある。この機能をオンにすると連続撮影枚数がJPEG最高画質で75枚(ISO100時)から7枚へ大幅に少なくなってしまう。物撮り等ならあまり気にならないが、スポーツ系の撮影などでは少々物足りないと感じるだろう。おそらくDIGIC IIIの処理速度が理由だと思うので、将来映像エンジンの速度が向上すればより実用的になると思われる。

 秒間5枚から6.5枚にアップされた連写性能は、思った以上に速くなった印象だ。最初はたかが1.5コマとも思ったが、パーセントにすれば30%アップだ。EOS 20Dの時は連写モードにしてシャッターボタンを押しても1枚で確実に止められたが、EOS 40Dに触れた当初は撮影モードを6.5枚/秒にして1枚だけ撮ろうとすると、連写してしまうことが何度もあった。上を見ればきりがないし、筆者の漠然とした7コマ/秒の希望よりは少ないが、確実に速くなったので満足している。


ノイズチェック

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • クリックすると、3,888×2,592ピクセル(EOS 40D)、または3,504×2,336ピクセル(EOS 20D)の画像が開きます。

 EOS 40DEOS 20D
高感度ノイズ低減 する しない
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200


作例

 ノイズチェックが夜景なので、今回の作例は夜景を中心に撮ってみた。作品作りを考えれば三脚を立てISO感度も低くして絞り込んで撮った方がいいのだが、一眼レフがしっかり固定できる三脚となるとそれなりに重く大きくなってしまう。高感度ノイズが少なければ、「チョット撮ろうか」と思ったとき、手持ちで撮影が可能になる。そんなシーンを想定して全て手持ちによる撮影を行ってみた。EOS-1D Mark IIIほどの驚きの低ノイズは期待外れに終わったが、サッサッと撮ってこれくらいの画質なら充分であろう。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • クリックすると、3,888×2,592ピクセルの画像が開きます。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


名古屋栄の観覧車を手持ちで撮影。この観覧車は携帯で撮っている人も多い。手ブレ補正があればコンパクトデジカメでも充分撮れる明るさだ
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/20秒 / F4 / -0.67EV / ISO400 / WB:オート / 22mm
テレビ塔を手持ち撮影。観覧車よりかなり暗め。手ブレ補正付のレンズを使用したのでISO800で撮影できた
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/20秒 / F4 / -2EV / ISO800 / WB:オート / 22mm

名古屋港の遊園地のメリーゴーランドを手持ち撮影。シャッター速度を落として動きを表現
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/15秒 / F4 / +1EV / ISO400 / WB:オート / 17mm
以下名古屋港イタリア村を手持ち撮影。より綺麗に撮るなら三脚を使用した方がいいがあえて使用せず
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/40秒 / F4 / -1EV / ISO400 / WB:オート / 17mm

AFポイント9点では右の壁に合焦したので中央1点にして撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/15秒 / F4.5 / -0.33EV / ISO800 / WB:オート / 17mm
店の入り口をシャッター速度1/8秒で手持ち撮影。レンズ内手ブレ補正を使用した効果は大きい
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/8秒 / F4 / -0.67EV / ISO400 / WB:オート / 17mm

右側の看板にフォーカスを合わせて撮影。三脚を使用して絞り込めば奥までピントが合うがここでは手持ち撮影
EF-S 17-85mm F4-5.6 IS USM / 3,888×2,592 / 1/13秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 17mm
以下24mmF1.8の単焦点で撮影。このシーンはやはり絞り込みたいので、手持ちより三脚を使用したい
24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro / 3,888×2,592 / 1/25秒 / F2 / -1EV / ISO800 / WB:オート / 24mm

全てホワイトバランスオートで撮っている。実際とは異なるが、DIGIC IIIは自然な色を出してくれる
24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro / 3,888×2,592 / 1/40秒 / F2 / -1EV / ISO800 / WB:オート / 24mm
噴水の像だがライトアップだけで上半分に照明がない。ストロボを使うと不自然になるのでそのまま撮影
24mm F1.8 EX DG Aspherical Macro / 3,888×2,592 / 1/50秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO400 / WB:オート / 24mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/40d/
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS 40D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#40d


( 奥川 浩彦 )
2007/09/26 12:37
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