- 作例下の撮影データは、使用レンズ / 記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/実焦点距離を表します。
- 画像をクリックすると3,888×2,592ピクセルの画像を開きます。
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海辺の撮影で乾いた砂なら直置きしても全く問題無しです。DPPで現像
EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 3,888×2,592 / 1/160秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / 130mm(もう1台のEOS-1D Mark IIIで撮影)
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EOS-1D Mark IIIを入手して早2ヶ月半、実は別件でデモ機を発売前から借り受けていたので使い始めてから約4ヶ月が経過しました。実際に自分で購入して2台体制になってから本格運用になりますが、今日現在の撮影枚数は2台合わせて約5万枚。EOS-1D Mark IIが3年間で2台合わせて50万枚でしたので、それよりも速いペースですが、夏季は撮影の機会が多いのでまぁ標準的なペースです。
EOS-1D Mark IIと同じペースで撮り続けると、3年で両機25万枚。EOS-1D Mark IIは公称通り20万枚までは好調でした。その後具体的な不具合は発生しませんでしたが、微妙な感触の変化が感じられるようになり、シャッターユニットとミラーユニットを交換。交換後は(外観はかなりボロボロでしたが)新品同様の撮影感覚が蘇りました。
しかし、このシャッターユニットとミラーユニットの交換費用が、部品・工賃とも通常の半額になるプロサービスでも5万円弱。2台合わせると10万円弱かかり、筆者にとっては痛い出費でした。
EOS-1D Mark IIIのシャッター耐久は、EOS-1D Mark IIの20万枚に対して50%UPの30万枚。公称通りに動いてくれれば、筆者個人が決めた耐用年数3年の間は持ちそうです。
発売価格がすでにEOS-1D Mark IIよりも約10万円安かったので、シャッター・ミラーユニットの交換も不要となれば1台で約15万円、2台で約30万円の経費節減が可能です。銀塩からデジタルに移行し、カメラはもちろんPCや周辺機器等の設備投資が尋常ではなくなりいわゆるデジタル貧乏(笑)な筆者には、耐久性能UPは大歓迎です。
デジタル貧乏といっても数十万枚分のフィルム代が浮くのでは? とお思いの方がいるかもしれませんが、筆者の仕事ではほとんど全てフィルム代は制作側、依頼主側持ちだったので、フィルム代が浮く恩恵には全く与れないのです。無論、制作側、依頼主側はその恩恵に存分に与れるので、逆に銀塩では予算的に不可能だった企画が、デジタル化で可能となったことも多々あります。
■ EOS-1D Mark IIと比べて
丸3年間働いてくれたEOS-1D Mark IIと比較して、以下の印象をEOS-1D Mark IIIに感じました。同一条件で試写して比較したのではなく、実際に仕事で運用して筆者の印象です。
●画質について
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新聞の字を読むのもままならない程暗い状況でした。AFはもちろん、ファインダースクリーンでのMF、フレーミングすら厳しい状況の中、ライブビューを用いています。ノイズはさすがに目立つものの、従来よりも確実に撮影の領域が広がりました。オリジナルJPEG
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO6400 / 25mm
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EOS-1D Mark IIの時点ですでに画質は実用上十二分でしたが、EOS-1D Mark IIIでは異質の向上を感じました。まず階調表現が非常に豊富になり、立体感が増しました。高輝度側階調優先機能を用いなくてもハイライトが粘るようになり、EOS-1D Mark IIでは躊躇していた片光のライティングも積極的に用いるようになりました。
また、高輝度側階調優先機能は非常に有効です。EOS-1D Mark IIではRAWの現像設定を変えた画像を複数作り、それらをレイヤーで重ねて全体のトーンとハイライトの白トビを抑えていましたが、EOS-1D Mark IIIではこの手間隙が大幅に省けるようになりました。
高感度時のノイズも大幅に低減され、従来では別途照明を用いらなければならないような低照度の状況でも、あえてその場の雰囲気を活かした撮影が可能となりました。
●AFについて
AFは任意で選択できる19点についてはクロスタイプとなり、EOS-1D Mark IIよりも格段に使えるカットが増えました。特に低照度、低コントラスト、逆光などAFが(MFでも)苦手とする状況での威力は絶大です。EOS-1D Mark IIでAFが効かなかった状況でも、EOS-1D Mark IIIは使えるカットを撮ってくれます。
ただAFの動きは変化しました。EOS-1D Mark IIはシャッターを半押しすればスパッとレンズが駆動し、即ピピッと鳴って合焦サインが出ました。実際にピントが合っていてもいなくても。EOS-1D Mark IIIはより高精度に合わせようと努めるようです。速度よりもじっくり合わせる雰囲気で、歩留まりは確実に上がりました。
唯一、他の機能・性能も含めての最大の不満点は、任意で選択できるAFエリアが19点に制限されてしまったことです。総エリア数は45点のままで、EOS-1D Mark III以前の機種は45点全てが選択できましたが、EOS-1D Mark IIIはクロスタイプとなった19点だけしか選択できません。19点以外は従来タイプだと思われますが、従来タイプが使い物になるかどうかの判断は撮影者に任せ、クロスタイプの19点のみか45点全点かの選択を切り替えられるようにしてほしいものです。
ところで巷で噂になっているAIサーボ時のAFですが、筆者はほとんど使用しないので良し悪しはよくわかりません。この点について友人のスポーツカメラマンに尋ねたところ、使えるカットはEOS-1D Mark IIIの方が断然に増えたが、完璧にピントが合ったカットはEOS-1D Mark IIの方が多い印象。とのことでした。
●使い勝手
EOS-1D Mark IIIからメニュー画面の操作性が大きく変わったので、最初は戸惑いましたが、自然と慣れました。また、今一歩改良の余地ありと思いますが、CF・SDメモリーカードの自動切換えは便利です。またCF・SD間のデータコピーを使えば、速度面で一線級ではなくなったメディアをストレージとして活躍させることができます。ライブビューは精密なピント合わせ、未知のアングルなど、様々な活用法が見出せそうです。
残念なのが、EOS-1Ds Mark IIIで搭載されたUDMA対応が間に合わなかったこと。「メディアへの書き込みが速くて困る」という撮影ジャンルは無いと思います。UDMA対応であれば高速連写性能をもっと活用できるはずですが、なぜEOS-1D Mark IIIに採用されなかったのか疑問に感じます。
■ 総括
細かい所で色々注文したい点は多々ありますが、画質やAF性能、耐久性など基本性能は大幅にUPし、今後当面は筆者のメインカメラ、として活躍してくれそうです。また初代EOS-1D Markからずっと筆者の酷使(10万枚単位の撮影枚数、海に水没、砂浜に直置きなど)にも耐え抜いた信頼感があります。安心して撮影に臨める仕事道具。それがEOS-1D Mark IIIです。
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オリジナルJPEG
EF 35mm F1.4 L USM / 3,888×2,592 / 1/60秒 / F2.8 / 0EV / ISO1000 / 35mm
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DPPで現像
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 30秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 30mm
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オリジナルJPEG
EF 35mm F1.4 L USM / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F1.4 / 0EV / ISO800 / 35mm
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オリジナルJPEG
EF 35mm F1.4 L USM / 3,888×2,592 / 1/125秒 / F1.6 / 0EV / ISO1250 / 35mm
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DPPからダイレクトにPhotoshop CS3に展開後、レベル補正とシャープネス処理を実施
EF 24-70mm F2.8 L / 2,592×3,888 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / 66mm
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オリジナルJPEG
EF 70-200mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F8 / -0.33EV / ISO200 / 93mm
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DPPからダイレクトにPhotoshop CS3に展開後、レベル補正とシャープネス処理を実施
EF 24-70mm F2.8 L / 2,592×3,888 / 1/160秒 / F3.5 / +1EV / ISO200 / 24mm
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■ URL
キヤノン
http://canon.jp/
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_dmk3
レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#1dmk3
( 野下義光 )
2007/09/12 06:39
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