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キヤノン EOS-1D Mark III【第7回】
格段に良くなった高感度ノイズ

Reported by 野下義光


便利だけど筆者には小さすぎ?

 EOS-1D Mark IIIで、キヤノンのデジタル一眼レフでは初搭載された機能のひとつにsRAWがあります。EOS 40DやEOS-1Ds Mark IIIにも搭載されているので、今後のキヤノンのデジタル一眼の標準機能になるのかと思われます。

 sRAWとはRAWでありながら、画像サイズ(ピクセル数)を小さくして記録する機能で、RAW現像時の機能・設定は全て活かしつつ、データ量が少なく、撮影時も後処理も保存も取りまわしが楽になるというものです。連続撮影枚数もRAW:30枚からsRAW:44枚にアップします。納品先である媒体から大きな解像度を求められていないものの、RAWの恩恵には与りたい場合には非常に便利です。

 以前、コダックのDCS Pro 14nというデジタル一眼レフカメラには、RAWのサイズを可変できる機能が搭載されており、キヤノンのデジタル一眼への搭載を切望していました。この度やっと念願が叶ったわけです。と、喜びたいところなのですが……

 このsRAW、単純にRAWのピクセル数を縦横半分にしただけの代物で、EOS-1D Mark IIIでは約250万画素。JPEGのスモールと同じピクセル数です。こんなに小さいと筆者にはほとんど使い道がありません(まれにはあるかもしれませんが)。

 どうせならJPEGと同じように4段階設けてもらえたのならかなり実用的に扱えたはずです。どのようなアルゴリズムでRAWを小さくしているのかまではわかりませんが、DCS Pro 14nは13.5MP、6MP、3.4MPの3段階が設けられていましたので、単純に縦横を半分以外も不可能ではないと思います。


sRAWもRAWと同様にJPEG同時記録も可能です
  • 作例のリンク先は、RAWから現像したJPEGファイルになります。
  • クリックすると等倍で3,888×2,592ピクセル、または1,936×1,288ピクセルで開きます。


RAWからDPPで現像した作例。元のRAWデータの容量は15.8MB。A/D変換が14bitとなり、RAWの容量も増えました こちらはsRAWから現像。元のRAWデータの容量は9.6MB。圧縮のアルゴリズムの関係なのか、ピクセル数は半分でも容量は半分にはなりません。DPPの設定は、ピクセル数以外はRAWと同一です

ISO800まで躊躇なく使用

 世代が代わるごとに改善される高感度ノイズですが、個人的にも新たな表現の幅を確実に広げてもらってきました。EOS-1D Mark IIIも例外ではなく、ノイズが許容できる感度が上がったので、従来ではあきらめていた暗い場所でも別途照明を使うことなく、あえてその場の雰囲気を活かした撮影を可能にしてくれました。

 同一条件での比較は今回初めて行ないましたが、実戦で使用(試用)した経験では、1EVのアドバンテージは確実に得られています。ノイズの許容レベルは観賞サイズや媒体、また個人の感覚にもよりけりですが、筆者はEOS-1D Mark IIではISO400以上感度を上げるには覚悟を決めていました。でもEOS-1D Mark IIIではISO800までは躊躇なく使用しています。

 また標準設定でISO3200、拡張機能を用いればISO6400までセットできます。最高感度まで上げるとさすがに相応なノイズが目立ってきますが、媒体によっては使用できるでしょうし、従来ではそもそも撮れなかった世界が撮影可能となりました。

 それから、今回新たに「高感度撮影時のノイズ低減」という機能が設けられました。この機能もEOS 40DやEOS-1Ds Mark IIIにも搭載されているので、これもまた今後のキヤノンのデジタル一眼の標準機能になるのかと思われます。

 JPEGもそうですが、RAWでもノイズ低減があらかじめ効いた状態で記録されてしまい、RAWであっても現像時に解除することはできません(DPPの設定でさらにノイズを低減させることは可能)。ノイズ低減の処理はそれなりにクセがあり、好みによってはない方が良いと感じることもあるでしょう。後から解除できないので、設定の際はあらかじめテスト撮影して、効果やクセを確かめておくと良いと思います。

 ちなみに筆者は好み云々以前に、連続撮影可能枚数が大幅に減ってしまうのを嫌い、通常は設定していません。例えばRAWの場合、ISO100:30枚→14枚、ISO3200:RAW→14枚といった具合です。


カスタムファンクションではISO3200から1EV上がったH(ISO6400相当)が設定できます
高感度撮影時のノイズ低減を「する」に設定すると、連続撮影可能枚数が大幅に減ります。また、この設定を撮影後の画像から確認できません

作例

 続々と発表・発売される新機種との比較も興味津々ではありますが、まずはひとつ前のモデルのEOS-1D Mark II Nとの比較をご覧ください。なお、EOS-1D Mark II Nにはもともと「高感度撮影時のノイズ低減」がありません。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • クリックすると等倍で3,888×2,592ピクセル(EOS-1D Mark III)、または3,504×2,336ピクセル(EOS-1D Mark II N)で開きます。

 EOS-1D Mark IIIEOS-1D Mark II N
高感度ノイズ低減 する しない
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS-1D Mark III)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_dmk3
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS-1D Mark III)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#1dmk3


( 野下義光 )
2007/09/05 15:32
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