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オリンパス E-510【第5回】
ノイズフィルタとシャープネスの関係

Reported by 北村 智史


 最初に「新製品レビュー」でE-510を扱ったときと違って、長期レポートは「ノイズフィルタ」をオン(標準)にして撮影している。取扱説明書によると、ノイズフィルタは「ノイズの処理レベルを選択」する機能で、「通常は[標準]に設定し、高感度撮影では[強]に設定することをおすすめします」と書かれている。なので、じゃあデフォルト状態で撮ってみようかと思ったわけである。

 画像を見た感じで言うと、ノイズフィルタは輝度ノイズやカラーノイズを低減しているようで、オンにすると、特に空のような平板な部分のザラツキが減る。反面、ノイズのエッジを滑らかにボカす処理をするので、被写体の細かい部分の情報が損なわれてしまう。つまり、アマくなってしまうわけだ。

 個人的には、後処理でノイズは消せるし、それよりもディテールを少しでも残したいほうなので、自前のE-410はノイズフィルタをオフにして使っている。その印象が頭に残っているせいもあるだろう、ノイズフィルタをオンにしたE-510の写りが少しばかりアマいように思えてしかたがない。

 そういうわけで、第1回で「なんとなくアマい気がする」と書いたら、読者の方から「それって絞りすぎでアマくなってるだけじゃないの?」とツッコミをちょうだいした。たしかに、絞りF11で撮ったカットだったから回折の影響もある。

 回折とは、乱暴に言うと、遮蔽物の影の部分にまで波が伝わる現象。写真で問題になるのは、おもに絞りのエッジ部分で起きるもので、絞り込んで撮影したときに像がアマくなる原因となる。絞りのエッジから十分に離れた位置をとおる光は直進するのに対して、絞りのエッジ付近をとおる光は回折して曲がってしまう。この曲がった光(回折光)はボケになるわけだが、絞りの窓が小さくなる(絞りを絞り込む)ほどその割合が大きくなる。つまり、アマさが目立つようになる。

 筆者の経験では、画面サイズの小さなフォーサーズの場合、絞りF11あたりからアマさが気になるようになる。アマくなるのを承知でF11で撮ったのだが、もう少しシャープに写るんじゃないのかなぁというイメージよりもアマめに感じられたものだから、「アマい気がする」と書いたわけだ。

 で、今回の本題。ノイズフィルタとシャープネスとの関係である。

 前から気になっていたのが、ノイズフィルタをオフにしたときに、「シャープネスはそのままでいいのか」という問題だ。ノイズフィルタは悪く言えばエッジをアマくする処理なわけで、それをオフにすれば解像力は上がる(と言うか、もともとカメラが持っている解像力が回復できる)。そこにさらにシャープネス処理が加わるのだから、カチッとしすぎてしまう気がするのである。デフォルトの状態(ノイズフィルタが標準でシャープネスが0)がウェルバランスなのであれば、ノイズフィルタをオフにした分、シャープネスを下げたほうがいいのではないかと思うのだ。


ノイズフィルタの画面。ノイズ処理でアマくなるのが損だと思う人はオフにするべし ノイズフィルタをオフにすると、シャープネスがきつい感じになるので、ピクセル等倍での見え具合を考えるとシャープネスは-2に設定するのがベターだ

 ただ、シャープネスの量をいくつにすればいいのか、というのが悩みどころで、絵柄とか被写体とかプリントサイズとかもあるし、悩んだあげくに考えるのが面倒になって、最弱の-2に設定してしまうことにした。シャープネスを-2に落としても、パソコンのモニター上で見ている分にはデフォルト状態よりシャープだし、シャープネスを上げるのは後処理でもできる。まあ、プリントするときとかに少々辛気くさい思いをすることにはなるだろうが、撮影時に悩むよりはマシだ。

 そう考えてしまうあたりは、筆者がRAWをメインにしているからで、あとで調整できることはあとで考えればいいと思ってしまうタチだからである。が、こういうやり方が誰にでも通用するわけではないし、人にすすめるのも気が引ける。なので、長期レポートはデフォルト設定で撮ることにした次第である。

 とは言え、ノイズフィルタをオフにしたほうがシャープな画になるのをわかっていて、わざとアマくなる設定で撮るのも楽しくないし、少し頑張ってみることにした。

 テスト方法はわりと簡単。ノイズフィルタ(オフ、弱、標準、強)とシャープネス(-2、-1、0、+1、+2)の掛け合わせで20コマ。これを各感度ごと(ISO100、200、400、800、1600相当)に計100コマ撮る。で、それを見比べるわけだ。

 が、パソコンのモニター上でピクセル等倍で見るのを前提にすれば、どの感度でもノイズフィルタがオフ、シャープネスが-2のセッティングがいちばんいい。ノイズフィルタをオフすると目立ってくるザラツキが、シャープネスを下げたほうが目立ちにくくなるからだ。これは低感度でも高感度でも同じで、シャープさを重視するのであれば、やはりノイズフィルタをオフ、シャープネスを-2にするのがベストだろう。

 ただし、プリントで見るのを前提にするなら、少し事情は違ってくる。ノートリ縁ありでA4サイズにプリントしたのを見ると(プリンター側の補正はオフにしている)、やはりノイズフィルタをオフにしたほうがシャープなのだが、さすがにシャープネス-2だとネムい。この画像の場合、±0でもいいかなぁ、という印象だ。まあ、シャープネスの量はプリントサイズや絵柄などによっても変わってくるし、個々人の好みにもよるところが大きいから一概には言えないが、後処理なしでプリントでの観賞がメインなら、-1か±0が手ごろなところかと思う。パソコンのモニター上での見え方を重視するなら-2にしておいて、プリント時にアンシャープマスクをかけるのがいいだろう。


 ちなみに、このノイズフィルタによって画質が変わる件については、すでにあちこちで話題になっていて(筆者もE-510のレビューで少し触れたが)、「どうしてわざわざアマくなる設定をデフォルトにしてるんだ?」的言葉も見られる。が、同様の処理はキヤノンのEOS Kiss Digital XやパナソニックのLUMIX DMC-LX2とかでもやっていたりする(同時記録のRAWとJPEG画像を見比べると、RAWはノイジーだがシャープ、JPEGは滑らかでちょっとユルいという違いが見られておもしろい)。これは筆者の勘だが、似たようなことはほかのカメラでもやっていて、オリンパスのように切り替えられないから見過ごされているだけではないかと思っている。

 おそらく、初心者には多少解像力が落ちてもノイズの少ない画像のほうがウケがいいと考えての処置だと思う。だから、取扱説明書にも「通常は[標準]に設定」するのがおすすめと書かれているのではなかろうか。オフや弱にしたときにどういう画質になるかといった、もう少し突っ込んだ説明が欲しい気もするけどね。

  • 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 作例下の撮影データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
  • 強調のため一部の項目を一行目に記述した場合もあります。


回折による画質劣化

 回折の影響をチェックするために、14-42mm F3.5-5.6の広角端で絞りを変えて撮り比べたもの。低価格レンズだけに絞り開放でのキレ味はもうひとつ。ということもあって、絞りF11でもまあまあ(ちょっとアマいけど)の画質。


F3.5
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/50秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
F4
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

F5.6
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/20秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
F8
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/10秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

F11
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/5秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm
F16
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/2秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

F22
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 14mm

 次は14-42mm F3.5-5.6の望遠端。いちばんシャープなのは絞りF8だが、絞り開放よりはF11のほうが若干いい。残存収差の量はレンズによって違うし、ローパスフィルターという“ボカシ要因”もあるので、公式どおりの結果とはならない。


F5.6
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/30秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm
F8
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/13秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm

F11
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6
3,648×2,736 / 1/6秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm
F16
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6
3,648×2,736 / 1/3秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm

F22
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/1.6秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 42mm

 14-42mmよりもできのいい50mmマクロの場合、いちばんシャープなのは絞りF4~F5.6あたり。F8でちょっぴりアマくなるが、F11でもまあまあ許容範囲と思える。


F2
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro
3,648×2,736 / 1/200秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
F2.8
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/80秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

F4
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/40秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
F5.6
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

F8
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/10秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
F11
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/5秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

F16
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/3秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm
F22
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/1.3秒 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 50mm

ノイズフィルタとシャープネス

ノイズフィルタ:標準、シャープネス:0。ピクセル等倍で見ると、デフォルト設定(ノイズフィルタがオフ、シャープネスが0)だと、少しアマさが目に付いてしまう。これが標準だと言われれば納得できなくもないけれど
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F4 / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
ノイズフィルタ:OFF シャープネス:0。ノイズフィルタをオフにすると、ぐっとシャープになる。が、ちょっとカチッとしすぎのような気もしてしまう
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F4 / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

ノイズフィルタ:OFF シャープネス:-2。シャープネスのきつさがなくなった。プリントでは少々ネムくなってしまうものの、パソコンのモニター上で見る分にはベストだろう
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F4 / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

作例

※以下はノイズフィルタ:OFF、シャープネス:-2に設定。特に記載のないものはNATURALで撮影しています。


厳密に言えば絞りF10だと回折の影響が出ているはずだが、この1コマだけを見ている分にはほとんど気にならないだろう。ピントさえちゃんと合えば、よく写るレンズなんである
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/250秒 / F10 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 14mm
四隅が少しアマいのと広角側のタル型の歪曲収差が気になるが、それ以外は十分なシャープさ
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/160秒 / F7.1 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 21mm

こういう細かい凹凸はデフォルトの状態だともう少しアマい描写になってしまうはず
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F9 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / 42mm
50mmマクロは松レンズとは写りが違う。やっぱりハイグレードタイプの標準ズームが欲しい気がしてしまう
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F2 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm

シャッター速度が遅かったが、まあ大丈夫だろうと思って撮ったらブレていて、よく見ると手ブレ補正がオフになっていた。で、戻って撮り直したカット
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/20秒 / F2 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 50mm
東京国際フォーラムのガラス棟の渡り廊下。フラットな光線状態のせいもあるが、絞り開放だともうひとつピリッとしない。あと1段絞ればよかった
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/40秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 17mm

東京駅と月。NATURALだと空の青が地味になってしまうので、このカットだけVIVIDで撮影
ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42mm
夜の東京国際フォーラム。昼の明るさと違って重厚な雰囲気。ISO100だと手ブレ補正がないとつらいけど
ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2 Macro / 3,648×2,736 / 1/13秒 / F2 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 50mm


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  製品情報
  http://olympus-esystem.jp/products/e510/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー(E-510)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#e_510
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(E-510)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#e510


( 北村 智史 )
2007/08/27 00:02
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