入手してから1カ月近く経ち、すでに仕事で酷使しまくっているEOS-1D Mark III。大きな問題もなく順調に働いてくれています。
電池の持ちは特筆物です。予めフル充電しておけば、筆者の使用スタイルでは1日で電池の残量を気にする事態にはまずならないでしょう。これまで使っていた「EOS-1D Mark II」は、電池をギリギリまで使ってもせいぜい3,000枚程度しか撮れませんでしたが、EOS-1D Mark IIIは6,000枚近く撮ってもまだ余裕がありました。
ちなみに「初代EOS-1D」は、EOS-1D Mark IIと同じ電池システムを使用していましたが、こちらは1,000枚撮れれば御の字。プレビューなどさせるとグングン減って、100枚も撮れないこともありました。電池の持ちは着実に、そして劇的に進歩しています。
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充電後の撮影枚数と残量が1%刻みで表示されます。撮影枚数は充電器に一瞬でも接続させると初期化されました
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さて、ここから本題。今回はゴミ対策についてです。ゴミ対策は最近のデジタル一眼レフカメラのトレンドですが、1D系にもやっと搭載してくれたか! と期待大でした。
結論から先に書いてしまいましょう。EOS-1D Mark IIと比べて少しはマシになったかな!? という程度です。
キヤノンのゴミ対策を簡潔に書くと、次の四段構えになります。
- ゴミを減らす(ボディキャップやシャッター幕等の部材を見直しゴミの発生を抑えた)
- ゴミをくっつけにくく(静電気の発生を抑えた)
- ゴミを振るい落とす(センサー部最前面の赤外吸収ガラスを超音波振動)
- 画像処理(ダストデリート)で消す
初代EOS-1DもEOS-1D Mark IIもそうでしたが、新品時からしばらくの間は内部から発生したと思われるゴミが結構現れました。画面上では針金状に見える独特のゴミです。EOS-1D Mark IIIは部材の見直しが効いているのか、2台ともまだこの手のゴミはお目にかかっていません。
帯電防止や超音波振動は、気分的に安心感は確かにあります。EOS-1D Mark IIと全く同一条件では比べられませんが、印象として全体的に減った気がします。でも完全にゴミが消えたわけではなく、使っているうちに、やはりゴミが付いた画像が出てきました。
そこで最後の手段、ゴミ情報をデータとして取得しそのデータを元に自動的にゴミを消す「ダストデリート」を試してみました。
ダストデリートは無地の画像をユーザーが撮り、そのとき写ったゴミの位置や大きさの情報を利用し、RAW現像ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)上で自動的にゴミを消すものです。
ダストデリートデータの取得方法についてマニュアルを参照すると
- レンズの焦点距離は50mm以上
- レンズのピント位置は無限遠
で取得しないさい、との記述があります。
ここで疑問が湧きました。同じゴミでもレンズの焦点距離・ピント位置・F値で写り方が異なってきます。短焦点・近距離・F値大ではゴミもピントが合ったように鮮明に小さく。長焦点・遠距離・F値小では、ゴミのピントもボケ大きく薄く写ります。マニュアル通りにダストデリートデータを取得して、はたして撮影条件で常に写り方が変化するゴミに対応できるのか?
筆者が試した範囲では、説明書通りの方法では上手くゴミが消えません。これも筆者の予想通り実際の撮影に合わせた焦点距離、ピント位置でダストデリートデータを取得した方が、ゴミが消える確率が高まりました。しかし、この方法でも一部のゴミが消えるのみです。多少は楽になりそうですが、まだまだ手作業によるゴミ消し作業から解放されそうにありません。
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ダストデリートデータの取得は銀塩ポジ用のライトボックスにレンズ前面を密着させて行ないました
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取得時前には必ずセンサークリーニングが行なわれます
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実際にシャッターが切れ画像が撮影されている様子です。レンズを覗き込みながら絞り羽根を見たところ、試したどのレンズでもF22まで絞り込まれていました
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撮影する内容が均一な面ではないと、メッセージが出て再取得を促されます
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取得後はRAWもJPEGもダストデリートデータが付加されます。
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■ 検証1:ライトボックスを撮影
- 以下の作例のリンク先のファイルは、EOS-1D Mark IIIで撮影した3,888×2,592ピクセルのJPEGファイルです。
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200mm、絞り開放、無限遠でライトボックスを撮影した画像。右上に大きなゴミが写っている
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レベル補正でゴミを強調した状態
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同じ撮影条件でダストデリートデータを取得し適用した。見事にゴミが消えている
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レベル補正でゴミを強調した状態
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ピントリングを最短撮影距離、F22で撮影。右上の大きなゴミは鮮明に、さらに細かいゴミも写ってきた
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レベル補正でゴミを強調した状態
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無限遠で取得したダストデリートデータを適用。大きなゴミと細かいゴミの一部は消えた
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レベル補正でゴミを強調した状態
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ピントリング最短撮影距離で取得したダストデリートデータを適用。無限遠で取得したデータを適用するよりも消えたゴミが増えた
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レベル補正でゴミを強調した状態
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200mm、無限遠で取得したダストデリートデータを20mm、最短撮影距離、F22に適用。ゴミが全く消えない
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レベル補正でゴミを強調した状態
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200mm、無限遠で取得したダストデリートデータを20mm、最短撮影距離、F22に適用。ゴミが全く消えない
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撮影と同じ条件で取得したダストデリートデータを適用。多くのゴミが消えた
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■ 検証2:風景
- 作例下の撮影データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します。
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ダストデリートなし
3,888×2,592 / 1/15 / F16 / 0EV / WB:オート / 20mm
自宅ベランダから稲妻の撮影を試みましたが、今回は上手くいきませんでした、残念。そのかわり!? ゴミはバッチリ写っています。撮影直前のダストデリートデータ取得の際にセンサークリーニングが行われましたが、このように多くのゴミが残ったままでした
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ダストデリートデータを適用
3,888×2,592 / 1/15 / F16 / 0EV / WB:オート / 20mm
いくつかのゴミは消えましたが、まだ多くのゴミが写ったまま。無いよりはマシですが
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■ URL
キヤノン
http://canon.jp/
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポート(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm2007.htm#eos_dmk3
レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#1dmk3
( 野下義光 )
2007/08/01 00:02
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