最高秒10コマの連写性能と大容量のバッファメモリーにより、連続撮影能力にさらに磨きをかけた「EOS-1D Mark III」。その性能を存分に発揮させるためにはやはり高性能な記録メディアが必要でしょう。
この記録メディア選びというのがやっかいなもので、公称の倍速表示やカードリーダーでのベンチテストの成績がそのままカメラでの性能に反映されるかといえばそうでもなく、カメラの機種が異なるとその性能も異なります。結局は、実際に使うカメラでテストを行なうしかないのです。
かつて泊まりのロケとなると毎晩ストレージ作業に追われ、ノートPCやHDD、さらにそれらの予備機など、荷物も増大していました。現在は撮影途中はもちろん、数日間の泊まりのロケでも途中でストレージさせないで済むようメディアを徐々に買い増したことで、あわせて約250GB分のメディアを保有しています。
より高速でかつ、コストパフォーマンスが高い物を捜し求めるうち、かなりの種類が手元にあります。今回は一気にEOS-1DMark IIIでの書き込み速度を試してみました。
■ CF/SD無差別テスト
テストの方法と条件は以下の通り。
- ISO100、各種ノイズ低減OFF、RAW、1/8,000秒、10コマ/秒連写、ボディキャップ付きの状態で50コマ連写
- PCのプロパティでデータの更新時刻を見て、50コマを記録するに要した時間を計る。
- 撮影した全黒のRAWデータ50コマ分、422MBを記録時間で割り、メディアに書き込む速度を求める(小数点第2位から四捨五入)
- メディアはカメラで通常に初期化した場合と、コマンドプロンプトで64KBクラスタにフォーマットした場合でテストする。
|
今回テストした筆者所有のメディア
|
|
|
クラスタサイズ64KBでフォーマットする方法。4GBの場合
|
こちらは4GB以外の場合
|
■ 計測結果
- 筆者の所有する製品での結果です。市場の全製品で同様の性能を保証するものではありません。
- 転送量の多かった物を昇順に並べています。
種別 |
ベンダー |
容量 (GB) |
倍速 or Class |
結果(MB/sec) |
クラスタサイズ64KB |
通常フォーマット |
SD |
LG |
2 |
― |
12.4 |
7.0 |
CF |
レキサー |
2 |
133倍速 |
11.1 |
11.1 |
SD |
トランセンド |
4 |
150倍速 |
11.1 |
11.1 |
SD |
PQI |
2 |
133倍速 |
11.1 |
11.1 |
SD |
PQI |
2 |
150倍速 |
11.1 |
10.6 |
CF |
バッファロー (RCF-R) |
4 |
100倍速 |
11.1 |
9.6 |
CF |
A-DATA |
4 |
266倍速 |
10.0 |
9.6 |
CF |
サンディスク (Extreme III) |
4 |
― |
9.6 |
9.2 |
CF |
レキサー |
4 |
266倍速 |
9.6 |
9.2 |
CF |
ソニー |
4 |
133倍速 |
9.6 |
9.2 |
CF |
トランセンド |
4 |
120倍速 |
9.6 |
6.8 |
CF |
トランセンド |
4 |
266倍速 |
9.2 |
9.2 |
SD |
memoQ |
4 |
― |
8.8 |
8.4 |
CF |
ATP |
8 |
300倍速 |
7.8 |
7.4 |
SDHC |
PQI |
4 |
Class6 |
7.8 |
6.4 |
SDHC |
ATP |
4 |
Class6 |
7.8 |
5.9 |
CF |
アイ・オー |
8 |
115倍速 |
7.5 |
7.5 |
SD |
東芝 |
2 |
Class6 |
7.3 |
6.0 |
CF |
ハギワラシスコム |
4 |
160倍速 |
7.3 |
7.3 |
SDHC |
A-DATA |
4 |
Class6 |
7.0 |
5.9 |
SDHC |
エレコム |
4 |
Class4 |
7.0 |
4.0 |
SD |
プリンストン |
2 |
― |
6.6 |
5.3 |
SDHC |
トランセンド |
4 |
Class6 |
6.6 |
5.1 |
CF |
ハギワラシスコム |
4 |
100倍速 |
6.4 |
6.4 |
Microdrive |
日立 |
4 |
― |
5.0 |
5.0 |
CF |
フジテック |
8 |
150倍速 |
4.7 |
4.7 |
トランセンドのSD4GB(非SDHC)とCF120倍速4GB・8GBが好結果を出しています。しかしこの製品は当たり外れが大きく、今回結果が良かったのは、筆者が複数枚購入したものから、当たりだけを手元に残したためと考えられます。実際、ハズレはこれらの倍以上遅い物もありました。また、PQIのSD2GBは6枚程購入したましたが、どれも個体差がなく良好です。
筆者が専門としているポートレートでは、ポーズも表情もめまぐるしく変わるモデルがいて、おのずと速いテンポで沢山のコマ数を撮影することになります。こんな場合、EOS-1D Mark IIIでは実体験で9MB/secくらいの書き込み速度が必要です。今回のデータで明らかになりましたが、8MB/secを下回るメディアは速いテンポでの撮影には臨めないでしょう。
|
JPEG/RAWをCF/SDに振り分けての記録は、Mark II Nから設けられた機能
|
なおEOS-1D Mark IIIでは、RAWとJPEGの同時記録の場合、RAWとJPEGをSDとCFにそれぞれ別けて書き込めます。1つのメディアに両方を書き込むより、分けて書き込んだ方がより速く書き込めるようです。
例えば、LGの2GBのSDメモリーカードとレキサーの133倍速CF(2GB)を使い、RAW+ラージJPEGでバッファフルから書き込み、LEDが消灯するまでの時間を調べるとこうなります。
- RAWとJPEGを1枚に書き込んだ場合:27秒
- SDにRAW、CFにJPEGをそれぞれ分けて書き込んだ場合:22秒
ところで、書き込むメディアを分けた方が速く記録できるなら、RAW+JPEGの場合だけではなく、RAWのみあるいはJPEGのみでも分けて書き込むことができればさらに良いのではないでしょうか。せっかくSDとCFのダブルスロットを設けてあるのだから、それらを最大限活用できるようにキヤノンには是非ともご検討願いたいものです。
■ シャッター速度の下限設定に「?」
話は変わって、今週は娘を深大寺に連れてスナップを撮ってきました。業務用機をプライベートに使うことはまれですが、時々映画やドラマの収録現場での写真撮影を引き受けることがあり、出演者のオフショットなどはいわゆるスナップなので、それを意識しながら設定をしてみました。
スナップでは突然予期せぬシャッターチャンスが訪れるものです。そんな時にあれこれシャッター速度やF値を云々しているヒマはありませんので、やはりプログラムAEがベスト。さらにEOS-1D Mark IIIはISO感度のセイフティシフトや、シャッター速度・F値の上限/下限が設定できるので、自分好みの設定を試みました。
が、しかし! 前回も述べましたが、シャッター速度の上限・下限の設定範囲に制限があり、自分好みには設定できません。上限はまぁ良しとして、下限側が最高で1/60秒までしか設定できないのです。カメラブレと被写体ブレを防ぐため、シャッター速度の下限を1/125秒に設定したかったんですが無理でした。
|
|
シャッター速度が速いに越したことはないので上限は最速値。しかし下限は1/60秒以上に設定することができない
|
より速いシャッター速度になるように、必要以上に絞り込まれるのを防ぐため小絞り側をF5.6に設定した
|
ではシャッター速度優先で1/125秒ならOKかというと、それだと常に限界ギリギリのシャッター速度で撮ることになってしまいます。シャッター速度は1/125秒を下回らぬように。1/125秒では露出アンダーになる場合にはセイフティシフトでISO感度が上がって適正露出になるという設定ができません。
今回はしかたなくシャッター速度の下限を1/60秒にして撮影しました。しかしなぜシャッター速度の上限・下限の設定範囲に制限が設けられているのかナゾです。
上限も下限も30~1/8,000秒まで自由に設定でき、さらに上限・下限を同じシャッター速度に設定した場合、そのシャッター速度が固定されるとありがたい。例えばスタジオで大型ストロボを用いて撮影する場合など、不用意にシャッター速度が変わってしまうと困るので。キヤノンさん、是非この点もご検討願います。
■ 作例
- 作例のリンク先のファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
- 作例下の撮影データは、使用レンズ / 記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。
|
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/90秒 / F2.8 / 0EV / ISO640 / WB:オート / 51mm
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 45mm
|
|
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/180秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 24mm
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/90秒 / F4.5 / +0.5EV / ISO200 / WB:オート / 25mm
|
|
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/180秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 24mm
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/350秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 45mm
|
|
EF 24-70mm F2.8 L USM / 3,888×2,592 / 1/350秒 / F5.6 / +0.5EV / ISO200 / WB:オート / 24mm
|
■ URL
キヤノン
http://canon.jp/
製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk3/
レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(EOS-1D Mark III)
http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#1dmk3
( 野下義光 )
2007/07/25 00:01
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
|
|