発売日と同時に使い始めたS5 Pro。早いもので、もう2カ月のつきあいとなった。ほぼ毎日、バッグに入れて持ち歩いている。前に使っていたF80ベースのS2 Proより高さは低くなったものの、D200ベースで横幅が大きくガッチリした印象のため、バッグの中でも大きさを感じる。
プロユース用と考えればこれでいいのだろうが、スナップなどの町歩き用や山岳写真など少しでも機材を軽くしたい状況で、なおかつフィルムライクな色彩を求めるなら、例えばニコンD80ベースのボディがあるといいなあと想像してみたりする。
操作系の面では、S一桁シリーズの操作系に慣れているため、再生時にマルチセレクターの上ボタンで拡大画像を確認できるのがありがたい。歴代Sシリーズでの操作性の統一はありがたいと思う反面、ベースボディとなったD200とはまるで違う操作系のため、ニコンからS5 Proに移った人は使いづらいかもしれない。ボタン配置は一緒なのだから、カスタムファンクション等で「D200ライクに使う」設定があれば、ニコンから乗り換えやすい機種になると思う。
使っていて気になる点のひとつに、モニターカバーがある。S2 Proも購入当初は使っていたが、野外での撮影でカバー自体がテカり、液晶モニターでの画像のチェックがしづらくなったため、いつの間にか使わなくなってしまった。使用説明書には「液晶モニターの破損や汚れを防ぐため、付属のカバーをカメラに取り付けてください」と書かれている。つけっぱなしでなく、再生時は必要に応じて取り外した方がよい、ということのようだ。
液晶モニターカバーとモニター表面の間にホコリがたまってしまうのも、精神衛生上よくない。考えた結果、液晶保護フィルムを貼って、モニターカバーを外すこととした。最近のデジカメ用液晶保護フィルムは、コーティングなどで反射を少なくする工夫をしているという。これで屋外での視認性がずいぶん改善された。
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拡大再生の方式などは、FinePixの伝統を踏襲しているところがうれしい
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液晶カバーは野外での使用時、反射が気になる。液晶保護フィルムを取り付けて、カバーをはずして使うことにした
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屋外での使用で気になっていたモニターカバーがスッキリしたところで、季節柄、桜を撮りに出かけることとした。しかし、ただ桜を撮っても芸がない。S3 Proよりも進化したホワイトバランスや、CCフィルターのように微調整できるホワイトバランス微調整を使っての色調効果を試してみることにしたい。
S5 Proのホワイトバランスには「蛍光灯モード」が5つある。一般的なデジタル一眼のホワイトバランスには、白色蛍光灯に有効な蛍光灯モードが設けられているが、S一桁シリーズは以前から蛍光灯モードが充実していて、白色蛍光灯以外に、昼光色蛍光灯や昼白色蛍光灯に合わせたホワイトバランスモードを備えていた。S5 Proになって更に充実し、温白色蛍光灯、電球色蛍光灯にも対応するようになったため、合計5つの蛍光灯モードが存在する。
以前のS一桁シリーズは、ホワイトバランスを背面にあるボタンで選択したが、S5 Proではベース機となったD200同様に、「WB」ボタンと、メインコマンドダイヤルによってセットするように操作系が改められた。しかし、D200にはない5つの蛍光灯モードを選択する必要があるため、蛍光灯モードとプリセットカスタム(これは5種類登録できる)を使う場合は、サブコマンドダイヤルでさらに選択できるようになっている。
蛍光灯の補正はモードにもよるが、蛍光灯によって緑っぽくなるものを、マゼンタ系または紫系の色味を加えることで補正する、というものだ。使い方によっては桜にピンク系の色を加えるのに役立ちそうだ。桜は思ったよりも白っぽく写るため、色の調整ができるのがありがたい。また、フィルターを持っていかなくても済むのは、荷物の軽量化にもつながるだろう。さっそく、ホワイトバランスを変えながら桜を撮ってみた。
事務所の近く、住宅街にある公園の桜だが、撮影日はまだ枝先がツボミ、という様子。手前に花のボリュームのある部分を配し、奥に青空が入るように構図を決めた。白トビが起こることを考えて、D-レンジはAUTOを使ってみる。D-レンジがAUTOとなると、フィルムシミュレーションはSTDを使わなければならない。色の鮮やかさを狙い、COLORの設定をHIGHとした。
※作例のリンク先のファイルは、撮影した画像です。作例をクリックすると、別ウィンドウで4,256×2,848ピクセルの画像を開きます。
※画像下のデータはレンズ / 露出モード / 露出時間 / 絞り / 露出補正値 / 感度 / 実焦点距離 / ホワイトバランス / フィルムシュミレーションです。
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WB:オート
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / オート / STD
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WB:白熱灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 白熱灯 / STD
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WB:昼光色蛍光灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 昼光色蛍光灯 / STD
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WB:昼白色蛍光灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 昼白色蛍光灯 / STD
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WB:白色蛍光灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 白色蛍光灯 / STD
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WB:温白色蛍光灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 温白色蛍光灯 / STD
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WB:電球色蛍光灯
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 電球色蛍光灯 / STD
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WB:晴れ
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 晴れ / STD
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WB:ストロボ
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / ストロボ / STD
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WB:日陰
AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 / 絞り優先AE / 1/90秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 105mm / 日陰 / STD
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撮影結果から見てみると、ホワイトバランスをオートや晴れにしたものでも桜のピンクが見えるが、昼光色蛍光灯やストロボに合わせたものが、やや温調気味の好ましい桜の表情が表されているように感じる。白色蛍光灯のモードがおそらく「CC30M」くらいのマゼンタのフィルターをかけた感じに近いのではないだろうか? 桜をピンクに見せるにしても、少し過剰気味になるようだ。S5 Proでは、他にケルビン値でもホワイトバランスが設定可能。ケルビン値を指定することで、色温度方向の色味の補正や表現が自在に可能になった。
フィルムカメラでは、色調の微調整にCCフィルターを使う。S5 Proでは、CCフィルター相当の補正を、ホワイトバランス微調整を使うことで、自在にコントロールできる。CCフィルターは、「光の3原色」と「補色」の計6色のものが用意される(実際には複合のフィルターも存在する)が、S5 Proのホワイトバランス微調整は2つのバーで設定する。色の3原色と補色の関係で「2つの色を合わせると、別の色と同じ役割ができる」ことから、これで6色の方向を自在に調整できるのだ。光学的なフィルターは、透過率等の問題から2枚重ねよりもなるべく1枚の方がいい、ということになるのだが、デジタル的なフィルターは複合的な使い方をしても画質劣化とは関係がない。そのためか、レッド-シアン、ブルー-イエローの2つを同時に調整すると、レッド+ブルーでマゼンタの強調、シアン+イエローでグリーンの強調ができる。
桜に関わる色ということで、レッドとマゼンタのホワイトバランス色調整を確かめてみた。風が強い日だったため、ISO400で速めのシャッターを切る。
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ホワイトバランス微調整は、2つの設定バーで調整する
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微調整なし
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+1
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+2
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+3
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+1、ブルー+1
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+3
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+1、ブルー+1
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+2、ブルー+2
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/1600秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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レッド+3、ブルー+3
トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1 / 1500秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ / STD
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実際に撮影してみたところ、レッド+2、ブルー+2の設定がCC5M~CC10Mくらいの感覚か、画面上から効果があることが確認できつつ、どぎつくない程度の強調となる。ただ、撮影したあとのデータをHyper-Utility HS-V3でチェックしても、ホワイトバランス微調整については見ることができない。撮影時にメモを撮りながら、というフィルムカメラ時代の撮影を思い出させるような撮影を行なった。
青空バックの桜の撮影では、「青空の下でのポートレートに最適」というフィルムシミュレーションのF1bモードも対応するようだ。さまざまな設定で撮影を楽しめるS5 Pro。これからもいろいろなシーンで撮影を楽しみたいカメラだ。
【2007/4/6追記】3月29日に公開されたHyper-Utility Software HS-V3のアップデータを適用すると、ホワイトバランスの微調整などのデータが表示されるようになる。
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AFNikkor 35-105mm F3.5-4.5 絞り優先AE / 1/640秒 / F5.0 / 0EV / ISO100 / 105mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / STD
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トキナー AT-X 840 D 80-400mm F4.5-5.6 / 絞り優先AE / 1/570秒 / F5.6 / +0.33EV / ISO100 / 300mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / STD
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トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/640秒 / F8.0 / +1EV / ISO400 / 300mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / STD
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トキナー AT-X340 AF II 100-300mm F4 / 絞り優先AE / 1/2250秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO400 / 300mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / STD
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AF Nikkor 35-105mm F3.5-4.5 絞り優先AE / 1/800秒 / F5.6 / +0.67EV / ISO400 / 35mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / STD
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フォクトレンダー40mmF2 絞り優先AE / 1/125秒 / F8 / +0EV / ISO400 / 35mm / 晴れ シアン+2、イエロー+2 / F1b
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トキナーAT-X 124 PRO DX 絞り優先AE / 1/250秒 / F8 / +0.67EV / ISO100 / 14mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / F1b
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トキナーAT-X 124 PRO DX 絞り優先AE / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 24mm / 晴れ レッド+2、ブルー+2 / F1b
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■ URL
富士フイルム
http://fujifilm.jp/
製品情報
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs5pro/
富士フイルム FinePix S5 Pro関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/12/08/5218.html
( 木村 英夫 )
2007/04/06 00:12
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