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富士フイルム FinePix S5 Pro【第6回】
ライブビューでマクロ撮影に挑戦!

Reported by 木村 英夫


 コンパクトデジカメからデジタル一眼に持ち替えた人が最初にとまどうのが「どうして撮るときに液晶画面が見えないの?」というところ。今のようにデジタル一眼が普及する前はいろんな人からこの質問が聞かれたが、ファインダーでなく、大きな液晶画面で被写体を確認したいという気持ちはよくわかる。

 今でこそ、オリンパス E-330、E-410やE510、パナソニックのLUMIX DMC-L1、キヤノン EOS-1D MarkIIIなどの機種で、撮影時に液晶モニターに画像が映し出される「ライブビュー」を搭載しているが、元祖はS5 Proの先代にあたるS3 Proである。

 S3 Proのライブビューは、モノクロのみで連続30秒までという制約があった。ノイズが少ないから天体写真向け、とされたFinePix S1桁シリーズでは、ライブビューで天体撮影でもピントがあわせやすい、という意図があったらしい。天体撮影は、天体望遠鏡にカメラをセットするためにAFが使用できずMFとなるが、ファインダーでのピント合わせは困難で、ライブビューが重宝するらしい。

 S5 Proでは、ライブビューがカラーに進化(モノクロも選択できる)したものの、長時間のCCD露光による発熱が画質劣化の原因となってしまうため、相変わらず連続30秒までの制約がある。ライブビューを試してみようと「天体撮影にチャレンジ」と思ったが、リモートスイッチが入手できないのと、機材の入手が困難な点で断念。ライブビュー機能を使ってマクロ撮影をしてみることにした。

 デジタル一眼の場合、特殊な撮影機材を使わなければ、AFでピントを合わせれば十分である。しかし、被写界深度が極端に浅い近接撮影時において、AFが自分の狙い通りにピントを合わせてくれているかどうかはわからない。だから、マクロ撮影ではファインダーで被写体をじっくり観察したいもの。S5 ProはD200ベースとなったため、ファインダーの倍率が大きくなり、以前のFinePix S1桁シリーズから大幅に改善された。以前の愛機S2 Proでは、ファインダー倍率が低く、ファインダーで被写体を観察しながらMFでピントを合わるのは困難だった。


倍率が大きく見やすいS5 Proのファインダー
倍率が小さく、情報表示が下の離れた場所にあるS2 Pro

 しかし、そのS5 Proのファインダーも、マクロ域で「どこにピント位置があるか」までじっくり確認するには、十分でない場合がある。そこでライブビューが威力を発揮することになる。S5 Proのライブビューは、撮影メニューから呼び出すか、フェイスズームインボタンを長押しするかで選ぶことができる。

 ライブビューを使うと、カメラ背面の2.5型液晶モニターでピント合わせができるので、視野が大きく見やすい。また、マルチセレクターの「上」ボタンを押すと、拡大表示ができ、拡大サイズの変更もできる。ただ、拡大は中央部分のみ。任意の場所が拡大でピント位置を確認できればよいのだが、残念なところだ。

 ライブビュー状態でシャッターボタンを押しても、シャッターは切れない。一度ライブビューを終了して通常撮影状態に戻してからシャッターを切ることになる。MF向けで、じっくり撮影するのが前提になっているためだろうか。


ライブビューは白黒、カラーの2種類から選べる
ライブビューは30秒の制限付き。右上に残り時間が表示される

マルチセレクターの上ボタンを押すと、中央部分を拡大表示できる

※作例のリンク先のファイルは、撮影した画像です。作例をクリックすると、別ウィンドウで等倍の画像を開きます。
※画像下のデータはレンズ / 画像解像度 / 露出モード / 露出時間 / 絞り / 露出補正値 / 感度 / 焦点距離 / ホワイトバランス /フィルムシミュレーションモードです。


中央部分を拡大してピント合わせ。ピントの合っている範囲は狭い
トキナーAT-X M 100 PRO D 100mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/25秒 / F5 / 0EV / ISO800 / 100mm / AWB / STD
生後間もない子供の手。指のシワを確認しながらのピント合わせ
トキナーAT-X M 100 PRO D 100mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/20秒 / F5.0/0EV / ISO400 / 100mm / AWB / F1

 ライブビュー機能を活かせば、通常のマクロレンズでの撮影範囲である等倍よりも、さらに拡大撮影を行なうときにも便利だ。レンズに接写リングをつけたり、レンズを逆付けしたりして小さな被写体を狙うときは、AFによる撮影は不可能だ。ピント位置はほぼ固定されてしまうので、三脚の雲台などの操作でカメラを微妙に前後させてピントを得る。カメラのセットも被写体に近づくために、カメラを三脚の下に逆さ吊り状態でセットすることもある。従来はアングルファインダーを使ってピントを確認したりもしたが、ライブビューがあれば、ピント合わせはよりやりやすいだろう。

 春の野草を狙い、S5 Proと100mmマクロ、28mmレンズと接写リング、BR-2Aリングを持って出かけた。S5 Proでは、CPUレンズ以外でもTTL測光ができ、絞り優先AEで撮ることができるため、接写での撮影が便利になった。近接撮影時は実効F値が暗くなってしまうため、単体露出計で露出値を求めるわけにはいかないのだ。ただ逆付けでは、レンズ情報手動設定をするわけにはいかず、中央部重点測光での撮影となる。

 最初に狙ったのはホトケノザ。ピンクの花を大きく拡大してみると、まるで動物の顔のように見えてくる。

 28mmレンズを使ってのレンズの逆付け撮影や、接写リングでの撮影では、レンズ先端と被写体が近づき過ぎて日陰となってしまう。この場合はホワイトバランスを日陰にするほか、感度を上げることでシャッタースピードを速めにする。

 実際に撮影したものをPC上で確認してみると、思ったところにピントがきていないカットもあった。ピントを合わせた後、被写体がわずかに動いてしまったからだろう。ライブビューで拡大表示を使いピント合わせをすると、ついメインの被写体を画面の中央に持ってきてしまう。

 真上から被写体を捉えると、シャッタースピードがやたらと速くなる。ライブビューではファインダーから目を離して覗くため、ファインダーからの逆入光があるのだろうか。そのまま撮影するとアンダーになってしまった。


低い位置にカメラをセットするための方法。ファインダーが見づらくなるので、ライブビューは重宝する
BR-2Aリングを使って28mmを逆付け。拡大撮影をしたいときに使う方法だ

カメラを逆さにしての撮影。等倍マクロで小さな被写体を切り取る
トキナーAT-X M 100 PRO D 100mmF2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/500秒 / F8.0/0EV / ISO400 / 100mm / 日陰 / STD
ホトケノザのウブ毛までハッキリ撮る。逆入光のせいか、アンダー目に出た
AFニッコール28mmF2.8(逆付け) / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/570秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / WB:日陰 / STD

ファインダーの逆入光を避けた上で、露出補正を行なった
AFニッコール28mmF2.8(逆付け) / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/50秒 / F--/+1.0EV / ISO400 / 28mm / WB:日陰 / STD

 ライブビューが使えること、接写リングやレンズの逆付けが可能なこと、さらにはニコンマウントで、ベローズのような特殊な拡大撮影アクセサリーが用意されていることから、S5 Proは他のライブビュー対応のデジタル一眼よりも接写に便利だと思う。

 オオイヌノフグリやタンポポ、菜の花など、私の住む江戸川近辺で、野生の植物の拡大撮影にチャレンジしてみた。マクロレンズでは等倍以上の拡大ができないのに対し、S5 Proで使える接写用品を駆使すれば、さまざまな表現が可能になる。これからも花の作品作りに活用していきたい。


AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/30秒 / F-- / +1.0EV / ISO400 / 28mm / AWB / STD
AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/320秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / STD

AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/125秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / STD
AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/90秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / F1

AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/57秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / F1
AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/900秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / F1

AFニッコール28mmF2.8+接写リング / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/1800秒 / F--/0EV / ISO400 / 28mm / AWB / STD


URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs5pro/
  富士フイルム FinePix S5 Pro関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/12/08/5218.html


( 木村 英夫 )
2007/03/16 02:15
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