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富士フイルム FinePix S5 Pro【第4回】
ISO3200を試す

Reported by 木村 英夫


 「FinePixといえば高感度」と連想するほど、コンパクトデジカメではFinePixの特長として高感度撮影が浸透している。デジタル一眼レフであるFinePix S5 Proでも、その特長を活かすべく、最高感度がISO3200となった。

 FinePix S1桁シリーズは、他のデジタル一眼に比べ高感度が得意な印象がある。私の最初のデジタル一眼であるFinePix S1 Proでは、最低感度がISO320であり、それより低感度にセットできなかった。独自のCCDハニカムは、一般のCCDより素子サイズが大きく高感度なためだ、と説明されていた。次の愛機S2 Proは、最低感度がISO100となり、最高感度はISO1600。発売当時はISO1600が十分実用になる、と言われていた。高感度が使えるということは、撮影範囲が大きく拡がるというメリットがある。

 高感度のメリットは多いが、最も多くの人にピンとくる説明は、やはり「手ブレ/被写体ブレが減る」ということだろう。三脚を使わない場合、「1/焦点距離」秒よりも速いシャッターを切ればブレない、とされていたが、これはフィルムカメラの時代の話。APS-Cサイズの撮像素子を積んだデジタルカメラでは、焦点域がレンズ表記の1.5倍相当になるうえ、PCの液晶ディスプレイで拡大して見るためブレが目立つ。だから、さらに1段くらい速いシャッターを切らないとブレに対するリスクはなくならないだろう。

 ただ、高感度になればなるほど画面が荒れ、ノイズが発生するという問題がある。高感度になるほど画面が荒れる(粒状性が荒い写真になる)のは、フィルムカメラでも同じことだ。かつて、300mm F4のレンズとISO3200のフィルムで、暗い体育館の中で体操選手の演技を狙ったことがある。演技はきちんと写し止められたものの、サービス判のプリントでもよくわかるくらいの粒状性の荒い写真になった。

 以来、「高感度は妥協して使う」と考えてきたが、S5 ProのISO3200はどのくらい実用になるのだろうか?


S5 Proの高感度はISO3200
撮影時には、メニューからよりも、ファインダー左側のボタンとコマンドダイヤルでセットする方が便利

 電柱のナトリウム灯で照らされる江戸川・土手沿いの風景を、感度を変えながらS5 ProとD200さらにS2 Proで撮った。長時間露光+高感度では、夜空は高感度でかなりざらついた描写となる。その違いを撮り比べてみた。

 半月で薄曇りの夜で空はわずかに明るい。ナトリウム灯は色温度が電球よりも低く、オレンジに見える。その明かりをカメラがどのように判断するか、オートホワイトバランスにセットしてみた。S5 Proのノイズ除去はデフォルトの設定であるSTDに、D200はS5 Proに合わせて高感度ノイズ除去を「する(NORM)」を選択する。

 使用レンズは、AF Nikkor 28mm F2.8。F4にセットしての絞り優先AEで、露出補正はしていない。S2 Proは、ベースボディの差からか、絞り優先AEではかなり暗い露出設定となるため、S5 Proの撮影データから割り出したシャッタースピードでマニュアル露出とした。ただし、シャッタースピードの設定が1/2段ステップの近似値となるため、他のカメラより明るめの露出を採用しているカットもある。

※作例のリンク先のファイルは、撮影した画像です。作例をクリックすると、別ウィンドウで等倍の画像を開きます。
※画像の撮影データは記録解像度/露出時間です。


●S5 Pro


ISO3200
4,256×2,848ピクセル / 1/3.6秒
ISO1600
4,256×2,848ピクセル / 1/1.6秒

ISO800
4,256×2,848ピクセル / 1.1秒
ISO400
4,256×2,848ピクセル / 2秒

ISO100
4,256×2,848ピクセル / 9秒

●D200


ISO3200相当(H1-1)
3,872×2,592ピクセル / 1/2.5秒
ISO1600
3,872×2,592ピクセル / 1/1.6秒

ISO800
3,872×2,592ピクセル / 1秒
ISO400
3,872×2,592ピクセル / 2秒

ISO100
3,872×2,592ピクセル / 8秒

●S2 Pro


ISO1600
4,256×2,848ピクセル / 1/1.5秒
ISO800
4,256×2,848ピクセル / 3秒

ISO400
4,256×2,848ピクセル / 6秒
ISO100
4,256×2,848ピクセル / 10秒

 D200のISO3200での撮影は、撮影後に液晶モニターで確認してすぐわかるくらい、ノイズが多く見られる。ISO1600にすればかなり緩和される印象である。ただし、空のざらつき感をなくすには、ISO400くらいにセットしなければならないようだ。

 一方、S5 Proは、ISO800くらいで夜空のざらつき感がなくなっている。D200と見比べれば、S5 Proの方がざらつき感が少なく、「拡張設定でなく常用範囲」としているわけがわかる。

 ただし、D200のほうがシャープに見える。S5 Proのシャープネス設定を「STD」にしているためだろうか。オートホワイトバランスは、D200の方がオレンジがかっていて、色温度の補正が弱めだ。実際に現場で見た印象はS5 Proに近い。

 S2 Proでは、ISO1600で空、橋の手すりなどあらゆる場所に、マゼンタやグリーンが浮くノイズが発生している。ISO400までこの傾向が続いているということを見ると、S1桁シリーズ2世代で大きく変化しているということだろう。

 次に、長時間露光で目に見えない世界を撮ってみた。S5 Proのシャッタースピードは最長30秒。バルブにすればさらに長いシャッターが切れるが、別売りのリモートコードが必要となる。S2 Pro、S 3ProはベースボディのF80同様、市販のケーブルレリーズが使えたが、S5 ProではニコンD200に準じた仕様である。量販店でリモートコードの在庫を聞いたところ、D200用(=S5 Pro用)は、ずっと品切れで、予約で2カ月待ちだという。

 ひとまずリモートコードをあきらめ、カメラで切れる最長の30秒露光を活かし、夜の風景を昼のように撮れるかチャレンジしてみた。薄曇で月明かりの夜のため、足元は見えるものの決して明るくはない。土手を転ばないよう気をつけて歩き、対岸を狙う。

 絞りとシャッタースピードはF5.6、30秒に固定して、ISO感度のみを変えながら撮ってみた。撮影レンズはAF-S Nikkor 18-55mm F3.5-5.6 G。

※画像の撮影データは記録解像度/絞りです。


ISO100
4,256×2,848ピクセル / F5.6
ISO400
4,256×2,848ピクセル / F5.6

ISO800
4,256×2,848ピクセル / F5.6
ISO3200
4,256×2,848ピクセル / F11

 現場の見た目は、ISO100で撮影したのよりもわずかに暗いくらい。ISO400と800では、生えている草の緑色までが見えてくる。ISO3200は完全に露出オーバーになってしまうので、絞りをF11で撮影してみた。まるで昼間のように、緑の草、枯れ草、土の部分が再現された。

 高感度での撮影は、実際は室内照明でのスナップが多いだろう。S5 Proを使うようになり、内蔵ストロボを使わずに子どもの表情を撮ったり、旅先での記録写真を撮ったりするときに、ISO800以上の感度設定を多用することが多くなった。PCで等倍の画像を確認すると確かに「点描画」のように荒いが、大きくプリントしないなら十分実用的とも思える。雰囲気を壊さず、ブレずに撮るために、シャッタースピードをみながら高感度を使うようにしたい。

※画像の撮影データはレンズ/記録解像度/露出モード/露出時間/絞り/露出補正値/感度です。


AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/285秒 / F5.6 / 0EV / ISO3200
AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/114秒 / F5.6 / 0EV / ISO3200

AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/20秒 / F3.5 / 0EV / ISO3200
AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/225秒 / F3.5 / -0.67EV / ISO3200

AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/100秒 / F3.5 / -0.67EV / ISO3200 AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/35秒 / F8 / 0EV / ISO800

AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/45秒 / F4 / 0EV / ISO800
AF Nikkor 28mm F2.8 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/45秒 / F4 / +0.67EV / ISO800

フォクトレンダー Ultron 40mm F2 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/200秒 / F2 / -0.67EV / ISO3200 フォクトレンダー Ultron 40mm F2 / 4,256×2,848ピクセル / 絞り優先AE / 1/142秒 / F2 / -0.67EV / ISO3200


URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs5pro/
  富士フイルム FinePix S5 Pro関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/12/08/5218.html


( 木村 英夫 )
2007/03/02 16:37
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