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キヤノン EOS Kiss Digital X【最終回】
やっぱRAWで撮るのがいちばんかも

Reported by 北村 智史


今回は編集部から借りたブラックと、カミサンのシルバーの2台体制。2台あるとレンズ交換の手間が減らせるし、その分、カメラ内にゴミが入り込む危険性も減らせる。まあ、EOS Kiss Digital Xにはゴミ低減機能がついているから、それほど神経質になる必要はないが、それでもゴミが入り込む機会が少なくなるのはいいことである。ただ、2台ともピクチャースタイルが「風景」になっていたとは……
 長期レポート最終回用の作例を撮っていて、ぼちぼち暗くなってきたし、と思ったところで、えらく間の抜けたことをやらかしていたのに気が付いた。自分でもあきれてしまうのだが、ピクチャースタイルがずっと「風景」になっていたのである。

 天気のいい日の空なら、EOS Kiss Digital Xは「スタンダード」でもかなりきれいに青くなるので、まあこんなもんか、と油断していたわけで、つまりは筆者のチェックミスである。

 が、再生時にどのピクチャースタイルで撮ったかがわかるようになっていれば、こういう失敗は防げた可能性は高い。筆者はヒストグラム付きの撮影情報表示をメインにしているので、再生画面にピクチャースタイルが表示されていれば設定ミスに気付いたはずだ(と責任転嫁してみたりする)。

 そういうわけなので、今回の作例は全部RAWから現像したものである。

 といっても、もともと筆者はJPEGでの撮影はまずやらない。撮ったままのJPEG画像が必要な場合は別だが、そういうときでもJPEGだけというのは不安なので、RAW+JPEGの同時記録にしている。今回みたいなドジを踏んだときに助かるからだ。

 1日に何百何千というカット数をこなす人だとRAW現像なんかやっていたら寝る時間がなくなってしまうだろうが、筆者のレベルではRAWで撮ってもそれほど悲惨なことにはならない。さすがにHDDの空き容量の減り方には頭が痛くなるものの、昔と違ってHDDもかなり安くなった。それに、最近は各メーカーのRAW画像をそこそこ快適に扱えるソフトもある。

 以前は遅いビューアソフトしか持っていなかったから、セレクト作業のために全カットをJPEGに変換していたのが(RAWのままだと見るだけでも泣けるぐらいに遅かったから、軽いJPEGに一括変換してからセレクト作業をやったほうが、トータルの作業効率がよかったのだ)、今はRAWのままで困ることはない。ピントやブレのチェックも、類似カットの比較もRAWのままでやれる。


Lightroom β4
 筆者の基本パターンは、Photo Mechanicでざっとセレクトしてボツカットを削除、日付+連番+機種名でリネームをかけて、Lightroom β4(最近ついに日本語化された)に読み込み。Lightroom上で必要なカットだけ調整して16bitのTIFFに書き出して、Photoshop CS(いまだにCS2にアップしてなかったりする)で仕上げる、というのがおおまかな作業の流れである。

 キヤノン純正のDigital Photo Professional(以下、DPP)を使わないのは、使い勝手になじめないのと、スピードが遅いからだ(後者はMac OS版だけのことかもしれない)。モアレや偽色が出やすい被写体だと、DPPじゃないとダメなケースもあるようだが、今のところそういう困った目には遭っていないし、Photoshop CSのCamera RAWでの経験が長かったせいで、同じアドビのLightroomのほうがわかりやすいこともある。

 Lightroomで現像すると、最新のEOSの大きな特徴であるピクチャースタイルはきれいさっぱりシカトされてしまう。実をいうと、筆者としてはシカトしてくれるほうがうれしかったりする。「スタンダード」はすっきりしすぎて落ち着かないし、「風景」の空の青は不自然にしか思えない。だったら、「ニュートラル」なり「忠実設定」なりにして、まめにデータを取ってアレンジすればいいのかもしれないが、それよかRAWで撮っちゃったほうがラクチンじゃん、と思ってしまうたちなのである。あとで時間をかけて試行錯誤するほうが性に合うこともあるが、後処理の余地を多く残しておかないと、ウデのまずさをカバーできないからというのもある。なので、筆者的には、RAWのほうが効率がいいのである。

 撮った時点で写真は完成すると考えるならJPEGでいいのだろうが、筆者は、撮ってからも勝負だと思っている。撮った時点で終わりなのではなくて、手間ひまかけることで、写真の完成度をもうワンステップ上げられる。時間をかけてあーでもないこーでもないと試せるのはRAWならではの楽しさだし、時間をかけた分の達成感も味わえる。まあ、あれこれやったあげくにやっぱりダメというケースも少なくないが、そういうときは自分のつたなさを呪うのが筋。ウデを上げれば、もっといい写真に仕上げられるに違いない。そう思ってシャッターを切るのが写真なのだ。

 なぁんて偉そうなことをいえるほど、たいそうな写真を撮ってるわけじゃないけどね。


まとめ

 筆者個人は立体感のある描写が好きなので、どちらかと言うと、最近のキヤノンの画づくりは自分には合わないと感じている(ペンタックスのK10DとかシグマSD14とかのほうが気になってたりする)。もちろん、あくまで好き嫌いであって、いい悪いの話ではない。

 1,000万画素を超えて、さすがに高感度でのノイズは少しは増えたようだが、それでもほかのメーカーのカメラに比べれば優秀なレベルだし、オートホワイトバランスの精度のよさも素晴らしいと思う(よくないなら、カミサン用に買ったりはしない)。なので、不満というよりは「欲を言えば」のレベルで、もう少しものの厚み、奥行き感が出てくれればなぁ、という話である。

 以前に書いた、露出補正ボタンとドライブモードボタンを押し間違いやすいところも、使っているうちに指が慣れて押し間違うことはほとんどなくなった。やっぱりファインダー像の小ささは不満だし、MFでのピント合わせはしんどいものがあるが、それを除けば9万円のカメラとは思えないぐらいである。筆者のように、細かいことをブチブチ言うタイプでなければ、買って損はしないはずだ。

 カミサンはカミサンで、「コンパクトより一眼レフのほうが簡単ね」なんてことを言う。いちいちメニューのページをめくって機能を設定しなくてはならないコンパクト機よりも、ボタン類が多くてややこしそうな一眼レフのほうが、どこにどんな機能があるかがわかりやすくていいらしい(感度ぐらいしかいじったことないくせにね)。

 まあ、「ど」が付く初心者のカミサンが、EOS Kiss Digital Xに不満を感じるようになるのは当分先のことだろうし(もしかしたら、一生不満を感じないかもしれない)、よろこんで使ってくれているので、筆者としても満足である。


今週のカミサン

 筆者のブログは開店休業状態がつづいているが、カミサンはけっこうまめに更新しているらしい。ムスメの服をつくっては写真を撮って載せていたりするのだが、EOS Kiss Digital Xを買ってからというもの、コンパクト機ですむような写真まで一眼レフで撮っている。

 いい傾向である。撮影のたびに手伝いを強要しなければだが。

 先日も、できあがったばかりの長袖Tシャツを撮るから手伝ってという。仕事がつかえているから無視したいところだが、あとでブツブツ言われるのも厄介だしねぇ。

 で、何を手伝うかというと、ていのいいアシスタントである。袖口のシワを伸ばせだの、襟もとが歪んでいるのをなおせだの、指示だけは細かい。当の本人は「あたしが撮るんだから」みたいな顔である。

 そのときは、日が暮れたあとだったので、照明は部屋の蛍光灯だけ。ISO100だとかなりシャッター速度が遅くなるので、感度を上げて撮るように言ったら、「やだ」である。感度を上げるとザラツキが目立つのが気に入らないらしい。ブログに載せる分には相当に小さくリサイズするのだから、ISO1600相当で撮ったってどうってことはないのに、本人もそれはわかっているくせに、パソコンの画面でピクセル等倍で見たときにきれいじゃないから嫌なのだそうな(かなり弊害も出てます)。

「カメラをしっかり構えて、そうっとシャッターボタンを押すんだぞ」

 と教えたら、カミサンはこうのたまった。

「じゃあ、そうっと押して」
「へっ?」
「アタシが押したらブレちゃうんだから、あなた撮ってよ」

 開いた口がふさがらない。


作例


  • すべてRAW画像をLightroomで調整してJPEGに出力しています。「トーンカーブ」は操作せず。「シャープ」もデフォルト値の25のままです。
  • 作例下の撮影データは、レンズ名/記録解像度/測光方式/露出モード/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


開放付近だとアマさが目立つEF-S 18-55mmだが、F11ぐらいまで絞るとまずまず
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 27mm
Lightroomの昼光ホワイトバランスは5,500Kだが、それだと空が黄ばんでくすみがちになる。青空の発色重視なら4,900Kぐらいに設定するのがいい
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F9 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 10mm

白い壁をクリックホワイトバランスで取り込むと、やっぱり4,900K
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F8 / 0.3EV / ISO100 / WB:オート / 10mm
こちらは5,500Kに設定。4,900Kだと空が青すぎて、ピクチャースタイルの「風景」に近づく
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18mm

こちらは日陰なので5,200K。しっくいとかの壁は少しアンバー系にしたほうが柔らかい印象になる
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/100秒 / F8 / 0.3EV / ISO100 / WB:オート / 10mm

色温度を4,800K。もう、青空ドーンって感じである。それでも、ピクチャースタイルの「風景」のようなくどい色にはならない
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / プログラムAE / 1/160秒 / F10 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 22mm
秋の午後2時すぎだからもっとアンバー系に仕上げてもいいのだけれど、硬質な感じを出したかったので青めにしてみた
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 10mm

白トビしそうだったので、マイナス0.3段補正しておいて、現像時にプラス1段持ち上げている。おかげで空が少々ノイズっぽくなってしまった
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/400秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 10mm
普段はPhotoshop CSでリサイズしてから「アンシャープマスク」で仕上げるので、Lightroomの「シャープ」を使うことはほとんどないが、輪郭の線が太くなったり硬くなったりしにくいので、Photoshop CSで調整しないときに使いやすい
EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 60mm

EF-S 10-22mmは、それほどすごい写りはしないが、倍率色収差がよく補正されているので扱いやすい。まあ、Lightroomなら色収差の補正もやれるから、出ていても何とかはなるが、やらずにすむほうが楽なのは間違いない
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/80秒 / F11 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 10mm
道端に突っ立っていてジャマっ気だなぁと思っていたらマネキンだった。背景の電線の描写がちょっと不自然
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 2,592×3,888 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F5.6 / 0.3EV / ISO100 / WB:オート / 16mm

トマトやレモンのテカリが強い気がするが、トーンカーブをいじれば改善できそうな気がする
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/50秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 22mm
レンガ色のビルの壁とツタの緑の両方をきれいに出すのはちょっと面倒。Lightroomだと「カラー補正」でレッドとグリーンの色相を少し、彩度をごんと上げてやる。全体の彩度を上げるより、レッドとグリーンを個別に調整したほうがうまくいくと思う
EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/60秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO400 / WB:オート / 60mm


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdx/
  レンズ交換式デジタルカメラ関連記事リンク集(EOS Kiss Digital X)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#kdigix
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( 北村 智史 )
2006/11/10 18:44
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