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ニコン D80【最終回】
ブラケット撮影でMFニッコールを使う

Reported by 安孫子 卓郎


左奥から、ミール 20mm F3.5、43-86mm、18-70mm、E36-72mm、35mm F1.4。前列左から、キヨハラVK50R、50mm F1.2、E100mm F2.8、85mm F2
 D80の特徴の一つが、見やすく大きなファインダーである。デジカメWatchのレポートを読むと、ファインダー系はD200と同等のものを採用しているとのことだ。ファインダー視野率は上下左右とも約95%(対実画面)、ファインダー倍率は約0.94倍(50mm F1.4レンズ使用時・∞・−1.0m-1のとき)。

 数字だけみるとわかるような、わからないような内容だが、EOS 30D、α100、K100D、D80にそれぞれ AF 50mm F1.4を装着してのぞいてみると、D80だけが明らかに一回り大きいことがわかる。ファインダーが大きく見やすいことは、撮影の快適性の上で大きな要素である。特にセットズームなどF5.6クラスのレンズを付けたときに、影響を大きく感じるものだ。

 といってもファインダーの大きさ(広さ)は、AFで撮影する限り、実用的な支障はあまりない。そのため銀塩の頃からファインダーは次第に軽視される傾向が出てきており、ハイエンド機種でピントのつかみやすい交換スクリーンを用意しても、ほとんど売れなかったそうである。

 しかしMFで撮影する場合、大きさががぜん重要になる。D80が「銀塩からデジタルへ」というターゲット層を念頭にしている以上、見やすい大きなファインダーも必要な要素なのだろう。

 MFのAi-S Nikkor レンズなどを使う場合、ニコンの一眼レフでは大きな問題があった。ハイエンド機種以外は露出計が連動せず、マニュアル露出になるからだ。銀塩時代にはこれが決定的な問題だった。カメラが露出計を内蔵するのが当たり前の今日、単体の露出計を持参してまでMFレンズを使う人は、極めて趣味的な世界の話だろう。デジタルになっても露出計が動かない仕様は継続されているが、D2X、D2Xs、D200などでついにこの問題に対応。レンズ表記の焦点距離と開放F値を入力することで、マルチパターン測光での使用が可能になったのだ。



 しかし、D80は非対応。CPU非搭載のMFレンズを装着した場合、内蔵露出計は動かない。「せっかくファインダーが大きいのに……」と、多くの人が嘆いているようだが、実はニコンのデジタル一眼レフには裏技がある。マニュアル露出オートブラケットである。

 マニュアル露出での撮影時、設定したシャッター速度と絞り値の組み合わせを軸に、オートブラケットが可能だ。何枚か撮影した中から、気に入った1枚を選べばよい。この方法、フイルムでは金銭的に非現実的だろう。適当に露出を決めてばんばんブラケットしていくのでは、お金がいくらあっても足りるものではない。しかしデジタルだから、とりあえず写してみれば、液晶モニターで露出の過不足はだいたいわかる。

 やってみると、この方法にはかなりメリットがある。たとえばD200なら、MFレンズでも焦点距離とF値の入力でマルチパターン測光が可能だが、ズームで焦点距離が変わる場合、取扱説明書には「焦点距離を入力し直して欲しい」という内容の記述がある。まあそれほど極端に狂うわけではないものの、せっかくのマルチパターン測光もやや不自由である。その点マニュアル露出ブラケットなら、背景の明るさが変わるとしても、被写体の色が変わるとしても、最初に決めた値でブラケット撮影をすればOKなのである。ブラケットだから動く被写体には向かないが、D200で撮影する場合でも、あるいはAFレンズで撮影するとしても、場合によるとマニュアル露出ブラケットを使う方が便利ではないかと思わせるくらい、使い心地は良好である。

 ただし残念なのは、D80は3コマしかオートブラケットで撮影できないこと。D200なら9コマでのブラケットも可能なので、この点では大きく差がある。9コマはともかく、5コマあれば、0.3EV刻みで±0.7EVをカバーできる。

 そこで露出の刻みを0.5EVに変更して、3コマのブラケットを行なうことにした。D200にレンズ情報を入力しての撮影に比べて、むしろ快適なくらいだった。現行のニコン製デジタル一眼レフはすべて、マニュアル露出ブラケットが可能と思うので、MFレンズをお持ちの方は試してみると良いだろう。


オールドレンズによる作例集

 すべての作例、絞りは開放。筆者の場合、この手のレンズを絞ってシャープに写すことはしない。シャープに写したければ最新のデジタル対応レンズを使う方がずっと簡単で、開放でも絞っても高性能である。オールドレンズは、今のレンズにはない味わいを楽しむために、開放で使うことにしている。

 こうした楽しみ方は、基本的に画質面での「良さ」を求めるに方にはお薦めしない。収差による「悪さ」を味として楽しめる方向きのレンズ達だ。何かを撮りたいのでこのレンズを買うというのではなく、このレンズで上手に撮れる被写体は何か、というアプローチをするのがお薦めである。

  • 作例のリンク先は、JPEGで撮影したそのままの画像をコピーおよびリネームのみ行なったファイルです。
  • 写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します。
  • すべてマニュアル露出で撮影しています。露出補正値はブラケット撮影によるものです。


3,872×2,592 / 1/250秒 / F1.4 / +0.5EV / ISO100 / WB:太陽光
●Nikkor 35mm F1.4

 ニコン最大の癖玉だと思っているのが、これ。最短撮影距離ではボケが大きいのでわかりにくいが、もう少し離れると口径食が大きく出てくる。

 35mmと焦点距離が短いのでピントの山がつかみにくいが、F1.4と明るく被写界深度が浅いため、ピンボケ量産型レンズだ。逆にいえば、もっとも「はまる」レンズでもある。


3,872×2,592 / 1/1,000秒 / F2 / -0.5EV / ISO100 / WB:太陽光
●Nikkor 85mm F2

 筆者の若い頃に、当時すでに大家と言われた写真家たちが「昔は良くこのレンズで女性を撮ったよ」などと回想していたレンズである。

ニコンと言えば硬いレンズ、かっちりしたレンズという印象があるが、甘いレンズが多い昔の基準でいえば、それはイコール良く写る優秀なレンズ、ということだった。その中でこの85mm F2だけは、柔らかくて心地よい描写を見せてくれる。ニコン的には異端児なのかもしれない。


3,872×2,592 / 1/500秒 / F1.2 / -0.5EV / ISO100 / WB:太陽光
●Nikkor 50mm F1.2

 ニコンのAFレンズはF1.4までしかないため、MFでなくてはこの明るさは楽しめない。これより古い55mm F1.2もあるが、そちらの方がとろっとしたボケ味を感じさせる。50mmのほうが新しい作りなのだが、ひょっとするとクセ玉度数は上かもしれない。


3,872×2,592 / 1/350秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光
●Zoom-Nikkor 43-86mm F3.5

 やけに中途半端な焦点距離という印象を受けるが、大変なロングセラーだったレンズ。昭和38年、非Aiの頃から作られている国産初の標準ズームであるが、筆者の所有しているのはAiになってからの製品だ。

 最短撮影距離は1.2mもあるので今時のレンズと比べられるものではないが、その範囲での描写力は、さすがにニコン、さすがにロングセラーだけのことはある。


3,872×2,592 / 1/125秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光
●Nikon LENS SERIES E Zoom 36-72mm F3.5

 主に海外向けとして、低価格シリーズとして作られたのがNikon LENS SERIES E。一般のレンズがNikkorなのに対し、このシリーズはNikon LENSである。焦点距離もなぜか36〜72mm。当時は一般的に35〜70mmであったわけだから、「他社より2mmお得です」なんていうキャッチコピーがあったのかどうか、それは単なる想像でしかない。

 最近のDX VR 18-200mm F3.5-5.6などに比べられるものではなく、寄れないし引けない。が、逆に町の猫を撮るときには、アップにしすぎず、ほどよく引けるところもある。不自由なところが、むしろ良い絵作りに役立つような気がしている。


3,872×2,592 / 1/180秒 / F2.8 / +0.5EV / ISO100 / WB:太陽光
●Nikon LENS SERIES E 100mm F2.8

 ニコンの中望遠レンズはなぜか105mmだ。最近のVRつきマクロも105mmである。その中で唯一100mmなのが、これ。ニコン的に言えば多少甘い描写かもしれないが、筆者の好みで言えば硬すぎないでちょうど良い。小型軽量でもあってなかなかおもしろい。


3,872×2,592 / 1/750秒 / F3.5 / -0.5EV / ISO400 / WB:太陽光
●MIR 20N 20mm F3.5

 以前、旧ソビエト圏のFマウントレンズについて、デジカメWatchにレポートが載ったことがある。ウクライナ製のミール 20mm F3.5もそのひとつ。

 広角レンズはハイライト部分が入りやすいので、この手のレンズを使うとどうしてもフレアっぽくなることが多い。逆光というよりも、白い壁でもフレアっぽくなってしまうこともある。それを避けて上手に撮るのは、おもしろいというか、運だのみというべきか。

 なおこれらの旧ソビエト圏のFマウントレンズは、ニコンのマウントと完全互換ではない。今のところのデジタル一眼レフでは、外れなくなるようなケースはないと思われるが、試しに買ってみたいと思う方は、上記のリンクの注意事項なども良く読まれてからにされることである。


3,872×2,592 / 1/45秒 / F4.5 / +0.5EV / ISO100 / WB:太陽光
●Kiyohara Kogaku VK50R 50mm F4.5

 お硬いニコンはソフトフォーカスレンズを作らないイメージがあるが、ニッコールレンズではなく、ニコンレンズのおもしろレンズ工房の中には、ふわっとソフトという90mm F4.8のレンズがある。また現行の135mmと105mmのF2レンズも、DCリングの操作でソフトフォーカスにすることが可能だ。

 どうしても素直にソフトフォーカスは作りたくないように思われるニコンだが、ニコン製以外でも装着できるソフトフォーカスレンズがある。このキヨハラのVK50RとVK70Rや、ケンコー製の85mm F2.5ソフトなどである。いずれも現在は製造中止になっているが、中古市場では時々見かけるので入手はそれほど難しくはないだろう。いずれもTマウントという交換マウント方式になっており、ケンコーなどで発売しているTリングをつかえば、Fマウントだけでなく様々なマウントに変更することが可能である。

 作例のキヨハラVK50Rは、絞りがレンズの前面に付いており、指先で回す特殊な方式。絞りに応じてソフト量が変わるタイプのレンズであるため、あまり使いやすくはない。しかし、使いやすさを求めてこの手のレンズは購入するものでもないだろう。開放でもF4.5と暗いので、ソフト量も控えめ。焦点距離も50mmと短めなので、持っていてもまあ良いかなと思うレンズである。


最後に

 D80を2カ月ほど使用して感じたのは、「普及機のハイエンド」、「最強の普及機」という印象だ。もっとも普及機か中級機かという分類は、実質的な意味はない。操作性から見て普及機と感じはするものの、写りそのものは上位機種に優とも劣らないのがデジタルの下克上。何年かすればもっと良い普及機も出てくると思うが、D80は、満足して長く使えるハイコストパフォーマンス機種といえるだろう。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/slr/digital/d80/
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(D80)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#d80
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 安孫子 卓郎 )
2006/10/25 01:43
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