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キヤノン EOS Kiss Digital X【第6回】
マクロでも便利な親指AIサーボAF

Reported by 北村 智史


 先週は、ムスメにもらった風邪でダウンして、お休みさせていただいた。注射と点滴と飲み薬が4種類にうがい薬のおかげでなんとか復活したはいいが、今度は滞っていた原稿を片づけるのに倒れそうな感じである。

 それはさておき、今回のお題は“親指AF”である。釈迦に説法な気もしないではないが、一応説明しておく。

 EOSの場合、カスタム機能のC.Fn-4を1に切り替えると、シャッターボタン半押しでAEロック(AFは作動しない)、AEロックボタンでAF作動(AEロックはしない)という動作になる。普通はシャッターボタンを押す人さし指でAFを作動させるところを、親指を使ってAFを作動させるところから“親指AF”と呼ばれている。もとはキヤノンの専売特許的な機能だったが、最近はほかのメーカーのカメラでも同じようなことができる(例えば、ニコンD200の場合、カスタム機能a6で「シャッターボタン半押しによるAFレンズ駆動」をオフにする。AF作動ボタンがあるからAEロックボタンの機能が死ぬことはない)。

 EOS Kiss Digital Xの使用説明書には「ピント合わせと露出決定を別々に行ないたいときに有効です」と書かれている。シャッターボタンとピント合わせを切り離せるので、一度合わせたピントが、シャッターボタンを押しても保持される。ピント位置を変えずに、表情違いとか露出違いとかで何枚も撮りたいときにピントがズレる心配がないし、AFでピントが合わない条件でもいちいちMFに切り替えなくていいなどのメリットがある。

 特にフルタイムMFが可能なレンズ(リングUSM搭載レンズとEF 50mm F1.4 USM、シグマのHSM搭載レンズ)の場合、AFでざっとピントを合わせておいて、微妙なところはMFで仕上げるというやり方ができるが、このときにシャッターボタン半押しでAFが作動すると、せっかく調整したピントがおじゃんになってしまう。なので、親指AFが便利で確実なのである。

 で、ここからが本題。筆者はここ何年か、ずっと親指AFにAIサーボAF(一般にいうところの「コンティニュアスAF」を意味するキヤノン語。ちなみにニコン語では「コンティニュアスAFサーボ」)を組み合わせて使っている。というのは、この設定だけでほとんどのシーンはOKだからで、AFモードの切り替えも、AFとMFの切り替えもいらない。便利なんである。

 AEロックボタンを押してAF作動、ピントが合ったところで指を離せばフォーカスロック状態になる。普通のAIサーボAFと違ってフレーミングやピントの調整はやり放題。使い勝手的にはワンショットAF(いわゆる「シングルAF」。ニコン語では「シングルAFサーボ」)とほぼ同じ。なので、静止している被写体にはこのやり方でOKだ。で、AEロックボタンを押しっぱなしにすれば、そのまんまAIサーボAF。なので、動く被写体もバッチリだ。

 こんなふうに、親指の使い方ひとつでワンショットAF的にも、AIサーボAFとしても使えるのがミソ。被写体が動いていようが止まっていようが、AFモードを切り替える必要がないのがいいところである。


C.Fn-4を「1:AEロック/AF」にすると“親指AF”が使えるようになる そして、AFモードをAIサーボAFにするのが今回のミソ

「*」ボタン(AEロックボタン)の使い方次第で、ワンショットAF的にもAIサーボAFとしても使える

 もともとは、ムスメの親バカ写真を撮るときに試してみた手法で、予想以上に使えたので、数年前から何を撮るにもほとんどこの設定のままである。

 なにしろ、大人のいうことを聞かないのが子どもという生き物である。じっとしててと言っても勝手に歩き出すし、かと思えばいきなり転んで泣き出したりもする。ワンショットAFでは動きに対応できないし、かと言って、AIサーボAFでは測距点の位置にフレーミングが縛られる。それに、どう動くかもわからないのに(動かないかもしれないし)、ワンショットAFだのAIサーボAFだのの設定を切り替えている余裕もない。

 まあ、初心者の皆様のためには、AIフォーカスというありがたい機能があって、それだとワンショットAFとAIサーボAFをカメラが上手に切り替えてくれることになっているのだが、カメラまかせにするのもおもしろくない(せこいプライドだってのはわかってるけどね)。

 その点、親指AFとAIサーボAFの組み合わせなら、ムスメの気まぐれにもばっちり即応できる。右手の親指をホールディングに集中させられないので、重量級のカメラだとしんどいことになるが、EOS Kiss Digital Xのような軽量級カメラなら問題はない。すでに親指AFをお使いの方なら、すぐに使いこなせるようになるはずだ。

 ただし、欠点もある。ワンショットAF感覚で使えはするが、実体はAIサーボAFである。内蔵ストロボをポップアップさせておいてもAF補助光は光ってくれない。なので、うんと暗い条件(ISO1600相当に感度を上げても手ブレが避けられないぐらいの暗さになると、さすがにEOSのAFも音をあげる)では、ワンショットAFに切り替えないといけない。


 で、この親指AIサーボAF(と勝手に呼んでいる)、実はマクロとの相性が抜群にいい。奇異に思われるかもしれないが、やってみるとけっこうハマるのだ。

 例えば、いったんピントを合わせてから撮影倍率を変えたいときに、ワンショットAFだと、前後に少し移動してピントを合わせなおすことになる。「これぐらいかな」で動いて「あ、もうちょい」という感じで微調整をやったりするが、AIサーボAFならラクチンだ。カメラにとっては、被写体が動くのもカメラの位置が動くのも、撮影距離が変化する点は同じ。つまり、AIサーボAFが役に立つ条件だったりするわけだ。

 AEロックボタンを押しっぱなしにして、ファインダーを覗きながら被写体のサイズが適当な大きさになるように前後に動けばいい。ワンショットAFのように、ピントを合わせなおしてから「なんだ、イマイチじゃん」なんてこともない。ラクチンだし効率的なのだ。

 それと、条件がよければだが、身体や被写体の揺れをAFで吸収してもらえるというメリットもある。

 手持ち撮影ではカメラを完全な静止状態にはできないので、撮影距離が微妙に変化しつづける。ピントが合ったり外れたりの繰り返し状態になっているわけだ。そういうときにAIサーボAFを使うと、身体や被写体が前後に揺れてもピントを合わせつづけてくれる。

 とはいえ、カメラのAFは、近づいたり離れたりを繰り返す被写体はものすごく苦手なうえに(移動の方向が一定でないうえに速度変化も大きいので、追いつづけるのが難しいのだ)、マクロ域ではちょっとした撮影距離の変化でもレンズの駆動量が大きくなるからAFの反応も鈍くなりがちだし、ある程度以上の高倍率になると被写体を測距点でとらえておくことさえ難しくなる。

 なので、撮影倍率があまり高くなくて、かつピントが検出しやすく、ある程度面積の広い被写体であることという条件付きだが、条件がそろいさえすれば、気持ちよくピントを合わせつづけてくれて、快適な撮影が楽しめる。

●今回使ったレンズ


EF 100mm F2.8 Macro USM。フィルムでは使いやすい焦点距離だが、EOS Kiss Digital Xには35mmフィルム換算160mm相当になるので、ちょっと長すぎる EF-S 60mm F2.8 Macro USM。換算 96mm相当になるデジタル専用マクロ。軽量コンパクトなのでEOS Kiss Digital Xには手ごろ

  • 作例のリンク先は、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたファイルです。
  • 写真下の作例データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/測光方式/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランスを表します
  • 一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。


EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/1,000秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/100秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F4 / -1EV / ISO100 / WB:太陽光 EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/400秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/640秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/160秒 / F8 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/160秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F5.6 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/125秒 / F4 / EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF-S 60mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/200秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/200秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光

EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光 EF 100mm F2.8 Macro USM / 3,888×2,592 / 部分測光 / マニュアル露出 / 1/320秒 / F4 / ISO100 / WB:太陽光


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdx/
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( 北村 智史 )
2006/10/20 14:53
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