デジカメ Watch
最新ニュース

パナソニック LUMIX DMC-L1【第7回】
マウントアダプターでオールドレンズを使う

Reported by 中村 文夫


 DMC-L1が採用しているフォーサーズ規格は、他社の一眼レフに比べるとフランジバックが短く、マウントアダプターを介してさまざまなレンズが取り付け可能だ。そこで今回は、この特性を活かして、さまざなレンズで遊んでみることにした。

 今回のレポートに使用したマウントアダプターは、宮本製作所がレイコールブランドで製造、販売する製品。フォーサーズ用マウントアダプターは全部で8種類用意されているが、このうち5種類を利用した。

 現在、レイコールブランドで発売中のフォーサーズ用アダプターは、ミノルタMD、ニコンF、オリンパスOM、ライカR、M42、ヤシカ/コンタックス、ペンタックスK、エキザクタの8種類。基本的に絞りリングを備えたレンズが使用可能だ。もちろん無限遠も出るし、光学系を内蔵していないので、レンズの持ち味も損なわれない。


レイコールのマウントアダプタ― ライカR用レンズを取り付けた状態。マウントアダプターの厚みため絞りリングが前方に出るので、絞りの操作がしやすい

DMC-L1の設定について

カスタム設定の画面
 マウントアダプターを介して他社製レンズをDMC-L1に取り付けても、デフォルトの設定だとシャッターが切れない。アダプターには電気接点がなく、カメラがアダプターを認識しないので、レンズ未装着と判断してしまうからだ。したがってマウントアダプターを使うときは、カスタムファンクションで「レンズ無しレリーズ禁止」をOFFにセットする必要がある。

 DMC-L1は、フォーサーズ用レンズ以外では露出計が作動しない仕様になっている。他社のデジタル一眼レフの多くは、絞り込み測光で絞り優先AEやマニュアル露出が使えるが、その点DMC-L1はちょっと不親切だ。確かに専用以外のレンズを使うと露出が狂うことがあるので、メーカーとして露出計を使ってもらいたくない気持ちはよく分かる。だが正確ではないにしても、基準となる露出をカメラが示してくれれば、補正しながら使うことができるので、露出計は作動した方がいい。

 そこで今回の撮影には単体露出計を使うことにした。用意した露出計はセコニックツインメイトL-208。カメラのアクセサリーシューに取り付けられるコンパクトな入/反射光兼用機だ。

 DMC-L1の撮影モードは、マニュアル露出にセット。これまで、絞り優先AEとプログラムAEばかり使ってきたので、このモードを使うのは実は初めてだ。この場合、F値はレンズ側の絞りリングで選択。シャッタースピードは、ボディ側のシャッターダイヤルでセットするわけだが、DMC-L1のシャッターダイヤルは、ことのほか使いやすかった。

 実際の撮影では露出計の示す露出で撮影しても、露出が適正になることはほとんどなく、液晶モニターで画像を確認した後シャッターダイヤルで露出を微調整することになる。このときは、液晶モニターのシャッタースピード表示を見ながら、シャッターダイヤルを回転させてシャッタースピードを変更するが、1クリックできっちり1/3ステップずつシャッタースピードが変わるので、とても気持ちが良い。要するに昔ながらのシャッターダイヤルが電子ダイヤルの役目を果たすわけで、フィルムカメラのライカR8や9の操作感に近い。ライカのDNAは実はこんなところに隠れていたのだ。


セコニックツインメイトL-208をアクセサリーシューに取り付けた状態 ライカR8のシャッターダイヤル。L1のマニュアル露出時のシャッターダイヤルの操作感は、これに近い

 ピント合わせは当然マニュアルフォーカスで、光学式とライブビューの2通りのファインダーが利用できる。明るい屋外で撮影する場合、光学ファインダーの方が外光に影響されないし、一眼レフである以上アイレベルで普通にカメラを構えた方が使いやすい。DMC-L1のファインダーは、スペック的には0.93倍という高倍率だが、フォーサーズのCCDは小さく、実際には像がかなり小さい。いわゆる「井戸の底から天を仰ぐ」といったタイプなので、ピント合わせがとてもしづらく、特に今回のような被写界深度の浅いレンズで、正確にピントを合わせるのは至難の業だ。

 これに対しライブビューは、MFアシスト機能を使えば、画像を4倍、あるいは10倍に拡大することができ、正確なピント合わせができる。だがDMC-L1の場合、この機能を使うと、モニター画面いっぱいに拡大された像が表示されるので、構図を決めるには、MFアシストを解除する必要がある。三脚にカメラを固定して撮影する場合には便利な機能だが、はっきりいって手持ち撮影向きではない。パナソニックのコンパクトデジタルカメラの中には、モニター上に撮影するすべての範囲を写しながら、中央に拡大画像を表示する機種があるが、このような表示方法が選べるとさらに使いやすくなっただろう。

 いずれにしてもDMC-L1は、オートフォーカスを基本に設計されているので、マニュアルフォーカスの使い勝手はそれほど良くない。特にレンズアダプターを使って他社製レンズを組み合わせるなど、イレギュラーな使い方をする際は、それなりの覚悟が必要である。

 今回は、私の手持ちのレンズの中から、比較的、写りに特徴のあるレンズを選んでみた。また、それぞれのレンズの特徴をはっきりさせるため、絞り開放を基本に撮影。DMC-L1でも各レンズの個性が十分に発揮されることがよく分かった。撮影前は、不自然にコントラストが強調され、デジタルくさい画になるのではと心配していたが、実際に撮影してみると、フィルムの描写に近く、思ったより落ち着いた画になった。これまでデジタル専用レンズばかりを使ってきたので見落としていたが、これは大きな発見と言えるだろう。とにかくファインダーと測光の問題さえ解決すれば、マウントアダプター派にとって、DMC-L1は頼もしい戦力になるだろう。


実写編

●SMCタクマー 50mm F1.4
(M42マウント)


 1971年頃にペンタックスが発売した大口径標準レンズだ。DMC-L1に組み合わせたときの画角は100mmに相当。早い話が100mm F1.4という大口径中望遠レンズとして利用できる。

 このレンズに限らず、50mm F1.4というレンズは製造本数が多いので、中古市場に程度の良い商品が大量に出回っている。マウントアダプター入門に最適なレンズだ。


全体に軟調でコントラストもそれほど高くないが、赤いヒモの立体感は、なかなか良い
3,136×2,352 / 1/1,250秒 / F1.4 / ISO100
暗い場所だったので、手ブレを避けるためISOを400に上げて撮影。夜景のときと違って中間調の部分がざらついた感じが非常に目立つ
3,136×2,352 / 1/40秒 / F1.4 / ISO100

●ズミクロンR 35mm F2
(ライカRマウント)


 1970年頃に発売された大口径広角レンズ。古い製品なのでコーティングは単層。そのため、開放で撮影すると全体にフレアが目立つ。フィルムで撮影した場合に比べ、DMC-L1で撮影したときの方がフレアが強く出るようだ。


鈴に懸けられた布の織り目まで、見事に再現された。全体に湿った感じのする描写だ
3,136×2,352 / 1/125秒 / F2 / ISO100
ハイライト部に二線ボケの傾向が見られるが、ボケ味は軟らかく嫌味はない
3,136×2,352 / 1/40秒 / F2 / ISO100

口径食は意外と少ないが、木漏れ日のボケ方にクセがある
3,136×2,352 / 1/60秒 / F2 / ISO100

●ニューニッコール105mm F2.5
(ニコンFマウント)


 ニコンFの当時から、最近まで現役だった超ロングランの中望遠レンズ。フィルムカメラの場合だと、それほど大口径とはいえないないが、DMC-L1に組み合わせると200mm F2.5の大口径望遠レンズになる。


拡大するとおみくじの文字が読み取れるほど、像がシャープ。ボケ味も自然で良い
3,136×2,352 / 1/3,200秒 / F2.5 / ISO100
マルチコーティングが施されているので、開放から高いコントラストが得られる
3,136×2,352 / 1/3,200秒 / F2.5 / ISO100

●MCズームロッコール 40-80mm F2.8
(ミノルタMDマウント)

 鏡筒側面にあるダイヤルとレバーでピント合わせとズーミングをする、不思議なデザインの大口径ズームレンズ。当時しては画期的な製品だったが、高価だったため、それほど売れず、短期間で姿を消した。


MCズームロッコール 40-80mm F2.8 MD用のアダプターの場合、自動絞りレバーの干渉を避けるため、付属の六角レンチを使ってレンズをアダプターに固定する

発色が穏やかで、全体に落ち着いたトーンが得られた
3,136×2,352 / 1/500秒 / F2.8 / ISO100
一見するとシャープだが、拡大してみると、葉の隙間から見える空が不思議な形に写っている。外観だけでなく写りも個性的だ
3,136×2,352 / 1/250秒 / F2.8 / ISO100

●SMCペンタックスFAリミテッド 43mm F1.9
(ペンタックスKマウント)


 フィルムカメラ用に味わい深い描写を目指して開発された初代のリミテッドレンズ。総金属製の鏡筒や適度にトルクのあるヘリコイドなど、写りだけでなく、レンズそのものにも高級感を持たせてある。
 フィルムカメラ用に味わい深い描写を目指して開発された初代のリミテッドレンズ。総金属製の鏡筒や適度にトルクのあるヘリコイドなど、写りだけでなく、レンズそのものにも高級感を持たせてある。


非常にシャープだが木漏れ日のボケ方が独特。タクマー50mmに描写が良く似ている。
3,136×2,352 / 1/400秒 / F1.9 / ISO100
シャドー部のグラデーションが見事。最暗部もつブレることなく再現された。DMC-L1との相性は非常に良い
3,136×2,352 / 1/160秒 / F1.9 / ISO100

●SMCペンタックスFソフト 28mm F2.8
(ペンタックスKマウント)


 球面収差を利用した本格的なソフトフォーカスレンズ。絞り開放でソフト効果が最高になり、絞るにしたがってシャープさが増す。本来は広角レンズだが、DMC-L1に組み合わせると56mmの標準レンズになる。画像処理ソフトでは不可能なソフトフォーカス効果が楽しめる。


シャープな像の周辺に盛大なフレアが発生するのが、このレンズの特徴。デジタルカメラのDMC-L1でも、この特徴が遺憾なく発揮された
3,136×2,352 / 1/1,250秒 / F2.8 / ISO100
このように暗い部分との境界がはっきりした条件では、暗部側に大きくフレアが発生する
3,136×2,352 / 1/640秒 / F2.8 / ISO100

フレアに溶け込む窓枠や、トビ気味のハイライト部の描写は、フィルムで撮影したときのイメージに近い
3,136×2,352 / 1/320秒 / F2.8 / ISO100
ISO100で撮影したので、暗部の微妙なトーンのノイズが最小限に抑えられた。このレンズの場合、ISO100以外で撮影することは避けた方が良いだろう
3,136×2,352 / 1/3,200秒 / F2.8 / ISO100


URL
  パナソニック
  http://www.panasonic.co.jp/
  製品情報(DMC-L1)
  http://panasonic.jp/dc/l1/
  レイコール(宮本製作所)
  http://homepage2.nifty.com/rayqual/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(LUMIX DMC-L1)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#l1


( 中村 文夫 )
2006/09/13 22:15
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.