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ペンタックス Optio A10【最終回】
墨東写真展で動画を試してみる

Reported by 中里 和人


 長期レポートも、今回で最終回となる。そこで最後は、今まで撮影していなかった動画と、その動画の内容を静止画にした2部構成にしてみた。

 動画の舞台に選んだのは、現在墨田区錦糸町の倉庫で開催されている写真イベントで、私もそこに参加している。イベントはTokyoEast Perspectiveと題し、これまでまとまって注目されたことのない東京の東サイドに光を当てた写真展覧会になっている。

 展覧会内容は、1950年代から2006年まで、東京の東サイドを長野重一、春日昌昭、須田一政、飯田鉄、大西みつぐ、佐藤信太郎、兼平雄樹と私の8名の写真家が捉えた「墨東写真」と、若手写真家5名が墨田区の職人を撮り下ろした「すみだ職人列伝」の2つの写真展が柱になっている。そこに、インスタレーションとして、会場となった倉庫入口に私の作った3つの小屋を街のようにならべ、50年代の戦後間もない写真世界にトリップしていく小屋街の空間をコラボレーションさせている。

 その倉庫の空間、小屋インスタレーション、写真展覧会と連なる光景を、動画で記録してみた。広がりや奥行き、様々な要素の構成からなるイベントには、動画による記録は最適な気がした。建物の質感や写真の描写も、裸電球だけの照明ながらよく再現されていた。(動画1)

動画1(要DivX再生環境)
(再生環境に関するお問い合わせは受け付けておりません)

(AVI、640×480ピクセル、約30MB)


 展覧会会場になっているのは、戦後間もなく水飴工場として使われ、後に現在の倉庫になった古い建物で、こちらサイドで展示空間を手作りした。その入口付近には、私が2000年からワークショップで製作してきた3つの小屋を設置し、古い写真や倉庫と小屋の古い景色同士での空間コラボレーションを展開した。

 撮影した画像では、入口付近の明るい外光と倉庫奥のほの暗い明りとのバランスも、実景に近いデリケートな描写となって写っていた。(写真1)

 さらに倉庫内に入っていくと、小屋は垂直的な景観になっている。ほとんど薄暗い2階部分も肉眼よりも明るめに再現されていて、暗がり描写に強いデジカメの力をみた。(写真2)

※作例のリンク先は撮影画像です。
※キャプションのデータは画像サイズ / 露出時間 / 絞り / 露光補正値 / ISO感度 / ホワイトバランスモード / 35mm判換算焦点距離です。


写真1
3,264×2,448ピクセル / 1/6秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm
写真2
3,264×2,448ピクセル / 1/4秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm

 それぞれの小屋はすべて畳1畳サイズで、車のトランクに積んでどこへでも移動可能な解体組立て式の小屋である。その中に明りとオブジェを置いてみた。弱い裸電球の明りの陰影が小屋の内部にこぼれていた。(写真3)

 小屋の街を抜けると写真展覧会コーナーになる。戦後間もない頃に水飴工場として使われていただけあって、倉庫内には新橋のガード下のように、リべットが打たれた古い鉄骨が何本も立っている。(写真4)


写真3
3,264×2,448ピクセル / 1/4秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm
写真4
3,264×2,448ピクセル / 1/8秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm

写真5
3,264×2,448ピクセル / 1/5秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm
 写真展覧会コーナーで最初の写真は、長野重一さんの1950年代の写真がある。写真が撮影されて半世紀ほど経つのだが、写っている人々は生き生きとしていて、時代を生き抜く人間の姿が色褪せずに迫ってくる。(写真5)

 1970年代の人物をスナップし、日本人の生なリアリティを写しとめたた須田一政さん(写真6)、現代の下町エリアをヴィヴィッドな色彩と蠢きの中に写しとめた大西みつぐさん(写真7)、2000年から2006年までの墨田区向島を古い東京の原風景として捉えた私の作品(写真8)、そして、墨田区の職人さんたちに密着ドキュメントした「すみだ職人列伝」の写真がならぶブースがある。ブースには写真のほか、職人さんたちが製作してきた作品も並ぶ。(写真9)

 今、錦糸町の倉庫では、時空を超えた東京東サイドの像が、かつてない鮮明な姿となって集合浮上していた。


写真6
3,264×2,448ピクセル / 1/15秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm
写真7
3,264×2,448ピクセル / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm

写真8
3,264×2,448ピクセル / 1/10秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm
写真9
3,264×2,448ピクセル / 1/13秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / AWB / 38mm

■Tokyo East Perspective「墨東写真」
http://bokuto.onmitsu.jp/
会期:6/17(土)~7/1(土) 11:00~19:00
会場:東京都墨田区横川1-1-10 鈴木興産1号M倉庫
問合わせ先:045-226-5226 ザ・ダークルーム・インタナショナル
 長野重一、須田一政、飯田鉄、大西みつぐ、中里和人、佐藤信太郎、兼平雄樹を始めとした8名の写真家による、東京の東側サイド(いわゆる下町エリア)に光を当てた写真展。中里は向島を撮った新作写真集「東亰」から展示いたします。

●関連イベント
【6/24(日) 17:00~18:00】
「向島+小屋」上映会
ビデオ作品「長屋迷路」映像:阿部真吾 音/余語哲士
「いわきモンスーン」映像:阿部真吾/瀧本慶吾
入場料:500円

【6/24(日) 19:00~20:00】
「はないけ倉庫」華道家/アーティスト:上野雄次
入場料:1,500円

【6/25日(日) 15:00~15:50】
相撲甚句・横川横丁寄席
入場無料

【7/1日(土) 15:00~16:00】
墨東写真・昨日今日明日(出品者によるパネルディスカッション)
入場無料


■中里和人新作写真集「東亰」
木土水・A4変形、96ページ、定価2940円税込み
問合わせ先 Tel.0480-34-0211
http://www.mokudosui.com/
今回の「墨東写真」では、この写真集から作品展示しています。



( 中里 和人 )
2006/06/23 15:53
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