デジカメ Watch
最新ニュース

ペンタックス Optio A10【第1回】
房総の旅

Reported by 中里 和人


 編集部から送られてきた宅配便を開けると、箱の中から手のひらサイズの可愛いコンパクトデジカメ「Optio A10」が現れた。

 小型軽量化されたカメラを手に取ると、背面の大部分を占める2.5型液晶モニターが見やすく、わずか145gの重量はケータイ電話を持つような感覚である。しかも、この小さなボディで800万画素の撮影が可能だという。

 充電を済ますとジャケットの左ポケットに携帯電話、右にOptioを忍ばせて、さっそく撮影に出かけることにした。春霞の中で向かったのはよく行く房総半島である。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。
※作例の撮影モードはすべてプログラムAEです。
※写真下の作例データは、記録解像度/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算焦点距離を表します。


写真1
3,264×2,448ピクセル / 1/250秒 / F3.1 / EV0 / ISO50 / AWB / 46mm
 木更津で高速を出て君津の山間に入って行く。ことさら行くあてもなく車を走らせていると、舟塚山と書かれただけの小さな手描き標識が目にとまった。その標識手招きされるように細い道を上っていくと、目の前にコンクリートの墓標のような構造物が現れた。

 近くにいってみるとかつて使われていた浄水場の跡らしい。さっそく手ブレ補正を利かし、カメラまかせのオートピクチャーモードでシャッターを押した。いつも使っている一眼レフカメラに比べると、シャッターを切る感覚はあまりない。さっそく液晶モニターで画像を再生してみる。コンクリートに差し込む斜光線が、緑の草木の中で元浄水場を際立たせている。春霞みに覆われた空は白く飛んでしまったが、これはいたしかたない。(写真1)

 舟塚山からの景色を眺めた後、さらに房総の真ん中を目指した。山から里に下りてくると道端で馬を発見した。石材屋のディスプレイ馬なのだが、顔や筋肉のリアルな表情と小さすぎる馬体が実にアンバランスで、一度見たら忘れられない。背景の空や雲の描写も素直で、石の質感も良く出ている。(写真2)

 馬に別れを告げて半島の南下を続けた。小さな山里をいくつか抜けると、散りかけた桜の木々の向こうに出店や人の賑わいのある湖に出た。湖にはたくさんの釣り人がいて、湖畔には散策する何組かのカップルや老夫婦の姿があった。看板を読むと、ここは「清和県民の森」と「三島湖」だった。湖と芽吹き始めた雑木林の遠景を撮影した。木々の彩りのグラデーションが滑らかで、空を旋回する鳥もきれいに写っていた。(写真3)


写真2
3,264×2,448ピクセル / 1/250秒 / F6.8 / EV0 / ISO50 / AWB / 55mm
写真3
3,264×2,448ピクセル / 1/160秒 / F3.4 / EV0 / ISO50 / AWB / 55mm

写真4
3,264×2,448ピクセル / 1/20秒 / F2.8 / EV0 / ISO200 / AWB / 38mm
 湖のほとりを歩くと、突然手掘りのトンネルに出くわした。小さな車がぎりぎり通れるくらいの穴だったが、この先行き止まり通行禁止の立て看板があった。トンネルの出口付近でしばらく撮影をしていたが、誰も通る気配がない。山からは澄んだ鴬の鳴き声が聞こえている。

 急にその鳴き声を打ち消すように、ギーッ、ギーッと鈍くきしむ音がトンネル内に響いてきた。振り向くと、遠くの方から自転車に乗った影が近づいてくる。シャッポをかぶり、ウフッ、ウフッと小刻みな咳払いをしながら迫ってくる老人の光景は、上質な演劇を観ているようでもあった。すれ違いざまにっこり微笑んだ老人は「写真屋さん?」と、やさしい言葉を残してトンネルの先で姿を消した。(写真4)



( 中里 和人 )
2006/04/14 13:16
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.