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松下電器 LUMIX DMC-FX01【第2回】
手ブレ補正と画質のビミョーな関係

Reported by 北村 智史


 以前から気になっていたのが、手ブレ補正のモード1とモード2の違い。常時手ブレ補正が働くモード1よりも、シャッターを切った瞬間だけ手ブレ補正が働くモード2のほうが手ブレを軽減する効果が高く、画質面でも有利らしいというのは、知識としては持っている。ただ、実際のところはどうなのよ? どれぐらい差があるわけ? という話になると、よくわからない。

 モード1とモード2の違いを理屈的に説明するのはそれほど難しくはない。LUMIXのMEGA O.I.S.、キヤノンのIS、ニコンのVR、シグマのOSといったレンズシフト方式の手ブレ補正は、補正光学系(ブレを補正するために移動式になっている一群のレンズのこと)を光軸に対して上下左右に移動させることで手ブレを補正している。

 下に掲載した図1は補正光学系が中心位置にある状態で、補正光学系が移動できる範囲はかぎりがある。モード1では、常時手ブレ補正がはたらいているので、非露光時(要は液晶モニターを見ているだけの状態)でも、補正光学系は上下左右にせっせと動き回っている。

 図2は補正光学系が少し右に移動した状態。上下と左方向には余裕があるが、右方向にだけはあまり大きな動きができない。この状態で、補正光学系をさらに右方向に移動させなくてはならないとしたらどうなるか。これを考えてみよう。少しのブレなら対応できるが、補正光学系を大きく動かす必要がある場合はちょっと困る。補正光学系が移動できる範囲はかぎられているので、手ブレを補正しきれなくなってしまうからだ。


レンズシフト方式の模式図1。補正光学系は上下左右に移動できるが、移動できる範囲は限られている。モード2では露光直前までこの状態なので、どの方向のブレに対しても安定した大きな補正効果が得られる 補正光学系が中心にない状態では、移動する方向によって移動できる量が変わってくる。この図の場合、右方向には少ししか移動できない。つまり補正できる手ブレの量が少ないということになる

補正光学系がめいっぱい移動した状態だと、右方向にはまったく動けない(つまり、ブレが補正できない)。上下方向のブレも補正できる量はかぎられてしまう。モード1ではこういうことも起こりうるので、モード2よりも手ブレ補正効果が弱くなると思われる たぶん、実際はこうなっているだろうと考えられるモード1の模式図。非露光時には、補正光学系は点線の範囲内で動き回ってブレを補正する。露光時は実線の範囲まで移動可能なので、どの方向にブレてもそれなりの手ブレ補正効果が得られる。が、右に寄った状態で右に動く場合、手ブレ補正効果が弱くなる

 もっとも困るのは、図3の状態。シャッターを切る直前に、補正光学系が右端にあった場合である。このとき、補正光学系は左方向にはたっぷり移動できるが、右方向にはまったく移動できないし、上下方向の移動量も少なめになる。つまり、左方向への移動が必要な手ブレに対してはとっても効果的だが、上下方向には弱い効果しか得られないし、右方向への移動が必要な手ブレはまったく補正できない。ブレの方向によって、補正効果が小さかったり、まるっきりダメだったりするわけだ。

 それに対してモード2では、非露光時は図1の状態なので、補正光学系をどの方向に動かすにしても移動量が大きくとれる。つまり、どういうブレがこようとも、安定した手ブレ補正効果が得られるわけだ。これがモード1よりもモード2のほうが手ブレ補正効果が高いと言われる理屈だ。

 一方、画質はというと、図1の状態がもっともよく、図3の状態がもっとも悪くなる。露光直前の補正光学系の位置が図2の状態だと、移動方向によっては小さなブレでも図3の状態になるかもしれない。となると、画質的に損していることになる。モード2なら、露光直前までは補正光学系は中心位置にあるので、小さなブレであれば図3の状態にはならない可能性が高い。つまり、その分写りがよくなるわけだ。これがモード2が画質面で有利といわれる理屈である。

 が、理屈は理屈。理屈が実際と食い違うことはたびたびあるし、理屈どおりだったとしても、それほど大きな差ではないかもしれない。だから、ビミョーなんである。

 たぶんだけれど、実際の補正光学系の移動範囲は図4のようになっていて、モード1の非露光時では移動範囲を狭めにしておいて、シャッターを切った瞬間はめいっぱいの範囲まで移動できる。そんなふうになっているのではないかと思う。というのは、最初からめいっぱいの範囲で動かすようにしていると、さっき書いたような条件で手ブレが補正できないケースがでてきてしまう。せっかくの手ブレ補正なのに、条件によって手ブレが補正できたりできなかったりでは実用性に欠ける。そんな難ありの手法を採るとは考えにくい。なので、非露光時の補正光学系の移動範囲を狭めに設定しておく。こうしておけば、非露光時にもある程度の手ブレ補正効果は得られるし、露光時の手ブレ補正効果もある程度は保証できる。

 画質面でも同じようなことがいえる。補正光学系が中心位置にある状態と、めいっぱい移動した状態とで、レンズの性能が大きく変わるようだと、露光中の補正光学系の位置によって、画質がころころ変わることになって、これも実用的に問題がある。手ブレ補正をONにしていると、画質がえらく悪くなることがある、なんてことになったら、手ブレ補正なんか使わないほうがいいぞという話になりかねない。だから、画質が落ちるにしても、目立つほどの落ち方はしないに違いないのである。

 結局のところ、モード1よりモード2のほうが、どれぐらい手ブレに強いのか、またどれぐらい画質がいいのか(正確には、どれぐらい画質低下が少ないのか、である)がわからない。


 が、問題は、それをどうやって検証するか、である。なにしろ、露光直前に補正光学系がどこにいるかなんてわかりはしないし、露光中も動き回っているだろうから、画質の比較もかぎりなく不可能に近い。だから、やるとしたら、モード1とモード2で何十枚かずつ撮って、ブレているコマ、画質がアマくなったコマがいくつあるかを数えるしかない。もう、考えるだけで面倒くさい。なので、今までは見ないふりをしてきたわけだ。メーカーだってモード2のほうがいいよっていってるんだしね。

 と、イイワケしててもしかたがない。せっかくの長期レポートなのだ。気は重いがやってみようと思った次第である。

 テストしたのは蛍光灯下の室内。ようは筆者の自宅である。カメラの状態としては、広角端でマクロモード。感度はISO80相当。記録画素数は2,816×2,112ピクセル(約595万画素)で画質はスタンダードにした。これだと128MBのカードで82コマ撮れる(実際は89コマと90コマ撮れたので、多いほうを1コマ捨てて数をそろえた)。シャッター速度は1/15秒ぐらい。一応、カメラは両手で構えたが、腕は中途半端に伸びているという状態。手ブレ補正ONでもブレるかもしれないビミョーな状態である。


テスト用の被写体はムスメ愛用のウサギである。こんなのを練習も含めて200コマぐらい撮った(リンク先は2,816×2,112ピクセル) こちらはモード1で手ブレしたコマ。ブレたコマの数も多かったが、ブレたときのブレ量もモード1のほうが大きかった(リンク先は2,816×2,112ピクセル)

 で、延々シャッターを切る。モード1で128MBのカードがいっぱいになるまで撮って、モードを切り替えて別のカードで容量いっぱいまで撮る。それをPower Mac G5にコピーしてPhoto Mechanicでチェック。50%表示で「OKかな」という、まあ、プリントで見るなら大丈夫そうなコマをセレクトして、さらにその中のピクセル等倍で見てもOKなコマを選び出す。残りのコマをピクセル等倍で見て、「ブレてるねぇ」コマをセレクトして、その中から50%表示でもダメなコマをチェック。

 「ピクセル等倍で見てもOK」、「プリントなら平気そう」、「どちらともつかない」、「ちょいブレてる感じ」、「これはブレてるって言うよ」の5段階にわけて、それぞれのコマ数をカウントしたのがこの表である。

モードごとの手ブレコマ数比較
  モード1 モード2
ピクセル等倍で見てもOK 46コマ 53コマ
プリントなら平気そう 15コマ 16コマ
どちらともつかない 7コマ 7コマ
ちょいブレてる感じ 5コマ 8コマ
これはブレてるって言うよ 16コマ 5コマ


 結果はごらんのとおり。やはりモード2のほうがいいらしい。プリントで見るなら大丈夫そうなものを含めてのOKコマの数はモード1が61コマ、モード2は69コマ。68.5%対77.5%という差である。モード1のほうが、ブレているコマの数も多かったし、ブレ具合も大き目立った。

 ただし、画質についてはいまいちよくわからない。たぶん、テスト方法が安直だからだろうが、全体的には「ブレてはないと思うけど、なんかアマい気がする」コマはモード1のほうが多かったものの、それが補正光学系の位置のせいなのか、たまたまピントがアマいコマが多かっただけなのかはビミョーである。ほかにも、望遠端とか遠景はどうなのよとか、カメラを揺らしながら撮ったらどうなるかとか、テストの条件なんて考えるだけならいくらでも出てくる。

 ともあれ、予想どおりではあったものの、モード2で撮ったほうがいいらしい、という結論にいたったわけで、締切に遅れたイイワケができて一安心な筆者なのである。

※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。


すでに盛りはすぎていたものの、少しはツボミも残っていた。桜はAWBだと色が出ないことが多いのでプリセットの昼光で。普段はほとんど使わないが、「画質調整」も「ヴィヴィッド」に切り替えてみた
2,816×2,112ピクセル / 1/160秒 / F2.8 / -0.33EV / ISO80 / WB:昼光 / 28mm
べったりの曇り空。昼光で撮った写真は6,500Kのモニターだと青みが強すぎるかも
2,816×2,112ピクセル / 1/250秒 / F2.8 / 0.33EV / ISO80 / WB:昼光 / 28mm

高いところの花を、腕を伸ばして撮ったカット。やっぱり手ブレ補正はありがたい
2,816×2,112ピクセル / 1/250秒 / F2.8 / 1.33EV / ISO80 / WB:曇天 / 28mm
EX光学ズームでの撮影。画素数は減るけどデジタルズームと違って画質が落ちないのがいい
2,048×1,536ピクセル / 1/160秒 / F5.6 / -1EV / ISO80 / WB:曇天 / 142mm

桜も終わりのころになると、花より地面のほうがきれいだったりする
2,816×2,112ピクセル / 1/100秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO80 / WB:昼光 / 28mm
お寺って立派な枝垂れ桜が多いように思う
2,816×2,112ピクセル / 1/125秒 / F3.5 / -1EV / ISO80 / WB:昼光 / 46mm相当

散った花びらが風で集まって模様をつくっていた。ちょっとタツノオトシゴっぽい
2,816×2,112ピクセル / 1/200秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:昼光 / 28mm


URL
  松下電器
  http://panasonic.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/fx01/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 北村 智史 )
2006/04/10 14:48
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