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ソニー サイバーショット DSC-T9【第2回】
メモリースティックPROをいかす動画撮影

Reported by 元麻布 春男


ソニー製のカメラであるDSC-T9の記録メディアはメモリースティックPRO Duo
 デジタルカメラを製品化しているベンダーは、以前からカメラを手がけていた光学機器メーカーと、AV製品を手がけてきた家電メーカーに大きく分かれる。もちろん、光学機器メーカーといっても、キヤノンのようにエレクトロニクスに極めて強いところもあれば、家電メーカーもビデオカメラで光学技術を蓄積していたりする。こうした単純な塗り分けはあまり意味をなさないのかもしれないが、老舗であるコニカミノルタや、旧ヤシカの流れを汲む京セラがカメラ事業から撤退するといったニュースを聞くと、カメラのデジタル化は光学機器メーカーに過酷な試練を与えているのだなぁと思わずにはいられない。

 (デジタル)カメラメーカーとしてのソニーの強みは、鍵となる技術やデバイスをほとんど内製化できる点にある。画像処理エンジンや撮像素子さらにはバッテリーといった半導体/エレクトロニクス技術はもちろん、光学式手ブレ補正を含むレンズ等の光学技術も持ち合わせている。唯一、欠けていたかもしれないのが、レンズ交換式一眼レフボディを作るためのメカトロニクス系技術だが、それもコニカミノルタのカメラ事業を吸収することで補われる。おもしろいのは、全く同じことが松下電器産業にもあてはまることで、両社のライバル関係の業の深さみたいなことを感じてしまう。

 もちろん、技術を持っていることが常に事業に有利に働くとは限らない。他社に優れた技術があれば、それを買ってきた方が早いことはいくらでもある。ソニーの場合、技術があることが必ずしも良いとは限らないと見られがちなのが記録メディア、すなわちメモリースティックだ。DSC-T9が採用するのも、メモリースティックの小型版であるメモリースティックDuo/PRO Duoである。

 元々1997年に発表されたメモリースティックは、主要なフラッシュメモリメディア規格の中では、CF、SmartMediaに次ぐ歴史を持つ。一時は、多くのサードパーティが規格に賛同していたのだが、残念ながら今では対応機器を新規開発するのはソニーくらいになってしまった(そういえば、コニカと京セラは、メモリースティックに対応したカメラを発売したことがあった)。多くは、規格を無償公開したSDメモリーカードに流れてしまったようだ。

 しかしメモリースティック、特にメモリースティックPROに利点がないわけではない。メモリースティックPROは、連続書き込み速度15Mbpsが保証されている。ハードディスクという高速大容量バッファを備えたPCでは、書き込み速度が保証されていてもそれほどありがた味がないが、デジタルカメラのようにバッテリ駆動される小型の携帯機器では、余分なバッファを搭載しないで済むというメリットが動画撮影時に生きる。

 DSC-T9の動画撮影機能は、MPEG-1によるMPEGムービーVXで、DSC-M系を除く同社製デジタルカメラと同じだが、手ブレ補正機能は動画撮影時も利用できる。VGA解像度で30fpsの動画(ファインモード)を撮影する際にメモリースティックPRO Duoが必須とされるのは、この書き込み速度の保証が欠かせないからだ。

明るいところでの動画撮影。VXファインモードなら滑らかさも十分(約23.5MB)

 もう1つメモリースティックが動画撮影に有利なのは、PROタイプであればメディア当りの記録容量が大きいことだろう。残念ながらDSC-T9が利用するPRO Duoの最大容量は2GBまでだが、通常サイズのPROではすでに4GB版が存在する(国内未発売)。2GBを超えるとFAT32の対応が不可欠になるが、最近リリースされたメモリースティックPRO対応機では、ある程度その準備が進んでいるという。現時点では確認できないが、4GBメディアがあれば、より長い動画の記録が可能になるし、静止画やPSPでのゲームデータなど、さまざまなデータを1つのメディアで共有するのも楽になる。

 メモリースティックにおける動画撮影で残念なのは、ソニー製品間で動画フォーマットの統一が図られていないことだ。DSC-T9で撮影した動画をPSPで見るのに、コンバートが必要になる。しかも、コンバートソフト(Image Converter 2.0)は添付されておらず、別途購入しなければならない(添付されているのは、ビデオCD作成ソフト)。すでにMPEG-4による動画撮影をサポートしたDSC-M2もあることだし、メモリースティックスロットを持つソニー製品であれば、コンバートのような面倒なことをしなくても、そのまま動画を含むすべてのデータが共有できるようになって欲しいものだと思う。サードパーティによるメモリースティックの採用をソニーが決めることはできないだろうが、自社製品間での互換性は解決できるハズだ。

 ちょっと話がDSC-T9から脱線してしまったが、本機の動画撮影機能はなかなかイケル。本格的な動画対応のデジタルカメラ(たとえば上述のDSC-Mシリーズ等)と異なり、撮影中にズーム操作ができなかったり、音声がモノラルのみだったりといった機能面は、クラスの平均レベルかもしれないが、手ブレ補正の助けもあって、夜景のようなシーンでもカメラまかせでかなり健闘してくれる。動画は一眼レフでは撮れないだけに、これが実用になるとサブカメラとして重宝することは間違いない。

※下記の2つの動画はDSC-T9で撮影後、カノープス MpegCraft2 DVDで後半数十秒分の動画をカットしたものです。

VXスタンダードモード(640×480ピクセル、約17fps)によるBellagioの噴水ショー。17fpsのスタンダードモードでは動きに滑らかさが欠けており、カクカクした印象が否めない (約8.2MB) VXファインモード(640×480ピクセル、30fps)による噴水ショーの模様。30fpsの威力がハッキリとわかる。三脚無しの手持ちでこれくらいの動画がカメラまかせで撮れるのも、手ブレ補正の威力というところか(約13.9MB)

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。


DSC-T9で撮影したラスベガスはBellagioの噴水ショー(ワイド端)。オートモードのまま、シャッターを押すだけで、誰でもこれくらいの写真が撮れる
同じ位置でテレ端による撮影。ピクセル等倍ではノイズがかなり目立つが、フィルムカメラでの苦労を思えば、デジタル化による技術の進歩を感じずにはいられない


( 元麻布 春男 )
2006/02/20 00:04
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