一方、DPPのコントラストはやや強い。Adobe Camera RAWは比較的ニュートラルな明暗のトーンカーブを描く。黒側の沈み込みや白ピークの伸びやかさは不足するが、階調が判別しやすくシャドウとハイライトの階調は、DPPよりも多く残る。DPPもカメラ内現像に比べると階調の粘りはあり、ピクチャースタイルを「ナチュラル」にするとさらに階調重視となるが、Adobe Camera RAWの方がさらに一歩粘る。
Adobe Camera RAWでもトーンカーブを変更すれば、もっとコントラストを重視した絵作りにもできるが、基本的な傾向として浅めのトーンと言える。色乗りもDPPの方がしっかり乗る。特に肌色とも関係する赤系の色が、しっかりと高純度で乗る印象が強い。
現像結果をそのまま使うつもりなら、DPPでパラメータをしっかりと設定して出力するのが良いが、後処理をPhotoshopなどで行なうならばAdobe Camera RAWの方が良いという人もいるかもしれない。しかし、個人的にはDPPの実力を改めて感じた。筆者のようなフォトレタッチのプロではない人間が後処理で色々工夫するよりも、DPPで最終の絵を作ることを考えた方がずっと良い結果が出そうだ。
Adobe Camera RAWによる現像は、明暗のトーンがリニアでハイライトとシャドウの階調が粘るが、中間調の濃度はしっかり出る。やや眠くメリハリは感じないが、素材としては悪くない。なお、若干アンダー気味に現像される印象だ
左がDPPを用いニュートラル設定で現像した結果、右はAdobe Camera RAW。DPPは刺繍部分の白が若干飛んでいるが、Adobe Camera RAWは粘る。ややアンダー気味に現像されるのも原因だろう。ストラップや黒いセーターのディテールなどはDPPの方が明瞭で全体的に解像感も高い
■ ピクチャースタイルの勘所
EOS 5Dで初めてカメラ内のピクチャースタイル現像がサポートされたが、ピクチャースタイルのうち、Kiss Digitalや20Dのデフォルトと同じ絵作りとなるノーマル、EOS-1D系と同一のナチュラル、従来のDPPにオプションとして存在した忠実設定を除くと、なかなか使いどころが難しい設定が続く。
初代EOS Kiss Digitalで完成したコンシューマ向けEOS Digitalのデフォルト。シャープネスと濃度を1段階下げればEOS 10Dと同じ絵作りになる。素材というよりは、そのまま印刷する用途で使いたい
EOS-1D系の絵作りを踏襲するニュートラルは、対象となる色域(ここではsRGB)に対して階調性が素直に残るように明暗のトーンと彩度を収める。このためスタンダードよりソフトなコントラスト感で、色も薄味に。素材としての素性の良さを重視しており、濃度以外はAdobe Camera RAWのデフォルトにも近い