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リコー GR DIGITAL【最終回】
好敵手よ、現れよ

Reported by ケニー・オブライエン


 GR DIGITALを旅に連れ出していろいろ楽しんできたが、現地でできなかったことがマクロ撮影だった。近接マクロ撮影はリコーの得意とするところで、GR DIGITALもレンズ端を被写体に1.5cmまで寄せて撮影できるのだから、これを試さない手はない。

 実は私は広角マクロ撮影が得意ではない。その苦手意識もあってか、広角マクロ撮影に適したシーンを今回の旅では見つけられなかった。旅に持っていくカメラでマクロ撮影をするときは、たいていは35mm換算で50mm程度の画角で撮っていた。これに慣れてしまっていたので、いざGR DIGITALの28mm相当になったら、画づくりがうまくできなくなってしまった。

 広角マクロ撮影で被写体に思い切り近づくのはいいが、背景がかなり広い範囲で入り込む。絞りを開けてボカすのもいいが、やはり広角レンズなのでボケの度合いは少ない。結果として中途半端にボケた背景がかなりうるさくなり、被写体にせっかく寄っているのに、ボケきらなかった背景が被写体を目立たないものにしてしまう。

 さてマクロを試してみようと思っても、被写体だけでなく背景も同時に選ばなくてはならない。冬のヨーロッパでは花など咲いていないし、ベルリンははっきりいってスカイラインが美しい都市ではない。残念ながら現地でのマクロ撮影をあきらめてしまった。


GR DIGITALのAFターゲット移動機能。十字ボタンで測距位置を微調整できる
 ということで日本に戻ってから撮ってみた。被写体は旅と連続性があるものがいいと思い、トラバントのミニカーと、東西ドイツのコインにした。

 撮影時はAFターゲット移動機能を使って、ミニカーでは手前のヘッドライトに、コインではいちばん手前に合わせた。照明は自分でやったら金属材質の違いが出ないなどうまくいかなかったので、フォトグラファーの若林直樹氏に手伝ってもらった。

 GRレンズの描写はマクロ撮影でも満足いくものだ。ミニカーでは塗装のムラや残ってしまっていたホコリまでしっかり写っている。コインでは、アルミニウム製でとても安っぽい東ドイツのものと、ニッケル合金などでしっかりつくられた西ドイツのものの差がきちんとわかるし、細かい傷やへこみもはっきりしている。絞り優先AEの最小実絞りはF9で、やはりここまで寄るともの足りない。F16まではほしいところだ。

 コインの実物は直径2〜3cm程度だが、3,264×2,448ピクセルで撮ったものをPCのモニターでピクセル等倍で表示してみると、肉眼どころか数倍程度のルーペで拡大しても判別できなかった部分まで見えてくる。見ていて面白いが、はっきりいって異常な世界だ。

 ミニカーの作例では左上が少し暗くなっているが、これは周辺光量落ちではなく、背景に敷いた紙のたるみだ。背景をうるさくしないために白い背景紙にしたが、私の準備がいいかげんだったためにたるみが写り込んでしまった。撮影現場でGR DIGITALの背面液晶モニターで確認したつもりだったが、PCのモニターで失敗に気がついた。

【マクロ作例1】 紙か布のような繊維をプラスチックで固めたボディが特徴の「トラバント」。本場東ドイツで実物を撮りたかったが、運が悪くて程度のいいものに出会えなかったため、模型で勘弁を。昨年夏にはワルシャワの大通りで白煙を上げて走っているのを見たのだが。ブダペストやブカレストではときどき見たが、すでに絶滅危惧種か。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたJPEGファイルです。

※作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm換算での焦点距離を表します。


3,264×2,448 / 1/21秒 / F2.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 1/10秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 1/2秒 / F9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

【マクロ作例2】 東ドイツマルクコインの入手はむずかしくない。チェックポイント・チャーリーや「壁」が保存されている場所には怪しい露店が出ていて、東ドイツの紋章入りグッズなどを売っている。言い値で買わず、必ず値切るかおまけを付けさせること。


3,264×2,448 / 1/16秒 / F2.4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 1/8秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm 3,264×2,448 / 1/2秒 / F9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

 旅の最終日、ベルリンのターミナル駅のひとつであるツォーロギシャーガーテン(動物園)駅が見える場所で夕食をとっていた。私は駅という空間が好きで、旅先では列車に乗る必要がなくてもわざわざ立ち寄る。駅には旅の気分が満ちていて、必然的にカメラを取り出すことになる。ツォー駅を見ていたら、急にGR DIGITALを持ってルクセンブルクに行きたくなった。

 ルクセンブルクには数年前に行き、当時使っていたコンパクトデジタルカメラでかなりの枚数を撮ったが、GR DIGITALで撮り直したくなったのである。正確にいえば、ルクセンブルクという小国の首都ルクセンブルク市で、ここは中心地に渓谷があって古い街並みが谷底に残っている。そこから広角で崖にある砦も入れつつ見上げて撮ったらよさそうだと思ったのだ。発売初日に手に入れてから毎日のように触り、GR DIGITALの特徴もかなりわかってきた。GR DIGITALを持って再訪したい場所が次から次へと浮かんできたわけだ。こういう気分になったのは初めてである。

 ワイドコンバージョンレンズは大活躍だった。アダプターに取り付けた状態でジャケットのポケットに入れて持ち歩き、ここぞというときにカチッと一発でバヨネットマウントのごとく装着した。着脱の簡単さも多用した原因のひとつだが、写りも最初から21mm相当のレンズが採用されているかのごとくである。今回の旅では編集部から借りていったが、次の旅までに個人で買うつもりだ。

 私としては、他メーカーからもGR DIGITALのような個性的なコンパクトデジタルカメラが出てきてほしいと思う。コンパクトで軽量でスタイリッシュで、さらにわりと高画素で手ブレ補正もついて高倍率ズームもあり……ではない。どこか突出した魅力があり、他には絶対負けないという特長を備えたモデル。「高級コンパクトデジタルカメラ」という市場ができると、ますますおもしろくなっていくだろう。

 私は銀塩カメラのCONTAX T2を使っていた。一眼レフと併用していたが、T2だけを持ち歩くことも多かった。AFがよく中抜けしたが写りはすばらしく、旅のカメラとしては最高だった。「高級コンパクトカメラ」の代表で人気機種だったし、リコーのGRなど各社から出ていた個性的な機種はどれも魅力的だった。それを思い出すと、GR DIGITALがしばらく孤高の存在でいるようでは、カメラ業界に期待が持てなくなってしまう。

 ツォー駅を発着する列車を見ながら考えていた。明日は日本に戻らなくてはいけない。だがツォー駅をICEで朝に出発し、ケルンで乗り換えればルクセンブルクには夕方に着く。または空路なら1時間だ。でも、やらなければならない仕事も待っている。ツォー駅の長距離列車ホームに未練を残しつつ、ホテルに向かうSバーンに乗り込んだ。そう遠くないうちにGR DIGITALを持ってルクセンブルクに向かうことだろう。

 GR DIGITALは完全に私のメインカメラになった。3月にインドのデリー、5月にアルメニアに行く予定だが、GR DIGITALしか持っていかないつもりだ。では旅の空で遇いましょう。


函館駅は数年ぶりだった。前回はまだ青函連絡船の名残があったが、今回着いて驚いた。まったく違う駅になっていたからだ
3,264×2,448 / 1/380秒 / F5.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
早朝のコペンハーゲン中央駅。現地語の正確な発音は最後まで聞き取れなかった
3,264×2,448 / 1/20秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:昼光 / 28mm

オーゼンセ駅。商業施設や図書館が併設され、意外にも現代的な駅舎だった
3,264×2,448 / 1/52秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:昼光 / 28mm
ベルリン・ツォーロギシャーガーテン駅。5月下旬にベルリン中央駅が開業するため、ターミナル駅としての役目を終える。手前の「BVG」は市内交通の案内所。無料の地図がもらえるし、応対も親切だ
3,264×2,448 / 1/24秒 / F4 / 0EV / ISO154 / WB:昼光 / 21mm


URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/gr/digital/
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( ケニー・オブライエン )
2006/01/30 00:02
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