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リコー GR DIGITAL【第9回】
ベルリン・デジタルの詩

Reported by ケニー・オブライエン


 ヨーロッパ北部の冬は、たいてい天気がよくない。今回も1週間のうちで青空が見えたのは数時間しかなかった。初日のコペンハーゲンでは横なぐりの雪だったし、ベルリンで新年を迎えたときは小雨だった。写真を撮るからには晴天を願いたいところだが、旅程は長くなく天気を選べないのでしかたがない。

 今回のヨーロッパの旅ではモノクローム撮影も楽しむつもりでいた。正しくはRAWモード(DNG)で撮影して現像時にモノクローム化する。石造りの建物が多いヨーロッパは色彩が豊かとはいえないし、まして天気がさえないとなれば、モノクロームでなんとかしてみようという気になる。

 ヴィム・ヴェンダース監督の映画に感化されたせいもある。ほとんどがモノクロームの作品「ベルリン・天使の詩」とその続編ともいえる「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」の映像が頭に焼きついていて、ベルリンはやっぱりモノクロームだよな、と思ったのだ。ただ、映画のシーンを再現する気はない。壁がなくなってから大きく変貌しているからだ。

 もし今回の旅でGR DIGITALを使っていなくても、ほかのデジタルカメラで撮った写真をPCに取り込んでからモノクロームに変換して楽しんだだろう。でもGR DIGITALは積極的にモノクロームで撮ってやろう、またはモノクロームで現像してやろうという気にさせるカメラだ。

 私はときどきトライXを使ってレンジファインダー機でモノクローム撮影を楽しんでいて、そういうときはカラーのフィルムは持っていかない。きょうはモノクロームの日と決めて、それだけを楽しんでいるのだが、どうもデジタルカメラではカメラに甘えてしまう。カラーで撮っても、あとでかんたんにモノクロームにできると思ってしまうので、色の情報を記録しないのは損だと感じていたのかもしれない。

 だが、カメラ側でモノクロームに設定し、液晶モニターもモノクロームで確認しつつ撮るというのもよさそうだ。モノクロームに設定して撮ったGR DIGITALのRAWデータは、カラーでも現像できる。モノクロームを主体にしつつ、選んだコマだけカラーで現像すればいい。

 前回のカラー現像編では、GR DIGITALの「本性」にできるだけ近づこうと思って、現像ソフト側で極力変更されないようにしてみた。それによってGRエンジンの味付けも見えてきた。モノクローム現像では、同じことをやってもおもしろくないので、現像ソフト側で設定をいろいろ変えてみて、私なりに仕上げてみた。

 現像に使ったのはPhotoshop Elements 4.0だ。まずは彩度を最小(-100)にしてモノクロームにする。次に露光量のスライダーをアンダー側に動かしてみる。曇り空とはいえ、雲の濃淡や輪郭を出してみようと思った。それからコントラストやシャドウを調整し、建物のテクスチャーがわかるようにした。シャープネスは必要に応じて増やした。

※作例のリンク先はDNGデータをPhotoshop Elemtents 4.0で現像したJPEGデータです。

※作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/35mm判換算での焦点距離を表します。


プレンツラオアー・ベルク。ヨーロッパらしい街並みに、なぜかほっとする
3,264×2,448 / 1/100秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 28mm
いかにも社会主義らしい建物を見つけたので、路面電車をすぐに降りて撮った。フランクフルター・トーアにて
3,264×2,448 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / 28mm

社会主義的建物にマクドナルドが入っているという違和感
3,264×2,448 / 1/75秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / 28mm
素直ではない私はブランデンブルク門をワイドコンバージョンレンズでこう撮った
3,264×2,448 / 1/90秒 / F4 / 0EV / ISO64 / 21mm

保存されている「壁」だが、こうやって撮るとあたかも現役のようだ
3,264×2,448 / 1/180秒 / F4 / 0EV / ISO64 / 28mm

 今回掲載している作例は、すべて東ベルリンだ。ブランデンブルク門の裏側に壁があったので、正面が見えている今回の撮影場所は東側になる。私がベルリンでもっとも気に入った場所は、東ベルリンのプレンツラオアー・ベルクだ。わりと古い建物が残り、表通りから裏に入っていくと、面白い雑貨店やしゃれたカフェなどが点在する。歩いても撮っても楽しい場所だ。

 ここではブランデンブルク門やアレキサンダー・プラッツにたくさんいる、ひと目で観光客とわかる人はほとんど見られず、地元の人の日常的な光景だ。私もおぼえたてのドイツ語で屋台でソーセージを注文した。聞き返されなかったうえに、パンを付けてカレー粉を多めにというのもきちんと通じてよろこんだりしていた。こういうとき、現地に少しなじんだ気分になるものだ。屋台のカウンターで地元っ子と並んで、左手のパンと右手のフォークに差したソーセージを交互にかじっているうちは。ところがこういうときにふところからカメラを取り出すと、周囲の空気は一変する。それがわかっているので、ここではあえてソーセージに集中した。

 不思議なもので、有名観光地ではどんな撮りかたをしても、恥ずかしかったり気まずかったりすることがあまりない。寝そべるくらいのローアングルだろうが、スローシャッターのためにカメラを建物に密着させ、私まで不自然に密着せざるをえなくても、特に周囲の目が気になることはない。ベルリンではブランデンブルク門の前やウンター・デン・リンデンがそうだ。ところがプレンツラオアー・ベルクなど生活臭が強いところでは、カメラをぶら下げているだけでじろじろ見られたりする。


東ベルリンの自慢だったアレクサンダー・プラッツの世界時計は現役だ
3,264×2,448 / 1/25秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / 28mm
 GR DIGITALではRAWモードのメディアへの書き込み時間が10〜15秒あり、この間が手持ちぶさたになる。はじめのうちは立ち止まって待っていたが、そのうちに同じ場所で複数枚撮らないならすぐに歩き出すようになった。GR DIGITALを待っている時間は特にすることもないので、カメラを手にしているものの操作もしていない私が妙に不自然だ。撮ってすぐ歩けば一連の流れが自然に見えるかもしれない。ベルリンで撮影制限を受けたことは、ブランデンブルク門が大晦日の夕方に封鎖されたとき以外になかったが、モスクワあたりでGR DIGITALを待っていると警官が近寄ってくる可能性はある。

 自宅での10秒と、ベルリンで写欲が高まっているときの10秒はこんなに違うものかと、モノクロームで現像しながら現地のことを思い出した。



URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/gr/digital/
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( ケニー・オブライエン )
2006/01/23 00:01
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