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キヤノン EOS 5D【第7回】
マウントコンバータでオールドレンズを試す

Reported by 本田 雅一


 フルサイズセンサー機を趣味のカメラとして使うからには、1度は試してみたいと思っていたアイテムがある。それがマウントコンバータだ。フランジバックが短いEOSは、同じキヤノンのFDマウントはもちろんのこと、ほとんどの一眼レフ用レンズマウントを利用可能だ(もちろん、レンズの後部が飛び出ているなど、一部には使えないレンズもあるが)。

 そこで注文していたのが、宮本製作所が「RAYQUAL」ブランドで発売しているマウントコンバータだ。筆者が発注したのは、ライカRマウント用とニコンFマウント用の2種類。同社のマウントコンバータは非常に精巧にできており、どのEOS向けマウントコンバータも無限遠がきちんと出る。

 う~ん、聞いたことがないブランドだぞ? と思うなかれ。実際には複数の撮影用品商社に製品を出荷しているため、実はここの製品でしたということが多い。


マウントコンバータとその使い方

左がE-EOSマウントコンバータ、右がNF-EOSマウントコンバータ
 と、早速試してみようと思ったのだが、その前に簡単にEOSでのマウントコンバータの使い方を紹介しておこう。EFマウントはオールドレンズを使うプラットフォームとして人気が高いことは、オールドレンズマニアならばご存知の事と思うが、デジタルカメラから一眼レフに入ってきた読者にはあまり馴染みがないだろう。

 マウントコンバータと言っても、EFマウントの電子接点などは利用不可能で、オートフォーカスは当然として、EOS側の絞り設定との連動もしない。単にEOSに別のカメラ用のレンズが“取り付けられるだけ”と考えればいいだろう。

 ただし中にはマウントコンバータの厚みの関係で、無限遠がきちんと取れないものや、脱着が不自由なものもあるので、実績のあるコンバータを使う事を勧める。今回、使った宮本製作所のマウントコンバータは、いずれも全く問題なく使うことができた。

 なお、価格は安いもので1万円程度。対応マウントごとに構造が異なり、構造の複雑さに応じて価格も異なる。今回購入したものは、友人が経営するカメラ修理店で購入したためかなり安価だったが、通常は2個合わせて2万円を少し超えるぐらいではないだろうか。

 EOSの場合、銀塩EOSの中でも特に古い初期のものを除けば、装着後、絞り優先もしくはマニュアルに設定すれば、あとはシャッターを切るだけだ。マニュアル時は、もちろん内蔵露出計を用いることができる。古いものは絞り値をもっとも明るい値にしておくのだが、デジタルのEOSの場合、その必要はない。

 絞り操作はレンズ側で行なうことになるが、当然ながら絞り環を回していくとファインダーが暗くなっていくとともに、被写界深度が深くなりピントが合わせにくくなる。ファインダー内できちんとピント位置を決めたい場合は、絞り環を解放に設定してピントを合わせてから、目的の値まで絞り込み、その後、レリーズするという手順を踏む必要がある。

 AF/AEの現代的なオート一眼に慣れていると面倒なようだが、実際にやってみるとケースバイケースで、これもなかなか楽しいものだ。広角レンズのように、パンフォーカス的に使えるものならば、目測で適当に距離を合わせておき、少し深く絞ってシャッターを押せばいい。慣れてくればスナップ撮影でも、字面から感じるよりはずっと軽快に扱える。


扱いやすいライカR-EOSコンバータ

 今回購入した2個のうち、RAYQUALのライカR-EOSコンバータは特に使いやすい。コンバータにあるレバーを押すだけで、コンバータをEOSに取り付けたまま、レンズだけを脱着できる。バヨネットのロックピンが比較的浅く、フランジバックの差が大きめだからだろう。

 これに対してニコンF-EOSコンバータは、取り付けこそボディ側、レンズ側、どちらから取り付けてもOKだが、取り外す際はマウントコンバータごとボディから外さなければならない。これはニコンFマウントのロックを外す操作部が、マウントコンバータの裏側にあるからだ。フランジバックの差が小さく、ロックピンもライカRよりも僅かに長いのが原因のようだ。

 もっとも、慣れさえすればあまり問題とは感じない程度。確かに出先で頻繁に付け替えるには不便だが、そもそもそうした使い方には向いていない。必要十分という印象だ。

 次にいくつかのレンズをコンバータ経由で試してみた。

 まずライカRレンズは、エルマリートR 35mm F2.8、エルマリートR 90mm F2.8について確認。前述したようにマウントコンバータを用いての脱着も楽々で、ミラーやミラーボックスへのアタリもない。


ノクトニッコールの爪でEOS 5Dのミラーボックスが、少しだけ削れてしまった。手持ちのレンズで遊ぶときには、アタリが出ないかよく確認しながら装着しよう
 問題が起こる可能性があるのは、ヘリコイドの回転で後玉が繰り出されるタイプのレンズ。コンバータのメーカーではズミクロンR 50mm/F2では問題ないとしているが、ほかのレンズに関しては確認が必要だろう。

 一方、ニコンFマウントレンズは、ニッコール35mm F2、85mm F1.4といった現役レンズのほか、PCニッコール28mm F3.5、それにノクトニッコール58mm/F1.2などを試してみた。基本的には絞り環が付いていれば大丈夫のようだが、やはりミラーやミラーボックスとの干渉はゼロではない。

 今回試した中では、ノクトニッコール58mm F1.2が5Dのミラーボックスに僅かに干渉した。ほんの少し、知らずに取り付けると意図せず削り取ってしまう程度のちょっとした干渉なので、ちょっとだけ5Dを削る覚悟があるなら使用できる。ちなみに筆者の場合、知らずに付けて少し削ってしまった。なお、EOS Kiss Digital Nと20Dでは上記レンズでも干渉しない。


決して懐古趣味ではないオールドレンズの実力

 古いレンズに関して話題が上るとき、収差の残し方の妙やレンズ構成がシンプルであるが故の抜けの良さなど、その味を評価して語られることが多い。筆者の場合、レンズについて語れるほど多くのレンズを所有、比較しているわけではないが、個人的には懐古趣味的なオールドレンズへの興味は全くない。

 しかし、決して懐古主義とは言えない魅力が、現行品ではないレンズにはありそうだ。

 たとえば35mmと90mm、ふたつのエルマリートはいずれもF2.8と暗く、ライカレンズの中では高級モデルというわけではない。しかし、いずれもなかなかの良い描写を見せており、周辺光量の落ちが少なく、周辺のフォーカス流れもない。もちろん、マニュアルレンズだけあって、マニュアルフォーカス時の操作感の良さも、普段使い慣れたAFレンズとは段違いだ。

 ゆっくりとレンズの比較をやってみたいと思わせるだけの実力が、40年以上前に設計されたレンズにあるというのもおもしろい。

 マウントコンバータはAFも使えなければ、絞りもシャッターに連動しない。このため、市場では人気がない古いタイプのレンズでもいいため、意外に安価に済む。たとえばライカRの場合、連動用のカムが2個と3個のレンズがあるが、2カムの方が価格は安い。前述のエルマリートR 35mmは、2カムならば3~4万円で見つかる。オートフォーカス全盛の今、マニュアルフォーカスレンズは中古価格が安い。

 それらのイメージサークルの大きさを活かし、本来の画角で撮影できる5Dを持っているのなら、安価なレンズからマウントコンバータの世界を覗いてみるのも一興だろう。そこには画素数競争やコマ足競争とは無縁の、全く違った切り口の楽しさがある。


作例

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。
※すべて露出補正なし、ホワイトバランスオートで撮影しています。
※作例データは、露出時間ISO感度です。


エルマリートR 90mm F2.8。フード内蔵のコンパクトな中望遠レンズ。開放ではシャープさはそこそこながら、ふんわりとしてなかなか雰囲気良く仕上がる。周辺の落ちも感じさせない
1/60(秒) / ISO200
エルマリートR 35mm F2.8。F2.8開放では球面収差が目立ちソフトフォーカス気味でピンの芯が見えにくい。しかし、それがむしろ全体の雰囲気を良くしている印象
1/15(秒) / ISO200

エルマリートR 35mm F2.8。F8程度で撮影。F5.6あるいはそれ以上まで絞ると、シャープで解像感にあふれた描写となる
1/60(秒) / ISO100
エルマリートR 35mm F2.8。F8程度で撮影。F5.6あるいはそれ以上まで絞ると、シャープで解像感にあふれた描写となる
1/60(秒) / ISO100

エルマリートR 35mm F2.8。F2.8で撮影。開放ではハイライトが滲むような描写となり、周辺の光量落ちもやや見受けられる。とはいえ40年以上前に設計されたレンズと考えれば悪くない
1/40(秒) / ISO100
ノクトニッコール 58mm F1.2。F1.2で撮影。解放時は甘い描写だが、ボケはなかなかキレイで幻想的な写真となった
1/800(秒) / ISO100

ノクトニッコール 58mm F1.2。F11程度で撮影
1/320(秒) / ISO100
ノクトニッコール 58mm F1.2。F11程度で撮影。絞ってもシャープにはならないと持ち主から聞かされていたのだが、周辺までシャープでコントラストも高い。大口径ながらコンパクトなレンズだが、色収差も目立たない
1/200(秒) / ISO100

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( 本田 雅一 )
2006/01/12 12:12
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