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リコー GR DIGITAL【第4回】
操作も画質も「やさしい」カメラ

Reported by ケニー・オブライエン


 GR DIGITALは、幅広く大衆受けすることを狙った製品ではない。いまどきのデジタルカメラとはまったく異なる外観だし、レンズも28mm相当の単焦点のみ。どんなシーンもこれ1台でというのはきびしい。一部の支持層には拍手喝采で迎えられたと思うが、一般的には購入候補に入らなかったり、そもそも眼中にないかもしれない。

 非常に個性が強い製品だが、使いにくいかというと、そのまったく正反対だ。ボディのサイズ、重量、さまざまな動作スピード、ボタンやダイヤルの配置など、随所に工夫がこらされ、とても使いやすい。メニューの設定可能項目は多いが、通常の使用では特に多く変更する必要もない。いろいろなメディアで「プロカメラマンのサブ機」などと書かれているので、初心者は一部マニア向けコンパクト機のように思ってしまうかもしれない。でも広角レンズで撮りたいなら、購入検討リストに入れてもいいのではないかと思う。

 自分で買ったカメラは、使っていけばその操作に当然慣れていく。なので、そのカメラが万人に使いやすいかどうかを判断する機会は、買った直後だろう。取扱説明書を見ずに直感的に使えるかどうか。そのほかには、他人に渡して自分を撮ってもらうときだ。

 私は旅先で自分自身を撮る習慣がないが、現地在住の友人と一緒の写真を撮ってもらうことはある。たとえばポーランドの友人との記念撮影。以前使ったカメラでは、そのほとんどが失敗だった。ホテルやレストランの従業員に私のデジタルカメラを渡し、カタコトのポーランド語で撮影を依頼する。「ここ、押す、だけ」のような感じだ。友人がポーランド語ですかさずフォローしてくれるが、返されたカメラでプレビューするやいなや、「もう1枚」といわざるをえなくなる。再度撮ってもらうも、またしても納得がいく状態には撮れていない。さらに頼むのは気がひけるので、2枚であきらめる。

 失敗の原因は手ブレやAFはずれだ。過去の経験からストロボは強制発光に切り替えてから渡している。ストロボのおかげで顔は識別可能だが、背景はひどい状態になっている。どうもデジタルカメラは、たくさんあるボタンや液晶モニターが無用な緊張感を与えているようなのだ。我々が写るべくカメラを見つめていたら、レンズが引っ込んでしまったこともあった。レリーズボタンを押すだけといったのに、そのそばにある電源ボタンを押したのだ。

 ポーランドではデジタルカメラは少数派どころかほとんど使っている人を見たことがない。外国人ぐらいだ。なにしろGR DIGITALは、ポーランドの政府機関に務めている友人の月給5カ月分以上。しかし、次回にワルシャワを訪れるときには、GR DIGITALなら失敗せずに撮ってもらえる気がする。緊張感を与えないカメラらしい外観。光学ファインダーを探さなくてすむほど大きい液晶モニター。マルチ測距AFとタイムラグがとても短いレリーズ。自然に指がかかるレリーズボタン。GR DIGITALは初心者にとっても撮りやすい設計になっていると思う。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。

※写真下の作例データは、記録解像度/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算の焦点距離を表します。


函館の中華会館をかなりマイナス補正して空の青さを出してみた
3,264×2,448 / 1/143秒 / F5.6 / -2EV / ISO64 / WB:オート / 21mm
泊まったホテルのベランダから。天気が悪化してきて、このあと雪になる不穏な雲の様子
3,264×2,448 / 1/125秒 / F5.6 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

 私は広角を多用しているが、やはり難しい画角だ。しかも28mm相当の単焦点レンズですべてのシーンをこなせるかというと、正直にいえば厳しい。すでに私の旅のメインカメラはGR DIGITALになったが、仕事となるとそうはいかない。取材での記録用撮影はズームも必要なので、Caplio GX8を使い続けている。

 今回の函館行きにはGR DIGITALだけを持っていこうと決めた。GX8でも撮影内容の90%は28mm相当だったが、問題は残りの10%だ。そのうちほとんどは50mm相当だった。マクロ撮影をたいてい50mm相当でこなしていたので、GR DIGITALだけの旅では広角マクロ撮影が課題となる。これについては失敗も含め、回を追って綴ることにする。

 広角レンズでの撮影では、構図に空の面積が多くなると露出がかなりむずかしくなる。遠近感を出そうと思って手前にモチーフを置いてそこに露出を合わせると、空が飛び気味になってしまう。雲があれば、青空を少し濃くして白く浮き立たせたいところだ。そこで露出補正となる。GR DIGITALは普通に構えると右手親指のすぐ右隣、デジタルズームボタンに露出補正を割り当てられるので操作しやすい。そこで頻繁に-0.3~-0.7EVに補正している。


背面右側の操作部。右上が露出補正(本来はデジタルズーム)スイッチ
 屋外での撮影時にアンダー側へ露出補正し、撮影後に背面液晶モニターで見ると、ちょっとやりすぎて黒くつぶれたかと思いきや、帰宅後に自宅のPCで表示してみると、空の青みと雲の白さが出たうえで、シャドー部分もつぶれずに表現できている。GRレンズとGRエンジンのおかげだと思うが、これは気に入った。リバーサルカラーフィルムのような写りをするコンパクト機が多いなか、GR DIGITALの写りは、どちらかというとネガカラーに近いと思う。ダイナミックレンジが思ったより広く、シャドー部の階調と空の表現を共存できるのがいい。

 函館では初日は天気がわりとよかったこともあって、観光せずに撮影ばかりしていた。翌日は天気がころころ変わり、午後からは雨になってしまった。前日に外観を撮影しただけの場所は翌日に入館したりして、観光しつつ合間に撮影した。天気が悪いとさすがにISO64では厳しい状況も出る。そこでISO100やオートに変更した。

 ISO感度をオートにすると、ISO60~160相当の間で自動設定される。あまりオートで撮った事例がないのだが、68だとか154など、いかにも「計算の結果この数値になりました」という値になっている。ISO感度の変更によるノイズの具合は次回にレポートする予定だが、GX8よりノイズが軽減されているとはいえ、できるかぎりISO200以下で撮りたいと思っている。

 GR DIGITALはコンパクト機にしてはさまざまな設定を細かく変更できるようになっているが、特に変更しなくてもカメラ任せでけっこう満足のいくものが撮れる。操作性はバツグンにいいし、使っていてストレスはほとんど感じない。ひとつだけあるとしたら、カメラを構えているときに右手親指でデジタルズーム操作部分やストロボONのボタンを誤って押してしまうことがあるくらいか。


市電の谷地頭停留所から歩いてすぐの海辺。晴れたり雨になったりと天気の変化が激しい1日
3,264×2,448 / 1/870秒 / F5.6 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 28mm
函館で青緑色の建物をふたつ撮ったが、どちらもコンパクト機にはきびしい色のようだ。
条件が悪いと色味を変えるほどのノイズが発生する
3,264×2,448 / 1/90秒 / F4 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 28mm

旧ロシア領事館。ワイドコンバージョンレンズ使用でISO感度はオート
3,264×2,448 / 1/32秒 / F3.2 / 0EV / ISO68 / WB:オート / 21mm
雨の坂道を海まで降りてゆく。函館らしい風景だが、寒かった
3,264×2,448 / 1/39秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm


URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/gr/digital/
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( ケニー・オブライエン )
2005/12/12 00:01
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