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ニコン COOLPIX P1【最終回】
P1に感じる可能性

Reported by 本誌:伊達 浩二


 このレポートも今回で最終回となる。最後に、P1を2カ月近く使った感想と、今後の改良の希望について述べていこう。


P1を使っての感想

 思い返してみると、P1を最初に見た感想は、「小さい」ということだった。無線LAN機能を備えていながら、ごく普通のデジタルカメラの大きさになっていた。同社のコンパクトデジカメ「COOLPIX L1」と比べても、ほとんど変わらない。

 また、無線LANの感度についても、十分で感度不足を感じるような場面はなかった。ハードウェア面では、大きさや感度の面でも完成度は高いと思う。

 好印象だったのは、露出とホワイトバランスの的確さで、以前レビューした松下電器「DMC-FX8」などが、ミックス光下で、白い花を撮る際などに、手動での調整が必要だったのに対し、いつも安定した撮影ができた。このあたりはカメラメーカーの地力を感じさせるところだ。

 一方で、一番不満に思ったのは、無線LAN接続に際して時間がかかることだ。もうちょっとネゴシエートの時間は短くなってほしい。これについては、後述する。

 また、800万画素の画像を転送するためには、無線LANの接続をもってしても時間がかかる。

 また、800万画素という大きなデータを扱うにしては、カメラの性能がちょっと足りない印象だ。とくに、SDメモリーカードへの書き込みや、ブラケッティング撮影の場合に、処理速度の不足を感じることが多かった。

 高級機として位置付けられる「P1」としては、もうちょっとがんばってほしいところだ。

 とても正直な感想をいえば、無線LAN対応と、800万画素という画素数を抜きにすれば、3万円台半ばぐらいのカメラを操作している印象だ。ちなみに現在のP1の販売価格は4万5千円から5万円ぐらいである。

 画像については、デフォルトの状態では、落ち着いた印象で、コンパクト機ということを考えると、もうちょっと派手目の設定でもいいと思う。


アドホックモードが11Mbpsでしか接続できない理由

D2XとワイヤレストランスミッターWT-2。やはり802.11gではアドホックモードで接続できない
 P1とノートPCを、アクセスポイントを介さず、直接接続するアドホックモードでは、接続速度が11Mbpsに限定されてしまい、54Mbpsで接続できないという現象は、この連載で報告した。これは、そういう仕様であるという回答もニコンからもらったのだが、理由についての説明はなかった。

 この件について、フリーライターの天野司氏にご教示いただいた。天野氏に感謝するとともに、許諾をいただいたので転載させていただく。

 「IEEE 802.11g規格では、11Mbpsを越える通信速度を使用する場合、そのネゴシエーションは、802.11プロトコルの中の『アソシエーション』と呼ばれる手順内で行われます。

 アソシエーションとは、アクセスポイントとステーションが接続を確立する際に使用する手順です。元々アクセスポイントが存在しないAd hocモードでは、そもそもアソシエーション動作自体行なわれることはありません。

 従ってAd hocモードでは11Mbpsを越える通信速度をネゴシエーションする機会は存在せず、最大でも11Mbpsまでしか使用することができません。これはPC同士でAd hoc通信を行う際でも同様です。

 一部の無線LANメーカーでは、独自規格としてAd hocモードでも11Mbpsを越える通信が行なえる例があるようですが、これはあくまで独自仕様です。他社製品と接続できる汎用性は無いものと思われます」


 というわけで、どうしても54Mbpsで転送したければ、ポータブルなアクセスポイントを持ち歩くなどの方法をとるしかないようだ。

 ちなみに、ニコンの一眼レフ用無線LANシステムでも、同様にアドホックモードでは11Mbpsでしか接続できないという報告も、読者からいただいた。ありがとうございました。


リモート撮影の改善策

COOLPIX Remote Control
 前回のコラムにも書いたが、P1では超音波または赤外線のリモコンなどは用意されていない。また、無線LANで接続されたPC側から、ほとんどコントロールする手段が用意されていない。したがって、P1によるリモート撮影は難しく、せっかくの無線LANによる画像転送という特徴を生かすことができない。

 実は、ニコンには「COOLPIX Remote Control」というPictureProject用のプラグインがあり、シャッターレリーズ、ズーミング、撮影画像の記録画質・画像サイズの設定、内蔵ストロボの発光モードの設定などが可能なほか、撮影した画像をPCに転送し、アルバムに自動登録できる。

 しかし、残念ながら対応機種は、COOLPIX8400/8800/L1/S4に限られており、P1は対象外となっている。

 無線LAN経由で「COOLPIX Remote Control」が使えるようになれば、リモート撮影に対する不満はかなり解消されるので、ぜひ、早期の対応を期待したいところだ。


有線LANにも対応してほしい

 無線LANの接続待ちや、転送速度に不満を覚えるたびに考えていたのが、有線LANに対応してくれないかということだった。

 P1本体にEthernet端子を新設することは難しいだろうが、アダプタなどを介する形でも有線LANに接続できないものだろうか。少なくともネゴシエーションと、転送速度に対する不満は、かなり解消できると思う。

 現状でも、ルーターが支配するネットワーク内で、ファイルを転送する仕組みなどはできているので、速度で優る有線LANに接続できれば、メリットはあると思う。


Ethernetならではの世界がほしい

 始まったばかりで仕方がないことではあるのだが、現状でP1ができることは、無線LANでなくても可能なことだと言ってよい。

 たとえば、これがBluetoothや、何らかのワイヤレスUSBなどの近距離通信用の規格を使用しても、到達距離や転送速度などに多少の差はあっても、同じことはできるだろう。

 無線/有線の差を問わず、TCP/IPの世界にあるということは、全世界を覆う規模のネットワークに直接接続できるということが最大のメリットである。

 たとえば、IPアドレスを指定した直接FTP転送や、リサイズなどのサービスを伴った画像のメール転送など、多くの可能性がP1にはある。

 セキュリティの問題や、サービス基盤の問題などの課題もあり、ユーザーに対してどこまで解放していくかということをメーカーとしては考えていると思う。無線LANに対応したカメラという画期的な製品だけに、せっかくの可能性を殺すことなく、うまく育てていくことを希望したい。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/coolpix/p1/

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ニコン、COOLPIX Remote Controlを更新(2005/11/01)


( 本誌:伊達 浩二 )
2005/11/14 00:02
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