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ニコン D2X【第2回】
一眼レフカメラに最適なAFセンサーとは

Reported by 三浦 健司


デジタルカメラは電池がなければ一切動かない。そこで重要になるのが電池の正確な残量と劣化の程度だ。表示画面には、それらの情報と現在使用中の電池の撮影回数も出てくるため撮影シーンに応じた電池消費の目安にも使える。決定的瞬間を逃さないためにも重要な撮影の前には、正確な電池チェックは欠かせない
 ニコンD2Xは、電池や付属物を除いたボディ重量が1,070gと扱いやすい重さだ。充電池は軽量なリチウムイオン方式。電池残量が細かく表示されるので、電池切れのタイミングを確実に知ることができる。電池が切れてしまえばオシマイなデジタルカメラにとって、撮影者が安心して使えるしくみになっているのが嬉しい。

 デジタル一眼レフカメラのフラッグシップクラスとしてはかなり軽量なボディは、ズームレンズを装着したときのバランスがよく、カメラの取り回しも抜群だ。

 一例だが、ニコンのズームレンズ「AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)」に1.7倍のテレコン「Ai AF-S Teleconverter TC-17E II」を装着すると、ほぼ三脚座の位置が支点になる。ここを左手で持つときわめて良好なホールディングになる。


AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)の三脚用台座は簡単に脱着できる。手持撮影をするなら三脚座を外した方がホールディングしやすい ちょっとした撮影テクニックだが、三脚撮影から手持ち撮影に移るときは、三脚の雲台に三脚座を固定しておく。レンズと三脚座の部分で取り外しの操作を行うと交互の撮影が迅速にできる

フォーカスエリアの選択は、希望の方向に十字キーを倒すだけ。直感的ですばやい移動ができる。またほかの機能を同時に併用させないので誤操作もなく失敗しない。また十字ボタンの下には「AFエリアモードセレクトダイヤル」があり切り替えたい位置にすぐに動かせる。また、専用のダイヤル方式なのでセットアップの状況を瞬時に認識できるメリットがある
 また前回も一部のパーツに触れているが、ボタンやキーの位置も徹底的に考え抜かれ、手の延長として体が覚えることのできる配置になっている。とくにフォーカスエリアを選択する十字キーは、すばやく的確なエリア選択ができる優れものだと思う。

 オートフォーカス測距点は全画面に11点と他社のフラッグシップデジタル一眼レフカメラよりは控えめだ。しかし、その中の9点がきわめて合焦率の高い、精度に優れるクロスセンサーになっている。このようにふんだんにクロスセンサーを使うのは、現時点での一眼レフカメラの中でも希有だろう。

 さらに「クロップ高速」モードに切り替えると画素は減るものの、手持ちのレンズの焦点距離が見かけ上の2倍になる。この「クロップ高速」モードの副次的なメリットとして、使用する測距点の全9点がすべてクロスセンサーになるという点がある。これは超望遠を必要とするスポーツ撮影や、三脚固定の多いネイチャーフォトの分野で、比較的自由に、かつ精度の高いオートフォーカス撮影ができる有利な設計といえる。

 このようにニコンがここまでクロスセンサーにこだわる理由はただひとつだろう。それは、撮像素子が1,000万画素を越えると急激にピント精度を必要とするからだ。

 ニコン D2Xとキヤノン EOS-1Ds Mark II、EOS-1D Mark IIを個人所有している筆者の感覚としては、1,000万画素をオーバーすればするほど、ほんの僅かなピント外しでも「ピンぼけ写真」になることを実感している。

 だからこそニコンはD2Xにクロスセンサーを9点も入れたのだろう。1,000万画素を超えたデジタルカメラはクロスセンサーなくして「ピント精度は上がらない」ともいえる。


 現時点での筆者の私見になるが、画面の中央以外のセンサーが暗がりでビシビシと合焦するのはD2Xだけと思っている。とくにタテ位置のポートレート撮影で、モデルとカメラマンが同時に動きながら撮影するような場合でも全カットにピントが合っている。このピント精度とビシビシと合焦する快感は、ほかのカメラでまず体感できないメリットだ。

 このほかにも2.5型低温ポリシリコンTFT液晶モニターは、白色LEDのバックライトつきで画素が23.2万画素もあり高精細だ。視認性がたいへんよいので長い時間使っていても目にやさしい。

 そして、この液晶モニターの再生画面上に大きく表示されるヒストグラムがよい。他社製のフラグシップ機のヒストグラムには再生画像と重ならない方式もある。筆者は、このような小さなヒストグラムは撮影プレビューの瞬間にすぐに判断ができないので「使えないヒストグラム」だと思っている。D2Xの大きなヒストグラム表示は“デジタル露出計”として欠かせない存在になっている。

 D2Xの操作性を見てみよう。撮影体勢に入りファインダーをのぞいた後で、各種の設定変更を行なうときも、ファインダーから一度も目を離すことなく「撮影モード」、「露出補正」、「クロップ切り替え」ができる。とくに高速クロップは、本体ボディの正面から見て、ボディ前面の左下にあるファンクションボタンに、その機能を与えると簡単に切り替えられるようなっている。


D70とD2Xを並べて液晶モニターの大きさを較べている。モニターのサイズはD70の1.8型から、D2Xの2.5型になっている。サイズの差は2倍以下だが、視認性では2倍以上のメリットを実感できる。ファインダーとならんで重要な液晶モニターは、大型化と画素数アップによる高精細化が今後も進んでいくだろう ファンクションボタンは、カメラを構えると自然に薬指か中指がくる位置にある。ファンクションボタンにはいくつかの機能を設定できる。このファンクションボタンで「クロップ高速」モードにすると操作しやすい。ちなみにクロップ高速モードにするとファインダーにも赤い撮影範囲の変更を知らせるマークを現れるので安心だ

2,848×4,288ピクセル / 1/2,000(秒) / F5 / ISO100 / ホワイトバランス:晴天
 以上のように、さまざまな点でニコンのデジタルカメラに対する“かくありたし”という哲学を感じるのがD2Xというカメラだ。

 では、最後にD2Xの作例(写真右)を解説して筆を置くことにする。

 作例画像は、夕焼け迫る入り江で撮影している。

 カメラの設定は、階調補正を「標準」。輪郭強調は「やや強め」。カラー設定は風景向きの「モードIIIa」に設定した。

 作例のような風景写真でもシャッターチャンスが存在する。波間を横切る船を見つけてから、撮影するまでの時間は、わずかに1~2秒ほどであった。そのため三脚にカメラを据えていると瞬時のフレーミング選択ができないので、撮影は手持ちで行なっている。

 そこで、手持ちでブレないようにすることと船の動きを止めるために、撮影モードはマニュアルにして、露出はシャッタースピード1/2,000秒、絞り値F5とした。結果として被写界深度がほとんど稼げない。したがって遠景になるにしたがいピントは甘くなっていく。

 その不足分を補うために、Nikon Capture4のRAW現像で、輪郭強調をオリジナルの「しない」から「やや強め」に変更している。これで見かけの被写界深度を作り出している。

 撮影シーンは、波頭に偽色が発生しやすいきわめてピーキーな状況だが、画像の破綻もなく、画像処理エンジンのできのよさを感じさせる。画像には、マゼンタや赤色の色浮きもなく、シャドウ部の階調もきちんと存在する。船のあたりを400%まで拡大していくと船底部と側面のディテールが確認できるはずだ。各自でD2Xのシャドウ側の優れた階調を確認してみてほしい。

 なお今回の作例は、撮影時点のRAWデータではカラー設定「モードI」の「Adobe RGB」だが、読者のみなさんが参照しやすいように、RAWデータ(NEFデータ)をJPEGファイルの8bitファイルに変換している。JPEGファイルに「モードIIIa」の「sRGB」のICCプロファイルが埋め込まれるように、Nikon Capture4の「保存」メニューで「埋め込みICCプロファイル」のチェックを外している。Adobe PhotoshopのようなICCプロファイルが読み込めるようなカラーマネージメントにしっかり対応したレタッチソフトで、こちらも確認してみてほしい。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d2x/


( 三浦 健司 )
2005/06/08 01:01
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