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キヤノンEOS 20D【最終回】
半年間付き合ってみて

Reported by 奥川 浩彦


 最終回はこれまで感じたことをまとめてみたい。10月に購入して以来、EOS 20Dとの付き合いも半年を過ぎた。半年経っても使いこなせていないと感じることは多々あるが、「買ってよかった」と心底思っている。同じキヤノンかEOS Kiss Digital Nが発売され、他社のデジイチも10万円を切る低価格で販売されているが、もし今買うとしても迷わず(少しは迷うかも)20Dを選択するだろう。

 とはいうものの、望遠レンズを使用すると微妙なピントが気になることが多い。動くものを撮る機会が多いので9点AFセンサーは筆者としては満足していない。中央と上下左右の計5点はいいのだが、残りの斜め4点の配置がフィットしないことが多かった。できれば長辺方向は中央と左右の間にセンサーを追加し、5点にしてほしい。AF性能が人間より優れているのは確かだが、人間の思いが伝わらないのも現実だ。

 ピントとといえば、コンパクトデジカメが2~2.5型の液晶モニターを搭載してる時代に、20Dの1.8型は小さい。大きさだけの問題ではないが、こまかなピントは液晶モニターでは確認できない。それなりに大きなボディなのだからもう少し見やすいモニターを搭載できないかと思う。また、機能面ではほとんど使わないジャンプボタンより、ボタン一発で等倍表示ができるとうれしい。

 この連載が始まったときに「辛いなー」と思ったのは、「ノンレタッチで掲載」という条件だった。「デジカメ=レタッチするのが常識」と考えていたので、素の画像をお見せするのはかなりのプレッシャーだった。少しレタッチすればお見せできるカットもあったが、撮る段階でノントリミング、ノンレタッチで完成させる気合いにつながり、結果としてはよかったと感じている。

 といいつつ数点の画像は、特に目立つゴミだけを消して掲載している。デジイチのゴミ問題は購入前に予想していた範囲を超えていた。最初はレンズ交換に対し少々臆病になったが、銀塩の頃に単焦点派だった筆者としては「レンズ交換こそ一眼レフ」という原点に戻り、今では臆することなく交換している。前回は砂埃の中とあって躊躇した場面もあったが、それ以外では「できるだけ素早く」と心掛けているだけだ。


 筆者なりのゴミの確認方法も紹介しよう。屋外なら空に向かってF16くらいまで絞って1枚撮るだけ。この画像をPCのディスプレイで拡大しながらゴミを探すのだ。目立つゴミならこれで見つけられる。ゴミを見つけたらレンズを外し、ブロアーで吹いてまた確認。臆病になるよりは、レンズ交換していい絵を撮った方がよい。とはいえ、オリンパスのダストリダクションシステムはうらやましい。キヤノンでも是非対応してほしいところだ。

 20D購入時に512MBのCFを用意したが、容量不足で1GBのCFを追加した。現在主に使用しているのはSanDiskのultraII(1GB)。デジカメは失敗した画像を消せるのがメリットだが、デジイチの場合消せないことが多い。理由は液晶モニターで判断できないことと、撮る枚数が多すぎると撮影中に選別する時間がないためだ。筆者の撮影画質の設定はラージ&ファインなので512MBを挿入したときの撮影枚数は250枚程度と表示がでる。しかし撮影を進めると、ファイルサイズによっては400枚以上撮影できる。400枚も撮れれば十分に感じるが、以前掲載した水鳥や航空機の撮影では400枚はあっという間だ。もしこれからデジイチの購入を考えている方には1GB以上の記録媒体をお奨めする。

 連載で大変だったのは、数百枚の画像から選別する作業だった。現在はキヤノンイメージングシステムテクノロジーズのビューアソフト「Muse Viewer Pro」を使用することで格段に効率が改善された。このソフトはExifの情報を表示しながら画像チェックでき、拡大率を一定にしたまま次の画像へ進むことも可能だ。さらにセレクト用の仮想フォルダや2画像同時の拡大表示などが可能なので、膨大な撮影画像からセレクトする作業にお奨めだ。


MuseViewerPro。Exifデータを確認しながら画像選択できる 2画像の同時表示も可能。拡大、縮小、移動も同期するので作業効率は抜群だ

 これまで、連載中の作例は全てJPEGで撮影したが、今回初めてRAWの作例を紹介しよう。場所は名古屋の南西、瑞穂競技場の脇を流れる山崎川の桜だ。少々嘘っぽいが絵はがき風にしてみた。縦位置の写真の場合、EOS Viewer UtilityでRAWからJPEG出力し、明るさ+0.3、太陽光、アンバー、マゼンタを+2にしている。本当の桜はこれほどピンクではないのだが。

※パノラマ作例を除き、作例のリンク先は撮影画像データをコピー後にリネームしたものです。マウスクリックで撮影した画像が別ウィンドウで表示します。

※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出プログラム/露出時間/絞り値(F)/ISO感度/焦点距離(mm)です。


JPEGで撮影。実際の桜に近いイメージ。
3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/160秒 / 16 / 200 / 17mm
ほぼ同じ位置からRAWで撮影しJPEGで出力。絵はがき風に色付けした。
3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/125秒 / 16 / 200 / 17mm

JPEGで撮影。実際の桜よりやや地味。
2,336×3,504 / 絞り優先AE / 1/250秒 / 16 / 200 / 17mm
こちらはRAW現像後にJPEGで出力。本当の桜はこれほどピンクではない。
2,336×3,504 / 絞り優先AE / 1/200 / 16 / 200 / 17mm

 次の作例はキヤノンのEOSやIXYに添付されているPhotoStitchを使用したパノラマ写真だ。肉眼で見渡せる風景も写真で表現できないと感じることは多いが、このソフトなら撮影した画像を合成してつないでくれるので360度の撮影も可能だ。

 パノラマ撮影のコツは三脚の水平を出し、あまり広角にしないで撮影することだ。露出もマニュアルで固定し撮影方向の露出差をなくしている。撮って楽しむのが写真なのだから、ひとつの楽しみ方の参考にしてほしい。


左右の画角は200度以上か。18,772×1,923ピクセルにスティッチ後、1,024×105ピクセルにリサイズした

香港の夜景。我が20D、初の海外旅行だ。
3,504×2,336 / 絞り優先AE / 1/80秒 / 5.6 / 800 / 35mm
 最後の作例は反日デモ直前の香港の夜景。先週末は天気に恵まれなかったので深夜もにぎわう香港、九龍を手持ちで撮影した。左右のビルから飛び出すネオンと香港名物の2階建てバスをISO800で撮った。

 正直いって普通のサラリーマンに週イチの連載は少々きつかった。素人レベルでは技術的な解説もできず参考になるところが少なかったかと恐縮しているが、お付き合いいただいた読者と日程ギリギリの原稿を我慢いただいた編集者に感謝したい。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報(EOS 20D)
  http://cweb.canon.jp/camera/20d/
  製品情報(Muse Viewer Pro)
  http://www.canon-ist.co.jp/product/mvpro/


( 奥川 浩彦 )
2005/04/20 00:01
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