先月24日、シグマDP2が手もとに届いた。予々から予約してあったもので、その日はDP2の発売開始日でもあった。わざわざ予約してまで買った“コンパクトデジカメ”は2台目である。もちろん1台目はDP1だ。
では、なぜそこまでして買うかというと、業界関係者をはじめ身近な人間に行き渡る前に見せびらかしたいのも少しはあるが、大きくはこのカメラのコンセプトが自分の考えとシンクロしてしまうからだ。画質を優先させればイメージセンサーは大きいほうが絶対的にいいわけだし、大きなボケを得ることも普通のコンパクトデジカメに比べればカンタン。ベタっとした色調や妙に立体感のないコンパクトデジカメ特有の描写からも脱却することができる。光学解像度の優れた単焦点レンズを組み合わせれば、このうえないコンパクトデジカメができるのに、とデジタルカメラというものを知って以来ずっと思い続けてきたのだが、その考えにピタリと当てはまるカメラなのである。
そして、DP1 / DP2 は、今どき珍しい“尖った”カメラでもあることも大きい。ほかのコンパクトカメラと比較すると処理速度は遅いし、操作性だって未完成なところが多い。フォビオンセンサーは時として描写に気難しいこともある。そんなDP1は、大手カメラメーカーだったらまず市場に出さなかったはずだ。しかし、上手くコントロールして得た画像は、この上ないほど上質。いうまでもなく、ほかのコンパクトカメラを大きく凌駕する。やんちゃだけど、ひとつ突出した魅力を持つカメラでもあるからだ。
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搭載されるレンズの焦点距離は24.2mm。これはフルサイズに換算して41mm相当の画角となる。レンズ構成は6群7枚。レトロフォーカスを採用している。開放F2.8であるが、欲をいえば、あと一段明るかったらと思ってしまう
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以前どこかのカメラ誌にも書いたのだが、DP2はDPシリーズの本丸と言えるカメラだと思う。DP1でもボケはそれなりに得ることは可能だが、被写体と背景が極端に離れているようなごく一部の条件のときのみで、しかもボケの度合いは小さいものである。DP2では、レンズの焦点距離および開放F値から得られるボケの大きさは、DP1や同等の画角を持つ一般のコンパクトデジカメの比でない。DP1はAPS-Cサイズのイメージセンサーを持つカメラとして注目を集めたわけだが、そのセンサーが持つメリットをフルに活かすことができるのは、いうまでもなくDP2だといえる。しかも、画角的にもたいへん使いやすく感じる。
新たに備わったQS(クイックセット)ボタンも使い勝手がいい。撮影に関わる設定の変更が撮影設定メニューのなかに入ることなく素早く行なえる。DP2ユーザーなら積極的に活用したい機能である。そのほか縦位置情報記録やインターバルタイマーなど追加されており、DP1で抱いた不満が一挙にDP2で改善されているといってよいものだ。
ただ、DP1でもいえることだが、背面のボタン類には文字やアイコンがグレービングされているものの、まわりと同じ色(黒色)のため、視認性が悪いのには閉口する。特に近年、私は老眼の度合いが強くなってきており、普段でも見えづらいのに、少し暗く感じるようなところではまったく見えなくなってしまう。是非ともDP3(!?)では白い塗料をグレービングした部分に入れるなど検討してほしいところだ。
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【DP2】
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【DP1】
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カメラ背面部を見ると両機の違いは大きい。DP1ではあった露出補正ボタンが廃止され、代わりにQS(クイックセット)ボタンとMENUボタンが新設された。ヨコ位置だったズームコントローラーは、タテ位置になるとともに役割も変わり主に露出の設定に使用する。液晶モニターの色が異なるのは、保護フィルムの違いから |
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【DP2】
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【DP1】
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モードダイヤルは、DP1ではあった全自動モードを廃止し、代わりに「SET UP」モードを設置する。ストロボが自動でポップアップしないDP1では全自動モードは不要に感じていただけに、やっぱりという感じ |
描写に関しては、鮮鋭度が高く、コクのある色調はフォビオンならではといったところ。付属する現像ソフトPhoto ProでRAWを生成した場合、そのままだと460万画素とちょっと物足りないが、補間により1,860万画素の解像度が得られるのは便利だ。残念に思えて仕方がないのが、 ホワイトバランス「オート」のわずかな青カブリである。RAWの場合に特に顕著で、仕方がないので「晴れ」(=太陽光)に設定して撮影している。「マニュアル」のホワイトバランスは設定方法もたいへん簡単なので、風景やポートレートなどはこちらを使うとよいだろう。なお、このことはメーカーも認識しており、いずれファームアップで改善されることと思うが、可及的速やかに対応してほしいところである。
さて、本来はプライベートにと買ったDP2であるが、手もとに届いてからというものカメラ誌やムックの作例撮影などに主に使用しており、仕事抜きの撮影は未だまともに行なっていない。しかも、本レポートも始まってしまい、まことに皮肉なものである。次回はボケ味について書きたいと思う。
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DP2
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DP1
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メニューを開いた最初の画面。DP1では項目しか表示されないが、DP2では設定の状態も表示される。これだけでも使い勝手は格段に向上したように感じる |
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DP2
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DP1
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仕上り設定は、DP2の「色モード」からDP2では「カラーモード」と名称が変わるとともに、デジタル一眼レフ並みのモード数となった。なお、カラーモードの[白黒][セピア]はJPEG設定時のみ選択できる |
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RAWモードのみISO感度は最高3200まで設定が可能となる。ただし、ISO1600も含めノイズレベルはデジタル一眼レフ並みとまではいかなかったようだ。実用といえるのはISO400までといってよいだろう
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DP1では設定項目として別個であったコントラスト、シャープネス、彩度が、「ピクチャーセッティング」としてひとつにまとめられた。一度に設定の状態が見渡せるので、こちらのほうが具合はイイ
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QS(クイックセット)ボタンを押すとクイックメニューが表示される。設定の変更は十字キーで行なう。素早く直感的な操作が可能で、使い慣れると手放せなくなる |
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グリッド表示の選択肢が格段に広がった。9分割に加え4分割と16分割が選べるほか、罫線も実線と点線が選択できる。個人的にはDP1と同じ9分割実線を選択している
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タテ位置で撮影した画像がパソコンで自動的にタテ位置となる「縦位置情報記録」も新しく搭載された機能。ただし、カメラの液晶モニターでもタテ位置となり、小さく表示されてしまうのは残念なところ
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実際に使う使わないは別にして、インターバルタイマーが搭載されたのは興味深いところ。30秒 / 1分 / 5分 / 10分 / 15分 / 30分 / 45分 / 1時間 / 3時間 / 6時間 / 12時間 / 24時間からインターバルが選択でき、2回 / 3回 / 5回 / 7回 / 10回 / 20回 / 30回 / 40回 / 50回 / 75回 / 99回 / 無制限から撮影回数を選ぶことが可能だ
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- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
- リンク先はSIGMA Photo Pro 3.3.0.1016で現像したJPEGファイルです。
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DP2 / 約2.3MB / 2,640×1,760 / 1/125秒 / F8 / -1EV / ISO100 / WB:オート
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DP2 / 約1.4MB / 1,760×2,640 / 1/250秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート
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DP2 / 約960K / 2,640×1,760 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート
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DP2 / 約1.2MB / 2,640×1,760 / 1/800秒 / F4 / +0.3EV / ISO50 / WB:オート
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DP2 / 約1.5MB / 1,760×2,640 / 1/800秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO50 / WB:オート
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DP2 / 約1.7MB / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F8 / -0.3EV / ISO50 / WB:オート
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DP2 / 約1.6MB / 1,760×2,640 / 1/100秒 / F2.8 / -1.3EV / ISO50 / WB:オート
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DP2 / 約2.7MB / 1,760×2,640 / 1/40秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO50 / WB:オート
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DP2 / 約2.1MB / 2,640×1,760 / 1/250秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート
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DP2 / 約862K / 1,760×2,640 / 1/80秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート
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【2009年5月20日】初出時に「DP1はOKボタンを押すとメニューが消える点が、DP2で改良された」との内容を掲載しましたが、DP1では十字ボタン右でメニュー項目を指定後、十字ボタン左でメニューに戻る操作を行なうことで、連続したメニュー項目の設定が行えます。「確定=メニューが消える」とのイメージを強く残す内容と判断し、該当部分を削除しました。
■ URL
シグマ
http://www.sigma-photo.co.jp/
製品情報
http://www.sigma-photo.co.jp/camera/dp2/
■ 関連記事
・ シグマ、「DP2」を正式発表(2009/03/03)
大浦タケシ (おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。 |
2009/05/20 00:05
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