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【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】ペンタックス「DA 15mm F4 ED AL Limited」

~パンフォーカスで真価を発揮する超広角レンズ
Reported by 伊達淳一

「DA 15mm F4 ED AL Limited」を装着した「K20D」
 ペンタックスのレンズラインナップの特徴は、ほかのメーカーに比べ、非常に単焦点レンズの比率が高いことだ。なかでも“Limited”シリーズは、レンズ鏡筒、フード、キャップがアルミ削り出し素材で作られていて、非常に質感が高いのが特徴だ。極端な話、写真を撮らなくても、カメラに装着して眺めているだけでも、所有する満足感、喜びが感じられる。それでいて、焦点距離や開放F値をそれほど無理をしていないので、他社の大口径単焦点レンズほど価格は高くなく、軽量コンパクトなのも魅力だ。

 その“Limited”最新モデルが「DA 15mm F4 ED AL Limited」。35mm判換算で23mm相当の画角が得られるデジタル専用レンズで、最短撮影距離は18cmと被写体にググッと寄って撮影できるのが特徴。「DA 14mm F2.8 ED (IF)」に比べると開放F値がF4と1段暗いが、レンズが非常に軽量コンパクトで、フードも内蔵しているので、カメラバッグにこのレンズを1本プラスαしてもまったくかさばらない。価格もDA 14mm F2.8 ED (IF)より抑えられているのも魅力だ。


最短撮影距離は18cm。超広角ズームレンズに比べ、被写体にグッと寄れるのが魅力。開放F値も無理をしていないので、非常にコンパクトなレンズだ
 ちなみにボクは、シグマ「10-20mm F4.5-5.6 EX DC」をペンタックス用の超広角ズームとして選んだのだが、ペンタックスのカメラを使っていると、不思議と利便性を追求したズームよりも単焦点レンズでラインナップを揃えたくなる。すでに、「DA 21mm F3.2 AL Limited」、「FA 31mm F1.8 AL Limited」、「DA 35mm F2.8 Macro Limited」、「FA 50mm F1.4」、「D FA Macro 50mm F2.8」、「FA 77mm F1.8 Limited」、「D FA Macro 100mm F2.8」、「DA★ 300mm F4 ED (IF) SDM」とペンタックスの単焦点レンズを持っているので、DA 15mm F4 ED AL Limitedがボクのレンズラインナップに加わったことで、超広角から超望遠までを幅広く単焦点レンズでカバーできるようになった。

 超望遠のDA★ 300mm F4 ED (IF) SDM以外は、どれも軽量でコンパクトなレンズなので、5~6本持って撮影に出かけたとしてもそれほど荷物は重くならない。単焦点レンズは画角が変えられないので、ズームレンズに比べると不自由さはあるが、逆にそういった制約があることで、カメラポジションやアングルを変えたり、考えながら撮影するようになる。そういう不自由さを楽しむ、というのも、趣味としての写真撮影ならではの醍醐味だし、撮影結果に対する(自己)満足感も大きいのだろう。


花形のフードが内蔵されていて、内側には植毛処理が施されている。フィルター径は49mmで、フィルターの枠がフードと干渉しなければフードと同時使用が可能
 さて、DA 15mm F4 ED AL Limitedを使ってみての第一印象は“逆光に強い”こと。特に、街の夜景を広角で撮影すると、さまざまな方向に街灯の光があり、しかも、写真に黒っぽい部分が多いので、かなり構図を工夫しないとゴーストやフレアが目立ってしまうことが多いのだが、このレンズに関しては、内蔵フードを伸ばさず撮影したのにもかかわらず、不快なゴーストやフレアは生じず、とてもヌケの良い描写が得られたのには驚いた。

 さすが、Aero Bright Coating(エアロ・ブライト・コーティング)は凄い、と感心したのだが、DA 15mm F4 ED AL Limitedのニュースリリースを改めてチェックしてみると、どこにもAero Bright Coatingの記述はない。もともとペンタックスは古くからマルチコーティングの優秀さには定評があるが、最近は“あれっ”と思うレンズも何本かあっただけに、DA 15mm F4 ED AL Limitedの逆光性能の高さには、久々にペンタックスの真骨頂を見せられたような気がした。

 また、絞り羽根は7枚だが、絞ったときの絞りの形は角張っていて、ペンタックスの悪い伝統は相変わらず。ただ、絞り羽根が奇数枚なので、夜景を撮影したときの街灯の光芒の数が倍になり、しかも、光芒の出方が非常にシャープでカッコいい。逆光に対する強さを活かし、強い点光源にわざと光芒を発生させて、写真のアクセントにするのが、このレンズの特徴を活かす一つの方法だ。

 歪曲収差(ディストーション)が極めて少ないのも特徴で、近距離の撮影ではごくわずかなタル型歪みが感じられるものの、通常の撮影で歪みが感じられることはほとんどないだろう。ズームレンズでは、歪曲収差を目立たなくするため、タル型と糸巻き型が複合した陣笠タイプの歪曲収差が多いのだが、個人的にはこの陣笠タイプの歪曲収差は不自然で嫌いだ。そういう意味では、DA 15mm F4 ED AL Limitedの歪曲収差は極めて自然で、建築物の撮影にも十分通用する。


レンズキャップはねじ込み式で、アルミ削り出し素材を使用。ネジ込んだときに「PENTAX」のロゴがちゃんと正しい角度で止まるのは、細やかな心遣いだ

レンズキャップの裏側にも植毛処理が施されている。Limitedシリーズだけあって、性能に直接関係しない部分までこだわっている


 一方、DA 15mm F4 ED AL Limitedで気になるのが“ボケ”。最短撮影距離が18cmと短いので、被写体にググッと寄って撮影すれば、背景を多少ボカすことはできるのだが、ボケの輪郭に縁取りが出やすく、特に光点をボカすとリングボケに近い状態になる。いかにも“球面収差をきっちり補正しました”的なボケ方で、中途半端に背景をボカすと、画像処理の輪郭強調も加わって、うるさい二線ボケになりやすい。

 ただ、こういうボケは、球面収差をきっちり補正している、という裏返しでもあり、ピントを合わせた部分は絞り開放からとてもシャープで、パープルフリンジやにじみもほとんど目立たない。倍率色収差もないわけではないが、(ペンタックスの)超広角レンズとしては少ない方だろう。ボケ味うんぬんよりも、超広角レンズらしく、パンフォーカス的に撮影したときにキリッと引き締まった描写を追求したレンズのように思う。


K20Dに装着したDA15mm F4 ED AL Limited。距離目盛もシルク印刷ではなく、ちゃんとアルミ鏡筒を削って刻印されている。最近では珍しい凝った仕上げだ
 さすが開放F値を無理していない単焦点レンズだけあって、絞り開放から四隅までビシッとシャープな写り、と書きたいところだが、個体差かもしれないが、周辺部ではちょっとキレとコントラストが低下気味。F8~11くらいに絞り、ファインシャープネスに変更して撮影すると、「K20D」の1,460万画素の描写力を引き出せるはずだ。

 他社からも春の新製品が登場し、なかなかペンタックスだけを持ち出してじっくり撮影している余裕がなかったが、それでもDA 15mm F4 ED AL Limitedは軽くて小さいので、なんとか桜やチューリップを撮影することができた。ペンタックスのDAレンズの大半には、[AF.S]で合焦後、切り替え操作なしでMF操作できる「Quick-Shift Focus System」(クイックシフト・フォーカス・システム)も搭載されていて、このレンズも例外ではないが、親指AF(シャッターボタン半押しのAF動作をOFFにし、AFボタンを押したときだけAFが動作する撮影スタイル)で使うときには、このQSFがあるとないとでは大違い。QSF搭載のレンズなら、AFボタンを押したときだけAFが動作し、それ以外はいつでも切り替えなしでMF操作ができるので、AFとMFをシームレスに使い分けることができる。

 各社の新製品テストが終わったら、K20Dとお気に入りの単焦点レンズだけを持って、都内をいろいろ撮影してみたいと思っているが、DA 15mm F4 ED AL Limitedもレギュラー入りは間違いなしのレンズだ。

●作例
※サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウインドウで表示します。

※すべて「K20D」で撮影しています。


周辺光量&歪曲収差チェック

※共通設定:4,672×3,104 / 0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON


F4
F5.6

F8 F11

ボケ味テスト

・シーン1

※共通設定:4,672×3,104 / 0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON


F4 F5.6

F8 F11

・シーン2

※共通設定:4,672×3,104 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON


F4 F5.6

F8 F11

一般作例

da15_sam_01s.jpg da15_sam_02s.jpg
4,672x3,104 / 13秒 / F11 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:白色蛍光灯 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 2.5秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:白色蛍光灯 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON
da15_sam_03s.jpg da15_sam_04s.jpg
4,672x3,104 / 2.5秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:白色蛍光灯 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 8秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:白熱球 / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON
da15_sam_05s.jpg da15_sam_06s.jpg
4,672x3,104 / 5秒 / F11 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:白熱球 / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 13秒 / F8 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:3,400K / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON

da15_sam_07s.jpg da15_sam_08s.jpg
4,672x3,104 / 1/320秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/1,000秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON
da15_sam_09s.jpg da15_sam_10s.jpg
4,672x3,104 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/800秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON
da15_sam_11s.jpg da15_sam_12s.jpg
4,672x3,104 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON

da15_sam_13s.jpg
da15_sam_14s.jpg
4,672x3,104 / 1/1,600秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/1,600秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON
da15_sam_15s.jpg da15_sam_16s.jpg
4,672x3,104 / 1/200秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:日陰 / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON
da15_sam_17s.jpg da15_sam_18s.jpg
4,672x3,104 / 1.6秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:太陽光 / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 5秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON

da15_sam_19s.jpg da15_sam_20s.jpg
4,672x3,104 / 1/125秒 / F11 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/250秒 / F8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:風景 / ファインシャープネス:ON
da15_sam_21s.jpg da15_sam_22s.jpg
4,672x3,104 / 1/100秒 / F6.3 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/200秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:ナチュラル / ファインシャープネス:ON
da15_sam_23s.jpg da15_sam_24s.jpg
4,672x3,104 / 1/1,000秒 / F5 / -0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:雅 / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 1/250秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:雅 / ファインシャープネス:ON
da15_sam_25s.jpg da15_sam_26s.jpg
4,672x3,104 / 1/8秒 / F4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:雅 / ファインシャープネス:ON 4,672x3,104 / 0.6秒 / F4 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / WB:オート / 15mm / 画像仕上げ:雅 / ファインシャープネス:ON



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.jp/
  製品情報
  http://www.pentax.jp/japan/imaging/digital/lens/index35_wide.html#da2132al

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伊達淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2009/05/12 00:19
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