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【伊達淳一のレンズが欲しいッ!】タムロン AF 28-300mm F3.5-6.3 Di VC

Reported by 伊達 淳一

 タムロン AF 28-300mm F3.5-6.3 Di VC LD Aspherical [IF] Macro Model A20(以降「
A20」と記す)は、35mmフルサイズ対応の高倍率ズームで、同社初の手ブレ補正機構を搭載しているのが特徴だ。「VC」はVibration Compensation(バイブレーション・コンペンセーション)の略で、キヤノンの「IS」、ニコンの「VR」、シグマの「OS」とメーカーによって名称は異なるが、いずれもレンズ内にブレを検知するセンサーと補正光学系、補正光学系を動かすアクチュエーターを組み込み、ブレを打ち消す方向に補正レンズを上下左右にシフトさせることで、像の上下左右の揺れを抑えている。

 従来のタムロンAF 28-300mm F3.5-6.3 Di LD Aspherical [IF] Macro(以降「A061」と記す)が、73×83.7mm(最大径×全長)、420g(重量)なのに対し、手ブレ補正機構を搭載したA20は78.1×99mm、555gと、手ブレ補正機構搭載のレンズとしては、それほどサイズアップしていないのが特徴だ。プレスリリースによると“補正レンズ周辺に3対の駆動コイルと摺動用ボールを配置した3軸制御構造を採用していて、ボールの転がり摩擦だけで補正レンズを支持しているので応答性が向上、構造もシンプルなのでレンズ自体もコンパクトに設計できた”という。


VC機構を搭載したA20(左)と従来のA061(右)。手ブレ補正機構搭載によるサイズアップは少なめな部類だ
従来のA061(右)がプラスチックマウントなのに対し、VC搭載のA20は金属マウントが採用されているようだ

 高倍率ズームは、広角から望遠まで幅広い画角をカバーし、中望遠マクロ的な撮影まで1本でこなせる利便性の高さが魅力だが、見かけがコンパクトなので、つい標準ズーム感覚でお気楽にシャッターを切ってしまいがちだ。しかし、テレ側にズームすれば立派な望遠レンズなので、画角に見合ったシャッタースピードと心構えで撮影しないと手ブレしやすくなる。

 一般に、手ブレ限界のシャッタースピードは、“35mmカメラ換算の焦点距離分の1秒”というのが目安とされていて、例えば、焦点距離50mmのレンズなら1/50秒、100mmのレンズなら1/100秒よりもシャッタースピードが遅くなると、手ブレしやすくなると言われている。つまり、300mmなら1/300秒以上(APS-Cサイズのデジイチに装着した場合は1/500秒以上)のシャッタースピードで撮影しないと手ブレしやすくなるわけだが、ズームテレ端の開放F値はF6.3とあまり明るくはないので、晴天の屋外でもない限り、すぐに手ブレ限界のシャッタースピードを下回ってしまう。

 その点、A20に搭載されている「VC」は、シャッタースピード約4段分の手ブレ補正効果が期待できるそうなので、300mmを1/20秒で手持ち撮影しても手ブレせずに撮影できることになる。実際、A20をカメラに付けてシャッターボタンを半押ししてみると、ズームテレ側でもファインダー像が驚くほどピタリと止まる。わざとカメラを小刻みに動かしてみても、像はピクリとも動かないのだ。


ズームワイド端(左)とテレ端(右)
レンズ側面にはAF/MF切り換えとVCのON/OFF切り換えスイッチがある

付属の花形フードを装着した状態。光源の位置によってはゴーストやフレアが生じるので、できるだけフードは着用したい フィルター径は、従来のA061が62mm径なのに対し、A20は67mm径。同社の28-75mmF2.8ズームと同じフィルターが使用可能だ

 そこで、A20の手ブレ補正効果を確かめるため、キヤノンEOS 5DとA20だけ持って、紅葉の見頃を迎えつつある高尾山に登ってみることにした。当日の天気は曇り。朝はどんよりと曇っていたので、撮影に行くのをやめようかとも思ったのだが、午前10時を過ぎて空が明るくなってきたので、ダメモトで紅葉の様子見に出発した。そんなわけで、山登りにはちょっと遅めのスタートとなったのだが、高尾山口に到着すると、青空は望めないものの時折薄日も差すくらいの天気。A20の手ブレ補正効果を試すには、晴れすぎず暗すぎず、ちょうどいい感じだ。もっと時間が早ければ徒歩で山頂を目指すところだが、秋の日はつるべ落とし。午後3時を過ぎるといきなり暗くなってくるので、日本最大の斜度を誇るロープウェイで中腹までショートカット。そこからパチリパチリとスナップ撮影を楽しみながら、山頂までの軽いハイキングを楽しんできた。

 事前のテスト撮影で、絞り開放ワイド端では周辺画質が甘く、テレ端になると多少にじみが出て甘くなることがわかったので、シャッタースピードが許す限り、F5.6〜11くらいまで絞って撮影。また、ピクチャースタイルはスタンダードだが、シャープネスを+1〜+2、コントラストも+1に設定して、パッと見た目のシャープネスを高めている。

 高尾山は、山全体が紅葉するわけではなく、まだ見頃には1週間ほど早かったため、引きでキレイな紅葉写真は望めなかったが、高尾山口のロープウェイ乗り場付近と山頂付近はアップで撮影してもなんとか鑑賞に堪えるキレイな紅葉に巡り会うことができた。それに、いつもなら欲張ってあれこれ機材を持っていってしまうので、荷物の重さでフットワークも鈍ってしまうところだが、今回は5DとA20だけで撮影に挑んだので、荷物も気持ちも軽〜く撮影できた。

 家に帰ってから撮影した写真をチェックしてみると、期待していたよりは手ブレしてしまう率が高かった。これは、VCの手ブレ補正能力を信じて、できるだけ感度は上げずに、それでいて絞り込んで撮影したためだ。普段ならもっと高感度に設定して、少しでも速いシャッタースピードで撮影するところだ。手ブレした写真のExif情報をチェックしてみると、テレ側で1/40秒とか1/60秒程度のシャッタースピードでブレてしまったカットがある一方、逆にもっとスローシャッターで手ブレせずに撮影できたカットもあった。ボクの撮影スタイルでは、シャッタースピード2.5段前後の手ブレ補正効果といった印象だ。


 従来のA061と画質を比較してみたが、基本的な傾向はほとんど同じで、絞り開放ではワイド側で周辺が甘く、テレ側では全体ににじみが生じてくる。シャッタースピードさえ許せば、ワイド側で2段、テレ側で1段絞って撮影したいところだ。もっとも写りがイイのは、100mm域から200mm域にかけてだ。また、ボケ味は明らかに違っていて、A20はボケの輪郭に明るい縁取りが目立つのに対し、従来のA061はさほど縁取りは目立たない。コントラストが高い背景だとA20は少しうるさいボケになりやすい感じだ。

 センサーサイズがAPS-CのEOSデジタルに装着すれば、45〜480mm相当の画角で撮影できるので、標準域までカバーできる超望遠ズームとして最適だ。将来、センサーサイズの大きなデジイチに買い換えても、レンズ資産がムダにならない点も魅力だ。

 というわけで、今度はキヤノンEOS 40DにA20を付けて、東京・日野市の多摩動物公園に出かけてみた。ちなみに、40DとA20を組み合わせた場合、AIサーボAFモードにすると連写スピードが遅くなるという現象がタムロンからアナウンスされている。MFとAIサーボAFとでは明らかに連写スピードが違うし、AIサーボAFだと連写の間隔も乱れる感じだ。

 5Dで撮影したカットに比べると、40Dのほうが画素ピッチが狭く、センサーサイズも小さいためか、全体に5Dほどのキレは感じられない。画質を最重要視するなら70〜200mmや70〜300mmズームをチョイスしたほうが良さそうだが、ズームをワイド側に引けば標準域までカバーできるという点は、被写体が前後に大きく移動する撮影には便利。最短撮影距離もズーム全域で49cmと短いので、遠くから近くまで迫ってくる被写体をずっと最適なサイズで追い続けられるのは、望遠ズームにはない魅力だ。


焦点距離別の絞り開放描写

※画像をクリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで表示します。
※すべてEOS 5D、ISO100、絞り優先AE、露出補正なしで撮影しています。


28mm
F3.5 / 1/1,000秒
50mm
F4 / 1/640秒

100mm
F5 / 1/320秒
200mm
F5.6 / 1/250秒

300mm
F6.3 / 1/250秒

歪曲収差と周辺光量チェック(A061と比較)

※すべてEOS 5D、ISO100、絞り優先AE、露出補正なしで撮影しています。



28mm
F3.5 / 1/250秒
28mm
F3.5 / 1/200秒

35mm
F3.5 / 1/250秒
35mm
F3.5 / 1/160秒

50mm
F4 / 1/125秒
50mm
F4 / 1/125秒

100mm
F5.6 / 1/80秒
100mm
F5 / 1/60秒

200mm
F5.6 / 1/50秒
200mm
F6.3 / 1/50秒

300mm
F6.3 / 1/50秒
300mm
F6.3 / 1/40秒

絞り別のボケ描写チェック(A061と比較)

※すべてEOS 5D、ISO800、絞り優先AEで撮影しています。
●28mm



F3.5 / 1/1,000秒 / -0.33EV
F3.5 / 1/1,000秒 / -0.33EV

F4 / 1/800秒 / -0.33EV
F4 / 1/800秒 / -0.33EV

F5.6 / 1/400秒 / -0.33EV
F5.6 / 1/400秒 / -0.33EV

F8 / 1/200秒 / -0.33EV
F8 / 1/200秒 / -0.33EV

F11 / 1/100秒 / -0.33EV
F11 / 1/80秒 / 0EV

●50mm



F4 / 1/800秒 / -0.33EV
F4 / 1/640秒 / -0.33EV

F5.6 / 1/400秒 / -0.33EV
F5.6 / 1/400秒 / -0.33EV

F8 / 1/200秒 / -0.33EV
F8 / 1/200秒 / -0.33EV

F11 / 1/100秒 / -0.33EV
F11 / 1/100秒 / -0.33EV

●100mm



F5.6 / 1/320秒 / -0.33EV
F5 / 1/250秒 / -0.33EV

F8 / 1/125秒 / -0.33EV
F8 / 1/100秒 / -0.33EV

F11 / 1/60秒 / -0.33EV
F11 / 1/50秒 / -0.33EV

●200mm



F5.6 / 1/200秒 / -0.33EV
F5.6 / 1/200秒 / -0.33EV

F8 / 1/100秒 / -0.33EV
F8 / 1/100秒 / -0.33EV

F11 / 1/50秒 / -0.33EV
F11 / 1/50秒 / -0.33EV

●300mm



F6.3 / 1/200秒 / -0.33EV
F6.3 / 1/200秒 / -0.33EV

F8 / 1/125秒 / -0.33EV
F8 / 1/100秒 / -0.33EV

F11 / 1/60秒 / -0.33EV
F11 / 1/50秒 / -0.33EV

実写作例

※画像下のデータは露出プログラム/絞り/シャッター速度/感度/露出補正値/ホワイトバランスです。

●EOS5D


絞り優先AE / F8 / 1/320秒 / ISO400 / 0EV / 5,000K 絞り優先AE / F13 / 1/25秒 / ISO100 / 0EV / 5,000K

絞り優先AE / F8 / 1/200秒 / ISO320 / -1EV / 5,000K 絞り優先AE / F8 / 1/60秒 / ISO320 / -1.33EV / 5,000K

絞り優先AE / F9 / 1/200秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F9 / 1/200秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F6.3 / 1/160秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F7.1 / 1/30秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F5.6 / 1/50秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F8 / 1/125秒 / ISO400 / -0.67EV / オート

絞り優先AE / F8 / 1/160秒 / ISO400 / 0EV / 5,000K
絞り優先AE / F8 / 1/30秒 / ISO400 / 0EV / 5,000K

絞り優先AE / F8 / 1/20秒 / ISO400 / 0EV / 5,000K
絞り優先AE / F5.6 / 1/13秒 / ISO400 / -1.33EV / 5,000K

絞り優先AE / F6.3 / 1/25秒 / ISO400 / -0.33EV / 5,000K
絞り優先AE / F8 / 1/60秒 / ISO400 / -0.33EV / 5,000K

絞り優先AE / F8 / 1/25秒 / ISO400 / -0.33EV / オート
絞り優先AE / F10 / 1/60秒 / ISO400 / 0EV / オート

絞り優先AE / F8 / 1/25秒 / ISO400 / -1EV / 5,000K
絞り優先AE / F5.6 / 1/50秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F6.3 / 1/160秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F6.3 / 1/13秒 / ISO640 / -1EV / 5,000K

絞り優先AE / F6.3 / 1/10秒 / ISO640 / -1EV / 5,000K
絞り優先AE / F6.3 / 1/100秒 / ISO400 / -1EV / 5,000K

絞り優先AE / F5.6 / 1/160秒 / ISO400 / -0.33EV / 5,000K
絞り優先AE / F4.5 / 1/30秒 / ISO400 / -1EV / 5,000K

絞り優先AE / F5.6 / 1/800秒 / ISO400 / -1.33EV / オート
絞り優先AE / F5.6 / 1/400秒 / ISO400 / -0.67EV / オート

絞り優先AE / F6.3 / 1/320秒 / ISO400 / -0.67EV / オート
絞り優先AE / F7.1 / 1/15秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F8 / 1/200秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F8 / 1/160秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F8 / 1/160秒 / ISO400 / -0.67EV / 5,000K
絞り優先AE / F5.6 / 1/50秒 / ISO200 / -0.67EV / 5,000K

絞り優先AE / F5 / 1/15秒 / ISO200 / -0.67EV / オート
絞り優先AE / F5.6 / 1/30秒 / ISO200 / -0.67EV / オート

絞り優先AE / F5 / 1/125秒 / ISO640 / -0.67EV / オート 絞り優先AE / F5.6 / 1/50秒 / ISO640 / -0.33EV / オート

●EOS40D


絞り優先AE / F8 / 1/250秒 / ISO200 / 0EV / オート
絞り優先AE / F8 / 1/400秒 / ISO200 / 0EV / オート

マニュアル露出 / F8 / 1/200秒 / ISO200 / 0EV / オート
マニュアル露出 / F8 / 1/200秒 / ISO200 / 0EV / オート

絞り優先AE / F8 / 1/1000秒 / ISO400 / -0.33EV / 屋外
絞り優先AE / F11 / 1/250秒 / ISO400 / -0.33EV / 屋外

マニュアル露出 / F5.6 / 1/100秒 / ISO400 / 0EV / 屋外
マニュアル露出 / F8 / 1/60秒 / ISO640 / 0EV / 屋外

マニュアル露出 / F8 / 1/125秒 / ISO640 / 0EV / 屋外
マニュアル露出 / F8 / 1/125秒 / ISO640 / 0EV / 屋外


URL
  タムロン
  http://www.tamron.co.jp/
  製品情報
  http://www.tamron.co.jp/lineup/a20/vc/

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ半年。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2007/11/28 00:03
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