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【伊達淳一のレンズが欲しいっ!】
ニコン AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF)

~VR IIの補正効果とレンズ性能が魅力
Reported by 伊達 淳一

 手ブレ補正は、レンズ側とボディ側のどちらに搭載するほうが優秀か? なんて論議されているが、装着できるほとんどのレンズで手ブレ補正効果が得られるという点では、やはりボディ側に手ブレ補正機構が標準装備されているのが便利。ただ、ボディ内手ブレ方式では、ファインダーで手ブレ補正の効果が確認できないのが弱点。特に、望遠レンズになればなるほど、しっかり構えてもファインダー像が大きく揺れるので、微妙なフレーミングの調整がしにくいし、AFセンサーに届く像も不安定になるので、それだけAFの精度や速度に影響がありそうだ。

 そういう意味では、望遠レンズほどレンズ側に手ブレ補正機構が搭載されているほうがメリットが大きくなる。どちらの方式も一長一短で、理想は、ボディ側に手ブレ補正機構を標準搭載し、手ブレ補正機構を搭載したレンズを装着したときのみ、ボディの手ブレ補正を切ってレンズ側で手ブレ補正する、というハイブリッド方式だ。

 現在、レンズ側での手ブレ補正を選択しているのは、キヤノンとニコン、それにシグマだ。特に、キヤノンとニコンにはまだまだ35mm一眼レフを愛用するユーザーも多いので、フィルムユーザーのことも考えれば、レンズ側に手ブレ補正ユニットを搭載するという選択になるのだろう。

 今回、とり上げるニコンAF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(IF)は、デジタル専用ではなく、35mm一眼レフと兼用の超望遠ズームだ。絶大な人気を誇る18-200mm VRズームと同様、“次世代手ブレ補正(VR II)”を搭載していて、シャッタースピード約4段分の手ブレ補正効果が期待できるのが特徴だ。


AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G(左)と、従来のAF Zoom Nikkor ED 70-300mm F4-5.6 D(右)。一回り大きくなっている
 ただ、従来のAF Zoom Nikkor ED 70-300mm F4-5.6 Dと比べると、一回り以上太く大きくなり、重量も約240gも重くなっている。フィルター径も62mmから67mmへとサイズアップ、希望小売価格は26,000円高くなっているが、手ブレ補正機構が追加されているだけでなく、超音波モーター搭載でAF動作時でもMF操作が可能なM/Aモードを装備し、花形の大型フードも付属している。

 絞り羽根枚数は9枚で、ある程度、絞りを絞ってもキレイな形状を保つ円形絞りだ。ピント合わせはインナーフォーカスなので、近接撮影時でもレンズ鏡胴は伸びない仕様だ。キヤノン EF 70-300mm F4-5.6 IS USMのほうがわずかに高く、それでいて、距離目盛もなくワンタッチMF操作もできないなど完全な廉価版仕様になっていることを考えれば、ニコンの70-300mm VRズームのほうが魅力的だ。

 大人気で今なお品薄が続いている18-200mm VRズームとこの70-300mm VRズームを組み合わせれば、35mmカメラ換算で28mmから450mm相当までの画角を、シャッタースピード約4段分の手ブレ補正効果を伴ってカバーできる。もちろん、18-70mmや18-135mmといったニコン純正標準ズームと組み合わせ、不足する望遠側をカバーするというのも現実的な選択だ。


ズームワイド端(左)とテレ端(右)の鏡胴全長の比較
ズームテレ端、最短撮影距離時にフードを付けた状態で全長を比較してみた。新しい70-300mm VRズームは、フォーカス時に前玉が回転しないので、遮光効率の高い花形フードが付属している

D80レンズキットに設定されている18-135mmズーム(左)との大きさ比較。バッテリーの持ちがいいD80とはベストマッチだ
キヤノンEF70-300mm F4.5-5.6 IS USM(左)との大きさ比較。キヤノンの70-300mmズームには、距離目盛がなく、AF時にフォーカスリングが回転。前玉も回転する

 で、肝心の写りはどうなのよ、と気になっている人も多いと思う。35mm一眼レフのフルサイズ領域までの描写はわからないが、少なくともAPS-Cサイズ(ニコンDXフォーマット)で使うのであれば、(この価格で手に入る)望遠ズームとして文句なしの描写だ。例によって、他誌の締め切りに追われ、あまり実写サンプルのバリエーションが揃えられなかったが、ベランダの窓から数カット試写しただけで“このズームはイケル!”と感じたくらいだ。望遠ズームではありがちな、縦位置撮影時に画面の上下で描写が大きく乱れるようなこともない(まあ、それが当たり前だと思いたいんだけどね)。

 そして、写り以上に感動的なのが、VR IIの効果だ。シャッタースピード4段分の手ブレ補正効果が期待できるからといって、ラフにカメラを構えていいわけではなく、それなりにしっかり構えようと努力することが前提だが、450mm相当の超望遠撮影でもファインダー像がピタッと止まり、多少、身体がふらついても安定して見える。ちょっと気持ちが悪いくらいだ。18-200mm VRズームでもVR IIの優れた手ブレ補正効果は実感できたが、70-300mm VRズームは焦点距離がさらに長く、望遠になっている分、より一層手ブレ補正効果の高さが感じられる。

 ただ、逆光性能はあまり過大な期待は禁物。ワイド端なら太陽を直接画面に入れても多少フレアが出る程度だが、テレ側にズームすると光源の位置や強さによっては、かなり画面が白っぽくなりコントラストが低下してしまう。望遠ズーム、しかも手ブレ補正ユニットという余分な光学系が増えているのだから、当然といえば当然だ。太陽を撮るなら、地平線近くまで落ち、ある程度光が弱まってからでないとかなりフレアっぽくなる。もっとも、この価格帯の望遠ズームはどれも似たり寄ったりの逆光性能で、このズームだけ特別に逆光に弱いというわけではない。

 レンズメーカー製の70-300mmズームは驚くほど実売価格が安く、値段の割に描写性能もまともだ。また、35mm一眼レフ用の高倍率ズームである28-300mmズームを、ワイド端が広く、最短撮影距離が短い超望遠ズームとして活用するという選択も考えられる。大きさ、重さ、値段の面では、70-300mm VRズームはかなり不利だと思うが、VR IIの手ブレ補正効果とレンズ性能の高さを考えると、ちょっと無理しても欲しいレンズだ。ニコンのデジタル一眼レフは、高感度にするとノイズリダクションの弊害で細部の描写力が落ちてしまうだけに、低感度でがんばって撮影したいときには(被写体ブレまでは防げないものの)このズームのありがたさが身に染みる。

※作例のリンク先は、撮影した画像です。等倍の画像(3,872×2,592ピクセル)を別ウィンドウで開きます。
※すべて記録形式はJPEG/Fine、露出モードは絞り優先AEで撮影しています。
※特記したもの以外、すべてニコン D80で撮影しています。


歪曲収差チェック

70mm 140mm

300mm

新旧70-300mm対決


F4.5
F4

F8
F8

F11 F11


F5
F4.5

F8
F8

F11
F11


F5.6
F5.6

F8
F8

F11
F11

作例

※画像下の撮影データは、シャッタースピード / 絞り / 露出補正値 / 感度 / 実焦点距離 / ホワイトバランスです。


1/640秒 / F5.6 / 0.67EV / ISO100 / 250mm / オート
1/800秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO200 / 240mm / オート
1/250秒 / F7.1 / 0EV / ISO200 / 260mm / オート

1/640秒 / F7.1 / 0EV / ISO200 / 200mm / オート
1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 260mm / オート
1/200秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO200 / 220mm / オート

1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / 240mm / オート
1/125秒 / F5.0 / 0EV / ISO640 / 145mm / 晴天
1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO640 / 230mm / 晴天

1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / 155mm / オート
1/400秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO1000 / 240mm / 晴天

1/400秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO1000 / 300mm / 晴天
1/400秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO1000 / 300mm / 晴天
1/160秒 / F5.0 / 0.33EV / ISO1000 / 170mm / 晴天

1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO1000 / 300mm / 晴天
1/200秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO1000 / 300mm / 晴天

1/200秒 / F5.6 / -0.33EV / ISO1000 / 155mm / 晴天 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO1000 / 250mm / 晴天

1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO500 / 270mm / 晴天

1/250秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO1000 / 240mm / 晴天
1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO500 / 122mm / 晴天
1/250秒 / F5.6 / 0.67EV / ISO800 / 70mm / 晴天

1/125秒 / F5.6 / 0.33EV / ISO640 / 240mm / 晴天
1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO1250 / 260mm / 晴天
1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO1250 / 210mm / 晴天

1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO1250 / 210mm / 晴天
1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / 240mm / オート
1/25秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / 75mm / オート

1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 300mm / オート (D200で撮影) 1/2,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 70mm / オート (D200で撮影) 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / 260mm / オート (D200で撮影)


URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/af/zoom/telephoto/af-s_vr_ed_70-300mmf45-56g_if.htm

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

2006/12/01 03:15
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