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エプソン カラリオ PM-A950

印刷速度アップとEpson Color対応で強化されたトップモデル



 昨年、単機能機から複合機へと、インクジェットプリンタ事業の舵を切ったエプソン。その象徴とも言える存在がPM-A900だった。専用設計された筐体は背面+前面のダブル給紙システムを持ち、インクカートリッジも専用タイプをオフキャリッジ(ヘッド部以外に搭載する方式)で搭載。スキャナ部にも専用機に迫る性能のコンポーネントを組み合わせ、自社生産の高解像度液晶パネルも搭載した。“画質重視のハイエンドモデルは単機能機で”という常識を打ち破り、プリンタ部の性能は染料系インク搭載のコンシューマ向けインクジェットプリンタ単体機と同等だった。

 複合機が市場の中心となっている現在、ある意味、あたりまえの事のように思えるが、そのきっかけを作ったのは一昨年のPM-A850、そしてさらに推し進めたのがPM-A950と言える。

 上記のように、昨年、大幅に製品を構成する要素が変更されたため、今年は筐体デザインやメカニズム面での変化は少なくなっている。ヘッドの駆動周波数向上や印刷パスの最適化による速度向上、スキャナの基本解像度向上、液晶パネルの大型化(2.5型から3.5型へ)がハードウェア面での変更点。加えてEpson Colorへの対応が行なわれた。

 印刷速度に関しては、別途ベンチマークテストの結果を参照して頂きたいが、特にL判印刷の速度が強化された模様だ。同カテゴリ同クラスで今年の製品を比較すると、最も多く出力するだろうL判写真で、これまでほどの大差を付けられなくなっている。

 さて、その一方で評価が難しいのがEpson Colorである。Epson Colorについては、エプソン製品の概要にて紹介しているが、確かに顔認識機能を活用した自動補正はなかなか安定している。ごく普通の正面から顔を捉えたスナップ写真やポートレイトならば、たいていは適切な処理を行なってくれる。特に逆光時、顔が暗くなった写真に対する処理は、高い確率でほどほどの補正を施してくれる。

 お気に入りの作品を気合いを入れて出力する際には不要な機能だが、しかし、日常的なスナップ写真を気軽に出力するためには重要。Epson Colorの要素技術は複合機のファームウェアにも実装されているため、PCからの印刷だけでなくメモリカードからのダイレクトプリントでも利用できる。


ユーザーシナリオに即した細やかな機能の実装

 一方、複合機としての機能面に目を向けてみると、PCのプリンタドライバと複合機のファームウェアの機能差が非常に少ない事がわかってきた。本体側の操作では“超高精細”での印刷が行なえないという制限はあるが、前記のEpson Colorがそのまま実装されているほか、フチなし印刷時のはみ出し量調整など、実に細かい点まで本体から操作できる。

 たとえば直接のライバルとなるキヤノン機の場合、縁なし印刷時に白い余白ができてしまうことを嫌って、PCのドライバでの標準値とほぼ同じはみ出し量が設定される(変更できない)。しかし、PM-A950では「標準」、「少ない」、「より少ない」という3種類の選択肢から選べる。

 もちろん、PCを使い慣れているユーザーなら、それぐらいはPCからやった方が楽だと思う読者もいるだろう。しかし、複合機の場合は“家族で共有する印刷機”という位置付けで利用されている事も少なくない。

 どこまで細かな設定を複合機のユーザーインターフェイスに実装するかは、賛否両論あるところだが(あまり項目が多いと操作性や簡単さに悪影響がある)、“こうなっていて欲しいな”と思う機能が、きちんとメニュー内にある点は素直に評価したい。

 これはたとえば、手書き合成シートにも言える。手書き合成シートとは、メモリカード内の画像に手書きイメージをオーバーレイして印刷するための機能。なんだ、たいしたことは無さそうだと思うなかれ、これがなかなか面白い。エプソンが昨年導入し、今年はキヤノンも同様の機能を搭載している。

 しかし同じ機能と言っても使い勝手は異なり、エプソンは今年、手書きを行なう領域にうっすらと合成する写真が印刷されるようになった。“おおよそこのあたりか”と見当を付けて手書きするのではなく、きちんと書き込みたい場所に書き込める。

 PM-A950には、PM-A890にあるような携帯電話を用いた文字入力、携帯電話からのワイヤレス写真印刷、16:9用紙のサポートといった今年追加の新機能は搭載されていないが、昨年の大ヒット機を丁寧にグレードアップしたという印象だ。

 それはたとえばCDレーベルコピーにも表れており、印刷面の内周径を設定可能になった。これで、ピクチャーディスク使用のレーベルコピーなどに悲しい思いをしなくてもいい。


クリスピアとの適切なマッチング

 印刷ヘッドの画質に関連するスペックは変化していないPM-A950だが、昨年に比べるとひじょうに素直で破綻の少ない絵柄になった印象だ。階調が豊富でグラデーションの中で色相が不安定になるところがない。

 ただし、エプソンは純正の光沢紙としてクリスピアと写真用紙<光沢>が用意されているが、このふたつでは仕上がりが異なる点には注意したい。用紙単価は前者の方が高価であり、実際の結果も価格差を反映したものになっている。画像ではクリスピアへの出力結果を掲載した。

 クリスピアでの出力はコントラストが高く、黒を若干引き込み気味にパリッとした絵柄となる。濃度をキッチリと出して彩度も伸びる方向だ。もっとも、あざとく彩度がギューンと上がっていくというのではなく、あくまで抑え気味の明度を描くトーンカーブによって、濃度感が演出されているという印象。

 黒を引き込むと言っても必要以上にシャドウが強調されて感じるのではなく、絵の立体感を引き出すようなチューニングだ。また最暗部の階調もしっかりと残っており、黒潰れの発生はない。

 これが写真用紙<光沢>となると、黒の濃度がやや浅くなり、それと共にややソフト傾向のトーンカーブとなった。発色もやや浅く、特に濃い赤の表現はアッサリとしたものになる。鮮やかではあるが、クリスピアの結果に比べると色の深みが削がれる印象だ。また、多少黄色が強くなり、暖色系へと僅かにシフトしているようにも見受けられる。

 エプソンがどちらをリファレンスとしてチューニングしているのかはわからないが、クリスピアの結果はナチュラルで立体感があり、奥行きが存在する。服の細やかなディテールも再現され色も素直だ。写真をこだわって印刷したいなら、クリスピアに対して超高精細モードで印刷するようにしたい。

 なお、下位機種のPM-A890とは画質は同等と言われているが、実際、ほぼ同等の結果が得られており、違いは印刷速度だけと言える。厳密には僅かな色の違いは見られたが、これは機種間の違いというよりも、個体差によるものと思われる。

 ユーザーとしては、最上位モデルを購入する以上、最高レベルの写真画質を欲しいと思うだろう。実際、その目的はPM-A950において達成されている。他社機との比較では、インクの違いが印刷方法の違い(インク滴サイズの使い分けなど)もあり、簡単に比較するのは難しい。しかし、ベースモデルとなったPM-A900の発売から1年を経て、ドライバの熟成が進んだことで、疑問に感じるような色の転びがなくなった点は高く評価したい。“写真ライク”ではなく、エプソン独特のハイコントラストでシャドウ、ハイライトの階調表現を重視した絵作りであり、写真との直接比較では“写真ぽくない”という意見もあるかもしれない。しかし、デジタル写真を出力するための“マシン”として、ひじょうに素直な絵作りがなされたプリンタとの印象を持った。

※印刷結果は印刷結果と近似するよう配慮したが、完全に同一の色にはなっていない点に注意して欲しい。また階調の残り具合を見せるため、黒側は意図的にやや浮かせる調整としている。

※テスト方法についてはこちら。

 今回印刷した画像はすべてEpson Colorの高精細モードをスキャンしたもの。女性の写真をポートレートでは人物を自動認識したようで、ややハイライトを強調気味にしつつ肌色を明るく見せた。肌色は若干、黄色方向に行く。スキャン結果ではわかりづらいが、背景の暗幕のシワがハッキリ浮かぶなど、最暗部でのディテールを極力残すチューニングが特徴的だ。

 それ以外の写真は従来のオートフォトファインのデフォルト設定に近い印象。パリッとコントラストが高く、青や赤、緑などを高彩度に伸ばすチューニング。



( 本田 雅一 )
2005/12/08 15:19
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